真夏のティーパーティー!
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【最終日の遭難者】
旅行最終日。
まさかこんな事態になるとは夢にも思わなかった。
「はぁ」
「どうしたのさ、ため息なんてついちゃって」
思わずため息をついた私にエースがからからと笑うけれど、そんなの今の状況を思ってため息をついたに決まっている。
夕日で赤く染まる森の中で、私は膝を抱えて座っていた。
すぐ隣に座るエースは水を飲みながら私を見ている。
「……ほんとに信じられない」
「うん。でも俺に会えてラッキーじゃない?」
「今回ばかりは本当にそう思うわ。エースに会えてよかった」
にやにや笑うエースの言葉を素直に認めた私。
本当に信じられないことに、私は遭難してしまったのだった。
アリスと一緒に旅行に来ていたのだが、散歩のつもりでロッジの近くを歩いていたら、迷子になってしまった。
パニックになっていたら、たまたまエースと出会ったのがついさっきの出来事。
「泣きそうになってる名無しさんがいてびっくりしたよ」
「だって、本当に泣きそうだったんだもん。どこにいるのか全然わからなくなっちゃって」
「珍しいよね、君が迷子になるなんて。何か考え事でもしていたの?」
エースは私のコップに水を継ぎ足しながらそう言った。
「うん、そうなのかもしれない。ぼんやり歩いてたの」
そう、ただひたすらぼんやりと歩いていた。
「エースに会えなかったら、私絶対に行き倒れてたと思う」
もちろんエースも旅の途中(つまりは迷子)なのだが、彼はその道のプロだ。
一緒にいればいつかは帰れる。はずだ。
「よかったね、俺に会えて」
「うん、良かった。ありがとう」
そう言うと、彼はにこにこっと笑って私の肩に手を回した。
「……なんですか?」
「いや、しおらしい名無しさんが可愛くってさ」
そう言って笑うエースに反論する気力も、肩に回された手を払う気力もない。もう精神的に疲れ果てているのだ。
「吊り橋効果みたいな感じで、俺のこと好きになっちゃうかもね、名無しさん」
「そう言われた時点で好きになんてならないと思うわ」
「ははは! そっかー。言わなきゃよかったぜ」
これ、元気づけるための会話だとしたら、エースってすごい人だなぁと思うけど……。
いつもの爽やかな顔でにこにこ笑っているので、本当の所は何を考えてるのか全くわからない。
「アリス心配してるかもなぁ」
「そうだねぇ。早く君をロッジに連れて行ってあげたいけど、その場所がわからないからなぁ。
でもそんなに遠くではないだろ? 名無しさんがちょっと散歩に出て迷う距離なんだから。すぐに帰れるよ」
穏やかにそう言われて、なんとなく安心した。
「うん、ありがとね」
それしか言えない。ただひたすら感謝だ。
するとエースがくすくすと笑いだした。
「な、なに?」
「いや、うん。いいね、名無しさん。なんか今すごく弱ってるよね」
「はぁ……?」
話がみえずに曖昧な返事をすると、彼は相変わらずの笑顔で言う。
肩に回された腕にぎゅっと引き寄せられた。
「弱っている女の子に手を出すなんてこと、しちゃいけないんだよね。騎士としては、さ」
そう言いながら顔を寄せてくるのは矛盾している気がするんですけど。
身を引こうとするが、力ではかなうはずもない。
「ちょっ……エース!」
「でも、今の君、すごくいいよ。弱ってて、困ってて、可愛いから、いじめたくなる」
動揺する私に囁くように言う彼の顔は、いつもの笑みが消えていた。真剣な眼差し。
目の前にあるエースの顔を息を詰めて見つめることしかできない。
すると、そこでエースがふわりと笑った。
「俺、騎士失格だね」
そう言って私にキスをするエース。
徐々に深くなるそれを不思議な気持ちで受け入れてしまったのは、きっと今の私が弱っているからなのかもしれない。
無事にロッジに帰った私はアリスに相当心配された。
「迷子になってエースに会って助かった!?」
驚きまくる彼女に、疲れ果てている私。
そして「よかったねぇ」とにこにこ笑うエース。
「今回ばかりはエースに感謝じゃないの、名無しさん」
とアリスに言われたけれど、
「うん。そうなのかな。そうなのかもしれないけど……どうなんだろう?」
という答えしか返せない私。
感謝はもちろんするけれど、なんだか怒っていい気もする。
曖昧な返事をする私にアリスが首を傾げるのを見て、エースが「名無しさんは疲れてるんだよ」と笑った。
