アンケートお礼その1
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【とけいとわたし】
時計塔の小さな部屋で、ユリウスは時計の修理をしている。
黒縁のめがねをかけて黙々と修理をしている。
彼は一度口を開くとマイナス思考かつ皮肉ばかりの困った人だけれど、こうして黙っているとひたすらクールに見える。
艶やかな髪の毛と通った鼻筋、切れ長の目ときゅっと閉じられた口元に目を奪われるのだ。(あれ、もしかして隠れイケメン枠!?)
そうかと思えば、カチャカチャと修理音が響く中で、時々「ん?」とか「よし」などを呟いているのが可愛い。
それを指摘したら絶対に怒るし、呟かなくなってしまったらつまらないので、私だけの秘密にしているけれどね。
集中力の素晴らしいユリウスは没頭するタイプのようで、仕事中に自分からはほとんどしゃべらない。
私が話しかけて、いくつか答える。そういう感じ。
だから気にしてないんだけど……全然気にしてないんだけどね?
もう少し私の存在を認めてくれてもいいんじゃないかなぁ。
ほんとに時計ばっかり見ています彼。
いっそのこと私も時計になってしまいたいくらい。(って大袈裟かもしれないけど)
私を見るよりも時計を見ている時間の方が絶対に長いし、時計に触れている方が長い。
すぐそばに女子、というか仮にも恋人がいるというのにね。
私はそこまで魅力がないのか。時計に負けているのか。
って時計にまさかの嫉妬心?ライバル心?
ありえないなぁ私。
そこまで思ってなんだかがっくりきた私は、ソファに座ったままこてんと横に倒れこんでみた。
するとユリウスがちらりと私を見た。(今日、初めてこっちを見てくれた気がする)
彼は視線を手元に落としながらやっと口を開いた。
「ヒマそうだな、名無しさん」
「ヒマと言えばヒマだけど、色々考えてたから忙しいと言えば忙しいかな」
「なんだそれは」
「私の魅力は時計に及ばないという悲しい現実に、どう立ち向かおうかなと思って」
ユリウスは私の言葉にふたたび顔を上げてこちらを見る。
そして眼鏡を押し上げながらきっぱりこう言った。
「……意味がさっぱりわからないな」
くっ! その仕草を取り入れながら冷たいことを言うなんて……!(萌えてしまう!)
うずうずする私に気づく様子もなく、ユリウスはいつもの毒舌っぷりを発揮する。
「名無しさんに魅力があるかも疑問だが、なによりも時計と自分を比べることが普通じゃないぞ。こんなもの、この世界では普通の人間が眺めるようなものじゃない。
時計に魅力なんてあるわけないだろう」
「でもユリウスは毎日眺めてるよね、っていうか熱視線だよね。時計愛を感じるんですけど」
そう言うと、彼は心底呆れた顔を向けてきた。
「私はこれを扱う仕事をしているんだ。好きこのんで見ているわけじゃない」
「好きじゃないけど見てるってこと?」
「というよりも、仕事だから扱っているということだ」
私の表現に不満があったらしい彼は、そう言いなおす。
「仕事だから見てるってことかー。でもさぁ、仕事を始めてから私の方は全然見てくれないね?」
ユリウスは私をみたまま固まった。
「は?」
なに言ってるんだお前は、という表情を隠しもせず向けてくる。
そして口を開いたらこんな言葉。
「……馬鹿かお前。馬鹿じゃなければ頭がおかしい。どうかしている。私は仕事をしているんだぞ?」
ひどいセリフも真っ赤な顔で言われると、傷つかないわー。(むしろ喜び!)
