真夏のティーパーティー!
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【トゲ】
「うぁ~、なんか痛いと思ったらトゲが刺さってるー」
私はとげ抜きを出してくると、まじまじと指先を眺める。
薬指の先にほんの小さなトゲ。
こんなに小さいのにものすごい存在感を放っている。
いつ刺さったんだろう?
「……トゲが刺さっているという時点で精神的ダメージが大きいわ」
注射が苦手な私なので、トゲが刺さっている今の現状はものすごく恐ろしい。
きっとナイトメアならわかってくれるんじゃないかなぁ。
トゲを抜こうとするものの、利き手にトゲが刺さっているので、上手くとげ抜きを使えない。
私はちらりとユリウスを見る。
わー……めちゃめちゃ仕事に集中している……。
でも、これは私一人の手には負えないトゲなのだ。
彼に助けてもらうしかない。
「すみませ〜ん、そこの職人さん。ちょっと助けてください」
おそるおそる声をかけてみると、職人さんは手を止めてちらりと私を見た。
「なんだ?」
「あの、トゲが……」
「トゲ?」
「そう、トゲが刺さってるの。これちょっと抜いてほしいんですけど」
私はすすすすっとユリウスに近づくと、指先を差し出した。
彼は私の手を取ると、眼鏡ごしにじぃっと指先を見つめる。
「……一体何を触ったんだ、お前は」
「わかんない」
ユリウスはふぅっと息をつくと、とげ抜き作業を開始した。
「あのユリウス、痛いんですけど」
「我慢しろ」
「えー、でもこういうのユリウス得意そうなのに。痛みもなくささっと処置してくれそうなのに」
「無茶言うな。私は医者じゃない」
呆れたように言うユリウスの言葉に、変に納得してしまった。
そうか、彼は手先は器用かもしれないけど医者じゃなかった。
じゃあ我慢するしかない。
しかし、彼なりに気を使ってくれたらしい。
「平気か?」「あと少しだから我慢しろ」など声をかけながらトゲと格闘していた。
そんなこんなでとげ抜き処置は終了した。
「……取れた」
「ありがとう! 生きた心地がしなかったよ」
「トゲくらいで大袈裟だな」
トゲの抜けた指先を見て大喜びの私に、ユリウスはとげ抜きを手渡しながら言う。
「トゲを甘く見たらトゲに泣くんだよ、ユリウス」
「……何を言っているんだか」
絆創膏を貼る私を見て、ユリウスが呆れたようにつぶやいた。
「でも、やっぱりユリウスって器用だよね。一度でいいからそういう器用な手で色々なものを作ってみたいよ」
「名無しさんの手は見るからに不器用そうだからな。子どものような手だ」
「悪かったわね」
むっとする私だったけれど、ユリウスは予想に反して優しい顔をしていた。
「そんな頼りない小さな手を見ると、つい手を貸してやりたくなる」
思わぬ言葉に驚いてユリウスを見ると、彼ははっと我に返ったらしい。
「もっとしっかりしてくれということだ。名無しさんの手助けばかりをしていたら、私だって仕事ができなくなる」
彼はそう言ってさっさと仕事に戻る。
でも動揺しているのがわかってしまった。
ユリウスがあからさまに冷たい態度をとるのは照れている証拠なのだ。
「ユリウスー」
「なんだ」
呼びかけると、こちらを見もせずに返事をするユリウス。
あぁ、なんだかもういじめたくなる可愛さだなぁ。
でもこれ以上仕事の邪魔はできない。
「こんな手で良ければ、肩たたきくらいはしてあげるからね」
そう言ってポンと彼の肩を叩くと、ユリウスは手元の時計をカチャカチャしながら言う。
「不器用な手でもそれくらいならできそうだな」
「わー、ひどい」
今度はバンと反論の意味を込めて肩を叩いてやった。
しかし、それをものともせず、彼はくつくつと笑いながら時計と向き合っている。
なんだかおかしくて私もふふふっと笑ってしまった。
時計塔は今日も平和。
「うぁ~、なんか痛いと思ったらトゲが刺さってるー」
私はとげ抜きを出してくると、まじまじと指先を眺める。
薬指の先にほんの小さなトゲ。
こんなに小さいのにものすごい存在感を放っている。
いつ刺さったんだろう?
