真夏のティーパーティー!その2
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【1.かくれんぼ大会】
エイプリルシーズンの到来で、この国にも季節がやってきた。
おかしな国にやってきた季節とはどんなものなのか興味があった私は、滞在地を出てあちこち出かけまわっていた。
そんな私が今回やってきたのは、いつでもにぎやかなここ! 真夏の遊園地!
夏は暑さにうんざりするものの、やっぱりなんだか思いっきり遊びたい。
そんな人々の心を見透かしたように、遊園地ではこの夏、たくさんのイベントを考えているらしい。
何も知らずに「夏はどんな感じだろうなぁ?」とやってきた私。
するとゴーランドがすごく楽しそうに私を迎え入れてくれた。
「おー、名無しさん! いいタイミングで来てくれたな!」
彼は機嫌よさそうに笑った。
「ちょうど今から夏の一大イベントが始まるところなんだ。名無しさんも遊んで行けよ」
「一大イベント?」
首を傾げる私に、ゴーランドは持っていたチラシを私に渡す。
「今から数時間帯は通常営業にプラスしてたくさんのイベントをすることにしたんだ。
夏の遊園地にふさわしく、とびっきり楽しいことをみんなでドカンとしようぜ」
「わー!なんだかすっごく楽しそうだね」
ゴーランドのワクワク感につられて、私もワクワクしてくる。
受け取ったチラシにはこう書かれてあった。
『遊園地に夏が来た!! とびきりの思い出を夏の遊園地で作ろう!
春でぼんやり眠くなったあなた、秋の食欲に負けて食べ過ぎてしまっているあなた、冬の寒さで人恋しいあなた、夏にうずうずしているあなた。
みんなで遊園地を遊びつくそう!この夏はとびきりのイベントが目白押し!!』
ここまででだいぶテンションが高い。隣にはこの遊園地のマスコットキャラクター(ゴーランドデザインでブサカワ系)が描かれてある。
さらに読み進めてみた。
『1.園内一斉かくれんぼ大会
遊園地全域でかくれんぼ!従業員に見つかるな!隠れきった人には賞品アリ!
2.縁日で楽しもう
期間中は遊園地中に縁日が出現!夏の醍醐味!射的に金魚すくい、かき氷にラムネ、アイス、焼きそばもあるよ。
3.流しそうめんを食べよう
遊園地では流しそうめんも超弩級!プールエリアのスライダーから落ちてくるそうめんを君はすくえるか!?
4.スタンプラリー
園内のあちこちを巡ってスタンプを集めよう!全てのスタンプを押せたらオーナーからご褒美が!
その他にも楽しいイベントがいっぱい!!このエイプリルシーズンはぜひ真夏の遊園地で!!』
「……なんだかすごいね。ここぞとばかりに遊園地と夏を遊べるんだね」
チラシから感じるハイテンションぶりに少々気おくれしつつ、感想を述べるとゴーランドは「そうだろう?」と満足そうに笑った。
「夏は思いっきり遊ぶのに良い季節だ。少し羽目を外すくらいがちょうどいいんだぜ。あんたもこっちに滞在するといいのに」
「いや、テンションについていけないかもしれないから……」
その時だった。
従業員さんがわーわー言いながらやってきたのだ。
「あー、いたいた!オーナー!!準備できましたよー!かくれんぼ大会、始めちゃいましょー!!」
「おー!できたか!よし、じゃあ始めるか」
ゴーランドはそう言って、私を見る。
「園内一斉かくれんぼ大会がちょうどこれから始まるところなんだ。名無しさんも隠れて行けよ」
「そうですよー! 名無しさんさんも隠れて行ってください! 私達が全力で見つけちゃいますけどね!!」
「不思議な誘い文句だねぇ」
名無しさんも隠れて行け、なんて初めて言われたなぁ。
なんだか脱力してしまう私。
よくわからないけれど、半ば強引に「園内一斉かくれんぼ大会」に参加することになった私だった。
