旅は道連れ
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【1.遭遇】
青い空、白い雲、さらさらと流れる川、どこまでも続く草原。
美しい景色をぐるりと見回し、私は一人ぼんやりとしていた。
風はそよそよと気持ちよく、日の光はぽかぽかと暖かい。
思わず声をあげて駆け出しそうになる気持ちを抑えて、私は冷静になろうと息を吐いた。
そして、もう一度周りを見回した。
「……ここ、どこ?」
辺りをきょろきょろと見回すけれど、そこは嘘のように美しい景色が広がるばかり。
えぇと、私こんな素敵な場所まったく知りません。初めて来ました。(っていうかいつの間に!?)
不安で大声をあげて叫びながら走りだしたくなるのだけれど、走ってもどこへ行きつくのかわからない。
だから私は、ここで立ち尽くしている。
どうしよう。これは迷子?
でも私さっきまでごくごく普通の駅前を歩いていたつもりだったんだけど、あの駅からどれだけ歩いたらこんな自然豊かな場所へたどり着くのでしょう?
そんな風に困り果てていた私の前から、人が歩いてくるのが目に映った。
あ、あの人に聞いてみよう。ここはどこですか、と。そしてついでに帰り道も聞いてみよう。
そう思ったのだけれど、私の考えは瞬時に吹き飛んだ。
だって、やってきた人はものすごく大きな剣を腰に差しているうえ、ものすっごく派手な赤いコートまで着ていたのだ。
「!?」
どきりとして思わず視線を逸らした私。
見間違い……だよね? いや、うん。そうに決まっている。
ものすごーくエースみたいな人だったけれど、あんな格好している人が堂々と歩いているなんて考えられない。
そう思いつつ、もう一度ちらりと赤い人を見てみようと顔を上げた時だった。
「いま君、明らかに俺のこと見ないふりしたよね」
「!!!」
驚きすぎて声が出なかった。
いつの間にかエースみたいな赤い人が私の目の前に立っていたのだ。
ばちりと合う視線。
彼は爽やかに首を傾げている。
……エース、だよね。この人。
格好だけじゃなくて、顔も声もエースだよね??
え? あれ?どういうことだろうか?
もう全く意味が分からなかった。
「えーと……さすがにそんな不審そうな目で見つめられると傷つくんだけどな」
爽やかだ……。
苦笑いしてもなんだか爽やか。
この無駄に爽やかな感じは間違いなくエースだ。
栗色の髪の毛はさらさらとしているし、すっと通った鼻筋と明るすぎない目の色は落ち着いた印象を受ける。
もちろん私はエースのことを知っているので、本当はとんでもない人だということは知っている。
それでもやっぱりこうやって見ると、彼はとても好青年に見えるのだ。
背も高いし、嫌味のない顔だし、何も知らなければうっかり好きになりそうだなぁ。
なんてことを考えていたら、彼が口を開いた。
「なんだかすっごい見られてるよね。なに? どこか変?……まぁ、さっきまで熊に追いかけられてて、髪の毛は相当乱れていると思うんだけど」
彼はそう言いながら自分の髪の毛をなでつける。
「あなた、熊に追いかけられてたの?」
「うん。なんか俺気づかないうちに、昼寝の邪魔をしちゃったみたいなんだ。謝ったんだけど、寝起きの悪い熊だったみたいでさ。はははっ」
寝起きとかそういう問題じゃないだろうに、と思わず呆れてしまった。
しかし、彼はいつのまにかまっすぐな目でじぃっと私を見つめていた。
「な、なんですか?」
「君、なんだか不思議な感じがするね」
「そうですか?」
「うん、するよ。あ、俺はエースって言うんだ」
あぁ、やっぱりエース(本物)だった……。
爽やかに自己紹介をしてくれた彼に、私も自己紹介をしておく。
「私は名無しさん。よくわからないけど気づいたらここにいたの。……ここはどこなのかな?」
私は辺りを見回した。
相変わらずピクニックにはもってこいの素敵な景色が広がっている。
するとエースもつられて辺りを見回した。
「う~ん、どこだろう?」
「……は?」
穏やかなエースの言葉に私は顔をしかめた。
すると彼はにこにこと言う。
「俺も今旅の途中でさ、ここはどこなんだろうなぁって思ってたところなんだよ」
「……あぁ、そっか。そうだよね……エースってそうだよね」
そうでした。この人、とんでもない迷子になる困った人だった。
思わず納得してしまう私を不思議そうに見ながら、エースはこう言った。
「俺はこれからハートの城に行くところなんだけど、もしよければ一緒に行く?」
悩んだ末、私は彼の提案に乗ることにした。
ここにいても仕方ないし。
「よし、それじゃあしばらくの間よろしくな、名無しさん」
彼はそう言って私に手を差し出してきた。
悪意のなさそうな笑顔を向けてくる。
本当はかなりダークな彼としばらく一緒に旅をするとは、なんてスリリングなんでしょう。
でも今の私に選択の余地はない。
「よろしくお願いします」
私はエースの手を取る。
大きな手でがしりと握手をされて、不思議な気持ちになった。
「名無しさんと一緒なら、長旅も悪くなさそうだ」
「は?」
「仲良くしようってことだよ」
エースはそう言って、私の手を掴んだまま手をぶんぶんと大きく上下させる。
「あぁ、うん。仲良くしましょう。っていうかそろそろ離してね!?」
掴まれている手を無理やり引き抜くと、「君って結構ドライだねぇ」とエースは楽しそうに笑った。
彼のペースに巻き込まれたら、とんでもないことになるに決まっている。
気をしっかり持たなければならない。
さて、これからどうなることやら。
青い空、白い雲、さらさらと流れる川、どこまでも続く草原。
美しい景色をぐるりと見回し、私は一人ぼんやりとしていた。
風はそよそよと気持ちよく、日の光はぽかぽかと暖かい。
思わず声をあげて駆け出しそうになる気持ちを抑えて、私は冷静になろうと息を吐いた。
そして、もう一度周りを見回した。
「……ここ、どこ?」
辺りをきょろきょろと見回すけれど、そこは嘘のように美しい景色が広がるばかり。
えぇと、私こんな素敵な場所まったく知りません。初めて来ました。(っていうかいつの間に!?)
