キャロットガール
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【5.マフィアと子羊】
私は時計塔のすぐ近くにある公園に来ていた。
青空の下、ベンチに座って本をのんびりと読む。
数時間帯前に帽子屋ファミリーから発砲された。
威嚇射撃だったらしいけれど、ちょっと上から物を落としたくらいで銃をぶっ放すなんてひどいと思う。(落としちゃった私も悪かったけどさ)
帽子屋ファミリーというのがどんな人々かは知らないが、マフィアというくらいだし、いかにも怖そうな人達なのだろう。
会いたくないので、しばらくは外出を控えていた私。
しかし、さすがに引きこもり生活は飽きた。
ここ最近は帽子屋ファミリーが街を歩いている姿もなさそうだったし、私は思い切って外へ出ることにしたのだった。
またエリオットに会いたいな。
そんな思いもある。
それに、なんだか今日は彼に会えるような気がしたのだ。
ユリウスは外へ出ようとする私に良い顔はしなかったけれど、結局「ヒマで仕方ない。私はユリウスと違って引きこもれないの!」
と押し切った。
久しぶりの外はすがすがしくて気持ちがいいけれど、街を歩く人々の中にエリオットらしい姿はなかった。
やっぱりエリオットには会えないかもと弱気になる反面、そりゃそうだと納得してしまう自分もいる。
約束しているわけじゃないし、エリオットがこの辺りに来るという保証だってないのだ
もう今日は諦めようかなぁ。
なんとなくそう思った時、ふいにあたりが薄暗くなった。
空が夕日で赤く染まっていく。
「あー……夕方になっちゃった」
諦めるにはちょうどいいタイミングだ。
私は読んでいた本を膝に伏せる。
帰ろうかな。
でも、あとちょっとだけここにいれば、もしかしたら会えるかもしれない。 あと少しだけ待ってみようかな。
でも、あまり遅くなったらユリウスに怒られるかな? どうしよう、やっぱり帰ろうかなぁ。
そんな風に悩んでいた時だった。
「名無しさん?」
はっと顔をあげると、前からエリオットがやってくるのが見えた。
「エリオット!!」
嘘みたいなタイミングに私は思わず立ち上がった。
その拍子に本が膝から転げ落ちそうになり、慌てて掴む。
そんな私の様子を見て、エリオットは「お、大丈夫か?」と笑顔で言った。
「うん、大丈夫!」
嬉しくて、私のテンションは一気に上がった。
耳まで熱くなり、心臓がドキドキなり始める。
会えた嬉しさが体中に駆け巡っている感じ。
「久しぶりだなー、名無しさんに会うの。元気だったか?」
私の元まで来ると、エリオットはにかっと笑った。
「うん。本当に久しぶりだね、エリオット」
「あぁ。最近別の仕事に行ってたから、なかなかこっちにくる機会がなくてな」
「そうなんだ。実は私も最近は物騒だからあまり外に出ていなかったの」
「へぇ。そっか。まぁ、確かに少し前はこの辺りで面倒事が多かったからな。やたらと出歩かなかったのは正解だと思うぜ」
腕組みをしたエリオットは顔をしかめながら実感のこもった言い方をする。
もしかすると、何かしらの面倒事に巻き込まれそうになったことがあるのかもしれない。
「エリオットは仕事が忙しいんだね。大丈夫?」
「おー、俺は全然平気。この時間帯は休みだしさ」
私の質問にうなずきながら、エリオットはすぐ隣に腰を下ろした。
どきっとしつつも私は平静を装う。
「お休みなんだ? よかったね」
「あぁ。久しぶりの休みだし、名無しさんに会えるかなーと思ってこっちに来てみたんだ」
その言葉に思わず固まった。
「会えてよかったぜ。なんか会えるような気がしてたんだよな」
にこにこと笑って私を見るエリオット。
ここまで素直に言われるとは思いもしなかった。
あまりにさらりと言うので、彼の言葉に照れてはいけない気がして、私もドキドキしながら素直に言う。
「私もエリオットに会えるような気がしたんだ。だからちょっと待ってたの」
「お、マジで?すげーじゃん。通じ合ってたんだなー」
彼は朗らかにそう言ったけれど、私はもうどうしようもなく舞い上がってしまった。
エリオットは大して深い意味などなく言ったのだろう。
私が勝手に喜んでいるだけなのはわかっている。
「それにしても、あんたっていっつも悩んでるよな」
「え?」
「だって、初めて会った時もにんじん選びに悩んでたし、この間もどの本買うか悩んでたし、今だってなんかそわそわ悩んでる感じだったしさ」