ルールは簡単で、遊園地内に一定時間隠れていればいいらしい。
従業員さん50人が鬼で、参加者は場所を移動してもいいから、とにかくタッチされなければOKということだった。
でも、園内に詳しい従業員さんから逃れるというのはきっと容易じゃないだろう。
「あぁ、もうかなりドキドキする。こういうのちょっと苦手かも」
かくれんぼ大会参加者が身に着けるようにと渡された青いブレスレット型の参加券を右手にはめながら、ため息をついた。
従業員さんにタッチされるとブレスレットは赤く光るのだそうだ。
私はあまり遊園地に詳しくない。きっとすぐに見つかるんだろうなぁ。
そう思いつつ、とりあえず木の茂みに隠れてみた。
かくれんぼに参加していない人々ももちろんいて、彼らは楽しそうに園内を歩き回ったり、列に並んだりしていた。
それを眺めていたら、ものすごーく不思議な気持ちになる。
「……なにやってるんだろ、私」
1人でこうして隠れているのが切ないというか、本当に他の人たちも隠れてるのかな?とか、色々な思いが浮かんでは消える。
あぁ、もう早く見つかった方がいいのかもしれない。
そう思った時だった。
「みーつけた」
「ひゃっ!?」
突然の声に私は思いっきりびくっとしてしまった。
あたりをきょろきょろと見回したけれど、誰もいない。
「え、あれ?どこ??」
ドクドクしている心臓を押さえつつつぶやくと、上からくすくすと笑い声がした。
見上げると、私の座っていた木の上にピンク色の彼が寝そべっていたのだった。
「ボリス!?」
「こんにちは、名無しさん。かくれんぼ?」
彼は木の上から私を見下ろしてそう言った。
「うん。強制参加って感じなんだけど。ボリスも?」
「いーや、俺はここで涼んでたんだ。暑いよね。こんなに暑いとおかしくなるよ」
彼はそう言いながらふぅっとため息をついた。
確かにいつもの飄々とした感じというよりは、ちょっと疲れた感じがあった。
「そのもこもこを外せば少しは涼しいんじゃない?」
「えーだめだよ。これは俺のアイデンティティ」
「そうかもしれないけど見てるだけで暑そう」
「……おっさんにもよく言われるよ、それ」
ボリスは苦笑いする。
「ところで名無しさん。そこ、すぐに見つかっちゃうと思うよ」
「うん、でも遊園地のことよくわからないし、いっそのことさっさと見つかった方がいいのかなと思ってたところでね」
素直にそう白状するとボリスが言った。
「せっかく参加してるなら、最後まで勝ち残ろうぜ~」
言ってることは前向きだけど、暑さのせいで口調はだらっとしていた。(珍しいなぁ)
「こっちに来なよ」
「え?」
「ここ。木の上。実はここってけっこう見つからないんだぜ。風が通るから、下よりも涼しいし」
彼はそういって笑うと、手を伸ばしてきた。
「ほら、名無しさん。おいでよ」
「登れるかなぁ?」
「平気だって。ほら、早く。見つかっちゃうよ?」
急かされるような言葉に私は慌ててボリスの手を取った。
なんとか上まで上り、彼の隣に座る。
木の幹に手をついて下を見たら、思ったよりも高かった。
「うわぁ、ちょっと怖いかも!」
「大丈夫だよ。大人しく座ってれば安全。涼しいし、良いだろ?」
彼はにこりと笑ってそう言った。
そよそよと風が吹き抜け、木の葉や私達の髪の毛をなでていく。
汗ばんだ体にすっと風が冷たく感じた。
「ほんとだ。風が通って気持ちいい」
「しばらくここにいればいいよ」
肩と肩が触れ合う距離でボリスが笑うから、私は思い切り動揺した。
そんなに綺麗な笑顔を間近で見せられたら仕方ないと思う。
「名無しさんが落ちないように、ちゃんと支えておいてあげる」
ボリスはそう言って私の肩に手を回した。
