旅は道連れ
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【3.困惑】
エースとハートの城を目指して3時間帯くらいが経った。
思った以上にすぐ打ち解けた私とエースは、まだ先ほどのピクニック的な野原を歩いていた。
「なんでこの野原から出られないんだろう、私達」
「そうだね。ずーっと歩いているはずなのに、気づくとここに出る。ほんとに不思議だぜ」
まるで無限ループかのように、進んでも進んでも気づくと同じ場所にたどり着いてしまう。
これがエースの迷子力……恐ろしい。
素直に彼の後をついてきたけれど、そろそろ私が前を歩いた方がいいような気がしてきた。
「でも抜けられない森はないし、大丈夫だよ。そのうちちゃんとした道に出られるはずだからさ」
エースはのんきに笑って、道なき道を進もうとする。
……この人、とても前向きに物事を考えられる人なのか、ただ頭がちょっと足りない人なのかどっちだろう?
こうやって一緒にいると「君はホントに大丈夫なのか!?」と言ってやりたくなるくらいに頼りないというか、危なっかしい。
うっかりエースにときめきかけたけれど、やっぱり色々と問題のある人だしなぁと気持ちにストップをかける冷静な自分がいる。
「あ、名無しさん。ちょっと待ってて」
不意にエースがそう言った。
「なに?」
「うん。ちょっとこの木の後ろに座っててよ」
彼はにこりと笑うと、私を無理やり木の後ろに押しやった。
どういうことか聞こうとするとエースは爽やかに笑った。
「後ろ、片付けてくるからさ」
後ろ?と思った瞬間、突然銃声が響き渡った。
びっくりする私。
見るといつの間にかエースが剣を抜いていた。
「危ないよね。名無しさんがいるのに銃を撃ってくるなんてさ」
俺、ちょっと許せないなぁ。
穏やかにそう言う彼の足元には真っ二つになっている銃の玉。
……いまこれを斬ったの?
どんな達人技だと思いつつ動けないでいると、エースはぱっと飛び出して行った。
いつからいたんだろう?
後方にはなんだか怖そうな男の人たちがたくさんいた。
銃を手にしている所を見ると、彼らが私達に発砲してきたようだ。
「名無しさん、そこから動かないでくれよ。危ないからさ」
エースはそう言いながら、ものすごい勢いで剣を振るう。
ものすごい勢いとはいっても、がむしゃらな感じも乱暴な感じもない。
素早くて綺麗な身のこなし。
素人の私が見てもわかる。
彼はきっとものすごーく強い人なのだろう。
現に今、彼は10人くらいの相手を1人でしている。
「せっかく名無しさんといるのに邪魔しないで欲しいよな~」
のんきにそんなことまで言う余裕すらあるらしい。
相手の方々はというと、真剣そのものなのに。
「名無しさん、ごめんなー。すぐに終わらせるからさ」
エースはそう言いながら、鮮やかな身のこなしで相手を斬って斬って斬りまくる。
のんきに迷子になっていたさっきまでとは顔つきが違う。
鮮血が彼の周りを舞っているけれど現実感もない。
彼を取り巻く赤が綺麗に見えてしまう私の思考は麻痺しているのかもしれない。
あっという間にその場に立っているのはエースだけになってしまった。
かちんと剣を収めると、彼はふぅと息をつく。
ぼんやりとエースを見ていると、彼はぱっと笑って私を見た。
目が合って思わずびくりとしてしまう。
「お待たせ名無しさん。大丈夫だった?」
距離を取っていた私の元へやってきたエースは、もういつもの彼だった。
息一つ乱れていない。
「……」
「名無しさん?」
きょとんとした表情の彼は、たった今剣を振り回していた人だとは到底思えない。
目の前には血の匂いがする爽やかな殺人者。
まるで現実感はなくて、怖いのかなんなのかよくわからない。
しかし、エースが「どうしたの?」と言いながら私に手を伸ばしてきた瞬間、びくりと身を引いてしまった。
驚いたように止まるエースと、自分の行動に驚く私。
「あ……ご、ごめん」
自分の行動を慌てて謝る私に、エースは静かに笑う。
「名無しさん、俺のこと怖い?」
穏やかな目で私をじっと見つめられて、ますますわからなくなる。
答えられない私に、エースは首を傾げる。
「あ、それとも血が怖いの? 女の子は血を見慣れてるって聞いたことあるんだけどなぁ」
頭をかきながらサラリとそんなことを言うこいつは一体何を考えているのか、全く分からない。
「別に大したことないよ、名無しさん。時間が経てば綺麗に消えるし、どうせ代えのきく人達だからね。
ちょっと可哀想かもしれないけど、同情してたらこっちがやられちゃうんだぜ? 君だってまだ死にたくないだろ?」
言っている意味も全く分からない。
酷いことを言っている気もするし、彼の言う通りな気もする。
この世界にいるということは、このくらいのことは日常茶飯事。
いちいち驚いていると身がもたないのかもしれない。
でもやっぱりこんなのおかしい。
「納得いかないみたいだね、名無しさん」
エースはそう言いながら、私に再度手を伸ばす。
「でも、君が納得いかなくても仕方ないことなんだ。俺、名無しさんのこと結構好きだし、一緒にいる以上名無しさんを死なせないようにしてあげたい。
だから俺のことが怖くてもちょっと我慢してくれよ。な?」
エースはそう言って私の頭をなでる。
そっと視線をあげると、私の顔を覗きこんでいる彼と目が合った。
「できれば仲良くしてほしいんだけどな」
そう言ってふわりと微笑む彼を怖いとは思えなかった。
エースとハートの城を目指して3時間帯くらいが経った。
思った以上にすぐ打ち解けた私とエースは、まだ先ほどのピクニック的な野原を歩いていた。
「なんでこの野原から出られないんだろう、私達」
「そうだね。ずーっと歩いているはずなのに、気づくとここに出る。ほんとに不思議だぜ」
まるで無限ループかのように、進んでも進んでも気づくと同じ場所にたどり着いてしまう。
これがエースの迷子力……恐ろしい。
素直に彼の後をついてきたけれど、そろそろ私が前を歩いた方がいいような気がしてきた。
「でも抜けられない森はないし、大丈夫だよ。そのうちちゃんとした道に出られるはずだからさ」
エースはのんきに笑って、道なき道を進もうとする。
……この人、とても前向きに物事を考えられる人なのか、ただ頭がちょっと足りない人なのかどっちだろう?
