旅は道連れ
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【7.意識】
私を好きだと言った。
私にキスをしてきた。
目の前のこの人がだ。
私は信じられない気持ちで、目の前のエースを見つめる。
大きな木がある野原に立ち尽くしている私とエース。
彼はうーん、と口を結んでじっと何かを考え込んでいたけれど、ふっと私を振り返る。
「ねぇ、名無しさん。この道ってもしかしてさっきも通ったかな?」
「……さっきもっていうか、これで3回目ですけど」
「え、ほんとに?」
全然気づかなかったぜ、まいっちゃうよなー、はははっ!
明るい陽射しの中で爽やかに笑っているエース。
……ほんと、この人がさっきテントで私に好きだと言って来た人だとは思えない。
さっきの時間帯はこんな風な笑い方じゃなくて、もっと静かで、妖艶な感じがした。
そして有無を言わせないまっすぐな目で私を見ていた。
夜のテントでの出来事は、今となっては嘘みたいだ。
そして、あの出来事は嘘みたいにあっさりと幕引きとなった。
あの夜、エースに押し倒されて、どうにも抵抗できなくなってしまった私。
正直に言えば、私はかなり流されかけていた。
彼のキスも私を撫でる手も私を見る瞳も全部優しかったし、テントの中の薄暗い明かりがどうにもムード満点だった。
エースは優しく、妖艶に微笑んで私を見下ろしながら、服の裾に手を潜り込ませてきた。
それがなんだか心地いいな、なんて思ってしまった私は、流されかけるというか、本当に流されていたんだと思う。
そんな状況の中で私を救ったのは、私の大っ嫌いなミミズだった。
あぁ、もういいのかな。
なんて思った瞬間、視界の端にうようよと動くものが飛び込んできたのだ。
私は悲鳴をあげて飛び起きた。それこそエースなんて押しのけた。
私はミミズが世界で一番嫌いなのだ。
テントの隙間から入ってきたようで、見たことないくらいの大きなミミズが私の耳元に迫っていたのだ。
ミミズを見てぎゃーぎゃーわめく私。
エースはそんな私とミミズを見て、ふかーいため息をついた。
「空気を読んでくれよ……なんて無理か」
エースはミミズを掴むとぽいっと外へ放り出した。
先ほどまでの雰囲気などまるでなくなったテントの中で、私はひたすら気まずいまま体育座りをしていたのである。
というわけで、私はエースからもミミズからも無事に自分を守ることができたのだけれど、エースを見ることができなくなってしまった。
エースはというと、いつも通りの胡散臭い爽やかさを爆発させている。
ほんと、何を考えているんだろうこの人。
それとも何も考えてないのかな?
私が考えすぎなのだろうか?
もしかしたら、この世界はキスくらい普通にすることなのかもしれない。
いや……ないよね。それはない。
歩きながら色々考え込んでいたので、エースの顔が急に目の前に現れた時にはびっくりしすぎてのけぞった。
「どうしたの、名無しさん?」
「わっ!?」
覗き込むように私を見るエース。
至近距離で思いっきり彼の顔を見てしまい、心臓がバクバクといっている。
「な、なんでもない!」
「ふぅん……」
彼は不審そうに私を見ていたけれど、ふと足元を指さした。
「あ、ミミズ」
「え!?」
私は思わず彼に飛びつく。
しかし、足元を見てもミミズなんてどこにもいなかった。
エースが肩を震わせて笑っている。
「はははっ!ほんとにミミズが苦手なんだなー!」
……からかわれた。
そう気づいたのと同時に、エースの腕にしがみついていたことにも気づいた。
私は慌てて彼から離れる。
「そんなに思いっきり逃げなくてもいいのに」
エースは楽しそうに言って私を見た。
なんだか気まずくて、私は彼から視線を逸らす。
エースはしばらく黙っていたけれど、やがてこう言った。
「……名無しさんさぁ、俺のことものすっごく意識してるでしょう?」
「!?」
思わぬ言葉に私は何も言えなくなった。
びっくりして彼をただただ見つめる。
エースはというと、いつも通りにこにこと私を見ている。
「なんなら、夜の続き、今やってもいいけど?」
むしろしたいかも。
彼は私の腕を掴みながら、とんでもないことを恐ろしく爽やかに言ってのけた。
私はずざざっとエースから距離を取る。
エースはそんな私を楽しそうに、にこにこと眺めている。
