真夏のティーパーティー!その2
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【おまけ 春】
いつからか私は自分の中に恋心が芽生えていることに気づいた。
気づいた時点で失恋も決定していたので、自分でも笑えてしまったけれど。
この気持ちが早くどこかに消えてなくなればいいのに、と私は今日も願っている。
春はなんだか気分があがる。
ぽかぽかと気持ちがいいし、花があちこちに咲き乱れていて綺麗だし、みんな楽しそうだし。
私は城下町で買った春限定のクッキーを手に、ハートの城を目指していた。
ペーターさんにあげるのだ。
彼は手作りクッキーを喜ばない。
いや、アリスの手作りクッキーなら発狂するくらいに喜ぶ。
もったいなくて食べられない、というくらいにありがたがる。
しかし、それはアリス限定だ。
他人が作った食物(お城やちゃんとした店以外の物)は口にしない。
彼曰く「雑菌だらけ」ということらしい。
私は彼に友達として認められているけれど、食べ物を作って渡したことは一度もない。
断られるのが怖いからだ。
彼とは友達だけれど、手作りの物を食べてくれるほどではないと思う。
ペーターさんから拒否されたら立ち直れない。
それくらいに私は彼のことが好きなのだ。彼は私を友達だと思っているけれど。
私の実ることのない恋心は、このままにしておいたらどうなるんだろう?
たまによくわからなくなるけれど、アリスの次(だいぶ差がついての次)には気に入ってくれているらしいので満足しよう。するしかない。
ハートの城に着くと、ペーターさんはすでに約束の場所にいた。
私に気づくと彼は綺麗に微笑んだ。
「こんにちは、名無しさん」
「ペーターさん、こんにちは! ごめんなさい、待たせちゃった」
ちょっぴりドキドキしたけれど、彼に会うのが嬉しくて私は頬が緩むのを抑えられない。
「いいえ、大丈夫ですよ。ちょうど花壇の様子を見ていましたから」
彼はそう言ってものすごく優しい表情で、すぐそばの花壇に目をやった。
「アリスが好きだといった花がもうすぐ咲きそうなんです」
アリスの名を口にした瞬間のペーターさんは、幸せそうに笑った。
見ると、花壇に植えられた花のつぼみが膨らみ、今にも咲きそうだった。
アリスの好きな花。
雑菌を嫌がる彼が、泥まみれになって世話をしていたという花。
「これが咲いたら、アリスもきっと喜びますよね?」
ペーターさんはそう言って私を見た。
彼はいつも私で確認する。
アリスが喜ぶかどうか、アリスが好きな物かどうか、アリスが嫌がらないかどうか……。
私よりもずっと頭がいいはずなのに、そういうところはてんで疎い。
なんでわからないのかな?
私よりも彼の方がアリスのことをよく見ているのに。
なんでわからないのかな?
私がどんな思いで彼の質問にいつも答えているのか。……なんでわからないのかな?
じっと考え込む私を、ペーターさんは不安そうに覗き込んできた。
「……名無しさん?」
心配そうな赤い目がじっと私を見ている。
他の人には絶対に見せない表情だ。
アリス一筋なペーターさんだけれど、心配なら私のこともしてくれる。
私はにこりと笑って見せた。
「ペーターさん。この花が咲いたらきっと、アリスはすごく喜ぶと思いますよ」
そういうと、彼はぱぁっと顔を輝かせた。
「本当ですか!?」
「はい」
「あぁ、よかった。名無しさんが言うのなら間違いありません!」
ペーターさんはそう言って、ほっとしたように笑った。
「いや、そんな確信を持たれても困りますけど……」
「いいえ!!名無しさんが言うなら絶対大丈夫です! アリスとあなたは似た所がありますから、名無しさんがいいと言えばアリスもいいに決まっています!!」
自信満々にそう言い切ったペーターさん。
似た所?
似た所があったとしても、アリスとの差は大きすぎる。
「……似ていてもダメなんですよね?」
思わずそうつぶやいてしまった。
すると、彼はよく聞こえなかったらしく「なんですか?」と首を傾げた。
私はしばらく彼をじっと眺めてから、大きく深呼吸をした。
「ペーターさん。春限定のお菓子を買って来たんです。どうぞ」
クッキーを差し出す私。
「いいんですか? ありがとうございます!」
彼はそう言ってふわりと綺麗に微笑んで、クッキーを受け取った。
「せっかくですから、今一緒に食べませんか?」と言ってくれたペーターさん。
でも、なんだかどうしても彼とこれ以上一緒にいるのは無理だった。
「ごめんなさい、ペーターさん。私、実はちょっと急用ができちゃってすぐに帰らなくちゃいけないんです」
「そうなんですか? 残念です……」
本当に残念そうに言ってくれたことが嬉しくて、苦しい。
「すみません、また遊びに来ます!」
「えぇ、来てください」
うなずくペーターさんに手を振って、私はくるりと向きを変えると、早足でその場を逃げる。
逃げて逃げて逃げて、ハートの城の城門まできて、ほっと息を吐いた。
そろそろキツイ。胸が苦しすぎる。
アリスの好きな花が咲く頃には、私、どうにかなってしまうんじゃないだろうか。
私の実ることのないこの恋心は一体どこへ向かうんだろう?