今度は何を悩んでたんだ?と明るく言うエリオット。
言われてみれば確かにその通りだった。私は彼に会う時、いつも何かと悩んでいる。
「今悩んでたことはもう解決したから大丈夫」
「そっか。それならよかったな!」
ぐずぐず悩んでいたおかげで、エリオットに会えたからよかったのかもしれない。今回ばかりは優柔不断に感謝だ。
「私、周りから呆れられるくらい優柔不断なの。この間もどのお菓子を食べるか悩んでたら『欲しいものくらいすぐ決めろ』って言われちゃったんだ」
ユリウスのため息交じりのセリフを思い出しながらそう言った。
「エリオットはすぐに物事を決められそうだね」
「そうだな。そういうので悩んだことなんてあまりないな。俺の場合ブラッドから『もっと良く考えろ』って言われるくらい即決だから」
「ブラッド?」
聞きなれない名前に首を傾げると、彼の表情がぱっと明るくなる。
「あぁ、俺の上司。ブラッドはほんっとにすげーんだぜ」
「エリオットの上司? 仕事の?」
「そうそう。ブラッドはさー、賢いし、優しいし、かっこいいし、とにかくすげーんだ」
「ふぅん。そうなんだ」
エリオットはどうやらこのブラッドという上司にかなり陶酔しているらしい。
仕事の上司をここまで褒め称えるなんてすごいなぁ。よっぽど尊敬してるんだわきっと。
エリオットの上司というとやっぱりウサギさんなのかしら?などとぼんやり考えていた時だった。
「そうだ! 名無しさん、この後なんか用事とかあるのか?」
「え?」
「もしヒマならさ、ブラッドとお茶会をすることになってるんだけど、あんたも来いよ!」
「お茶会?」
「あぁ! この間言ったにんじんケーキを食わせてやるよ! すっげー美味いからさ!」
「え、でもそんな突然お邪魔したら悪いし……」
「平気だって! 名無しさんならブラッドだって歓迎するはずだし、来てくれよ!」
「で、でも……」
「いいから来いって。遠慮すんなよ、名無しさん」
嬉しそうに言うエリオットに押し切られ、私はお茶会に参加することにした。
あぁ、本当にエリオットって即決するタイプなんだなー。
上司とにんじんケーキでお茶会なんてすっごいなー。(やっぱり上司もウサギに違いない!)
ウサギさんとのかわいいお茶会というものを想像しながら、エリオットについて歩き出す私だった。
私は時計塔のすぐ近くにある公園に来ていた。
青空の下、ベンチに座って本をのんびりと読む。
数時間帯前に帽子屋ファミリーから発砲された。
威嚇射撃だったらしいけれど、ちょっと上から物を落としたくらいで銃をぶっ放すなんてひどいと思う。(落としちゃった私も悪かったけどさ)
帽子屋ファミリーというのがどんな人々かは知らないが、マフィアというくらいだし、いかにも怖そうな人達なのだろう。
会いたくないので、しばらくは外出を控えていた私。
しかし、さすがに引きこもり生活は飽きた。
ここ最近は帽子屋ファミリーが街を歩いている姿もなさそうだったし、私は思い切って外へ出ることにしたのだった。
またエリオットに会いたいな。
そんな思いもある。
それに、なんだか今日は彼に会えるような気がしたのだ。
ユリウスは外へ出ようとする私に良い顔はしなかったけれど、結局「ヒマで仕方ない。私はユリウスと違って引きこもれないの!」
と押し切った。
久しぶりの外はすがすがしくて気持ちがいいけれど、街を歩く人々の中にエリオットらしい姿はなかった。
やっぱりエリオットには会えないかもと弱気になる反面、そりゃそうだと納得してしまう自分もいる。
約束しているわけじゃないし、エリオットがこの辺りに来るという保証だってないのだ
もう今日は諦めようかなぁ。
なんとなくそう思った時、ふいにあたりが薄暗くなった。
空が夕日で赤く染まっていく。
「あー……夕方になっちゃった」
諦めるにはちょうどいいタイミングだ。
私は読んでいた本を膝に伏せる。
帰ろうかな。
でも、あとちょっとだけここにいれば、もしかしたら会えるかもしれない。 あと少しだけ待ってみようかな。
でも、あまり遅くなったらユリウスに怒られるかな? どうしよう、やっぱり帰ろうかなぁ。
そんな風に悩んでいた時だった。
「名無しさん?」
はっと顔をあげると、前からエリオットがやってくるのが見えた。
「エリオット!!」
嘘みたいなタイミングに私は思わず立ち上がった。
その拍子に本が膝から転げ落ちそうになり、慌てて掴む。
そんな私の様子を見て、エリオットは「お、大丈夫か?」と笑顔で言った。
