真夏のティーパーティー!
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【女子旅 初日のお客様】
アリスと2人でやってきたとあるロッジ。
今日から5時間帯を2人で過ごすのだ。
たまには一緒に旅行に行こうよ、とアリスを誘ったら彼女はその場で「行く行く!」と即答した。
ちょうどペーターさんのストーキングに疲れ果てていたらしい。
私にとっては「楽しい旅行」、アリスにとっては「一時避難旅行」そんな所だと思う。
「はー。なんだかすっごく落ち着くわ~」
ゆったりとソファに座ったアリスはそう言って伸びをした。
そんな彼女に紅茶を出して、自分も隣のソファに座る。
「付きまとわれないって最高ね」
笑顔でそう言ったアリスは紅茶をすする。
「よっぽどすごかったんだね、ペーターさん」
付きまとわれる経験なんてない私はびっくりするやらあきれるやら。
「なんなのかしら、あのストーカーっぷりは。本当にどうかしているわ。いつもいつもどこからか現れるし、しつこいし」
「それだけアリスが好きなんだよ」
「やめてくれる? あんなストーカー男絶対に嫌よ。顔が良くてもお断りだわ!」
「まぁ、確かに波が激しいからねぇペーターさん」
第三者がそう思うのだ。あんなに感情の起伏が激しい人に付きまとわれたらそりゃ疲れるだろう。
「でもさ、あんなに美形で地位のあるお兄さんが自分だけに優しいってちょっと嬉しくない? 優越感じゃない? 」
試しにそう聞いてみたら、アリスはものすごい動揺してから大袈裟に否定をした。
「や、やめてよね!! 絶対にないから!! あれはね、変態よ変態! なんだったら名無しさんにあげるわよ」
顔を赤らめてそういう彼女に、内心まんざらでもないのかしら、とニヤついてしまった。
「まぁなんにしても、これから5時間帯は平和で穏やかな時間を過ごせるわね」
「そうだね。私達2人だけでのんびりできるのって、たぶんこういう機会でしかありえないと思うよ」
アリスはハートの城、私は帽子屋屋敷に滞在しているが、旅行に行くことは伝えてあっても場所までは伝えていない。
伝えたら絶対に押しかけてくる、そういう人達だ。
私とアリスは束の間の平和を楽しもうとわくわくしながら、「そろそろ、ご飯つくろっかー」など話していた。
がしかし!
そんな平和はこの世界にあるわけがないのである。
ピンポーン、とドアのベルが鳴り響く。
顔を見合わせる私とアリス。
「? 誰かしら?」
不審に思いつつ玄関ののぞき穴を見る。
「……な、なんでここにいるんだろう?」
「名無しさん、どうしたの?……誰?」
思わず出た言葉に、後ろのアリスがこわばった声で尋ねる。
私はそっと振り返ってアリスを見た。
緊張した面持ちで私を見つめている彼女に場所を譲り、覗き穴を見るように促した。
「……なんでここにいるのかしら?」
覗き穴の前で驚いたようにつぶやいたアリス。
本当になんでここにいるんだろう?
ドアの外に立っていたのは、ピンクのふわふわを身にまとった彼がいたのだった。
「こんにちは、名無しさん、アリス」
穏やかにそう言ってボリスが入ってきた。
悩んだあげく結局ドアを開けた私達。
「どうしたの?」
「なんでここにいるの?」
私とアリスの同時質問に、一瞬きょとんとした表情を見せてから楽しそうに笑い出したボリス。
「あんたたち、仲良いんだね。2人で同じようなこと言ってるよ」
「だってねぇ?」
「ねぇ?」
笑うボリスに顔を見合わせる私とアリス。
「たまたま散歩してたら、2人の声が聞こえたんだよ。いいな、二人で泊まりにきたの?」
「うん、そう。ちょっとした旅行みたいなもの」
「日々の生活を忘れたいのよ」
「……あれ、なんかアリス切実だね?」
にこやかに答えた私とは対照的に、疲れを声ににじませたアリス。
ボリスはそんなアリスに苦笑している。
「でもあんたたち2人で旅行なんて楽しそう。いいな。俺も混ぜてよ」
「えぇー? ダメだよ」
「うん、ダメよ」
私もアリスも、ボリスのことは好きだし信頼している。彼はこの世界の住人にしてはまともだし、いい人だ。
でも、だからといって旅行仲間に入れてあげるかというとそれは別の話なのだ。
「うわ、即答なの? いいじゃん。俺、結構器用だからちゃんと料理とか作ってあげるよ?」
「…………ダメだよね、アリス?」
「…………ダメよね、名無しさん?」
