短編2
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【おわびのしるし】
「ごめんね、ユリウス」
ひたすら平謝りを繰り返す私に、ユリウスは冷たい視線を向けるのみ。
「あの、本当にごめんなさい。このお詫びはなんでもします! えーと、珈琲をお飲みになりますか?」
「今はいらん」
「え、あー、肩でもお揉みしましょうか?」
「いらん」
「あの、何かお手伝いできることがあれば何でも……」
「何も手伝ってもらうことはない。そうやってうろうろとされるのは迷惑だ。じっとするか帰るか、どちらかにしてくれ」
わぁ、冷たい拒否っぷり!
きっぱりと言われたその言葉に、私は何も言えない。(うぅ……)
でも帰るなんて嫌だ。
「じゃあじっとしてる」
「……」
私の言葉に、ユリウスはちらりと視線を向けた。
そしてわざとらしくため息をつくと、また仕事に戻る。
私としたことが、ユリウスの仕事道具をなんと壊してしまったのだ。
彼はスペアがあるから大丈夫だと言ってくれたが、大パニックになってしまった。
おそらく私が謝りすぎたのだろう。
ユリウスはだんだんと面倒になってきたようで、ご機嫌斜めになってしまったのだった。
もう仕方ない。ここは彼の怒りが収まるまで、静かにじっとしていよう。
眼鏡をかけて仕事をするユリウスを見ながら決意をする。(眼鏡なユリウスってかっこいいなぁ~なんてことも思いながら)
しかし、それもほんの数秒のことだった。
私の決意をよそに、ユリウスは目を閉じたかと思うと、盛大にため息をついたのだった。
「あぁ、もううっとうしい! なんなんだ!?」
「な、なに? 何もしてないよ私。静かにしてるじゃない」
「じろじろ見られては集中できないだろう」
不機嫌そうに、でもちょっと気まずそうに彼はそう言った。
その顔を見た瞬間、私のいたずら心が湧き上がる。
「え、もしかしてドキドキしちゃう?」
「~~~お前は本当にっ……」
「わぁ、ごめんなさい! そうですね! もう見ません!じろじろ見ませんごめんなさい!」
そう言って私は両手で顔を隠す。
そして、ちょっぴり指の隙間をひろげると、そこからちらりとユリウスを見た。
「……名無しさん。お前は本当に性格が悪いな」
「わ! 見てた!?」
指の隙間からばっちりと目が合ってしまった。
「人をからかうのもいい加減にしろ」
だってユリウスが可愛いんだもん。
かまってほしいんだもん。
……なんて言えない(今はほんとに怒ってるし)
「わかったよ。ごめんね」
もう帰ろう。
今日は仕方ない。
私は立ち上がって、部屋を出ようとした。
「どこへ行くんだ?」
「帰る。迷惑かけてごめんね」
ここにいるだけで、怒られそうな気がする。
私はぺこりと頭を下げると、部屋を出た。
あぁ、今日の私は何をやってもダメかも。
ユリウスに迷惑はかけちゃうし、怒らせちゃうし、
下手したら、この階段を踏み外したりしそうな気がする。
気をつけなくちゃ、と思いながら長い下り階段を降りようと足を踏み出した時だった。
「おい」
そんな言葉と共に、ぐいっと掴まれる腕。
「わ!?」
見ると、それはもう不機嫌な顔をしたユリウスが私を見ていた。
「な、なに?」
「今のお前は階段から転げ落ちそうだからやめとけ」
自分で思ったことをユリウスにも言われてしまった。
よっぽど私はダメダメに見えるらしい。
「でも、なんか怒らせちゃったし、これ以上迷惑かけたくないし……」
「そんな傷ついた顔で帰られる方が迷惑だ。気になるだろう」
「え……」
思わぬ言葉に固まる私。
ユリウスはゆっくりと私の腕を引き、私は彼と向かい合うように引き寄せられる。
突然のことに驚いて、私はぼんやりと彼の顔を見つめてしまった。
不機嫌な顔のユリウス。でも、どこか心配そうな表情だった。
「私、傷ついた顔してた?」
