短編

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余所者で普通の女の子が夢主です
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 【ボスと腹心】


私はブラッドとエリオットが2人でいる所を見るのが好きだ。
エリオットがブラッドにまとわりついている時も、ブラッドがエリオットを小突いている時も、ごくごく普通に話をしている時も、2人で悪巧みをしている時も。

とにかく2人が一緒にいるのを見るのがなんだか好きなのだ。

今も彼らはこそこそと立ち話をしている。
あの雰囲気はきっと仕事関係の話だろう。
ブラッドの肩越しで、真剣だけれどちょっと悪い顔で何かを言っているエリオット。
それを表情一つ変えずにうつむき加減で聞いているブラッド。

うん、いいね。
なんだかクールな感じ。
悪いこと話してますって感じがものすごく伝わってくる。(そこがいい!)

ああいう姿を見ると、やっぱりあの人たちはマフィアなんだなぁと思う。
どれだけ熱く紅茶を語ろうとも、どれだけのほほんとにんじん料理を食べていようとも、周りから恐れられているマフィアのボスとその腹心なのだ。
本来なら私だってお近づきになりたいような2人ではない。

そう考えながら彼らを観察していると、エリオットが私をちらりと見ながらブラッドに何かを言った。
なんだかちょっと意地悪な笑い方をしているエリオット。
何か言われてるなこれは。
と思っていたら、ブラッドも顔をあげて私を見た。

……ニヤニヤしているというか、なんだかすごく悪い顔してこちらを見ていますけど。

慌てて視線を逸らし、私はその場を去ろうとした。
しかし、時すでに遅し。


「なんだよ名無しさん。逃げんなって」


背後からエリオットに声をかけられる。
あきらめて振り向くと、彼らは揃ってゆっくりと歩いてきた。なんだか威圧感。
あきらめずに逃げれば良かった気がする。


「さっきからすっげー視線を感じてたんだよな」


私の視線に気づいていたらしい。
変に否定はしない方がいいだろう。


「なんか悪いことを相談してそうだなぁと思って見てたの」

「悪いことって言われりゃあそうかもな」


私の言葉にエリオットは笑った。


「大事な仕事の話だ。こればっかりは名無しさんにも聞かせられないぜ」

「そうだな。君に聞かせるには少々刺激が強い」


『刺激の強い話』をしていたわりには、いつも通りのだるそうな調子でブラッドがそう言った。


「マフィアの仕事内容なんて聞くつもりもないし、聞きたくもないから大丈夫だよ」


想像をはるかに超えた怖い話になりそうだ。
その時、ブラッドがすっと視線をあげたかと思うとやけに楽しそうに私を見た。


「な、なに? 仕事の話なんて聞きたくないよ?」


グロテスクなのも痛い話もお断りですけど、という拒否の意味を込めてブラッドを見返すと彼はふふふと笑った。


「いや、刺激の強いことを名無しさんとするのも楽しそうだと思ってね」

「は?」


なにを言ってるんでしょう、このボスは。
呆れ半分の私だったけれど、エリオットがブラッドの言葉にくいついた。


「なになに? 名無しさんと刺激の強いこと? それって俺も興味あるな」

「そうだろう? 繰り返しの日々など退屈だからな」


彼らはそんな話を仲良くしながら、私との距離を詰める。
なんていうかこんな背の高い人たちに囲まれるのは、ものすごく怖い。
しかも、やたらとアダルティな空気感を漂わせているので、余計に逃げ出したくなる。
でも、ほんの少しでも動いたら捕まってしまうような気がして動けない。すべての面において、彼らに勝てる要素など私にはないのだ。


「大切な客人である名無しさんを退屈させないためにも、私達は刺激的な楽しい時間を彼女に提供するべきだと思わないか? エリオット」

「えぇと、それはつまり3人でってことだよな? うーん……それってかなり刺激的じゃね? まぁ、そういうのもたまにはいいけど」


彼らはそう言ってにやにやと私を見る。(最低だな、2人とも)
このまま成り行きを見守るわけには行かない。
私は2人を睨みつけた。


「今の生活で十分刺激的なのでお気遣いなく!! 平和が一番!」

「……」

「……」


きっぱりと拒否した私に、一瞬の間を置いて彼らは楽しそうに笑い出した。
完璧にからかう気満々だったらしい。(どうせならもう少し品のあるからかい方をしてほしい)
「ふふふ。それは残念だな」とブラッドがくすくす笑い、
「はははっ! そりゃそうだよなー!」とエリオットはからりと明るく笑う。

しかし、彼らの笑い方を見て私は思わず首をひねった。
エリオットには「もう冗談はやめてよね!」とおでこにチョップでも入れながら言えそうなのだが、ブラッドは冗談とは思えないというか、後ずさりしたくなってしまいたくなったのだ。
なぜだろう? 日頃の行いの違いなのだろうか?

悶々と考えていると、そのブラッドが口を開いた。


「よし、名無しさんも参加できる楽しい話をするとしよう。お茶会だ」

「お! いいねぇ。俺、ちょうど腹が減ったところだったんだ」


さっきまでの変にアダルティな雰囲気を醸し出していた2人とは思えないくらい、楽しそうに彼らは話を始めた。


「……エリオット。お前はひたすら好きな物を食べるといい。私に食べ物を譲ろうなどとは考えずにどんどん食べてくれ」

「え? でもそれじゃあブラッドはどうすんだよ。飲み物だけじゃつまんねーだろ?」

「いいや、私はいいんだ。紅茶だけで十分だし、お前にあのオレンジ色の物をすべて食べてもらいだんだ。遠慮なんてするな。しないでくれ」

「ブラッド……!! お前、ほんっとーに良い奴だな!!」


珍しく一気にしゃべるブラッドと、目をキラキラさせているエリオット。
この一連のやりとりを私は黙って眺めていた。
こういう2人を見るのも好きなのだ。

なんだかんだ平和な帽子屋屋敷での出来事。
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