旅行の最終日は、とんでもない一日になってしまった。
旅行最終日。
まさかこんな事態になるとは夢にも思わなかった。
「はぁ」
「どうしたのさ、ため息なんてついちゃって」
思わずため息をついた私にエースがからからと笑うけれど、そんなの今の状況を思ってため息をついたに決まっている。
夕日で赤く染まる森の中で、私は膝を抱えて座っていた。
すぐ隣に座るエースは水を飲みながら私を見ている。
「……ほんとに信じられない」
「うん。でも俺に会えてラッキーじゃない?」
「今回ばかりは本当にそう思うわ。エースに会えてよかった」
にやにや笑うエースの言葉を素直に認めた私。
本当に信じられないことに、私は遭難してしまったのだった。
アリスと一緒に旅行に来ていたのだが、散歩のつもりでロッジの近くを歩いていたら、迷子になってしまった。
パニックになっていたら、たまたまエースと出会ったのがついさっきの出来事。
「泣きそうになってる名無しさんがいてびっくりしたよ」
「だって、本当に泣きそうだったんだもん。どこにいるのか全然わからなくなっちゃって」
「珍しいよね、君が迷子になるなんて。何か考え事でもしていたの?」
エースは私のコップに水を継ぎ足しながらそう言った。
「うん、そうなのかもしれない。ぼんやり歩いてたの」
そう、ただひたすらぼんやりと歩いていた。
「エースに会えなかったら、私絶対に行き倒れてたと思う」
もちろんエースも旅の途中(つまりは迷子)なのだが、彼はその道のプロだ。
一緒にいればいつかは帰れる。はずだ。
「よかったね、俺に会えて」
「うん、良かった。ありがとう」
そう言うと、彼はにこにこっと笑って私の肩に手を回した。
「……なんですか?」
「いや、しおらしい名無しさんが可愛くってさ」
そう言って笑うエースに反論する気力も、肩に回された手を払う気力もない。もう精神的に疲れ果てているのだ。
「吊り橋効果みたいな感じで、俺のこと好きになっちゃうかもね、名無しさん」
「そう言われた時点で好きになんてならないと思うわ」
「ははは! そっかー。言わなきゃよかったぜ」
これ、元気づけるための会話だとしたら、エースってすごい人だなぁと思うけど……。
いつもの爽やかな顔でにこにこ笑っているので、本当の所は何を考えてるのか全くわからない。
「アリス心配してるかもなぁ」
「そうだねぇ。早く君をロッジに連れて行ってあげたいけど、その場所がわからないからなぁ。
でもそんなに遠くではないだろ? 名無しさんがちょっと散歩に出て迷う距離なんだから。すぐに帰れるよ」
穏やかにそう言われて、なんとなく安心した。
「うん、ありがとね」
それしか言えない。ただひたすら感謝だ。
するとエースがくすくすと笑いだした。
「な、なに?」
「いや、うん。いいね、名無しさん。なんか今すごく弱ってるよね」
「はぁ……?」
話がみえずに曖昧な返事をすると、彼は相変わらずの笑顔で言う。
肩に回された腕にぎゅっと引き寄せられた。
「弱っている女の子に手を出すなんてこと、しちゃいけないんだよね。騎士としては、さ」
そう言いながら顔を寄せてくるのは矛盾している気がするんですけど。
身を引こうとするが、力ではかなうはずもない。
「ちょっ……エース!」
「でも、今の君、すごくいいよ。弱ってて、困ってて、可愛いから、いじめたくなる」
動揺する私に囁くように言う彼の顔は、いつもの笑みが消えていた。真剣な眼差し。
目の前にあるエースの顔を息を詰めて見つめることしかできない。
すると、そこでエースがふわりと笑った。
「俺、騎士失格だね」
そう言って私にキスをするエース。
徐々に深くなるそれを不思議な気持ちで受け入れてしまったのは、きっと今の私が弱っているからなのかもしれない。
無事にロッジに帰った私はアリスに相当心配された。
「迷子になってエースに会って助かった!?」
驚きまくる彼女に、疲れ果てている私。
そして「よかったねぇ」とにこにこ笑うエース。
「今回ばかりはエースに感謝じゃないの、名無しさん」
とアリスに言われたけれど、
「うん。そうなのかな。そうなのかもしれないけど……どうなんだろう?」
という答えしか返せない私。
感謝はもちろんするけれど、なんだか怒っていい気もする。
曖昧な返事をする私にアリスが首を傾げるのを見て、エースが「名無しさんは疲れてるんだよ」と笑った。
旅行の最終日は、とんでもない一日になってしまった。