「今もしてるぞ」
「ユリウスのせいでってことかな」
「知るか。お前が勝手に落ち込んでいるだけだろう。物を壊されたり、からかわれたり、迷惑をかけられてるのは私の方だ」
「ご、ごめんなさい」
あまりにもっともな彼の言い分に、私は申し訳なさでいっぱいになる。
「だから、そんな顔をするな」
ユリウスはそう言いながら、私の頬に触れた。
予想外の彼の行動に、思わずびくりとしてしまう。
しかし、ユリウスは全く動じることなく、私との距離を詰めた。
「……名無しさんに傷ついた顔をされると、私が困る」
「ユリウス……」
目の前にユリウスの顔があり、思わず息をひそめてしまう。
「それに名無しさんをそんな顔で滞在地に帰したら、私が文句を言われる」
「え……」
「お前は滞在地の奴らに気に入られているようだからな」
そう言って、ユリウスは私の頬からくちびるへと指を動かしていく。
完全に固まる私。
「珈琲」
「え?」
「帰るなら珈琲を淹れてからにしてくれ」
驚いて彼を見ると、はっと我に返ったように私から離れ、気まずそうに視線をそらす。
「休憩にする。お前のせいで集中力が途切れたからな」
「う……ごめんなさい」
「うまい珈琲を淹れられたら、今回のことは全部許してやる」
私を見ずに言うユリウスがなんだか可愛らしく見えるので、思わずニヤニヤしてしまった。
「珈琲を淹れたら全部許してくれるなんて、優しいねぇ」
「うまい珈琲を、だぞ」
私の言葉に、しっかりと釘を刺すユリウス。
「うん、大丈夫! 今回がダメでも、ユリウスが美味しいっていうまで通い続けるから!」
私がそういうと、ユリウスは一瞬驚いた顔をしたがすぐにふっと笑った。
「物好きなことだ」
「そうかもね」
ユリウスの言葉に同意しつつ、私は彼の背中を押す。
「さ、休憩休憩! ちゃんと休んでね」
さて、珈琲はどうやって淹れると一番おいしいんだろう?
しばらくは通い続けることになりそうだけど、それはそれで楽しいかもしれない。
「ごめんね、ユリウス」
ひたすら平謝りを繰り返す私に、ユリウスは冷たい視線を向けるのみ。
「あの、本当にごめんなさい。このお詫びはなんでもします! えーと、珈琲をお飲みになりますか?」
「今はいらん」
「え、あー、肩でもお揉みしましょうか?」
「いらん」
「あの、何かお手伝いできることがあれば何でも……」
「何も手伝ってもらうことはない。そうやってうろうろとされるのは迷惑だ。じっとするか帰るか、どちらかにしてくれ」
わぁ、冷たい拒否っぷり!
きっぱりと言われたその言葉に、私は何も言えない。(うぅ……)
でも帰るなんて嫌だ。
「じゃあじっとしてる」
「……」
私の言葉に、ユリウスはちらりと視線を向けた。
そしてわざとらしくため息をつくと、また仕事に戻る。
私としたことが、ユリウスの仕事道具をなんと壊してしまったのだ。
彼はスペアがあるから大丈夫だと言ってくれたが、大パニックになってしまった。
おそらく私が謝りすぎたのだろう。
ユリウスはだんだんと面倒になってきたようで、ご機嫌斜めになってしまったのだった。
もう仕方ない。ここは彼の怒りが収まるまで、静かにじっとしていよう。
眼鏡をかけて仕事をするユリウスを見ながら決意をする。(眼鏡なユリウスってかっこいいなぁ~なんてことも思いながら)
しかし、それもほんの数秒のことだった。
私の決意をよそに、ユリウスは目を閉じたかと思うと、盛大にため息をついたのだった。
「あぁ、もううっとうしい! なんなんだ!?」
「な、なに? 何もしてないよ私。静かにしてるじゃない」
「じろじろ見られては集中できないだろう」
不機嫌そうに、でもちょっと気まずそうに彼はそう言った。
その顔を見た瞬間、私のいたずら心が湧き上がる。
「え、もしかしてドキドキしちゃう?」
「~~~お前は本当にっ……」
