真夏のティーパーティー!その2
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【3.流しそうめん】
夏のイベント開催中の遊園地。
今日はスタンプラリーに参加している私。
スタンプが全部集まったらゴーランドから良い物がもらえるらしい。
全部で10個のスタンプを集めるのだけれど、残り2つのスタンプが全然見つからない。
「どこにあるんだろう?」
クイズ形式になっているので、答えの場所にスタンプがあるのだけれど、どうしてもわからなかった。
ボリスに聞こうと思ったけど、彼はどうやら避暑地として帽子屋屋敷に出かけているようだったし
従業員さん達も「がんばって考えてくださいねー!」というだけでヒントすらくれなかった。
「あー、もう暑いし諦めちゃおうかなぁ」
半ば諦めながらフラフラと歩いていると、いつのまにかプールエリアにたどり着いた。
スライダー付近にわーわー人が集まっていて、すごい人気だなぁなんて思ってみていたが、ふとあることに気づいた。
「うわ、ほんとに流しそうめんをしてる……!」
呆気にとられて私は1人立ち尽くした。
夏の遊園地にはプールもある。
流れるプール、波のプール、普通のプール、スライダーやらいろんな仕掛けが満載のプール。
暑い夏には最高に楽しい遊び場で、人がすごい。
すごいけど、さすがにスライダーで流しそうめんというのはいかがなものか?
ご丁寧にスライダーの脇には足場が組んであり、そうめんを掬おうとする人々が群がっていた。
「……全力にもほどがあるよね、ゴーランド」
私は遥か上から楽しそうにそうめんをスライダーに流しいれているゴーランドを見て、呟いた。
取りきれなかったそうめんはプールをぷかぷかと漂っている。
一応流しそうめん専用のプールらしく、プール内のそうめんは食べてもOKらしい。(いや、私は食べたくないけど!)
流しそうめんの会場と化したプールをひたすら観察している私に、従業員さんが声をかけて来た。
「名無しさんさん!こんにちわー!!どうです?流しそうめん食べませんか!?」
「食べて行ってくださいよー!オーナーも喜びますよ」
「いえ、私今スタンプラリー中で……」
「えー、そうなんですかぁ!?じゃあちょっとそうめんでも食べて休憩していったらどうです!?」
「いや、でも見てるだけでも十分楽しいし」
「なに言ってるんですか! 食べたら100倍楽しいです!!」
「そうですそうです! そうめんだけじゃなくてたまにスイカとかも流れてきますから」
「え、スイカ?!」
流しそうめんでスイカが流れてくるの?
驚く私に従業員さんたちは慌てて付け足した。
「あ、大丈夫ですよ。丸ごとじゃなくてちゃんと食べやすいサイズに切ったスイカが流れてきます」
「丸ごとだとキャッチできませんもんね~!」
「……あぁ、うん。そうだよね」
もうだめだ。何を言ってもこの人たちには通じない。
観念した私に、従業員さんたちはにこにこ笑いながらお箸とお椀を渡してくるのだった。
「よー!!名無しさん!来たな!!」
スライダーの頂上からゴーランドが手を振ってきた。
私は乾いた笑みを浮かべて彼に手を振りかえす。
「たーんと食って行けよ!!あんたを満足させるまで、俺はここからそうめんを流し続けるからな!」
「お手柔らかにお願いします」
そう答えた私に、従業員さんの熱血指導が入る。
「名無しさんさん、横からじゃなくてこうちょっと下から斜め上にお箸を入れて……」
ガチだ。これはガチですよ。
本気で遊ばないとこの人たちは納得しない。
私は頭を切り替えることにした。常識というものはこの世界で通じない。わかっていたはずだ。
「よし!食べてやる!!来い……!」
私はスライダーの上の方を見据えた。
「よーし!行くぜー!」
ゴーランドがそう言って、そうめんを流した。
それを待ち構える人々が一斉にスライダーに向かう。
「わ!? 来た!!!」
思った以上にスピードが速い。スライダーの角度と高さで、相当難易度の高い流しそうめんになっているようだった。
勢いよくびゅんびゅん流れていくそうめん。
私は従業員さんの熱血指導のおかげでなんとかそうめんをゲットした。
「やったー! すごい、なにこの達成感……!!」
そうめんを掬えたことがなんだかものすごく嬉しいのですが……!
思わず従業員さんを見ると、彼らはうんうんうなずいて私を見ていた。(師匠……!!)