「だってユリウスの日常は、私よりも時計を見ている割合の方が多いでしょ。そりゃあ時計にも嫉妬するよ」
「お前を見てたら仕事ができないだろう」
「そりゃそうだけどさ」
あれだけ細かい作業だし、よそ見しながらできる物じゃないことは分かるけどね。
もうちょっと存在を意識してもらいたいなぁ。
口を尖らせる私に、ユリウスは眉間にしわを寄せる。
「そばにいるのにユリウスは時計ばっかり見てるから、なんかさみしくなるわけですよ」
なんて笑って言ってみたら、ユリウスは3秒くらい私を見つめる。
そしてため息をついてから、眼鏡をはずした。
「お前はわかってないな」
「なにが?」
「ただの物を見る目と名無しさんを見る目が同じなわけがないだろう」
ユリウスはそう言って手元の時計を指先で触れる。
「こんなものをずっと見ていられるのは何も考えていないし、何も感じないからだ。でも、名無しさんは違う」
ユリウスはそう言って立ち上がると作業台の電気をぱちんと消した。
そしてゆっくりと私の元にやってくる。
ほんの少しドキドキしてきた私は、思わずスカートのすそを掴む。
ユリウスは私の顔を覗きこむようにかがむと、そっと私の頬に触れた。
「名無しさんを見たら触れたくなる。仕事どころじゃなくなる」
そんなことを言いだした。
ユリウスは普段は照れるくせに、突然すごい恥ずかしいことを普通に言い出すことがあるのだ。
普段が普段なので、彼の不意打ちは本当にパンチ力がある。
まっすぐに私を見てくるその目に耐えられず、思わず視線を逸らした。
「名無しさん」
名前を呼ばれ反射的に彼を見ると、そのままキスされた。
徐々に深くなるそれに、私は彼の首に手を回す。
唇が離れると、ユリウスはじっと私を見てこう言った。
「時計にこんなことはしないぞ」
「……してたらドン引きだよ。っていうか変な人だよ」
思わず笑ってしまった。
するとユリウスはすぐに皮肉で返してくる。
「時計に嫉妬するような奴に言われたくないな」
うわ、可愛げがないなー。
そう思ったら、彼はものすごく優しい表情で笑った。
「時計と名無しさんは全然違う」
わかってるよ、という意味を込めて私はユリウスに抱きついた。
部屋の隅に、修理を待つ時計達がダンボールにたくさん入っているのがちらりと見えた。
でも、今日はもうユリウスを渡さないからね。
時計塔の小さな部屋で、ユリウスは時計の修理をしている。
黒縁のめがねをかけて黙々と修理をしている。
彼は一度口を開くとマイナス思考かつ皮肉ばかりの困った人だけれど、こうして黙っているとひたすらクールに見える。
艶やかな髪の毛と通った鼻筋、切れ長の目ときゅっと閉じられた口元に目を奪われるのだ。(あれ、もしかして隠れイケメン枠!?)
そうかと思えば、カチャカチャと修理音が響く中で、時々「ん?」とか「よし」などを呟いているのが可愛い。
それを指摘したら絶対に怒るし、呟かなくなってしまったらつまらないので、私だけの秘密にしているけれどね。
集中力の素晴らしいユリウスは没頭するタイプのようで、仕事中に自分からはほとんどしゃべらない。
私が話しかけて、いくつか答える。そういう感じ。
だから気にしてないんだけど……全然気にしてないんだけどね?
もう少し私の存在を認めてくれてもいいんじゃないかなぁ。
ほんとに時計ばっかり見ています彼。
いっそのこと私も時計になってしまいたいくらい。(って大袈裟かもしれないけど)
私を見るよりも時計を見ている時間の方が絶対に長いし、時計に触れている方が長い。
すぐそばに女子、というか仮にも恋人がいるというのにね。
私はそこまで魅力がないのか。時計に負けているのか。
って時計にまさかの嫉妬心?ライバル心?
ありえないなぁ私。
そこまで思ってなんだかがっくりきた私は、ソファに座ったままこてんと横に倒れこんでみた。
するとユリウスがちらりと私を見た。(今日、初めてこっちを見てくれた気がする)
彼は視線を手元に落としながらやっと口を開いた。
「ヒマそうだな、名無しさん」
「ヒマと言えばヒマだけど、色々考えてたから忙しいと言えば忙しいかな」
「なんだそれは」
「私の魅力は時計に及ばないという悲しい現実に、どう立ち向かおうかなと思って」
ユリウスは私の言葉にふたたび顔を上げてこちらを見る。
そして眼鏡を押し上げながらきっぱりこう言った。
「……意味がさっぱりわからないな」
くっ! その仕草を取り入れながら冷たいことを言うなんて……!(萌えてしまう!)
