アンケートお礼その1
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【ごきげんななめ】
人のにぎわう大通りを歩いていたら、エースらしき赤い人を見つけた。
道のど真ん中でたたずんでいるので、不思議に思って近づいてみた。
「エース、こんにちは」
後ろから声をかけると、彼はゆっくりと振り返った。
そして、ぼんやりと遠くを見つめるような目で私を見る。
あれ、なんかいつもと違う感じ……。
「……あぁ、名無しさん。こんにちは」
彼はとても時間をかけて私を認識したようだった。
そしてゆっくりと、ほんの少しだけ口元に笑みを浮かべる。
ぎこちないその顔は、いつもの胡散臭いほどの爽やか笑顔には程遠かった。
こ、これは……機嫌悪そう!
声をかけたことを心底後悔するがもう遅い。
私は「まずい、やばい、早く退散しよう」という思いを何とか隠しながら、いつも通りにふるまう。
「今日はどこへ行くの、エース?」
私の言葉にエースは「今日?」とつぶやきながら、ゆっくりと首を傾げた。
「これから城に戻らなくちゃいけないんだけど、どうでもよくなってきちゃったんだ」
「帰るのが面倒ってこと?」
「うーん……そうだな。そうかもしれない。このまま全然違う所にいくのもいいかもしれないって思ってたから」
彼はそう言って私から視線を外した。
「いつも迷子になって全然違う所に行ってるじゃない」なんて言える雰囲気ではない。
下手なことを言うと「いつの間にか切られてました」みたいな感じになりそうだ。
「そっか。うん、たまには気分転換するのもいいかもしれないよね。ゆっくり色々見ておいでよ」
きっと色々と彼なりに思う所があったのだろう。
さわらぬ神に祟りなし。不機嫌エースに近寄るなかれ。
こういう時はそっとしておくのが一番だ。
行ってらっしゃい気をつけてね、といささか強引な感じで私がその場を離れようとすると、エースが私の腕をがしりと掴んだ。
「待ってよ、名無しさん」
びっくりする私に、エースが静かな声でそう言った。
うつむいている彼に笑顔なんてなくて、切なそうな傷ついたような表情をしている。
普段あまり見せない表情になんだか胸がぎゅっと絞めつけられる。
本当はこういう顔をする人なのかもしれないと思えた。
さっきまでは「怖い、やばい」と思っていたけれど、今この瞬間のエースは見ていて心配になる。
不安定な感じがした。
「……なんで今、君に会っちゃったのかな」
うつむいたエースは私の腕を掴んだままそんなことを言う。
「ご、ごめん。一人になりたい気分だったんでしょう? 私もう行くから」
私が謝る必要などないのだけれど、つい謝ってしまった。
「そうだね。今名無しさんに会うなんてほんとついてないぜ」
そこまで言うか、と思ったけれどなんだか言い返せない。
「俺いま最悪な気分だったんだ」
エースは独り言のように言う。
「そういう時って君に会いたくなる。そしたら今日はほんとに会っちゃうんだもんな。最悪だ」
微笑みながら言うことではないと思うけれど、彼はすごく柔らかく笑っている。
「……意味がわからないよ、エース」
顔をしかめる私。
するとエースの表情がすっと変わった。
「今ここで名無しさんに会ったら、俺、君を困らせることばっかりしそうだからさ」
まっすぐな目で私を見たかと思うと、エースはいきなり私にキスをした。
あまりに突然すぎてどうにも反応できない。
ただ、深い口づけに翻弄されるばかりだ。
と思ったらエースは唇を離した。
キスの終わりも突然すぎる。
息を整えながらエースを見ると、彼は普通に私を見ていた。
でも、さっきまでとは明らかに違う目をしている。
「・・・・・・やっぱり君に会えて良かったかもしれない」
少しだけ気分がマシになった気がする、とエースは言う。
いきなりキスしておいて、「少しだけマシ」という微妙な表現をするなんて失礼にもほどがある。
文句の一つでも言ってやろうかと思った時だった。
「良い見世物になったみたいだね、俺たち」
周囲に目をやって静かに言うと、エースが笑った。
その笑顔に先ほどまで抱いていたエースに対しての緊張感が緩む。
しかし、同時に今の状況と彼の言葉の意味を理解しはじめた。
遠巻きに私達を眺めていた人々の視線が痛い。
そして目の前のエースの笑顔と突然のキスに恥ずかしさや照れやら怒りやら、色々な感情がごちゃ混ぜになった私。
エースの肩を思いっきり叩いてから、彼の胸に顔をうずめた。
するとエースが珍しく「ごめんな」と言うので、私はそれ以上文句を言えなくなってしまった。
人のにぎわう大通りを歩いていたら、エースらしき赤い人を見つけた。
道のど真ん中でたたずんでいるので、不思議に思って近づいてみた。
「エース、こんにちは」
後ろから声をかけると、彼はゆっくりと振り返った。
そして、ぼんやりと遠くを見つめるような目で私を見る。
あれ、なんかいつもと違う感じ……。
「……あぁ、名無しさん。こんにちは」
彼はとても時間をかけて私を認識したようだった。
そしてゆっくりと、ほんの少しだけ口元に笑みを浮かべる。
ぎこちないその顔は、いつもの胡散臭いほどの爽やか笑顔には程遠かった。
こ、これは……機嫌悪そう!