不安で大声をあげて叫びながら走りだしたくなるのだけれど、走ってもどこへ行きつくのかわからない。
だから私は、ここで立ち尽くしている。
どうしよう。これは迷子?
でも私さっきまでごくごく普通の駅前を歩いていたつもりだったんだけど、あの駅からどれだけ歩いたらこんな自然豊かな場所へたどり着くのでしょう?
そんな風に困り果てていた私の前から、人が歩いてくるのが目に映った。
あ、あの人に聞いてみよう。ここはどこですか、と。そしてついでに帰り道も聞いてみよう。
そう思ったのだけれど、私の考えは瞬時に吹き飛んだ。
だって、やってきた人はものすごく大きな剣を腰に差しているうえ、ものすっごく派手な赤いコートまで着ていたのだ。
「!?」
どきりとして思わず視線を逸らした私。
見間違い……だよね? いや、うん。そうに決まっている。
ものすごーくエースみたいな人だったけれど、あんな格好している人が堂々と歩いているなんて考えられない。
そう思いつつ、もう一度ちらりと赤い人を見てみようと顔を上げた時だった。
「いま君、明らかに俺のこと見ないふりしたよね」
「!!!」
驚きすぎて声が出なかった。
いつの間にかエースみたいな赤い人が私の目の前に立っていたのだ。
ばちりと合う視線。
彼は爽やかに首を傾げている。
……エース、だよね。この人。
格好だけじゃなくて、顔も声もエースだよね??
え? あれ?どういうことだろうか?
もう全く意味が分からなかった。
「えーと……さすがにそんな不審そうな目で見つめられると傷つくんだけどな」
爽やかだ……。
苦笑いしてもなんだか爽やか。
この無駄に爽やかな感じは間違いなくエースだ。
栗色の髪の毛はさらさらとしているし、すっと通った鼻筋と明るすぎない目の色は落ち着いた印象を受ける。
もちろん私はエースのことを知っているので、本当はとんでもない人だということは知っている。
それでもやっぱりこうやって見ると、彼はとても好青年に見えるのだ。
背も高いし、嫌味のない顔だし、何も知らなければうっかり好きになりそうだなぁ。
なんてことを考えていたら、彼が口を開いた。
「なんだかすっごい見られてるよね。なに? どこか変?……まぁ、さっきまで熊に追いかけられてて、髪の毛は相当乱れていると思うんだけど」
彼はそう言いながら自分の髪の毛をなでつける。
「あなた、熊に追いかけられてたの?」
「うん。なんか俺気づかないうちに、昼寝の邪魔をしちゃったみたいなんだ。謝ったんだけど、寝起きの悪い熊だったみたいでさ。はははっ」
寝起きとかそういう問題じゃないだろうに、と思わず呆れてしまった。
しかし、彼はいつのまにかまっすぐな目でじぃっと私を見つめていた。
「な、なんですか?」
「君、なんだか不思議な感じがするね」
「そうですか?」
「うん、するよ。あ、俺はエースって言うんだ」
あぁ、やっぱりエース(本物)だった……。
爽やかに自己紹介をしてくれた彼に、私も自己紹介をしておく。
「私は名無しさん。よくわからないけど気づいたらここにいたの。……ここはどこなのかな?」
私は辺りを見回した。
相変わらずピクニックにはもってこいの素敵な景色が広がっている。
するとエースもつられて辺りを見回した。
「う~ん、どこだろう?」
「……は?」
穏やかなエースの言葉に私は顔をしかめた。
すると彼はにこにこと言う。
「俺も今旅の途中でさ、ここはどこなんだろうなぁって思ってたところなんだよ」
「……あぁ、そっか。そうだよね……エースってそうだよね」
そうでした。この人、とんでもない迷子になる困った人だった。
思わず納得してしまう私を不思議そうに見ながら、エースはこう言った。
「俺はこれからハートの城に行くところなんだけど、もしよければ一緒に行く?」
悩んだ末、私は彼の提案に乗ることにした。
ここにいても仕方ないし。
「よし、それじゃあしばらくの間よろしくな、名無しさん」
彼はそう言って私に手を差し出してきた。
悪意のなさそうな笑顔を向けてくる。
本当はかなりダークな彼としばらく一緒に旅をするとは、なんてスリリングなんでしょう。
でも今の私に選択の余地はない。
「よろしくお願いします」
私はエースの手を取る。
大きな手でがしりと握手をされて、不思議な気持ちになった。
「名無しさんと一緒なら、長旅も悪くなさそうだ」
「は?」
「仲良くしようってことだよ」
エースはそう言って、私の手を掴んだまま手をぶんぶんと大きく上下させる。
「あぁ、うん。仲良くしましょう。っていうかそろそろ離してね!?」
掴まれている手を無理やり引き抜くと、「君って結構ドライだねぇ」とエースは楽しそうに笑った。
彼のペースに巻き込まれたら、とんでもないことになるに決まっている。
気をしっかり持たなければならない。
さて、これからどうなることやら。
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