短編2
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【好きな顔】
「俺さ、思ったんだよね」
「何を?」
「君って俺のこと好きなんじゃないかなって」
「……はい?」
エースと珍しく夜の街で出会った。
例によって旅の途中だった彼と、買い物中だった私。
「あ、久しぶり」なんて言いながら街のベンチに座って、私とエースは通り過ぎる人を見ながら話をしていた。
そしたら何の脈絡もなくいきなり、あのセリフ。
私は驚きすぎて、持っていたジュースを危うく落としそうになった。
しかし、エースは相変わらずにこにこと笑顔で私を見ている。
さわやかな笑顔。
……わかっている。わかってるの。この人がどんな人かってことくらい。
わかっているけど、私はこの手の顔に弱い(くそぅ……イケメンめ!)
「なんで私がエースのこと好きって思うの?」
「えー? なんでって……なんとなく?」
なんとなく、ですか?(しかも疑問形で!)
「まぁね、確かに名無しさんは特別優しくしてくれる訳じゃないし、俺に会いたがっているようにも見えない。他の奴らから手を出されてもいる。でもさ……」
「ちょ、ちょっと待って! 今、なんか変な発言が混ざったよ!?手なんて出されてないし!」
「うん?」
思わずつっこむが、エースはにこりと笑顔で首をかしげるだけ。
「とにかくたぶん、君は俺のことが好きだよ」
それはもう爽やかに言い切った。きっぱりと気持ちよいほどに。
でも、おかしいよね?
『俺は君が好き』ならまだしも『たぶん、君は俺が好き』だなんて。
おかしいって思うけど、それ以上にまずい、と思う。
否定できないから。
エースのことを、今は友達として好きな私。
でも、この人との時間が増えたら……何かきっかけがあったら、確実に私は友達以上に好きになると思っている。
そうなったら困るので、私はあえて今の距離を保っていこうとしていたのだ。
だから、こんなこと言われるとすごく困ります私。
「名無しさん、すっごく困った顔してるね?」
「うん、すっごく困ってるから」
楽しそうに言うエースに、ため息をつく私。
「名無しさんの困った顔、おもしろい」
「いや、この流れだと『おもしろい』とは言わないよね。普通は」
『可愛いよ』とかになるんじゃなかろうか?(それを言われても困るけど)
「あはは、そうかもね。でもごめん、おもしろいんだよなぁ」
「……あっそう」
失礼な奴。
「でもさ、俺、名無しさんのおもしろい顔好きだよ。ずっと見てたくなる」
「え……それって喜んでいいの私」
すごーく微妙なんですけど。
「褒めてるんだぜ? いつもの顔も好きだけど、おもしろい顔も好き」
「あんまり素直に喜べないなぁ」
「へそ曲がりだなぁ。ははは!」
「おもしろい顔が好きっていうエースのがよっぽどへそ曲がりだよ」
「あはは! そうだねー! 名無しさんは賢いなぁ」
む、おちょくってんのかこの人は。
「確かに俺はへそ曲がりかもしれないけど、ちゃんと好きだよ。名無しさんのこと」
そう言ってエースは私を見る。
まっすぐに見られて、どぎまぎしてしまう。
「……ちゃんと好きって変な言い方じゃない?」
「そうかな?」
「そうだよ」
「おもしろい顔でもちゃんと好きってことだよ」
「…………」
エースに悪気はないのかもしれない。(いや、あるのかもしれない)
素直に喜べない好意の示し方だけれど、『ちゃんと好き』は信じられる気がする。今のエースを見ているとそう思う。
「いろんな顔、見せてよ。俺だけにさ」
そんなことを言いながら、いつの間にか私との距離を詰めているエース。
間近で見る彼の顔は、やっぱりさわやかで私の好きな顔だった。
エースはふわりとほほ笑むと、私の頬にそっと触れる。
「名無しさん」
その声がどうしようもなく甘くて、そっと目を閉じて寄せる顔がとてもきれいで、私も思わず目を閉じた。
「俺さ、思ったんだよね」
「何を?」
「君って俺のこと好きなんじゃないかなって」
「……はい?」
エースと珍しく夜の街で出会った。
例によって旅の途中だった彼と、買い物中だった私。
「あ、久しぶり」なんて言いながら街のベンチに座って、私とエースは通り過ぎる人を見ながら話をしていた。
そしたら何の脈絡もなくいきなり、あのセリフ。
私は驚きすぎて、持っていたジュースを危うく落としそうになった。
しかし、エースは相変わらずにこにこと笑顔で私を見ている。
さわやかな笑顔。
……わかっている。わかってるの。この人がどんな人かってことくらい。
わかっているけど、私はこの手の顔に弱い(くそぅ……イケメンめ!)