元からスキンシップの多いタイプの人だとは思うけど、木の上だと逃げ場がなくてどうしていいのかわからない。
困り果てる私を見てボリスはくくっと笑った。
「大人しくしてなきゃダメだよ。落ちないようにしないとね」
獲物を捕まえた時のような目で彼はそう言って顔を寄せる。
かくれんぼには見つからないかもしれないけれど、一番見つかってはいけない人に見つかった気がする。
逃げ場のない木の上で、妖艶に笑う彼を見てそう思った私だった。
かくれんぼ終了時間をだいぶすぎてから、私はトボトボと園内を歩く。いつのまにか時間帯は夕方に変わっていた。
フラフラ歩く私を見つけたゴーランドが声をかけて来た。
「おー、名無しさん!あんたどこに隠れてたんだよ? 全然見つからないって従業員が言ってたぜ?」
「え、うん、木の上だけど……」
「木の上!? そりゃあ意外すぎて見つからねーよなぁ。ボリスならともかく、まさか名無しさんが木の上にいるなんて思わないからな」
「う、うん」
ボリスの名に思わずびくりとしたけれど、ゴーランドは気づかないようだった。
「ボリスといやぁ、あいつ夏に弱くてな。おとなしくていいんだが、なんだか調子が狂うんだ」
「……へぇ、うん。そっか。っていうかおとなしいかな?」
「あ? なんだ?」
「ううん、なんでもない」
私の言葉にゴーランドは首を傾げる。
「まぁ、とにかくあんたはどこにもいないし終了時間になっても戻ってこないから、てっきり帰ったのかと思ったぜ。
せっかく隠れ切ったのに、戻ってこないから賞品はぜーんぶ他の奴にあげちまったよ。悪いな」
「ううん、全然気にしないで。いいのいいの……」
「……なんかあんた疲れてないか?」
「え!? 疲れるってほど何かしたわけじゃ……いや、うん。疲れたかもしれない」
「まぁなぁ、木の上なんて猫でもない限り落ち着かねぇよ」
カラカラ笑うゴーランドに、私は「そうだね」と力なく答えるのだった。
エイプリルシーズンの到来で、この国にも季節がやってきた。
おかしな国にやってきた季節とはどんなものなのか興味があった私は、滞在地を出てあちこち出かけまわっていた。
そんな私が今回やってきたのは、いつでもにぎやかなここ! 真夏の遊園地!
夏は暑さにうんざりするものの、やっぱりなんだか思いっきり遊びたい。
そんな人々の心を見透かしたように、遊園地ではこの夏、たくさんのイベントを考えているらしい。
何も知らずに「夏はどんな感じだろうなぁ?」とやってきた私。
するとゴーランドがすごく楽しそうに私を迎え入れてくれた。
「おー、名無しさん! いいタイミングで来てくれたな!」
彼は機嫌よさそうに笑った。
「ちょうど今から夏の一大イベントが始まるところなんだ。名無しさんも遊んで行けよ」
「一大イベント?」
首を傾げる私に、ゴーランドは持っていたチラシを私に渡す。
「今から数時間帯は通常営業にプラスしてたくさんのイベントをすることにしたんだ。
夏の遊園地にふさわしく、とびっきり楽しいことをみんなでドカンとしようぜ」
「わー!なんだかすっごく楽しそうだね」
ゴーランドのワクワク感につられて、私もワクワクしてくる。
受け取ったチラシにはこう書かれてあった。
『遊園地に夏が来た!! とびきりの思い出を夏の遊園地で作ろう!
春でぼんやり眠くなったあなた、秋の食欲に負けて食べ過ぎてしまっているあなた、冬の寒さで人恋しいあなた、夏にうずうずしているあなた。
みんなで遊園地を遊びつくそう!この夏はとびきりのイベントが目白押し!!』
ここまででだいぶテンションが高い。隣にはこの遊園地のマスコットキャラクター(ゴーランドデザインでブサカワ系)が描かれてある。
さらに読み進めてみた。
『1.園内一斉かくれんぼ大会
遊園地全域でかくれんぼ!従業員に見つかるな!隠れきった人には賞品アリ!