「……トゲが刺さっているという時点で精神的ダメージが大きいわ」
注射が苦手な私なので、トゲが刺さっている今の現状はものすごく恐ろしい。
きっとナイトメアならわかってくれるんじゃないかなぁ。
トゲを抜こうとするものの、利き手にトゲが刺さっているので、上手くとげ抜きを使えない。
私はちらりとユリウスを見る。
わー……めちゃめちゃ仕事に集中している……。
でも、これは私一人の手には負えないトゲなのだ。
彼に助けてもらうしかない。
「すみませ〜ん、そこの職人さん。ちょっと助けてください」
おそるおそる声をかけてみると、職人さんは手を止めてちらりと私を見た。
「なんだ?」
「あの、トゲが……」
「トゲ?」
「そう、トゲが刺さってるの。これちょっと抜いてほしいんですけど」
私はすすすすっとユリウスに近づくと、指先を差し出した。
彼は私の手を取ると、眼鏡ごしにじぃっと指先を見つめる。
「……一体何を触ったんだ、お前は」
「わかんない」
ユリウスはふぅっと息をつくと、とげ抜き作業を開始した。
「あのユリウス、痛いんですけど」
「我慢しろ」
「えー、でもこういうのユリウス得意そうなのに。痛みもなくささっと処置してくれそうなのに」
「無茶言うな。私は医者じゃない」
呆れたように言うユリウスの言葉に、変に納得してしまった。
そうか、彼は手先は器用かもしれないけど医者じゃなかった。
じゃあ我慢するしかない。
しかし、彼なりに気を使ってくれたらしい。
「平気か?」「あと少しだから我慢しろ」など声をかけながらトゲと格闘していた。
そんなこんなでとげ抜き処置は終了した。
「……取れた」
「ありがとう! 生きた心地がしなかったよ」
「トゲくらいで大袈裟だな」
トゲの抜けた指先を見て大喜びの私に、ユリウスはとげ抜きを手渡しながら言う。
「トゲを甘く見たらトゲに泣くんだよ、ユリウス」
「……何を言っているんだか」
絆創膏を貼る私を見て、ユリウスが呆れたようにつぶやいた。
「でも、やっぱりユリウスって器用だよね。一度でいいからそういう器用な手で色々なものを作ってみたいよ」
「名無しさんの手は見るからに不器用そうだからな。子どものような手だ」
「悪かったわね」
むっとする私だったけれど、ユリウスは予想に反して優しい顔をしていた。
「そんな頼りない小さな手を見ると、つい手を貸してやりたくなる」
思わぬ言葉に驚いてユリウスを見ると、彼ははっと我に返ったらしい。
「もっとしっかりしてくれということだ。名無しさんの手助けばかりをしていたら、私だって仕事ができなくなる」
彼はそう言ってさっさと仕事に戻る。
でも動揺しているのがわかってしまった。
ユリウスがあからさまに冷たい態度をとるのは照れている証拠なのだ。
「ユリウスー」
「なんだ」
呼びかけると、こちらを見もせずに返事をするユリウス。
あぁ、なんだかもういじめたくなる可愛さだなぁ。
でもこれ以上仕事の邪魔はできない。
「こんな手で良ければ、肩たたきくらいはしてあげるからね」
そう言ってポンと彼の肩を叩くと、ユリウスは手元の時計をカチャカチャしながら言う。
「不器用な手でもそれくらいならできそうだな」
「わー、ひどい」
今度はバンと反論の意味を込めて肩を叩いてやった。
しかし、それをものともせず、彼はくつくつと笑いながら時計と向き合っている。
なんだかおかしくて私もふふふっと笑ってしまった。
時計塔は今日も平和。