行き場のない気持ちは綺麗に消えてなくなればいいのに。
いつからか私は自分の中に恋心が芽生えていることに気づいた。
気づいた時点で失恋も決定していたので、自分でも笑えてしまったけれど。
この気持ちが早くどこかに消えてなくなればいいのに、と私は今日も願っている。
春はなんだか気分があがる。
ぽかぽかと気持ちがいいし、花があちこちに咲き乱れていて綺麗だし、みんな楽しそうだし。
私は城下町で買った春限定のクッキーを手に、ハートの城を目指していた。
ペーターさんにあげるのだ。
彼は手作りクッキーを喜ばない。
いや、アリスの手作りクッキーなら発狂するくらいに喜ぶ。
もったいなくて食べられない、というくらいにありがたがる。
しかし、それはアリス限定だ。
他人が作った食物(お城やちゃんとした店以外の物)は口にしない。
彼曰く「雑菌だらけ」ということらしい。
私は彼に友達として認められているけれど、食べ物を作って渡したことは一度もない。
断られるのが怖いからだ。
彼とは友達だけれど、手作りの物を食べてくれるほどではないと思う。
ペーターさんから拒否されたら立ち直れない。
それくらいに私は彼のことが好きなのだ。彼は私を友達だと思っているけれど。
私の実ることのない恋心は、このままにしておいたらどうなるんだろう?
たまによくわからなくなるけれど、アリスの次(だいぶ差がついての次)には気に入ってくれているらしいので満足しよう。するしかない。
ハートの城に着くと、ペーターさんはすでに約束の場所にいた。
私に気づくと彼は綺麗に微笑んだ。
「こんにちは、名無しさん」
「ペーターさん、こんにちは! ごめんなさい、待たせちゃった」
ちょっぴりドキドキしたけれど、彼に会うのが嬉しくて私は頬が緩むのを抑えられない。
「いいえ、大丈夫ですよ。ちょうど花壇の様子を見ていましたから」
彼はそう言ってものすごく優しい表情で、すぐそばの花壇に目をやった。
「アリスが好きだといった花がもうすぐ咲きそうなんです」
アリスの名を口にした瞬間のペーターさんは、幸せそうに笑った。
見ると、花壇に植えられた花のつぼみが膨らみ、今にも咲きそうだった。
アリスの好きな花。
雑菌を嫌がる彼が、泥まみれになって世話をしていたという花。
「これが咲いたら、アリスもきっと喜びますよね?」
ペーターさんはそう言って私を見た。
彼はいつも私で確認する。
アリスが喜ぶかどうか、アリスが好きな物かどうか、アリスが嫌がらないかどうか……。
私よりもずっと頭がいいはずなのに、そういうところはてんで疎い。
なんでわからないのかな?
私よりも彼の方がアリスのことをよく見ているのに。
なんでわからないのかな?
私がどんな思いで彼の質問にいつも答えているのか。……なんでわからないのかな?
じっと考え込む私を、ペーターさんは不安そうに覗き込んできた。
「……名無しさん?」
心配そうな赤い目がじっと私を見ている。
他の人には絶対に見せない表情だ。
アリス一筋なペーターさんだけれど、心配なら私のこともしてくれる。
私はにこりと笑って見せた。
「ペーターさん。この花が咲いたらきっと、アリスはすごく喜ぶと思いますよ」
そういうと、彼はぱぁっと顔を輝かせた。
「本当ですか!?」
「はい」
「あぁ、よかった。名無しさんが言うのなら間違いありません!」
ペーターさんはそう言って、ほっとしたように笑った。
「いや、そんな確信を持たれても困りますけど……」
「いいえ!!名無しさんが言うなら絶対大丈夫です! アリスとあなたは似た所がありますから、名無しさんがいいと言えばアリスもいいに決まっています!!」
自信満々にそう言い切ったペーターさん。
似た所?
似た所があったとしても、アリスとの差は大きすぎる。
「……似ていてもダメなんですよね?」
思わずそうつぶやいてしまった。
すると、彼はよく聞こえなかったらしく「なんですか?」と首を傾げた。
私はしばらく彼をじっと眺めてから、大きく深呼吸をした。
「ペーターさん。春限定のお菓子を買って来たんです。どうぞ」
クッキーを差し出す私。
「いいんですか? ありがとうございます!」
彼はそう言ってふわりと綺麗に微笑んで、クッキーを受け取った。
「せっかくですから、今一緒に食べませんか?」と言ってくれたペーターさん。
でも、なんだかどうしても彼とこれ以上一緒にいるのは無理だった。
「ごめんなさい、ペーターさん。私、実はちょっと急用ができちゃってすぐに帰らなくちゃいけないんです」
「そうなんですか? 残念です……」
本当に残念そうに言ってくれたことが嬉しくて、苦しい。
「すみません、また遊びに来ます!」
「えぇ、来てください」
うなずくペーターさんに手を振って、私はくるりと向きを変えると、早足でその場を逃げる。
逃げて逃げて逃げて、ハートの城の城門まできて、ほっと息を吐いた。
そろそろキツイ。胸が苦しすぎる。
アリスの好きな花が咲く頃には、私、どうにかなってしまうんじゃないだろうか。
私の実ることのないこの恋心は一体どこへ向かうんだろう?
行き場のない気持ちは綺麗に消えてなくなればいいのに。