真夏のティーパーティー!その2
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【おまけ春 その後】
ペーターさんとわかれ、逃げるように城門までやってきた時だった。
「あれ、名無しさん?」
穏やかな声。
見るとエースが歩いてきた。
私は目をごしごしとこする。
「エース!」
「久しぶりだね。遊びに来てたんだ」
彼は爽やかに笑った。
「うん。でももう帰るの」
「え、そうなの?」
「うん」
「せっかく会ったのに」
「ごめんね」
口を尖らせるエースに謝ると、彼はじぃっと私を見た。
気まずいし、今あまり顔を見られたくないんですけど、と思って視線を外した時だった。
「旅のお土産、名無しさんにあげる」
いきなりそう言ったかと思うと、エースは私にずずいと小さな缶を差し出した。
びっくりしていると彼は缶のふたを開けながら言った。
「これ、いちご。さっきすぐそこでなっているのを見つけて少し摘んだんだ。今が旬でおいしいよ」
どうしよう、あまり食べたい気分でもないなと思っていると、彼はにこりと笑ってさらにずずいと缶を私に差し出した。
有無を言わせぬ強い笑顔。
仕方なく私は手を伸ばす。
「じゃあ一つもらうね」
「どうぞ」
私は缶から一粒いちごを取ると、そのまま口に入れてみる。
甘酸っぱくて美味しいいちごだった。
「……美味しい」
「だろ?自然になっていたにしては上出来だよな」
彼はニコニコ笑うと、自分でも一粒いちごをとって口に放り込んだ。
「ペーターさんなら絶対に食べないよなぁ、こういうの」
美味いのにね、と言いながら彼は私を見た。
いつもの笑顔だったけれど、彼の瞳は私の現状を全て見抜いているようだった。
思わず泣きそうになる。
「……絶対食べないから、ちゃんとお店のクッキーを渡したよ」
小さな声で言うと、エースは「そう」と言ってうなずいた。
しばらく黙っていた私とエースだったけれど、彼が不意にこう言った。
「俺、人の趣味にあれこれ口を出すつもりはないんだけど……」
彼は手を伸ばして、私の頭を撫でる。
「名無しさんには俺の方がいいと思うよ」
ぬけぬけとそんなことを言うエース。
元気づけてくれているのか、なんなのか今一つわからないけれど、彼の言葉に私の泣きスイッチが入ってしまった。
「なに馬鹿なこと言ってるの」
そう言いながら、体当たりする勢いで私はエースの胸に飛び込んだ。
彼は少しもよろけずに受け止めてくれた。
「私はフラフラ迷子になる人よりも、真面目でちょっと潔癖なくらいの方がいいと思うの」
「ははは!ひどいなー」
エースはそう言って笑ったけれど、すぐにこう反論した。
「名無しさん。一緒に迷子になるのは楽しいけど、潔癖の人と一緒にいるってつらくない?しかも真面目過ぎてズレてるし」
「…………」
何も言い返せない私の背中をエースはしばらくポンポンと撫でてくれた。
「だから、名無しさんには俺の方がいいと思うんだけどな」
そんなつぶやきが頭の上から聞こえた。
今すぐ彼の言葉にうなずくことなんてできるわけがない。
私はペーターさんのことがやっぱり好きだし、エースのことは友達にしか思えない。
けれど、もしかしたら今とは違う気持ちでエースの胸におさまる日が、いつか来るのかもしれない。
彼の胸で泣きながらそんなことを考えたら、ちょっと楽になった気がする。
ペーターさんとわかれ、逃げるように城門までやってきた時だった。
「あれ、名無しさん?」
穏やかな声。
見るとエースが歩いてきた。
私は目をごしごしとこする。
「エース!」
「久しぶりだね。遊びに来てたんだ」
彼は爽やかに笑った。
「うん。でももう帰るの」
「え、そうなの?」
「うん」
「せっかく会ったのに」
「ごめんね」
口を尖らせるエースに謝ると、彼はじぃっと私を見た。
気まずいし、今あまり顔を見られたくないんですけど、と思って視線を外した時だった。
「旅のお土産、名無しさんにあげる」
いきなりそう言ったかと思うと、エースは私にずずいと小さな缶を差し出した。
びっくりしていると彼は缶のふたを開けながら言った。
「これ、いちご。さっきすぐそこでなっているのを見つけて少し摘んだんだ。今が旬でおいしいよ」
どうしよう、あまり食べたい気分でもないなと思っていると、彼はにこりと笑ってさらにずずいと缶を私に差し出した。
有無を言わせぬ強い笑顔。
仕方なく私は手を伸ばす。
「じゃあ一つもらうね」
「どうぞ」
私は缶から一粒いちごを取ると、そのまま口に入れてみる。
甘酸っぱくて美味しいいちごだった。
「……美味しい」
「だろ?自然になっていたにしては上出来だよな」
彼はニコニコ笑うと、自分でも一粒いちごをとって口に放り込んだ。
「ペーターさんなら絶対に食べないよなぁ、こういうの」
美味いのにね、と言いながら彼は私を見た。
いつもの笑顔だったけれど、彼の瞳は私の現状を全て見抜いているようだった。
思わず泣きそうになる。
「……絶対食べないから、ちゃんとお店のクッキーを渡したよ」
小さな声で言うと、エースは「そう」と言ってうなずいた。
しばらく黙っていた私とエースだったけれど、彼が不意にこう言った。
「俺、人の趣味にあれこれ口を出すつもりはないんだけど……」
彼は手を伸ばして、私の頭を撫でる。
「名無しさんには俺の方がいいと思うよ」
ぬけぬけとそんなことを言うエース。
元気づけてくれているのか、なんなのか今一つわからないけれど、彼の言葉に私の泣きスイッチが入ってしまった。
「なに馬鹿なこと言ってるの」
そう言いながら、体当たりする勢いで私はエースの胸に飛び込んだ。
彼は少しもよろけずに受け止めてくれた。
「私はフラフラ迷子になる人よりも、真面目でちょっと潔癖なくらいの方がいいと思うの」
「ははは!ひどいなー」
エースはそう言って笑ったけれど、すぐにこう反論した。
「名無しさん。一緒に迷子になるのは楽しいけど、潔癖の人と一緒にいるってつらくない?しかも真面目過ぎてズレてるし」
「…………」
何も言い返せない私の背中をエースはしばらくポンポンと撫でてくれた。
「だから、名無しさんには俺の方がいいと思うんだけどな」
そんなつぶやきが頭の上から聞こえた。
今すぐ彼の言葉にうなずくことなんてできるわけがない。
私はペーターさんのことがやっぱり好きだし、エースのことは友達にしか思えない。
けれど、もしかしたら今とは違う気持ちでエースの胸におさまる日が、いつか来るのかもしれない。
彼の胸で泣きながらそんなことを考えたら、ちょっと楽になった気がする。