真夏のティーパーティー!
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【おまけ5 ボリス】
「なんか違うな~」
私はおたまを片手に首をひねる。
帽子屋屋敷のキッチンを借りて、ただいまスープ作りに没頭中。
鍋の中には魚介類がたっぷり入ったブイヤベースのようなスープ。
味は悪くない。
悪くないけど、目指しているのと違う。
「なんでだろう? あと何を入れればいいんだろうな~?」
私が目指しているのは、この前ボリスが作ってくれたあのスープ。
アリスと旅行に行った初日に、ボリスが突然やってきた。
あの時に彼が作ってくれたスープがものすごく美味しかった。
だからそれを作りたいのだけれど、どうしてもあの味にならない。
「塩かなぁ?」
スプーンですくって味見をしながら困り果てていると、キッチンのドアが開いた。
「あー、いたいた。名無しさんここにいたんだ~」
探したよ、と言いながら入ってきたのはなんとボリスだった。(素晴らしすぎるタイミング!)
「ボリス!どうしたの?」
「双子達と遊んでたんだ。帰る前に名無しさんに会って行こうと思ってさ。っていうか旅行から帰ってたなら会いに来てほしかったんだけど?」
そう言いながら、ちらりと私を見るボリス。
髪の毛で隠れているため片目しか見えないせいか、視線の動かし方がやけに色っぽく感じる。
「ご、ごめん!」
慌てて謝る私に、冗談だよ、と笑いながら近寄ってくるボリス。
「なんかいい匂いだね。なに作ってるの?」
私の隣りに来ると彼は鍋の中を覗き込む。
「わ、うまそう!」
「うーん、でもね、なんか味が足りないの。この前ボリスが作ってくれたあのスープを作りたいんだけど」
私の言葉にボリスは一瞬目を丸くしたけれど、すぐに面白そうな顔をする。
「気にいってくれたんだ?」
「うん。美味しかったんだもん」
「へぇ、それは嬉しいかも」
ボリスはそう言って私が持っていたスプーンを私の手ごと掴むと、スープを掬ってそのまま口へ運んだ。
なんともスムーズな流れに私はされるがままだったけれど、彼の顔に近づいた手はこわばっている。
当のボリスはというと首を傾げながらスープ鍋を見つめている。
「うーんとね、もうちょっと塩こしょう。それからもう少し煮込んだ方がいいと思うよ」
と言いながら、適当な感じでささっと調味料を入れていく。
スプーンを持った手が解放されてほっとした私。
「そんなに入れて大丈夫なの?」
「大丈夫じゃない? たぶん。いつも適当だよ。目分量」
彼は鍋をぐるりとかき混ぜると、そのままふたをする。
「これでしばらく煮込む、と」
あっという間の出来事に、私は見ているだけだった。
ボリスは鍋の火を弱めてくるりと振り返ると私を見る。そしてこう言った。
「名無しさんはエプロンしないの?」
「うん、してないけど……なに?もしかしてエプロン女子に憧れが?」
からかい半分で聞いてみると、彼は素直にうなずいた。
「そりゃそうだよ。なんかやっぱりそういうのって女の子っぽくていいと思うし」
「……ボリスって結構普通なのねぇ」
「なにそれ。俺がまるで普段は異常みたいな言い方だよね」
「そういう訳じゃないけど……」
イメージする女の子像がわりと普通なんだなぁと思っただけ。
私がそこに当てはまるタイプかはちょっとわからないけど。
「名無しさんがエプロンして料理なんて作ってくれたらやばいよね」
「やばい?ってまさか似合わないとかじゃないでしょうね」
口を尖らせると、違う違うとボリスは笑いながら首を振った。
「可愛すぎてやばいってこと。後ろから抱きしめたくなっちゃうよ」
「え、あ……うん。そっか」
面と向かってそう言われたらなんといえば良いのですか?
答えあぐねる私をボリスは楽しそうに見ている。
あぁもうそういう風に見つめないで欲しい。心臓に悪い。っていうかもうお願いだからそうニヤニヤしないで。
「その反応、どう受け取ればいいの? 抱きしめていいってこと?」
「いや、私今エプロンしてないです」
「別にしてなくてもいいよ」
「そうなると、話が変わってくるよね?」
「そうだけど、エプロンなんて正直どうでもいいんだ」
あっさりとそう言ったボリス。
彼が私にそっと手を伸ばした時だった。
動揺しまくる私の耳に、鍋のふたがカタカタとなりだすのが聞こえた。(ナイスタイミング!)
ボリスの視線から逃れ、鍋に近づき火を止めようとした時だった。
後ろからふわりと腕が回される。
私はその場で固まってしまった。
「俺、おあずけができない猫なんだよね」
ボリスはそう言いながら手を伸ばして鍋の火を止める。
「熱いのも苦手。冷めるまでこうして待ってようぜ」
冷めるまで……?