こうやって一緒にいると「君はホントに大丈夫なのか!?」と言ってやりたくなるくらいに頼りないというか、危なっかしい。
うっかりエースにときめきかけたけれど、やっぱり色々と問題のある人だしなぁと気持ちにストップをかける冷静な自分がいる。
「あ、名無しさん。ちょっと待ってて」
不意にエースがそう言った。
「なに?」
「うん。ちょっとこの木の後ろに座っててよ」
彼はにこりと笑うと、私を無理やり木の後ろに押しやった。
どういうことか聞こうとするとエースは爽やかに笑った。
「後ろ、片付けてくるからさ」
後ろ?と思った瞬間、突然銃声が響き渡った。
びっくりする私。
見るといつの間にかエースが剣を抜いていた。
「危ないよね。名無しさんがいるのに銃を撃ってくるなんてさ」
俺、ちょっと許せないなぁ。
穏やかにそう言う彼の足元には真っ二つになっている銃の玉。
……いまこれを斬ったの?
どんな達人技だと思いつつ動けないでいると、エースはぱっと飛び出して行った。
いつからいたんだろう?
後方にはなんだか怖そうな男の人たちがたくさんいた。
銃を手にしている所を見ると、彼らが私達に発砲してきたようだ。
「名無しさん、そこから動かないでくれよ。危ないからさ」
エースはそう言いながら、ものすごい勢いで剣を振るう。
ものすごい勢いとはいっても、がむしゃらな感じも乱暴な感じもない。
素早くて綺麗な身のこなし。
素人の私が見てもわかる。
彼はきっとものすごーく強い人なのだろう。
現に今、彼は10人くらいの相手を1人でしている。
「せっかく名無しさんといるのに邪魔しないで欲しいよな~」
のんきにそんなことまで言う余裕すらあるらしい。
相手の方々はというと、真剣そのものなのに。
「名無しさん、ごめんなー。すぐに終わらせるからさ」
エースはそう言いながら、鮮やかな身のこなしで相手を斬って斬って斬りまくる。
のんきに迷子になっていたさっきまでとは顔つきが違う。
鮮血が彼の周りを舞っているけれど現実感もない。
彼を取り巻く赤が綺麗に見えてしまう私の思考は麻痺しているのかもしれない。
あっという間にその場に立っているのはエースだけになってしまった。
かちんと剣を収めると、彼はふぅと息をつく。
ぼんやりとエースを見ていると、彼はぱっと笑って私を見た。
目が合って思わずびくりとしてしまう。
「お待たせ名無しさん。大丈夫だった?」
距離を取っていた私の元へやってきたエースは、もういつもの彼だった。
息一つ乱れていない。
「……」
「名無しさん?」
きょとんとした表情の彼は、たった今剣を振り回していた人だとは到底思えない。
目の前には血の匂いがする爽やかな殺人者。
まるで現実感はなくて、怖いのかなんなのかよくわからない。
しかし、エースが「どうしたの?」と言いながら私に手を伸ばしてきた瞬間、びくりと身を引いてしまった。
驚いたように止まるエースと、自分の行動に驚く私。
「あ……ご、ごめん」
自分の行動を慌てて謝る私に、エースは静かに笑う。
「名無しさん、俺のこと怖い?」
穏やかな目で私をじっと見つめられて、ますますわからなくなる。
答えられない私に、エースは首を傾げる。
「あ、それとも血が怖いの? 女の子は血を見慣れてるって聞いたことあるんだけどなぁ」
頭をかきながらサラリとそんなことを言うこいつは一体何を考えているのか、全く分からない。
「別に大したことないよ、名無しさん。時間が経てば綺麗に消えるし、どうせ代えのきく人達だからね。
ちょっと可哀想かもしれないけど、同情してたらこっちがやられちゃうんだぜ? 君だってまだ死にたくないだろ?」
言っている意味も全く分からない。
酷いことを言っている気もするし、彼の言う通りな気もする。
この世界にいるということは、このくらいのことは日常茶飯事。
いちいち驚いていると身がもたないのかもしれない。
でもやっぱりこんなのおかしい。
「納得いかないみたいだね、名無しさん」
エースはそう言いながら、私に再度手を伸ばす。
「でも、君が納得いかなくても仕方ないことなんだ。俺、名無しさんのこと結構好きだし、一緒にいる以上名無しさんを死なせないようにしてあげたい。
だから俺のことが怖くてもちょっと我慢してくれよ。な?」
エースはそう言って私の頭をなでる。
そっと視線をあげると、私の顔を覗きこんでいる彼と目が合った。
「できれば仲良くしてほしいんだけどな」
そう言ってふわりと微笑む彼を怖いとは思えなかった。