短編
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【愛の告白】
ハートの城に遊びに行ったら、エースに遭遇した。
彼は城の庭にテントを張り、たき火で機嫌よくホットミルクらしきものを作っていた。
関わらない方がいい。
こんな庭のど真ん中でキャンプしてる人と同類だと思われたくない。
回り道をしようと、くるりと向きを変えた時だった。
「あ、名無しさん!」
まんまと見つかってしまった。
断りきれず、結局エースのキャンプに参加している私。
「エースってやっぱり変わってるよね」
「え? そうかな? 普通だと思うけど」
しみじみと言う私に、彼はきょとんとした表情。
いや、そんな表情をしたって今さら常識人だとは言わせない。
「お城の庭でテント張ったり、火をおこす人が普通なわけないでしょう」
そう。これまでに2回は遭遇している、城内キャンプ中のエース。
今回はたまたま庭だったけれど、この人は城の廊下でもキャンプを始めてしまう困った人なのだ。
彼のたき火に膝を抱えて座りながらあたる私も、もはや常識人ではないのかもしれない。
「でもさ、遭難したらとりあえずキャンプは常識だろ」
「よくわかんないなぁ。私遭難したことないから」
「へぇ~。そうなんだ」
「……今のわざと?」
「え? なにが?」
彼の相槌に思わずツッコんだけれど、彼はにこにこと首をかしげるのみ。
まるで私が寒いことを言ってしまったような気になったので「ううん、なんでもない」ととりあえず話を流しておく。
たき火の前でホットミルクとビスケットをごちそうになる私。
なにこのキャンプ感。(ちょっと楽しい!)
エースと色々話をしているうちに、話題はいつのまにかアリスとペーターさんになっていった。
ペーターさんの努力が実を結び、めでたくアリスと恋人になった、という話。
恋人になっても、相変わらずどつきあいをしている2人はとても微笑ましい。
「なんだかんだ仲良しだよね、アリスとペーターさん」
「うん。もうさ、意味もなく機嫌のいいペーターさんなんて見ていて面白くないんだよね。やめてほしいよ」
「意味がないわけじゃないでしょ。アリスのことを考えて機嫌が良いに決まってるじゃない」
「うーん……でも俺は空回り気味でわーわーいってるペーターさんが好きだったんだよ」
「いや、そう言われてもね……」
思わず苦笑すると、エースは顎に手を当てて考え込むようにつぶやいた。
「アリスがいなくなったらどうなるかな、ペーターさん」
「怖いこといわないでね?」
「え、じゃあアリスを奪ったらどうするかな、ペーターさん」
「最っ低なこと言わないでね!」
とんでもない発言にエースを睨みつけると、「やだなぁ、冗談に決まってるじゃないか」と爽やかに笑いやがりました。
この人の場合、冗談のようなことを本気でやるところがある。
あの冗談のような迷子っぷりを見ればそれは明らかだ。
「そんなに怒らないでくれよ。俺がアリスに手を出すわけないじゃないか」
手を出すなら名無しさんにだからさ。
そう爽やかに言うエースに私は思わず顔をしかめた。
すごく爽やかなのに、すごくとんでもないことを言われた気がします、今。
いつのまにかエースを見つめていたらしい。
「そんなに見つめてくれるのって、もしかして今すぐ手を出してほしいっていう催促?」
ずいぶん積極的だなぁ、と言いながら私の肩に手をかけてくるエース。
引き寄せられかけた私は、思わず彼の胸のあたりをぐいっと力任せに押し返してしまった。
するとエースは私から手を離す。
「そこまで拒否されたら悲しいんだけどな」
「拒否するに決まっているでしょう!」
私の答えにエースはくすくすと笑う。
ほんとにどこまで本気なんだかわかりゃしない。
エースからちょっと距離を取った私は、膝を抱えて座りなおす。
そんな私をエースは楽しそうに見ながらこう言った。
「俺、ペーターさんの気持ち、ちょっとわかるよ」
「なに? ストーカーの気持ちがわかるとでもいうの?」
エースはストーカーになんてなれなそうだ。だって、相手の子の元へたどり着けなそうだもん。
「ははは! 違うよ。そうじゃなくてさ、好きな子がいるとそれだけで楽しいってこと」
「へぇ。意外と普通なんだね、エースって」
思わず感心すると、彼はひどいなーと笑っていたけれど、ふと何かに思い当たったように私を見た。
「あ、これ、愛の告白だぜ? 名無しさん、わかってる?」
エースはそう言って私の顔を覗きこんできた。
「……愛の告白、ですか」
「うん。告白。名無しさんのことが好きだから、一緒にいると楽しいんだ。
ん? もしかして、今の俺って意味なくご機嫌な奴に見えるのかなー?それは我ながらうっとうしいぜ。はははっ!」
「意味なくご機嫌というか、意味の分からない人にしか見えないよ」
告白というのは、もっとドキドキした感じが伝わってくるようなものではないのでしょうか?