どうしていいのかわからずに黙っていると、彼はくすくすと笑いだした。
「冗談だよ」
彼はそう言って、私が離れた分だけ近づいた。
「いずれそういうことになるかもしれないけど、今は別に、ね?」
やっぱりとんでもないことを言っているこの人。ツッコミどころがありすぎる。
「そういうことなんてならないよ!」
恥ずかしさで口調が強くなる私だったけれど、エースはいつも通りの穏やかさで言った。
「そう?でも、あの時の名無しさん、ちょっといつもと違ったよ」
彼は記憶をたどるように首を傾げていたけれど、すっと私を見つめて微笑んだ。
「俺に抱かれてもいいやって思ったんじゃない?」
あぁ、もうほんとにこの人無理。最悪。
爽やかに意地悪なことをどうして言えるんだろう。
彼の言葉を否定できない私は、恥ずかしさで顔がかーっと熱くなるのを感じた。
「はははっ!図星?」
そう言われて、私はもういてもたってもいられず、彼をおいて歩き出した。
競歩かというスピードでとにかく歩く。
「あれ、置いて行かれちゃった」というのんきなエースの声が聞こえてきたけれど、無視。
信じられない人だ。
ちょっとオープンすぎる。
見た目が爽やかな分いやらしさを感じないけれど、そこが危ない気もする。(現に襲われかけたし……)
でも……エースならいいやって思ったのは事実。
他の人だったら、いくらあんな状況でも流されたりはしないと思う。
エースのこと、私は好きなのかなぁ?
しばらく歩いてから振り向くと、彼はのんびりとした様子で後ろを歩いていた。
思ったよりも距離は離れていなかった。(おかしいな?)
私が立ち止まったことに気づいたエースは、笑いながら言った。
「名無しさん~、勝手に進んで迷子にならないでくれよ」
「……エースに言われたくないですー」
そう言いかえしたけれど、彼は全く気にした様子もなく笑みを浮かべるだけだった。
私を好きだと言った。
私にキスをしてきた。
目の前のこの人がだ。
私は信じられない気持ちで、目の前のエースを見つめる。
大きな木がある野原に立ち尽くしている私とエース。
彼はうーん、と口を結んでじっと何かを考え込んでいたけれど、ふっと私を振り返る。
「ねぇ、名無しさん。この道ってもしかしてさっきも通ったかな?」
「……さっきもっていうか、これで3回目ですけど」
「え、ほんとに?」
全然気づかなかったぜ、まいっちゃうよなー、はははっ!
明るい陽射しの中で爽やかに笑っているエース。
……ほんと、この人がさっきテントで私に好きだと言って来た人だとは思えない。
さっきの時間帯はこんな風な笑い方じゃなくて、もっと静かで、妖艶な感じがした。
そして有無を言わせないまっすぐな目で私を見ていた。
夜のテントでの出来事は、今となっては嘘みたいだ。
そして、あの出来事は嘘みたいにあっさりと幕引きとなった。
あの夜、エースに押し倒されて、どうにも抵抗できなくなってしまった私。
正直に言えば、私はかなり流されかけていた。
彼のキスも私を撫でる手も私を見る瞳も全部優しかったし、テントの中の薄暗い明かりがどうにもムード満点だった。
エースは優しく、妖艶に微笑んで私を見下ろしながら、服の裾に手を潜り込ませてきた。
それがなんだか心地いいな、なんて思ってしまった私は、流されかけるというか、本当に流されていたんだと思う。
そんな状況の中で私を救ったのは、私の大っ嫌いなミミズだった。
あぁ、もういいのかな。
なんて思った瞬間、視界の端にうようよと動くものが飛び込んできたのだ。
私は悲鳴をあげて飛び起きた。それこそエースなんて押しのけた。
私はミミズが世界で一番嫌いなのだ。
テントの隙間から入ってきたようで、見たことないくらいの大きなミミズが私の耳元に迫っていたのだ。
ミミズを見てぎゃーぎゃーわめく私。
エースはそんな私とミミズを見て、ふかーいため息をついた。
「空気を読んでくれよ……なんて無理か」
エースはミミズを掴むとぽいっと外へ放り出した。
先ほどまでの雰囲気などまるでなくなったテントの中で、私はひたすら気まずいまま体育座りをしていたのである。
というわけで、私はエースからもミミズからも無事に自分を守ることができたのだけれど、エースを見ることができなくなってしまった。
エースはというと、いつも通りの胡散臭い爽やかさを爆発させている。
ほんと、何を考えているんだろうこの人。
それとも何も考えてないのかな?