「わぁ、ごめんなさい! そうですね! もう見ません!じろじろ見ませんごめんなさい!」
そう言って私は両手で顔を隠す。
そして、ちょっぴり指の隙間をひろげると、そこからちらりとユリウスを見た。
「……名無しさん。お前は本当に性格が悪いな」
「わ! 見てた!?」
指の隙間からばっちりと目が合ってしまった。
「人をからかうのもいい加減にしろ」
だってユリウスが可愛いんだもん。
かまってほしいんだもん。
……なんて言えない(今はほんとに怒ってるし)
「わかったよ。ごめんね」
もう帰ろう。
今日は仕方ない。
私は立ち上がって、部屋を出ようとした。
「どこへ行くんだ?」
「帰る。迷惑かけてごめんね」
ここにいるだけで、怒られそうな気がする。
私はぺこりと頭を下げると、部屋を出た。
あぁ、今日の私は何をやってもダメかも。
ユリウスに迷惑はかけちゃうし、怒らせちゃうし、
下手したら、この階段を踏み外したりしそうな気がする。
気をつけなくちゃ、と思いながら長い下り階段を降りようと足を踏み出した時だった。
「おい」
そんな言葉と共に、ぐいっと掴まれる腕。
「わ!?」
見ると、それはもう不機嫌な顔をしたユリウスが私を見ていた。
「な、なに?」
「今のお前は階段から転げ落ちそうだからやめとけ」
自分で思ったことをユリウスにも言われてしまった。
よっぽど私はダメダメに見えるらしい。
「でも、なんか怒らせちゃったし、これ以上迷惑かけたくないし……」
「そんな傷ついた顔で帰られる方が迷惑だ。気になるだろう」
「え……」
思わぬ言葉に固まる私。
ユリウスはゆっくりと私の腕を引き、私は彼と向かい合うように引き寄せられる。
突然のことに驚いて、私はぼんやりと彼の顔を見つめてしまった。
不機嫌な顔のユリウス。でも、どこか心配そうな表情だった。
「私、傷ついた顔してた?」
「今もしてるぞ」
「ユリウスのせいでってことかな」
「知るか。お前が勝手に落ち込んでいるだけだろう。物を壊されたり、からかわれたり、迷惑をかけられてるのは私の方だ」
「ご、ごめんなさい」
あまりにもっともな彼の言い分に、私は申し訳なさでいっぱいになる。
「だから、そんな顔をするな」
ユリウスはそう言いながら、私の頬に触れた。
予想外の彼の行動に、思わずびくりとしてしまう。
しかし、ユリウスは全く動じることなく、私との距離を詰めた。
「……名無しさんに傷ついた顔をされると、私が困る」
「ユリウス……」
目の前にユリウスの顔があり、思わず息をひそめてしまう。
「それに名無しさんをそんな顔で滞在地に帰したら、私が文句を言われる」
「え……」
「お前は滞在地の奴らに気に入られているようだからな」
そう言って、ユリウスは私の頬からくちびるへと指を動かしていく。
完全に固まる私。
「珈琲」
「え?」
「帰るなら珈琲を淹れてからにしてくれ」
驚いて彼を見ると、はっと我に返ったように私から離れ、気まずそうに視線をそらす。
「休憩にする。お前のせいで集中力が途切れたからな」
「う……ごめんなさい」
「うまい珈琲を淹れられたら、今回のことは全部許してやる」
私を見ずに言うユリウスがなんだか可愛らしく見えるので、思わずニヤニヤしてしまった。
「珈琲を淹れたら全部許してくれるなんて、優しいねぇ」
「うまい珈琲を、だぞ」
私の言葉に、しっかりと釘を刺すユリウス。
「うん、大丈夫! 今回がダメでも、ユリウスが美味しいっていうまで通い続けるから!」
私がそういうと、ユリウスは一瞬驚いた顔をしたがすぐにふっと笑った。
「物好きなことだ」
「そうかもね」
ユリウスの言葉に同意しつつ、私は彼の背中を押す。
「さ、休憩休憩! ちゃんと休んでね」
さて、珈琲はどうやって淹れると一番おいしいんだろう?
しばらくは通い続けることになりそうだけど、それはそれで楽しいかもしれない。