愛の告白というには、まったくもって緊張感もないし、ときめきもない。
告白されたという実感もわかない。思わず首を傾げてしまった。
「なんか不満そうな顔してるなー。せっかく名無しさんのこと好きだって言ってるのにさ」
「不満っていうか、謎すぎるの。エースの言葉はどうも真実味がなくて実感がわかないっていうか……」
「えぇ? そうかなぁ。俺、結構本気でいってるんだぜ?」
彼はそう言うと、私の肩に手をまわしてきた。
今度は有無を言わせぬ力で、そのまま引き寄せられてしまう。
思わぬ展開にびっくりしすぎて動けない私を、エースは爽やかさ全開で見ている。
強引な手段を取ろうとしている人にはとても見えない。
「実感が欲しいなら、あげるよ?」
目の前でそう言って笑うエース。
私の頬にそっと触れながら、いつもの笑顔がすっと真剣な表情になる。
とたんに息がつまり、鼓動が早まっていく。
「俺は、名無しさんが好きだよ」
そう言って、彼は私に口づけた。
短いキスの後に、エースがいつもの顔で笑った。
「ねぇ、実感わいた?」
足りないならもっとあげてもいいけど。
そう言って笑うエース。
十分すぎるほどに。
そう答えようと思ったら、エースが動いた。
「足りないってことでいいよね」
そう言うが早いか、彼はさっきよりも深いキスをした。
ハートの城に遊びに行ったら、エースに遭遇した。
彼は城の庭にテントを張り、たき火で機嫌よくホットミルクらしきものを作っていた。
関わらない方がいい。
こんな庭のど真ん中でキャンプしてる人と同類だと思われたくない。
回り道をしようと、くるりと向きを変えた時だった。
「あ、名無しさん!」
まんまと見つかってしまった。
断りきれず、結局エースのキャンプに参加している私。
「エースってやっぱり変わってるよね」
「え? そうかな? 普通だと思うけど」
しみじみと言う私に、彼はきょとんとした表情。
いや、そんな表情をしたって今さら常識人だとは言わせない。
「お城の庭でテント張ったり、火をおこす人が普通なわけないでしょう」
そう。これまでに2回は遭遇している、城内キャンプ中のエース。
今回はたまたま庭だったけれど、この人は城の廊下でもキャンプを始めてしまう困った人なのだ。
彼のたき火に膝を抱えて座りながらあたる私も、もはや常識人ではないのかもしれない。
「でもさ、遭難したらとりあえずキャンプは常識だろ」
「よくわかんないなぁ。私遭難したことないから」
「へぇ~。そうなんだ」
「……今のわざと?」
「え? なにが?」
彼の相槌に思わずツッコんだけれど、彼はにこにこと首をかしげるのみ。
まるで私が寒いことを言ってしまったような気になったので「ううん、なんでもない」ととりあえず話を流しておく。
たき火の前でホットミルクとビスケットをごちそうになる私。
なにこのキャンプ感。(ちょっと楽しい!)