それから流しそうめんを堪能した私。
そうめんとスイカの他に、いちごやカップアイスなども流れてくるというとんでもないものだったけれど、もはやどんと来い!状態だった。
「あー、おなかいっぱい」
流れてきたバニラのカップアイスを食べながら、私はなんだかんだ楽しく満足している自分に気づいた。
「すごいね、遊園地って楽しいね」
近くの従業員さんにそう言うと、彼らは私の腕をがしっと掴んだ。
「ほんとですか!? わー!嬉しいです!! 名無しさんさんに喜んでもらえるなんて!」
「従業員冥利に尽きます!!」
「大袈裟だなぁ」
「大袈裟じゃないですよー! 私たちはみなさんに楽しく遊んでもらえるのが一番うれしいんですからね!!」
「そうですよ。私達、オーナーについてきて本当に良かった……!!」
彼らはそう言って感極まった様子で目頭を押さえた。
あらら、泣いちゃった。オーナーはけっこう尊敬されているのですね。
そう思ってゴーランドの方を見る。
すると、思いもよらない状況が彼の身に起こっていた。
黄色い服のゴーランドの隣りに赤い服。
「おい、お前なんでこんなところにいるんだよ?」
「えー、楽しそうだったからだよ」
「おいおい、勘弁してくれよ。その辺をうろうろ迷うのはいいが、ここまでわざわざ登ってくるじゃねぇ」
「ははは! ひどいなー。いいじゃないか。俺だってたまにはスライダーを登ってみたいんだよ」
呆れ顔のゴーランドに、にこにこ爽やかに笑いかけているのはどう見てもエースだった。
「……うわー、いつのまに?」
唖然とする私。
「ねぇ、俺もちょっと流してみていい? 旅の途中でちょうど良い物を見つけたんだ」
「別にいいけど、お前わけわからないもん流すんじゃないだろうな? ちゃんと食えるものにしろよ」
「大丈夫だよ。美味しいから」
エースはそう言って、袋から赤くて丸い物を取り出した。
「りんごか」
「うん。これ、そうとう早く転がっていくから取るのは難しいと思うけど」
「転がすんじゃなくて、あくまで流すのが鉄則なんだぜ?」
「ははは! 似たようなものじゃないか」
彼はそう言って笑いながら、こちらを見た。
そして私に気づいたらしい。
「あれ、名無しさんじゃないか。おーい!」
にこにこ手を振るエース。
「いまから美味しいりんごを転がすからさ。しっかりキャッチしてくれよ!」
「り、りんご?」
え、と思う間もなくエースは大きな袋を逆さまにした。
中からありえない数のりんごがばらばらっと転がり出てくる。
「わ、ちょっ! お前馬鹿か!? 一度にそんな量を……!!」
「え、なに? ダメだった?」
「いや、ダメだろ。箸折れるんじゃねぇか?」
呑気に笑う上の2人。
スライダーを囲む私たちは必死だった。
ゴロゴロとすごい勢いで赤いリンゴが転がり落ちてくる。
「これは無理でしょ」
お箸っていうか手じゃないと無理だ。
どんどんスピードを上げながら落ちてくるりんご。
押し寄せる真っ赤なそれに軽い恐怖すら覚える私だった。
夏のイベント開催中の遊園地。
今日はスタンプラリーに参加している私。
スタンプが全部集まったらゴーランドから良い物がもらえるらしい。
全部で10個のスタンプを集めるのだけれど、残り2つのスタンプが全然見つからない。
「どこにあるんだろう?」
クイズ形式になっているので、答えの場所にスタンプがあるのだけれど、どうしてもわからなかった。
ボリスに聞こうと思ったけど、彼はどうやら避暑地として帽子屋屋敷に出かけているようだったし
従業員さん達も「がんばって考えてくださいねー!」というだけでヒントすらくれなかった。
「あー、もう暑いし諦めちゃおうかなぁ」
半ば諦めながらフラフラと歩いていると、いつのまにかプールエリアにたどり着いた。
スライダー付近にわーわー人が集まっていて、すごい人気だなぁなんて思ってみていたが、ふとあることに気づいた。
「うわ、ほんとに流しそうめんをしてる……!」
呆気にとられて私は1人立ち尽くした。
夏の遊園地にはプールもある。
流れるプール、波のプール、普通のプール、スライダーやらいろんな仕掛けが満載のプール。
暑い夏には最高に楽しい遊び場で、人がすごい。
すごいけど、さすがにスライダーで流しそうめんというのはいかがなものか?
ご丁寧にスライダーの脇には足場が組んであり、そうめんを掬おうとする人々が群がっていた。
「……全力にもほどがあるよね、ゴーランド」
私は遥か上から楽しそうにそうめんをスライダーに流しいれているゴーランドを見て、呟いた。
取りきれなかったそうめんはプールをぷかぷかと漂っている。
一応流しそうめん専用のプールらしく、プール内のそうめんは食べてもOKらしい。(いや、私は食べたくないけど!)
流しそうめんの会場と化したプールをひたすら観察している私に、従業員さんが声をかけて来た。
「名無しさんさん!こんにちわー!!どうです?流しそうめん食べませんか!?」
「食べて行ってくださいよー!オーナーも喜びますよ」
「いえ、私今スタンプラリー中で……」
「えー、そうなんですかぁ!?じゃあちょっとそうめんでも食べて休憩していったらどうです!?」
「いや、でも見てるだけでも十分楽しいし」
「なに言ってるんですか! 食べたら100倍楽しいです!!」
「そうですそうです! そうめんだけじゃなくてたまにスイカとかも流れてきますから」
「え、スイカ?!」
流しそうめんでスイカが流れてくるの?