2.縁日で楽しもう
期間中は遊園地中に縁日が出現!夏の醍醐味!射的に金魚すくい、かき氷にラムネ、アイス、焼きそばもあるよ。
3.流しそうめんを食べよう
遊園地では流しそうめんも超弩級!プールエリアのスライダーから落ちてくるそうめんを君はすくえるか!?
4.スタンプラリー
園内のあちこちを巡ってスタンプを集めよう!全てのスタンプを押せたらオーナーからご褒美が!
その他にも楽しいイベントがいっぱい!!このエイプリルシーズンはぜひ真夏の遊園地で!!』
「……なんだかすごいね。ここぞとばかりに遊園地と夏を遊べるんだね」
チラシから感じるハイテンションぶりに少々気おくれしつつ、感想を述べるとゴーランドは「そうだろう?」と満足そうに笑った。
「夏は思いっきり遊ぶのに良い季節だ。少し羽目を外すくらいがちょうどいいんだぜ。あんたもこっちに滞在するといいのに」
「いや、テンションについていけないかもしれないから……」
その時だった。
従業員さんがわーわー言いながらやってきたのだ。
「あー、いたいた!オーナー!!準備できましたよー!かくれんぼ大会、始めちゃいましょー!!」
「おー!できたか!よし、じゃあ始めるか」
ゴーランドはそう言って、私を見る。
「園内一斉かくれんぼ大会がちょうどこれから始まるところなんだ。名無しさんも隠れて行けよ」
「そうですよー! 名無しさんさんも隠れて行ってください! 私達が全力で見つけちゃいますけどね!!」
「不思議な誘い文句だねぇ」
名無しさんも隠れて行け、なんて初めて言われたなぁ。
なんだか脱力してしまう私。
よくわからないけれど、半ば強引に「園内一斉かくれんぼ大会」に参加することになった私だった。
ルールは簡単で、遊園地内に一定時間隠れていればいいらしい。
従業員さん50人が鬼で、参加者は場所を移動してもいいから、とにかくタッチされなければOKということだった。
でも、園内に詳しい従業員さんから逃れるというのはきっと容易じゃないだろう。
「あぁ、もうかなりドキドキする。こういうのちょっと苦手かも」
かくれんぼ大会参加者が身に着けるようにと渡された青いブレスレット型の参加券を右手にはめながら、ため息をついた。
従業員さんにタッチされるとブレスレットは赤く光るのだそうだ。
私はあまり遊園地に詳しくない。きっとすぐに見つかるんだろうなぁ。
そう思いつつ、とりあえず木の茂みに隠れてみた。
かくれんぼに参加していない人々ももちろんいて、彼らは楽しそうに園内を歩き回ったり、列に並んだりしていた。
それを眺めていたら、ものすごーく不思議な気持ちになる。
「……なにやってるんだろ、私」
1人でこうして隠れているのが切ないというか、本当に他の人たちも隠れてるのかな?とか、色々な思いが浮かんでは消える。
あぁ、もう早く見つかった方がいいのかもしれない。
そう思った時だった。
「みーつけた」
「ひゃっ!?」
突然の声に私は思いっきりびくっとしてしまった。
あたりをきょろきょろと見回したけれど、誰もいない。
「え、あれ?どこ??」
ドクドクしている心臓を押さえつつつぶやくと、上からくすくすと笑い声がした。
見上げると、私の座っていた木の上にピンク色の彼が寝そべっていたのだった。
「ボリス!?」
「こんにちは、名無しさん。かくれんぼ?」
彼は木の上から私を見下ろしてそう言った。
「うん。強制参加って感じなんだけど。ボリスも?」
「いーや、俺はここで涼んでたんだ。暑いよね。こんなに暑いとおかしくなるよ」
彼はそう言いながらふぅっとため息をついた。
確かにいつもの飄々とした感じというよりは、ちょっと疲れた感じがあった。