「なんで私がエースのこと好きって思うの?」
「えー? なんでって……なんとなく?」
なんとなく、ですか?(しかも疑問形で!)
「まぁね、確かに名無しさんは特別優しくしてくれる訳じゃないし、俺に会いたがっているようにも見えない。他の奴らから手を出されてもいる。でもさ……」
「ちょ、ちょっと待って! 今、なんか変な発言が混ざったよ!?手なんて出されてないし!」
「うん?」
思わずつっこむが、エースはにこりと笑顔で首をかしげるだけ。
「とにかくたぶん、君は俺のことが好きだよ」
それはもう爽やかに言い切った。きっぱりと気持ちよいほどに。
でも、おかしいよね?
『俺は君が好き』ならまだしも『たぶん、君は俺が好き』だなんて。
おかしいって思うけど、それ以上にまずい、と思う。
否定できないから。
エースのことを、今は友達として好きな私。
でも、この人との時間が増えたら……何かきっかけがあったら、確実に私は友達以上に好きになると思っている。
そうなったら困るので、私はあえて今の距離を保っていこうとしていたのだ。
だから、こんなこと言われるとすごく困ります私。
「名無しさん、すっごく困った顔してるね?」
「うん、すっごく困ってるから」
楽しそうに言うエースに、ため息をつく私。
「名無しさんの困った顔、おもしろい」
「いや、この流れだと『おもしろい』とは言わないよね。普通は」
『可愛いよ』とかになるんじゃなかろうか?(それを言われても困るけど)
「あはは、そうかもね。でもごめん、おもしろいんだよなぁ」
「……あっそう」
失礼な奴。
「でもさ、俺、名無しさんのおもしろい顔好きだよ。ずっと見てたくなる」
「え……それって喜んでいいの私」
すごーく微妙なんですけど。
「褒めてるんだぜ? いつもの顔も好きだけど、おもしろい顔も好き」
「あんまり素直に喜べないなぁ」
「へそ曲がりだなぁ。ははは!」
「おもしろい顔が好きっていうエースのがよっぽどへそ曲がりだよ」
「あはは! そうだねー! 名無しさんは賢いなぁ」
む、おちょくってんのかこの人は。
「確かに俺はへそ曲がりかもしれないけど、ちゃんと好きだよ。名無しさんのこと」
そう言ってエースは私を見る。
まっすぐに見られて、どぎまぎしてしまう。
「……ちゃんと好きって変な言い方じゃない?」
「そうかな?」
「そうだよ」
「おもしろい顔でもちゃんと好きってことだよ」
「…………」
エースに悪気はないのかもしれない。(いや、あるのかもしれない)
素直に喜べない好意の示し方だけれど、『ちゃんと好き』は信じられる気がする。今のエースを見ているとそう思う。
「いろんな顔、見せてよ。俺だけにさ」
そんなことを言いながら、いつの間にか私との距離を詰めているエース。
間近で見る彼の顔は、やっぱりさわやかで私の好きな顔だった。
エースはふわりとほほ笑むと、私の頬にそっと触れる。
「名無しさん」
その声がどうしようもなく甘くて、そっと目を閉じて寄せる顔がとてもきれいで、私も思わず目を閉じた。