真夏のティーパーティー!その2
お名前変換はこちらから
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
【あなたに花を3】
花をぶちまけて転んだ女、というのがなかなか印象的だったらしい。
会合期間中、ブラッド=デュプレは私を見かけると必ず声をかけてくるようになった。
良いのか悪いのかわからないがなんにしても、遠い存在だと思っていた彼が私の元へやってくるのはものすごく不思議だった。
だから今、突然彼が私の部屋にやってきたことにものすごく動揺している。
私の驚きがお分かり頂けるだろうか?
ノックされたので、ドアを開けたらあのブラッド=デュプレが立っていたのだ。
予想外にもほどがある。
「やぁ、お嬢さん。こんにちは」
「……!?」
驚きすぎて立ち尽くしていた私に、彼はくすりと笑ってから「おじゃましてもいいかな?」と言った。
たぶん混乱しすぎていたのだろう。
拒否するという考えはまるで浮かばず、私は彼を部屋に招き入れた。
「……」
「……」
向かい合って紅茶を飲む私達だったけれど特に会話はない。
なんだろう?
なにしにきたんだろう、この人。
私の部屋なのに、彼の存在が思いっきりこの空間を支配している。居心地が悪い。
私が出した紅茶をそれはもう優雅に飲んでいるブラッド=デュプレ。
「あの……なにかご用でも?」
「いや、別に。名無しさんに会いたいと思っただけだよ」
彼はさらりとそう言った。
会いたいと思われるほど、私達は親密な関係ではない。
だから余計に彼の言葉がうさんくさい。
そう思う反面、ものすごくドキドキしてしまった。
どうしよう、何か話した方がいいのだろうか?
そう思った時だった。
ブラッド=デュプレが言った。
「名無しさん、そこの花は会議室に飾ってあったものか?」
彼の視線の先には、花瓶に入ったたくさんのチューリップ。
花屋さんの店先にあったものをひっくり返し、買い取ったあのチューリップだ。
少し前までクローバーの塔のいたるところに飾っていた。
「そうです。少ししおれちゃってたから、引き取ったの」
会合中の塔に飾るにはちょっとしおれているけど、自分の部屋に飾る分には全く気にならないレベルだった。
捨てるには気が引けるくらい綺麗だったので、もらって来たのだ。
しかし、ブラッド=デュプレはきっぱりといった。
「名無しさん。そんなしおれかけた花などやめた方がいい」
「でも、まだ綺麗だし……」
「部屋に飾るのなら、新しい花を私がプレゼントしよう」
「えー!? いやいや、大丈夫です!」
予想外の申し出に思わず全力で拒否してしまった。
彼は表情を変えなかったが、失礼なことを言ってしまった気がして慌てて言葉を続ける。
「気を使っていただかなくて大丈夫なんです。私は花が欲しいんじゃなくて、このチューリップを捨てるのがもったいなくて飾ろうとしただから」
私がそういうと、彼はため息をついた。
そして立ち上がると、チューリップをじっと眺めてからそっと手を伸ばして花に触れる。
「?」
首を傾げる私に、ブラッド=デュプレは背中を向けたまま静かに言った。
「本当は君に見合う花を贈らせてもらいたいが……名無しさんにその気がないなら仕方がない」
ブラッド=デュプレが触れたチューリップがみるみる元気になっていくのが、彼の背中越しに見えた。
しおれていた葉がしゃっきりとし、花の色もくっきりと明るくなる。
びっくりする私をよそに、花瓶のチューリップはあっというまに生き生きとしたものに変わっていた。
ブラッド=デュプレは振り返って私を見た。
「名無しさん。どうせ飾るなら、綺麗に咲いているものにしなさい」
私はというと驚きすぎて、もう何も言えなかった。
さっきからこの人には驚かされてばかりだ。
綺麗に咲くチューリップとブラッド=デュプレを見る。
彼は楽しそうに笑うと、私の向かい側の席に再び座り紅茶を飲む。
「茶葉と花は新鮮なものがいいんだよ、お嬢さん」
「……はぁ」
生返事をする私に、彼はますます楽しそうに笑みを深めた。
花をぶちまけて転んだ女、というのがなかなか印象的だったらしい。
会合期間中、ブラッド=デュプレは私を見かけると必ず声をかけてくるようになった。
良いのか悪いのかわからないがなんにしても、遠い存在だと思っていた彼が私の元へやってくるのはものすごく不思議だった。
だから今、突然彼が私の部屋にやってきたことにものすごく動揺している。
私の驚きがお分かり頂けるだろうか?
