短編2
お名前変換はこちらから
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
【バラ園】
ブラッドのバラ園で私はひたすらぼーっとしていた。
ひとりでぼーっと色々なことを取りとめもなく考えていた。
しかし困ったことに、こんな綺麗な景色を見ていたらどんどんと落ち込んできてしまった。なぜだろう?
なんだかこの綺麗な場所に自分は不釣り合いなんじゃないか、とか
私はこの先何を目指したらいいんだろうか、とか考えだしたら止まらなくなった。
だいぶ長いことうじうじと考えていた私。
最終的に『どうせ私なんて思考』になっていたまさにその時だった。
「来ていたのか、名無しさん」
その声に顔をあげると、ブラッドがいた。
「お邪魔してます」
彼の秘密のバラ園なので一応頭を下げるが、当の本人は気にする様子もない。
「全く植物というのは面倒だ。すぐに成長する」
そう言いながらも声色は穏やかなブラッド。
どうやらバラの手入れをしていたらしい。
私の隣りに座った彼(の主に腕)からものすごいバラの香りがした。 香る男・ブラッド。
「手のかかる子ほど可愛いものでしょ」
「……全てに当てはまるわけではないがね」
私の言葉に、少々バツが悪そうな顔で答える彼にこっそり笑う。
しばらく私たちは無言でバラを見つめていた。
このバラ園は全部ブラッドのものかー、すごいなぁ。
バラ好きだと言っても普通ここまでできないよね。ほんとにすごいなぁ。
私には無理だ。
そう思った瞬間に私の口は動いていた。
「ブラッドって欲しい物はなんでも手に入れられるんだね」
「なんだ?突然」
ブラッドはちらりと私を見る。
「こんな立派なバラ園とか大きなお屋敷とか。まぁ褒められた仕事じゃないけど、それでもすごいよね」
そう、なんだかんだすごい人なのだ、この人は。
私は隣に座るブラッドを見てふむふむ、と1人うなずいた。
「名無しさんは大袈裟だな。本当に欲しいと思えば誰だってなんでも手に入れられる」
「でも誰もがそういう財力や力があるわけじゃないでしょ」
するとブラッドは真面目にこう言った。
「いや、ちがうな。金なんてどうにでもなる。やるかやらないかだろう」
「うわ、まさか正論で返されるとは思わなかった」
「……」
ブラッドが横目でにらんできたけど気にならない。
「確かにやるかやらないかだけど、それってすごく難しいことなんだよ。私みたいな小心者には」
「何か欲しいものでもあるのか?」
「……わかんない。欲しい物とかやりたいことすら思い浮かばない」
「幸せな子だ」
楽しそうに笑うブラッドにむっとした。
すると彼はこう続けた。
「現状に満足しているんだろう。欠けている物がない。だから欲しい物もわからないんだ」
「そうなのかなぁ? 何か物足りないような気がしているんだけど」
「退屈しているということさ。退屈は悪だ。 だが、退屈を紛らわす何かをしているうちに、本当に欲しい物がわかることもあるよ」
なるほど。そういう考え方もあるわけだ。
「……ブラッドはもう満足した?」
「どうかな。自分でいうのもなんだが飽きっぽいからね。すぐに別の物が欲しくなるんだ」
「欲張りだなぁ」
「自分に正直なんだ。我慢なんて馬鹿馬鹿しい。やりたいことはやればいいし、やりたくないならやらなければいい。欲しい物は取る。それだけだよ」
きっぱりと言う彼になんだか感心した。
彼の生き方は真似できるものではないけれど、考え方としてはシンプルだし、心構えは見習うべきかもしれない。
すごいな、ブラッド。さすがボス。
「というわけで、名無しさん。お茶会をしよう」
「え、この流れで?」
「私は茶が飲みたい。それにすっきりした気分で飲むお茶は美味いからな」
ブラッドは私を見てそう言った。
確かにブラッドと話しているうちに、気持ちがすっきりした気がする。
彼がいつから私のことを見ていたのか知らないけれど、もしかしたら話相手になってくれたのかもしれない。
聞いたところでたぶん否定するから、確認しないけど。
「さて、行くか」
そう言って彼は立ち上がり、私に手を差し出す。
見上げると、優しい顔をしてブラッドが私を見ていた。
私は彼の手を取ると、色々な思いを込めて言った。
「うん。ありがとう」
ブラッドのバラ園で私はひたすらぼーっとしていた。
ひとりでぼーっと色々なことを取りとめもなく考えていた。
しかし困ったことに、こんな綺麗な景色を見ていたらどんどんと落ち込んできてしまった。なぜだろう?