エースと色々話をしているうちに、話題はいつのまにかアリスとペーターさんになっていった。
ペーターさんの努力が実を結び、めでたくアリスと恋人になった、という話。
恋人になっても、相変わらずどつきあいをしている2人はとても微笑ましい。
「なんだかんだ仲良しだよね、アリスとペーターさん」
「うん。もうさ、意味もなく機嫌のいいペーターさんなんて見ていて面白くないんだよね。やめてほしいよ」
「意味がないわけじゃないでしょ。アリスのことを考えて機嫌が良いに決まってるじゃない」
「うーん……でも俺は空回り気味でわーわーいってるペーターさんが好きだったんだよ」
「いや、そう言われてもね……」
思わず苦笑すると、エースは顎に手を当てて考え込むようにつぶやいた。
「アリスがいなくなったらどうなるかな、ペーターさん」
「怖いこといわないでね?」
「え、じゃあアリスを奪ったらどうするかな、ペーターさん」
「最っ低なこと言わないでね!」
とんでもない発言にエースを睨みつけると、「やだなぁ、冗談に決まってるじゃないか」と爽やかに笑いやがりました。
この人の場合、冗談のようなことを本気でやるところがある。
あの冗談のような迷子っぷりを見ればそれは明らかだ。
「そんなに怒らないでくれよ。俺がアリスに手を出すわけないじゃないか」
手を出すなら名無しさんにだからさ。
そう爽やかに言うエースに私は思わず顔をしかめた。
すごく爽やかなのに、すごくとんでもないことを言われた気がします、今。
いつのまにかエースを見つめていたらしい。
「そんなに見つめてくれるのって、もしかして今すぐ手を出してほしいっていう催促?」
ずいぶん積極的だなぁ、と言いながら私の肩に手をかけてくるエース。
引き寄せられかけた私は、思わず彼の胸のあたりをぐいっと力任せに押し返してしまった。
するとエースは私から手を離す。
「そこまで拒否されたら悲しいんだけどな」
「拒否するに決まっているでしょう!」
私の答えにエースはくすくすと笑う。
ほんとにどこまで本気なんだかわかりゃしない。
エースからちょっと距離を取った私は、膝を抱えて座りなおす。
そんな私をエースは楽しそうに見ながらこう言った。
「俺、ペーターさんの気持ち、ちょっとわかるよ」
「なに? ストーカーの気持ちがわかるとでもいうの?」
エースはストーカーになんてなれなそうだ。だって、相手の子の元へたどり着けなそうだもん。
「ははは! 違うよ。そうじゃなくてさ、好きな子がいるとそれだけで楽しいってこと」
「へぇ。意外と普通なんだね、エースって」
思わず感心すると、彼はひどいなーと笑っていたけれど、ふと何かに思い当たったように私を見た。
「あ、これ、愛の告白だぜ? 名無しさん、わかってる?」
エースはそう言って私の顔を覗きこんできた。
「……愛の告白、ですか」
「うん。告白。名無しさんのことが好きだから、一緒にいると楽しいんだ。
ん? もしかして、今の俺って意味なくご機嫌な奴に見えるのかなー?それは我ながらうっとうしいぜ。はははっ!」
「意味なくご機嫌というか、意味の分からない人にしか見えないよ」
告白というのは、もっとドキドキした感じが伝わってくるようなものではないのでしょうか?
愛の告白というには、まったくもって緊張感もないし、ときめきもない。
告白されたという実感もわかない。思わず首を傾げてしまった。
「なんか不満そうな顔してるなー。せっかく名無しさんのこと好きだって言ってるのにさ」
「不満っていうか、謎すぎるの。エースの言葉はどうも真実味がなくて実感がわかないっていうか……」
「えぇ? そうかなぁ。俺、結構本気でいってるんだぜ?」
彼はそう言うと、私の肩に手をまわしてきた。
今度は有無を言わせぬ力で、そのまま引き寄せられてしまう。
思わぬ展開にびっくりしすぎて動けない私を、エースは爽やかさ全開で見ている。
強引な手段を取ろうとしている人にはとても見えない。
「実感が欲しいなら、あげるよ?」
目の前でそう言って笑うエース。
私の頬にそっと触れながら、いつもの笑顔がすっと真剣な表情になる。
とたんに息がつまり、鼓動が早まっていく。
「俺は、名無しさんが好きだよ」
そう言って、彼は私に口づけた。
短いキスの後に、エースがいつもの顔で笑った。
「ねぇ、実感わいた?」
足りないならもっとあげてもいいけど。
そう言って笑うエース。
十分すぎるほどに。
そう答えようと思ったら、エースが動いた。
「足りないってことでいいよね」
そう言うが早いか、彼はさっきよりも深いキスをした。