私が考えすぎなのだろうか?
もしかしたら、この世界はキスくらい普通にすることなのかもしれない。
いや……ないよね。それはない。
歩きながら色々考え込んでいたので、エースの顔が急に目の前に現れた時にはびっくりしすぎてのけぞった。
「どうしたの、名無しさん?」
「わっ!?」
覗き込むように私を見るエース。
至近距離で思いっきり彼の顔を見てしまい、心臓がバクバクといっている。
「な、なんでもない!」
「ふぅん……」
彼は不審そうに私を見ていたけれど、ふと足元を指さした。
「あ、ミミズ」
「え!?」
私は思わず彼に飛びつく。
しかし、足元を見てもミミズなんてどこにもいなかった。
エースが肩を震わせて笑っている。
「はははっ!ほんとにミミズが苦手なんだなー!」
……からかわれた。
そう気づいたのと同時に、エースの腕にしがみついていたことにも気づいた。
私は慌てて彼から離れる。
「そんなに思いっきり逃げなくてもいいのに」
エースは楽しそうに言って私を見た。
なんだか気まずくて、私は彼から視線を逸らす。
エースはしばらく黙っていたけれど、やがてこう言った。
「……名無しさんさぁ、俺のことものすっごく意識してるでしょう?」
「!?」
思わぬ言葉に私は何も言えなくなった。
びっくりして彼をただただ見つめる。
エースはというと、いつも通りにこにこと私を見ている。
「なんなら、夜の続き、今やってもいいけど?」
むしろしたいかも。
彼は私の腕を掴みながら、とんでもないことを恐ろしく爽やかに言ってのけた。
私はずざざっとエースから距離を取る。
エースはそんな私を楽しそうに、にこにこと眺めている。
どうしていいのかわからずに黙っていると、彼はくすくすと笑いだした。
「冗談だよ」
彼はそう言って、私が離れた分だけ近づいた。
「いずれそういうことになるかもしれないけど、今は別に、ね?」
やっぱりとんでもないことを言っているこの人。ツッコミどころがありすぎる。
「そういうことなんてならないよ!」
恥ずかしさで口調が強くなる私だったけれど、エースはいつも通りの穏やかさで言った。
「そう?でも、あの時の名無しさん、ちょっといつもと違ったよ」
彼は記憶をたどるように首を傾げていたけれど、すっと私を見つめて微笑んだ。
「俺に抱かれてもいいやって思ったんじゃない?」
あぁ、もうほんとにこの人無理。最悪。
爽やかに意地悪なことをどうして言えるんだろう。
彼の言葉を否定できない私は、恥ずかしさで顔がかーっと熱くなるのを感じた。
「はははっ!図星?」
そう言われて、私はもういてもたってもいられず、彼をおいて歩き出した。
競歩かというスピードでとにかく歩く。
「あれ、置いて行かれちゃった」というのんきなエースの声が聞こえてきたけれど、無視。
信じられない人だ。
ちょっとオープンすぎる。
見た目が爽やかな分いやらしさを感じないけれど、そこが危ない気もする。(現に襲われかけたし……)
でも……エースならいいやって思ったのは事実。
他の人だったら、いくらあんな状況でも流されたりはしないと思う。
エースのこと、私は好きなのかなぁ?
しばらく歩いてから振り向くと、彼はのんびりとした様子で後ろを歩いていた。
思ったよりも距離は離れていなかった。(おかしいな?)
私が立ち止まったことに気づいたエースは、笑いながら言った。
「名無しさん~、勝手に進んで迷子にならないでくれよ」
「……エースに言われたくないですー」
そう言いかえしたけれど、彼は全く気にした様子もなく笑みを浮かべるだけだった。