短編2
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【暗示】
私はアリスが好きだ。
もう可憐で可愛いくて、細くて髪の毛もさらさらで、おめめはくりくりで、声も可愛い。
読書家でお菓子作りも上手。
そしてちょっと卑屈で自己評価が低い。それが最高に可愛いと思う。
完璧だ。
そして、私はペーターさんも好きだ。
見ていて飽きない。
ルックスは申し分ない。むしろ目の保養になるし、眼鏡で敬語で腹黒い所がいい。
頭が良いくせにものすっごいズレているところが最高に面白い。
なによりもアリス命!というストーカーっぷりが見ていて楽しすぎるのだ。
というわけで、私はアリスとペーターさんがさっさと恋人になればいいのに、と常に思っている。
完全にペーターさんの味方。彼の恋を応援すべく日夜アリスを見張っているのだった。
「あぁ、アリス!好きです!大好きです!!愛しています!!」
「うっるさいわねー!!もう離れてっ!!しつこい!変態!ストーカー!!」
「いたっ!?」
アリスに愛を告白したら、ののしられ、さらにパンチまで食らっているペーターさん。
私はそんな彼らの様子をハートの城の柱の陰からこっそり見ていた。
うん、怪しいよね。私怪しい。
わかっているけどやめられないのだ。
「がんばれ……!ペーターさん、いつか必ずその想いは実を結びますからっ……!」
ぐっと握り拳を作り、彼を本当の意味で陰ながら応援する。
「アリスもなぁ、ちょっと頑固すぎるというか、ちょっとくらいペーターさんを試してみればいいのに」
顔だけはいいって言ってたし、実はまんざらでもないんじゃないかと私は思っているのだけれど、アリスはなかなかペーターさんに落ちてくれない。
うーむ、と唸っていたらポンと肩を叩かれた。
「まーたストーキングしてるの? 名無しさんも飽きないよね。っていうか怪しすぎるよね」
振り返るとエースがいつもの笑顔で立っていた。
「あぁ、エース。うん、飽きないの。怪しすぎるのもちゃんと自覚してる」
「はははっ!すごいや。怪しいってことを自覚してるだけマシなのかな」
「そうでしょ?だから私のことは放っておいてね」
私がアリスたちから目を離さずにそう言うと、「ふぅん」とエースがため息交じりにつぶやいた。
「人の恋路をただただ見てるなんてつまらなくない?邪魔する、とかなら相当楽しいとは思うけどさ」
「エース……二人の邪魔したら殴るよ?」
「えー、暴力的だなぁ」
彼はそう言って楽しそうに笑う。
「ペーターさんがあれだけアリスのことを好きなんだから、ペーターさんこそアリスの相手に相応しいはずなの!」
「なにそれ。変なの」
エースはあっさりといった。
「好きな気持ちが必ずしも相手に通じるとは限らないじゃないか」
「そんなの知ってるよ。でも、ペーターさんを見てると、他の人にはアリスをあげたくないのよ私は!」
「はははっ!名無しさんって変だよなー」
からからと笑うエースをじろりと睨む。
しかし、彼はまったく気にせずにこう続けた。
「だいたい、ペーターさんてホントにアリスのこと好きなのかな?」
「え?」
「自己暗示的な所もあるんじゃない?」
「どういうこと?」
「あれだけ好きだ好きだって言ってるんだぜ?自分に言い聞かせてるようなものじゃないか」
「いや、ほんとに好きなんでしょ」
「そうだけどさ。でも言葉の力ってすごいよ。言ったそばからものすごい影響力があるんじゃない?」
エースの発言に思わず彼を見つめる。
するとエースは「例えば……」といって私を見た。
「俺は、名無しさんのことが好き」
声を潜めて言う彼に、私は思わず固まった。
エースは私に顔を近づけながら、さらに続ける。
「ちょっと怪しい所があるけど、そこが面白いし、好きだよ」
柱に片手をついた彼との距離がものすごく近い。
エースは私に目線を合わせると、そっと言った。
「ねぇ名無しさん。そろそろ人の恋路よりも、自分のことを考えてみたほうがいいんじゃない?」
思わず息を詰めていたらしい。
私は息苦しくなった。
エースがふっと笑う。
その瞬間に、はっと意識を取り戻した。
金縛りが解けたみたいに、体が動き、息を吐き出す。
そんな私を見て、エースは意地悪な顔で笑った。
「ほらね。俺のこと、意識しちゃったんじゃない?」
「~~~~っ!!」
その通りだったので何も言い返せなくなる。
「言葉の力ってすごいよな~、はははっ!」
ふっと私から離れて明るく笑うエースに、思いっきり腹が立つ。
悔しい!