「今、間があったよね?」
料理人枠でボリスを入れてあげるのもいいかなぁ、なんてちょっと思ってしまったのはどうやらアリスも一緒らしかった。
そんな私達の思いを察して、ボリスはおかしそうに笑う。
「とにかくダメ! これはね女子旅なの!」
「女子旅?」
「そう、女子旅。男子禁制です!」
「ちぇ~、つまんないの。じゃあもうちょっとしたら帰るからさ、少し遊んでいってもいい?」
口を尖らせるボリスになんだか申し訳なくなった私はアリスを見る。
彼女も私と同じ思いだったらしい。私を見て小さくうなずいた。
私はボリスに向き直る。
「じゃあちょうどこれからご飯を作るところだったから、一緒に食べてく? っていうか一緒に作っていく?」
「いいよ、手伝う。……でも全部俺に押し付けないでよ?」
「押しつけないよー! みんなで作れば楽しいじゃない」
ほんのり疑いの眼差しを向けるボリスに、笑顔でごまかす私。
そのやり取りを見て、アリスはふふふっと笑いながらキッチンへと入っていった。
「まぁいっか」と言いながらアリスの後をついていくボリス。
アリスとボリスとご飯を作るだなんてすごいなぁ。
なんだか楽しくて嬉しくて思わずニヤついてしまう。
すると、その時ボリスがちらりと振り返って私を見た。
「名無しさんの料理の腕、見ておかなくちゃね」
「えぇ? やめてよね」
「作ってあげるのもいいけど、やっぱり作ってもらいたいからさ。男としては」
「そういうものなの?」
「そういうものだよ」
「だったら私じゃなくてアリスに期待したほうがいいよ」
「うん、でも俺は名無しさんの料理が食べたいし、名無しさんのことも食べてみたい」
「……わー、それすごい口説き文句!」
なに言ってるんだこの人。
恥ずかしくて茶化すと「えぇ? 結構本気なんだけど」と返された。
答えに困っていると、アリスがキッチンからひょこっと顔を出した。
「はいはい、口説くのはまたにして早く手伝ってね」
「ご、ごめんアリス!!」
「はーい。ごめんなさーい」
慌てる私に、いつも通りのボリス。
「じゃあ続きはまたゆっくりとね」
彼はポンと私の頭をたたくと、そのままキッチンへと消えて行った。
「続きは別にいりません」
自分の頭をなでながら、ぼそりとつぶやく私だった。
アリスと2人でやってきたとあるロッジ。
今日から5時間帯を2人で過ごすのだ。
たまには一緒に旅行に行こうよ、とアリスを誘ったら彼女はその場で「行く行く!」と即答した。
ちょうどペーターさんのストーキングに疲れ果てていたらしい。
私にとっては「楽しい旅行」、アリスにとっては「一時避難旅行」そんな所だと思う。
「はー。なんだかすっごく落ち着くわ~」
ゆったりとソファに座ったアリスはそう言って伸びをした。
そんな彼女に紅茶を出して、自分も隣のソファに座る。
「付きまとわれないって最高ね」
笑顔でそう言ったアリスは紅茶をすする。
「よっぽどすごかったんだね、ペーターさん」
付きまとわれる経験なんてない私はびっくりするやらあきれるやら。
「なんなのかしら、あのストーカーっぷりは。本当にどうかしているわ。いつもいつもどこからか現れるし、しつこいし」
「それだけアリスが好きなんだよ」
「やめてくれる? あんなストーカー男絶対に嫌よ。顔が良くてもお断りだわ!」
「まぁ、確かに波が激しいからねぇペーターさん」
第三者がそう思うのだ。あんなに感情の起伏が激しい人に付きまとわれたらそりゃ疲れるだろう。
「でもさ、あんなに美形で地位のあるお兄さんが自分だけに優しいってちょっと嬉しくない? 優越感じゃない? 」
試しにそう聞いてみたら、アリスはものすごい動揺してから大袈裟に否定をした。
「や、やめてよね!! 絶対にないから!! あれはね、変態よ変態! なんだったら名無しさんにあげるわよ」
顔を赤らめてそういう彼女に、内心まんざらでもないのかしら、とニヤついてしまった。
「まぁなんにしても、これから5時間帯は平和で穏やかな時間を過ごせるわね」
「そうだね。私達2人だけでのんびりできるのって、たぶんこういう機会でしかありえないと思うよ」
アリスはハートの城、私は帽子屋屋敷に滞在しているが、旅行に行くことは伝えてあっても場所までは伝えていない。
伝えたら絶対に押しかけてくる、そういう人達だ。
私とアリスは束の間の平和を楽しもうとわくわくしながら、「そろそろ、ご飯つくろっかー」など話していた。
がしかし!