なんだかこの綺麗な場所に自分は不釣り合いなんじゃないか、とか
私はこの先何を目指したらいいんだろうか、とか考えだしたら止まらなくなった。
だいぶ長いことうじうじと考えていた私。
最終的に『どうせ私なんて思考』になっていたまさにその時だった。
「来ていたのか、名無しさん」
その声に顔をあげると、ブラッドがいた。
「お邪魔してます」
彼の秘密のバラ園なので一応頭を下げるが、当の本人は気にする様子もない。
「全く植物というのは面倒だ。すぐに成長する」
そう言いながらも声色は穏やかなブラッド。
どうやらバラの手入れをしていたらしい。
私の隣りに座った彼(の主に腕)からものすごいバラの香りがした。 香る男・ブラッド。
「手のかかる子ほど可愛いものでしょ」
「……全てに当てはまるわけではないがね」
私の言葉に、少々バツが悪そうな顔で答える彼にこっそり笑う。
しばらく私たちは無言でバラを見つめていた。
このバラ園は全部ブラッドのものかー、すごいなぁ。
バラ好きだと言っても普通ここまでできないよね。ほんとにすごいなぁ。
私には無理だ。
そう思った瞬間に私の口は動いていた。
「ブラッドって欲しい物はなんでも手に入れられるんだね」
「なんだ?突然」
ブラッドはちらりと私を見る。
「こんな立派なバラ園とか大きなお屋敷とか。まぁ褒められた仕事じゃないけど、それでもすごいよね」
そう、なんだかんだすごい人なのだ、この人は。
私は隣に座るブラッドを見てふむふむ、と1人うなずいた。
「名無しさんは大袈裟だな。本当に欲しいと思えば誰だってなんでも手に入れられる」
「でも誰もがそういう財力や力があるわけじゃないでしょ」
するとブラッドは真面目にこう言った。
「いや、ちがうな。金なんてどうにでもなる。やるかやらないかだろう」
「うわ、まさか正論で返されるとは思わなかった」
「……」
ブラッドが横目でにらんできたけど気にならない。
「確かにやるかやらないかだけど、それってすごく難しいことなんだよ。私みたいな小心者には」
「何か欲しいものでもあるのか?」
「……わかんない。欲しい物とかやりたいことすら思い浮かばない」
「幸せな子だ」
楽しそうに笑うブラッドにむっとした。
すると彼はこう続けた。
「現状に満足しているんだろう。欠けている物がない。だから欲しい物もわからないんだ」
「そうなのかなぁ? 何か物足りないような気がしているんだけど」
「退屈しているということさ。退屈は悪だ。 だが、退屈を紛らわす何かをしているうちに、本当に欲しい物がわかることもあるよ」
なるほど。そういう考え方もあるわけだ。
「……ブラッドはもう満足した?」
「どうかな。自分でいうのもなんだが飽きっぽいからね。すぐに別の物が欲しくなるんだ」
「欲張りだなぁ」
「自分に正直なんだ。我慢なんて馬鹿馬鹿しい。やりたいことはやればいいし、やりたくないならやらなければいい。欲しい物は取る。それだけだよ」
きっぱりと言う彼になんだか感心した。
彼の生き方は真似できるものではないけれど、考え方としてはシンプルだし、心構えは見習うべきかもしれない。
すごいな、ブラッド。さすがボス。
「というわけで、名無しさん。お茶会をしよう」
「え、この流れで?」
「私は茶が飲みたい。それにすっきりした気分で飲むお茶は美味いからな」
ブラッドは私を見てそう言った。
確かにブラッドと話しているうちに、気持ちがすっきりした気がする。
彼がいつから私のことを見ていたのか知らないけれど、もしかしたら話相手になってくれたのかもしれない。
聞いたところでたぶん否定するから、確認しないけど。
「さて、行くか」
そう言って彼は立ち上がり、私に手を差し出す。
見上げると、優しい顔をしてブラッドが私を見ていた。
私は彼の手を取ると、色々な思いを込めて言った。
「うん。ありがとう」