声をかけたことを心底後悔するがもう遅い。
私は「まずい、やばい、早く退散しよう」という思いを何とか隠しながら、いつも通りにふるまう。
「今日はどこへ行くの、エース?」
私の言葉にエースは「今日?」とつぶやきながら、ゆっくりと首を傾げた。
「これから城に戻らなくちゃいけないんだけど、どうでもよくなってきちゃったんだ」
「帰るのが面倒ってこと?」
「うーん……そうだな。そうかもしれない。このまま全然違う所にいくのもいいかもしれないって思ってたから」
彼はそう言って私から視線を外した。
「いつも迷子になって全然違う所に行ってるじゃない」なんて言える雰囲気ではない。
下手なことを言うと「いつの間にか切られてました」みたいな感じになりそうだ。
「そっか。うん、たまには気分転換するのもいいかもしれないよね。ゆっくり色々見ておいでよ」
きっと色々と彼なりに思う所があったのだろう。
さわらぬ神に祟りなし。不機嫌エースに近寄るなかれ。
こういう時はそっとしておくのが一番だ。
行ってらっしゃい気をつけてね、といささか強引な感じで私がその場を離れようとすると、エースが私の腕をがしりと掴んだ。
「待ってよ、名無しさん」
びっくりする私に、エースが静かな声でそう言った。
うつむいている彼に笑顔なんてなくて、切なそうな傷ついたような表情をしている。
普段あまり見せない表情になんだか胸がぎゅっと絞めつけられる。
本当はこういう顔をする人なのかもしれないと思えた。
さっきまでは「怖い、やばい」と思っていたけれど、今この瞬間のエースは見ていて心配になる。
不安定な感じがした。
「……なんで今、君に会っちゃったのかな」
うつむいたエースは私の腕を掴んだままそんなことを言う。
「ご、ごめん。一人になりたい気分だったんでしょう? 私もう行くから」
私が謝る必要などないのだけれど、つい謝ってしまった。
「そうだね。今名無しさんに会うなんてほんとついてないぜ」
そこまで言うか、と思ったけれどなんだか言い返せない。
「俺いま最悪な気分だったんだ」
エースは独り言のように言う。
「そういう時って君に会いたくなる。そしたら今日はほんとに会っちゃうんだもんな。最悪だ」
微笑みながら言うことではないと思うけれど、彼はすごく柔らかく笑っている。
「……意味がわからないよ、エース」
顔をしかめる私。
するとエースの表情がすっと変わった。
「今ここで名無しさんに会ったら、俺、君を困らせることばっかりしそうだからさ」
まっすぐな目で私を見たかと思うと、エースはいきなり私にキスをした。
あまりに突然すぎてどうにも反応できない。
ただ、深い口づけに翻弄されるばかりだ。
と思ったらエースは唇を離した。
キスの終わりも突然すぎる。
息を整えながらエースを見ると、彼は普通に私を見ていた。
でも、さっきまでとは明らかに違う目をしている。
「・・・・・・やっぱり君に会えて良かったかもしれない」
少しだけ気分がマシになった気がする、とエースは言う。
いきなりキスしておいて、「少しだけマシ」という微妙な表現をするなんて失礼にもほどがある。
文句の一つでも言ってやろうかと思った時だった。
「良い見世物になったみたいだね、俺たち」
周囲に目をやって静かに言うと、エースが笑った。
その笑顔に先ほどまで抱いていたエースに対しての緊張感が緩む。
しかし、同時に今の状況と彼の言葉の意味を理解しはじめた。
遠巻きに私達を眺めていた人々の視線が痛い。
そして目の前のエースの笑顔と突然のキスに恥ずかしさや照れやら怒りやら、色々な感情がごちゃ混ぜになった私。
エースの肩を思いっきり叩いてから、彼の胸に顔をうずめた。
するとエースが珍しく「ごめんな」と言うので、私はそれ以上文句を言えなくなってしまった。