私はコンロに乗った鍋に目をやった。
あつあつのスープ鍋からは白い湯気が立ち上っている。
「なんか違うな~」
私はおたまを片手に首をひねる。
帽子屋屋敷のキッチンを借りて、ただいまスープ作りに没頭中。
鍋の中には魚介類がたっぷり入ったブイヤベースのようなスープ。
味は悪くない。
悪くないけど、目指しているのと違う。
「なんでだろう? あと何を入れればいいんだろうな~?」
私が目指しているのは、この前ボリスが作ってくれたあのスープ。
アリスと旅行に行った初日に、ボリスが突然やってきた。
あの時に彼が作ってくれたスープがものすごく美味しかった。
だからそれを作りたいのだけれど、どうしてもあの味にならない。
「塩かなぁ?」
スプーンですくって味見をしながら困り果てていると、キッチンのドアが開いた。
「あー、いたいた。名無しさんここにいたんだ~」
探したよ、と言いながら入ってきたのはなんとボリスだった。(素晴らしすぎるタイミング!)
「ボリス!どうしたの?」
「双子達と遊んでたんだ。帰る前に名無しさんに会って行こうと思ってさ。っていうか旅行から帰ってたなら会いに来てほしかったんだけど?」
そう言いながら、ちらりと私を見るボリス。
髪の毛で隠れているため片目しか見えないせいか、視線の動かし方がやけに色っぽく感じる。
「ご、ごめん!」
慌てて謝る私に、冗談だよ、と笑いながら近寄ってくるボリス。
「なんかいい匂いだね。なに作ってるの?」
私の隣りに来ると彼は鍋の中を覗き込む。
「わ、うまそう!」
「うーん、でもね、なんか味が足りないの。この前ボリスが作ってくれたあのスープを作りたいんだけど」
私の言葉にボリスは一瞬目を丸くしたけれど、すぐに面白そうな顔をする。
「気にいってくれたんだ?」
「うん。美味しかったんだもん」
「へぇ、それは嬉しいかも」
ボリスはそう言って私が持っていたスプーンを私の手ごと掴むと、スープを掬ってそのまま口へ運んだ。
なんともスムーズな流れに私はされるがままだったけれど、彼の顔に近づいた手はこわばっている。
当のボリスはというと首を傾げながらスープ鍋を見つめている。
「うーんとね、もうちょっと塩こしょう。それからもう少し煮込んだ方がいいと思うよ」
と言いながら、適当な感じでささっと調味料を入れていく。
スプーンを持った手が解放されてほっとした私。
「そんなに入れて大丈夫なの?」
「大丈夫じゃない? たぶん。いつも適当だよ。目分量」
彼は鍋をぐるりとかき混ぜると、そのままふたをする。
「これでしばらく煮込む、と」
あっという間の出来事に、私は見ているだけだった。
ボリスは鍋の火を弱めてくるりと振り返ると私を見る。そしてこう言った。
「名無しさんはエプロンしないの?」
「うん、してないけど……なに?もしかしてエプロン女子に憧れが?」
からかい半分で聞いてみると、彼は素直にうなずいた。
「そりゃそうだよ。なんかやっぱりそういうのって女の子っぽくていいと思うし」
「……ボリスって結構普通なのねぇ」
「なにそれ。俺がまるで普段は異常みたいな言い方だよね」
「そういう訳じゃないけど……」
イメージする女の子像がわりと普通なんだなぁと思っただけ。
私がそこに当てはまるタイプかはちょっとわからないけど。
「名無しさんがエプロンして料理なんて作ってくれたらやばいよね」
「やばい?ってまさか似合わないとかじゃないでしょうね」
口を尖らせると、違う違うとボリスは笑いながら首を振った。
「可愛すぎてやばいってこと。後ろから抱きしめたくなっちゃうよ」
「え、あ……うん。そっか」
面と向かってそう言われたらなんといえば良いのですか?
答えあぐねる私をボリスは楽しそうに見ている。
あぁもうそういう風に見つめないで欲しい。心臓に悪い。っていうかもうお願いだからそうニヤニヤしないで。
「その反応、どう受け取ればいいの? 抱きしめていいってこと?」
「いや、私今エプロンしてないです」
「別にしてなくてもいいよ」
「そうなると、話が変わってくるよね?」
「そうだけど、エプロンなんて正直どうでもいいんだ」
あっさりとそう言ったボリス。
彼が私にそっと手を伸ばした時だった。
動揺しまくる私の耳に、鍋のふたがカタカタとなりだすのが聞こえた。(ナイスタイミング!)
ボリスの視線から逃れ、鍋に近づき火を止めようとした時だった。
後ろからふわりと腕が回される。
私はその場で固まってしまった。
「俺、おあずけができない猫なんだよね」
ボリスはそう言いながら手を伸ばして鍋の火を止める。
「熱いのも苦手。冷めるまでこうして待ってようぜ」
冷めるまで……?
私はコンロに乗った鍋に目をやった。
あつあつのスープ鍋からは白い湯気が立ち上っている。