驚く私に従業員さんたちは慌てて付け足した。
「あ、大丈夫ですよ。丸ごとじゃなくてちゃんと食べやすいサイズに切ったスイカが流れてきます」
「丸ごとだとキャッチできませんもんね~!」
「……あぁ、うん。そうだよね」
もうだめだ。何を言ってもこの人たちには通じない。
観念した私に、従業員さんたちはにこにこ笑いながらお箸とお椀を渡してくるのだった。
「よー!!名無しさん!来たな!!」
スライダーの頂上からゴーランドが手を振ってきた。
私は乾いた笑みを浮かべて彼に手を振りかえす。
「たーんと食って行けよ!!あんたを満足させるまで、俺はここからそうめんを流し続けるからな!」
「お手柔らかにお願いします」
そう答えた私に、従業員さんの熱血指導が入る。
「名無しさんさん、横からじゃなくてこうちょっと下から斜め上にお箸を入れて……」
ガチだ。これはガチですよ。
本気で遊ばないとこの人たちは納得しない。
私は頭を切り替えることにした。常識というものはこの世界で通じない。わかっていたはずだ。
「よし!食べてやる!!来い……!」
私はスライダーの上の方を見据えた。
「よーし!行くぜー!」
ゴーランドがそう言って、そうめんを流した。
それを待ち構える人々が一斉にスライダーに向かう。
「わ!? 来た!!!」
思った以上にスピードが速い。スライダーの角度と高さで、相当難易度の高い流しそうめんになっているようだった。
勢いよくびゅんびゅん流れていくそうめん。
私は従業員さんの熱血指導のおかげでなんとかそうめんをゲットした。
「やったー! すごい、なにこの達成感……!!」
そうめんを掬えたことがなんだかものすごく嬉しいのですが……!
思わず従業員さんを見ると、彼らはうんうんうなずいて私を見ていた。(師匠……!!)
それから流しそうめんを堪能した私。
そうめんとスイカの他に、いちごやカップアイスなども流れてくるというとんでもないものだったけれど、もはやどんと来い!状態だった。
「あー、おなかいっぱい」
流れてきたバニラのカップアイスを食べながら、私はなんだかんだ楽しく満足している自分に気づいた。
「すごいね、遊園地って楽しいね」
近くの従業員さんにそう言うと、彼らは私の腕をがしっと掴んだ。
「ほんとですか!? わー!嬉しいです!! 名無しさんさんに喜んでもらえるなんて!」
「従業員冥利に尽きます!!」
「大袈裟だなぁ」
「大袈裟じゃないですよー! 私たちはみなさんに楽しく遊んでもらえるのが一番うれしいんですからね!!」
「そうですよ。私達、オーナーについてきて本当に良かった……!!」
彼らはそう言って感極まった様子で目頭を押さえた。
あらら、泣いちゃった。オーナーはけっこう尊敬されているのですね。
そう思ってゴーランドの方を見る。
すると、思いもよらない状況が彼の身に起こっていた。
黄色い服のゴーランドの隣りに赤い服。
「おい、お前なんでこんなところにいるんだよ?」
「えー、楽しそうだったからだよ」
「おいおい、勘弁してくれよ。その辺をうろうろ迷うのはいいが、ここまでわざわざ登ってくるじゃねぇ」
「ははは! ひどいなー。いいじゃないか。俺だってたまにはスライダーを登ってみたいんだよ」
呆れ顔のゴーランドに、にこにこ爽やかに笑いかけているのはどう見てもエースだった。
「……うわー、いつのまに?」
唖然とする私。
「ねぇ、俺もちょっと流してみていい? 旅の途中でちょうど良い物を見つけたんだ」
「別にいいけど、お前わけわからないもん流すんじゃないだろうな? ちゃんと食えるものにしろよ」
「大丈夫だよ。美味しいから」
エースはそう言って、袋から赤くて丸い物を取り出した。
「りんごか」
「うん。これ、そうとう早く転がっていくから取るのは難しいと思うけど」
「転がすんじゃなくて、あくまで流すのが鉄則なんだぜ?」
「ははは! 似たようなものじゃないか」
彼はそう言って笑いながら、こちらを見た。
そして私に気づいたらしい。
「あれ、名無しさんじゃないか。おーい!」
にこにこ手を振るエース。
「いまから美味しいりんごを転がすからさ。しっかりキャッチしてくれよ!」
「り、りんご?」
え、と思う間もなくエースは大きな袋を逆さまにした。
中からありえない数のりんごがばらばらっと転がり出てくる。
「わ、ちょっ! お前馬鹿か!? 一度にそんな量を……!!」
「え、なに? ダメだった?」
「いや、ダメだろ。箸折れるんじゃねぇか?」
呑気に笑う上の2人。
スライダーを囲む私たちは必死だった。
ゴロゴロとすごい勢いで赤いリンゴが転がり落ちてくる。
「これは無理でしょ」
お箸っていうか手じゃないと無理だ。
どんどんスピードを上げながら落ちてくるりんご。
押し寄せる真っ赤なそれに軽い恐怖すら覚える私だった。