「そのもこもこを外せば少しは涼しいんじゃない?」
「えーだめだよ。これは俺のアイデンティティ」
「そうかもしれないけど見てるだけで暑そう」
「……おっさんにもよく言われるよ、それ」
ボリスは苦笑いする。
「ところで名無しさん。そこ、すぐに見つかっちゃうと思うよ」
「うん、でも遊園地のことよくわからないし、いっそのことさっさと見つかった方がいいのかなと思ってたところでね」
素直にそう白状するとボリスが言った。
「せっかく参加してるなら、最後まで勝ち残ろうぜ~」
言ってることは前向きだけど、暑さのせいで口調はだらっとしていた。(珍しいなぁ)
「こっちに来なよ」
「え?」
「ここ。木の上。実はここってけっこう見つからないんだぜ。風が通るから、下よりも涼しいし」
彼はそういって笑うと、手を伸ばしてきた。
「ほら、名無しさん。おいでよ」
「登れるかなぁ?」
「平気だって。ほら、早く。見つかっちゃうよ?」
急かされるような言葉に私は慌ててボリスの手を取った。
なんとか上まで上り、彼の隣に座る。
木の幹に手をついて下を見たら、思ったよりも高かった。
「うわぁ、ちょっと怖いかも!」
「大丈夫だよ。大人しく座ってれば安全。涼しいし、良いだろ?」
彼はにこりと笑ってそう言った。
そよそよと風が吹き抜け、木の葉や私達の髪の毛をなでていく。
汗ばんだ体にすっと風が冷たく感じた。
「ほんとだ。風が通って気持ちいい」
「しばらくここにいればいいよ」
肩と肩が触れ合う距離でボリスが笑うから、私は思い切り動揺した。
そんなに綺麗な笑顔を間近で見せられたら仕方ないと思う。
「名無しさんが落ちないように、ちゃんと支えておいてあげる」
ボリスはそう言って私の肩に手を回した。
元からスキンシップの多いタイプの人だとは思うけど、木の上だと逃げ場がなくてどうしていいのかわからない。
困り果てる私を見てボリスはくくっと笑った。
「大人しくしてなきゃダメだよ。落ちないようにしないとね」
獲物を捕まえた時のような目で彼はそう言って顔を寄せる。
かくれんぼには見つからないかもしれないけれど、一番見つかってはいけない人に見つかった気がする。
逃げ場のない木の上で、妖艶に笑う彼を見てそう思った私だった。
かくれんぼ終了時間をだいぶすぎてから、私はトボトボと園内を歩く。いつのまにか時間帯は夕方に変わっていた。
フラフラ歩く私を見つけたゴーランドが声をかけて来た。
「おー、名無しさん!あんたどこに隠れてたんだよ? 全然見つからないって従業員が言ってたぜ?」
「え、うん、木の上だけど……」
「木の上!? そりゃあ意外すぎて見つからねーよなぁ。ボリスならともかく、まさか名無しさんが木の上にいるなんて思わないからな」
「う、うん」
ボリスの名に思わずびくりとしたけれど、ゴーランドは気づかないようだった。
「ボリスといやぁ、あいつ夏に弱くてな。おとなしくていいんだが、なんだか調子が狂うんだ」
「……へぇ、うん。そっか。っていうかおとなしいかな?」
「あ? なんだ?」
「ううん、なんでもない」
私の言葉にゴーランドは首を傾げる。
「まぁ、とにかくあんたはどこにもいないし終了時間になっても戻ってこないから、てっきり帰ったのかと思ったぜ。
せっかく隠れ切ったのに、戻ってこないから賞品はぜーんぶ他の奴にあげちまったよ。悪いな」
「ううん、全然気にしないで。いいのいいの……」
「……なんかあんた疲れてないか?」
「え!? 疲れるってほど何かしたわけじゃ……いや、うん。疲れたかもしれない」
「まぁなぁ、木の上なんて猫でもない限り落ち着かねぇよ」
カラカラ笑うゴーランドに、私は「そうだね」と力なく答えるのだった。