「うん、大丈夫!」
嬉しくて、私のテンションは一気に上がった。
耳まで熱くなり、心臓がドキドキなり始める。
会えた嬉しさが体中に駆け巡っている感じ。
「久しぶりだなー、名無しさんに会うの。元気だったか?」
私の元まで来ると、エリオットはにかっと笑った。
「うん。本当に久しぶりだね、エリオット」
「あぁ。最近別の仕事に行ってたから、なかなかこっちにくる機会がなくてな」
「そうなんだ。実は私も最近は物騒だからあまり外に出ていなかったの」
「へぇ。そっか。まぁ、確かに少し前はこの辺りで面倒事が多かったからな。やたらと出歩かなかったのは正解だと思うぜ」
腕組みをしたエリオットは顔をしかめながら実感のこもった言い方をする。
もしかすると、何かしらの面倒事に巻き込まれそうになったことがあるのかもしれない。
「エリオットは仕事が忙しいんだね。大丈夫?」
「おー、俺は全然平気。この時間帯は休みだしさ」
私の質問にうなずきながら、エリオットはすぐ隣に腰を下ろした。
どきっとしつつも私は平静を装う。
「お休みなんだ? よかったね」
「あぁ。久しぶりの休みだし、名無しさんに会えるかなーと思ってこっちに来てみたんだ」
その言葉に思わず固まった。
「会えてよかったぜ。なんか会えるような気がしてたんだよな」
にこにこと笑って私を見るエリオット。
ここまで素直に言われるとは思いもしなかった。
あまりにさらりと言うので、彼の言葉に照れてはいけない気がして、私もドキドキしながら素直に言う。
「私もエリオットに会えるような気がしたんだ。だからちょっと待ってたの」
「お、マジで?すげーじゃん。通じ合ってたんだなー」
彼は朗らかにそう言ったけれど、私はもうどうしようもなく舞い上がってしまった。
エリオットは大して深い意味などなく言ったのだろう。
私が勝手に喜んでいるだけなのはわかっている。
「それにしても、あんたっていっつも悩んでるよな」
「え?」
「だって、初めて会った時もにんじん選びに悩んでたし、この間もどの本買うか悩んでたし、今だってなんかそわそわ悩んでる感じだったしさ」
今度は何を悩んでたんだ?と明るく言うエリオット。
言われてみれば確かにその通りだった。私は彼に会う時、いつも何かと悩んでいる。
「今悩んでたことはもう解決したから大丈夫」
「そっか。それならよかったな!」
ぐずぐず悩んでいたおかげで、エリオットに会えたからよかったのかもしれない。今回ばかりは優柔不断に感謝だ。
「私、周りから呆れられるくらい優柔不断なの。この間もどのお菓子を食べるか悩んでたら『欲しいものくらいすぐ決めろ』って言われちゃったんだ」
ユリウスのため息交じりのセリフを思い出しながらそう言った。
「エリオットはすぐに物事を決められそうだね」
「そうだな。そういうので悩んだことなんてあまりないな。俺の場合ブラッドから『もっと良く考えろ』って言われるくらい即決だから」
「ブラッド?」
聞きなれない名前に首を傾げると、彼の表情がぱっと明るくなる。
「あぁ、俺の上司。ブラッドはほんっとにすげーんだぜ」
「エリオットの上司? 仕事の?」
「そうそう。ブラッドはさー、賢いし、優しいし、かっこいいし、とにかくすげーんだ」
「ふぅん。そうなんだ」
エリオットはどうやらこのブラッドという上司にかなり陶酔しているらしい。
仕事の上司をここまで褒め称えるなんてすごいなぁ。よっぽど尊敬してるんだわきっと。
エリオットの上司というとやっぱりウサギさんなのかしら?などとぼんやり考えていた時だった。
「そうだ! 名無しさん、この後なんか用事とかあるのか?」
「え?」
「もしヒマならさ、ブラッドとお茶会をすることになってるんだけど、あんたも来いよ!」
「お茶会?」
「あぁ! この間言ったにんじんケーキを食わせてやるよ! すっげー美味いからさ!」
「え、でもそんな突然お邪魔したら悪いし……」
「平気だって! 名無しさんならブラッドだって歓迎するはずだし、来てくれよ!」
「で、でも……」
「いいから来いって。遠慮すんなよ、名無しさん」
嬉しそうに言うエリオットに押し切られ、私はお茶会に参加することにした。
あぁ、本当にエリオットって即決するタイプなんだなー。
上司とにんじんケーキでお茶会なんてすっごいなー。(やっぱり上司もウサギに違いない!)
ウサギさんとのかわいいお茶会というものを想像しながら、エリオットについて歩き出す私だった。