うずうずする私に気づく様子もなく、ユリウスはいつもの毒舌っぷりを発揮する。
「名無しさんに魅力があるかも疑問だが、なによりも時計と自分を比べることが普通じゃないぞ。こんなもの、この世界では普通の人間が眺めるようなものじゃない。
時計に魅力なんてあるわけないだろう」
「でもユリウスは毎日眺めてるよね、っていうか熱視線だよね。時計愛を感じるんですけど」
そう言うと、彼は心底呆れた顔を向けてきた。
「私はこれを扱う仕事をしているんだ。好きこのんで見ているわけじゃない」
「好きじゃないけど見てるってこと?」
「というよりも、仕事だから扱っているということだ」
私の表現に不満があったらしい彼は、そう言いなおす。
「仕事だから見てるってことかー。でもさぁ、仕事を始めてから私の方は全然見てくれないね?」
ユリウスは私をみたまま固まった。
「は?」
なに言ってるんだお前は、という表情を隠しもせず向けてくる。
そして口を開いたらこんな言葉。
「……馬鹿かお前。馬鹿じゃなければ頭がおかしい。どうかしている。私は仕事をしているんだぞ?」
ひどいセリフも真っ赤な顔で言われると、傷つかないわー。(むしろ喜び!)
「だってユリウスの日常は、私よりも時計を見ている割合の方が多いでしょ。そりゃあ時計にも嫉妬するよ」
「お前を見てたら仕事ができないだろう」
「そりゃそうだけどさ」
あれだけ細かい作業だし、よそ見しながらできる物じゃないことは分かるけどね。
もうちょっと存在を意識してもらいたいなぁ。
口を尖らせる私に、ユリウスは眉間にしわを寄せる。
「そばにいるのにユリウスは時計ばっかり見てるから、なんかさみしくなるわけですよ」
なんて笑って言ってみたら、ユリウスは3秒くらい私を見つめる。
そしてため息をついてから、眼鏡をはずした。
「お前はわかってないな」
「なにが?」
「ただの物を見る目と名無しさんを見る目が同じなわけがないだろう」
ユリウスはそう言って手元の時計を指先で触れる。
「こんなものをずっと見ていられるのは何も考えていないし、何も感じないからだ。でも、名無しさんは違う」
ユリウスはそう言って立ち上がると作業台の電気をぱちんと消した。
そしてゆっくりと私の元にやってくる。
ほんの少しドキドキしてきた私は、思わずスカートのすそを掴む。
ユリウスは私の顔を覗きこむようにかがむと、そっと私の頬に触れた。
「名無しさんを見たら触れたくなる。仕事どころじゃなくなる」
そんなことを言いだした。
ユリウスは普段は照れるくせに、突然すごい恥ずかしいことを普通に言い出すことがあるのだ。
普段が普段なので、彼の不意打ちは本当にパンチ力がある。
まっすぐに私を見てくるその目に耐えられず、思わず視線を逸らした。
「名無しさん」
名前を呼ばれ反射的に彼を見ると、そのままキスされた。
徐々に深くなるそれに、私は彼の首に手を回す。
唇が離れると、ユリウスはじっと私を見てこう言った。
「時計にこんなことはしないぞ」
「……してたらドン引きだよ。っていうか変な人だよ」
思わず笑ってしまった。
するとユリウスはすぐに皮肉で返してくる。
「時計に嫉妬するような奴に言われたくないな」
うわ、可愛げがないなー。
そう思ったら、彼はものすごく優しい表情で笑った。
「時計と名無しさんは全然違う」
わかってるよ、という意味を込めて私はユリウスに抱きついた。
部屋の隅に、修理を待つ時計達がダンボールにたくさん入っているのがちらりと見えた。
でも、今日はもうユリウスを渡さないからね。