ノックされたので、ドアを開けたらあのブラッド=デュプレが立っていたのだ。
予想外にもほどがある。
「やぁ、お嬢さん。こんにちは」
「……!?」
驚きすぎて立ち尽くしていた私に、彼はくすりと笑ってから「おじゃましてもいいかな?」と言った。
たぶん混乱しすぎていたのだろう。
拒否するという考えはまるで浮かばず、私は彼を部屋に招き入れた。
「……」
「……」
向かい合って紅茶を飲む私達だったけれど特に会話はない。
なんだろう?
なにしにきたんだろう、この人。
私の部屋なのに、彼の存在が思いっきりこの空間を支配している。居心地が悪い。
私が出した紅茶をそれはもう優雅に飲んでいるブラッド=デュプレ。
「あの……なにかご用でも?」
「いや、別に。名無しさんに会いたいと思っただけだよ」
彼はさらりとそう言った。
会いたいと思われるほど、私達は親密な関係ではない。
だから余計に彼の言葉がうさんくさい。
そう思う反面、ものすごくドキドキしてしまった。
どうしよう、何か話した方がいいのだろうか?
そう思った時だった。
ブラッド=デュプレが言った。
「名無しさん、そこの花は会議室に飾ってあったものか?」
彼の視線の先には、花瓶に入ったたくさんのチューリップ。
花屋さんの店先にあったものをひっくり返し、買い取ったあのチューリップだ。
少し前までクローバーの塔のいたるところに飾っていた。
「そうです。少ししおれちゃってたから、引き取ったの」
会合中の塔に飾るにはちょっとしおれているけど、自分の部屋に飾る分には全く気にならないレベルだった。
捨てるには気が引けるくらい綺麗だったので、もらって来たのだ。
しかし、ブラッド=デュプレはきっぱりといった。
「名無しさん。そんなしおれかけた花などやめた方がいい」
「でも、まだ綺麗だし……」
「部屋に飾るのなら、新しい花を私がプレゼントしよう」
「えー!? いやいや、大丈夫です!」
予想外の申し出に思わず全力で拒否してしまった。
彼は表情を変えなかったが、失礼なことを言ってしまった気がして慌てて言葉を続ける。
「気を使っていただかなくて大丈夫なんです。私は花が欲しいんじゃなくて、このチューリップを捨てるのがもったいなくて飾ろうとしただから」
私がそういうと、彼はため息をついた。
そして立ち上がると、チューリップをじっと眺めてからそっと手を伸ばして花に触れる。
「?」
首を傾げる私に、ブラッド=デュプレは背中を向けたまま静かに言った。
「本当は君に見合う花を贈らせてもらいたいが……名無しさんにその気がないなら仕方がない」
ブラッド=デュプレが触れたチューリップがみるみる元気になっていくのが、彼の背中越しに見えた。
しおれていた葉がしゃっきりとし、花の色もくっきりと明るくなる。
びっくりする私をよそに、花瓶のチューリップはあっというまに生き生きとしたものに変わっていた。
ブラッド=デュプレは振り返って私を見た。
「名無しさん。どうせ飾るなら、綺麗に咲いているものにしなさい」
私はというと驚きすぎて、もう何も言えなかった。
さっきからこの人には驚かされてばかりだ。
綺麗に咲くチューリップとブラッド=デュプレを見る。
彼は楽しそうに笑うと、私の向かい側の席に再び座り紅茶を飲む。
「茶葉と花は新鮮なものがいいんだよ、お嬢さん」
「……はぁ」
生返事をする私に、彼はますます楽しそうに笑みを深めた。