そんな平和はこの世界にあるわけがないのである。
ピンポーン、とドアのベルが鳴り響く。
顔を見合わせる私とアリス。
「? 誰かしら?」
不審に思いつつ玄関ののぞき穴を見る。
「……な、なんでここにいるんだろう?」
「名無しさん、どうしたの?……誰?」
思わず出た言葉に、後ろのアリスがこわばった声で尋ねる。
私はそっと振り返ってアリスを見た。
緊張した面持ちで私を見つめている彼女に場所を譲り、覗き穴を見るように促した。
「……なんでここにいるのかしら?」
覗き穴の前で驚いたようにつぶやいたアリス。
本当になんでここにいるんだろう?
ドアの外に立っていたのは、ピンクのふわふわを身にまとった彼がいたのだった。
「こんにちは、名無しさん、アリス」
穏やかにそう言ってボリスが入ってきた。
悩んだあげく結局ドアを開けた私達。
「どうしたの?」
「なんでここにいるの?」
私とアリスの同時質問に、一瞬きょとんとした表情を見せてから楽しそうに笑い出したボリス。
「あんたたち、仲良いんだね。2人で同じようなこと言ってるよ」
「だってねぇ?」
「ねぇ?」
笑うボリスに顔を見合わせる私とアリス。
「たまたま散歩してたら、2人の声が聞こえたんだよ。いいな、二人で泊まりにきたの?」
「うん、そう。ちょっとした旅行みたいなもの」
「日々の生活を忘れたいのよ」
「……あれ、なんかアリス切実だね?」
にこやかに答えた私とは対照的に、疲れを声ににじませたアリス。
ボリスはそんなアリスに苦笑している。
「でもあんたたち2人で旅行なんて楽しそう。いいな。俺も混ぜてよ」
「えぇー? ダメだよ」
「うん、ダメよ」
私もアリスも、ボリスのことは好きだし信頼している。彼はこの世界の住人にしてはまともだし、いい人だ。
でも、だからといって旅行仲間に入れてあげるかというとそれは別の話なのだ。
「うわ、即答なの? いいじゃん。俺、結構器用だからちゃんと料理とか作ってあげるよ?」
「…………ダメだよね、アリス?」
「…………ダメよね、名無しさん?」
「今、間があったよね?」
料理人枠でボリスを入れてあげるのもいいかなぁ、なんてちょっと思ってしまったのはどうやらアリスも一緒らしかった。
そんな私達の思いを察して、ボリスはおかしそうに笑う。
「とにかくダメ! これはね女子旅なの!」
「女子旅?」
「そう、女子旅。男子禁制です!」
「ちぇ~、つまんないの。じゃあもうちょっとしたら帰るからさ、少し遊んでいってもいい?」
口を尖らせるボリスになんだか申し訳なくなった私はアリスを見る。
彼女も私と同じ思いだったらしい。私を見て小さくうなずいた。
私はボリスに向き直る。
「じゃあちょうどこれからご飯を作るところだったから、一緒に食べてく? っていうか一緒に作っていく?」
「いいよ、手伝う。……でも全部俺に押し付けないでよ?」
「押しつけないよー! みんなで作れば楽しいじゃない」
ほんのり疑いの眼差しを向けるボリスに、笑顔でごまかす私。
そのやり取りを見て、アリスはふふふっと笑いながらキッチンへと入っていった。
「まぁいっか」と言いながらアリスの後をついていくボリス。
アリスとボリスとご飯を作るだなんてすごいなぁ。
なんだか楽しくて嬉しくて思わずニヤついてしまう。
すると、その時ボリスがちらりと振り返って私を見た。
「名無しさんの料理の腕、見ておかなくちゃね」
「えぇ? やめてよね」
「作ってあげるのもいいけど、やっぱり作ってもらいたいからさ。男としては」
「そういうものなの?」
「そういうものだよ」
「だったら私じゃなくてアリスに期待したほうがいいよ」
「うん、でも俺は名無しさんの料理が食べたいし、名無しさんのことも食べてみたい」
「……わー、それすごい口説き文句!」
なに言ってるんだこの人。
恥ずかしくて茶化すと「えぇ? 結構本気なんだけど」と返された。
答えに困っていると、アリスがキッチンからひょこっと顔を出した。
「はいはい、口説くのはまたにして早く手伝ってね」
「ご、ごめんアリス!!」
「はーい。ごめんなさーい」
慌てる私に、いつも通りのボリス。
「じゃあ続きはまたゆっくりとね」
彼はポンと私の頭をたたくと、そのままキッチンへと消えて行った。
「続きは別にいりません」
自分の頭をなでながら、ぼそりとつぶやく私だった。