「名無しさん」
「なによ、もう何言ったって無駄だからね」
「名無しさんには無駄かもしれないけど、俺はますます好きになったよ。君のこと」
「え……」
「自己暗示、だね」
そう言って爽やかに笑うエース。
彼は私の頭をポンとなでると、小さな声で言った。
「君が俺のことを好きになるような暗示をかけられたらいいのに」
誰に言う訳でもない、独り言のような言い方に私は胸が詰まった。
言うべき言葉が思い浮かばずに、ただエースを見つめていると彼はふっと小さく笑った。
「それじゃあまたね、名無しさん」
歩き出す彼の後ろ姿を、私はぼんやりと見送る。
遠ざかっていく彼の背中から目が逸らせない。
頭を撫でる彼の手の感触が離れない。
「それじゃあまたね」という彼の声が頭に鳴り響く。
まるで暗示にでもかかってしまったみたいだ。
私はアリスが好きだ。
もう可憐で可愛いくて、細くて髪の毛もさらさらで、おめめはくりくりで、声も可愛い。
読書家でお菓子作りも上手。
そしてちょっと卑屈で自己評価が低い。それが最高に可愛いと思う。
完璧だ。
そして、私はペーターさんも好きだ。
見ていて飽きない。
ルックスは申し分ない。むしろ目の保養になるし、眼鏡で敬語で腹黒い所がいい。
頭が良いくせにものすっごいズレているところが最高に面白い。
なによりもアリス命!というストーカーっぷりが見ていて楽しすぎるのだ。
というわけで、私はアリスとペーターさんがさっさと恋人になればいいのに、と常に思っている。
完全にペーターさんの味方。彼の恋を応援すべく日夜アリスを見張っているのだった。
「あぁ、アリス!好きです!大好きです!!愛しています!!」
「うっるさいわねー!!もう離れてっ!!しつこい!変態!ストーカー!!」
「いたっ!?」
アリスに愛を告白したら、ののしられ、さらにパンチまで食らっているペーターさん。
私はそんな彼らの様子をハートの城の柱の陰からこっそり見ていた。
うん、怪しいよね。私怪しい。
わかっているけどやめられないのだ。
「がんばれ……!ペーターさん、いつか必ずその想いは実を結びますからっ……!」
ぐっと握り拳を作り、彼を本当の意味で陰ながら応援する。
「アリスもなぁ、ちょっと頑固すぎるというか、ちょっとくらいペーターさんを試してみればいいのに」
顔だけはいいって言ってたし、実はまんざらでもないんじゃないかと私は思っているのだけれど、アリスはなかなかペーターさんに落ちてくれない。
うーむ、と唸っていたらポンと肩を叩かれた。
「まーたストーキングしてるの? 名無しさんも飽きないよね。っていうか怪しすぎるよね」
振り返るとエースがいつもの笑顔で立っていた。
「あぁ、エース。うん、飽きないの。怪しすぎるのもちゃんと自覚してる」
「はははっ!すごいや。怪しいってことを自覚してるだけマシなのかな」
「そうでしょ?だから私のことは放っておいてね」
私がアリスたちから目を離さずにそう言うと、「ふぅん」とエースがため息交じりにつぶやいた。
「人の恋路をただただ見てるなんてつまらなくない?邪魔する、とかなら相当楽しいとは思うけどさ」
「エース……二人の邪魔したら殴るよ?」
「えー、暴力的だなぁ」
彼はそう言って楽しそうに笑う。
「ペーターさんがあれだけアリスのことを好きなんだから、ペーターさんこそアリスの相手に相応しいはずなの!」
「なにそれ。変なの」
エースはあっさりといった。
「好きな気持ちが必ずしも相手に通じるとは限らないじゃないか」
「そんなの知ってるよ。でも、ペーターさんを見てると、他の人にはアリスをあげたくないのよ私は!」
「はははっ!名無しさんって変だよなー」
からからと笑うエースをじろりと睨む。
しかし、彼はまったく気にせずにこう続けた。
「だいたい、ペーターさんてホントにアリスのこと好きなのかな?」
「え?」
「自己暗示的な所もあるんじゃない?」
「どういうこと?」
「あれだけ好きだ好きだって言ってるんだぜ?自分に言い聞かせてるようなものじゃないか」
「いや、ほんとに好きなんでしょ」
「そうだけどさ。でも言葉の力ってすごいよ。言ったそばからものすごい影響力があるんじゃない?」
エースの発言に思わず彼を見つめる。
するとエースは「例えば……」といって私を見た。
「俺は、名無しさんのことが好き」
声を潜めて言う彼に、私は思わず固まった。
エースは私に顔を近づけながら、さらに続ける。
「ちょっと怪しい所があるけど、そこが面白いし、好きだよ」
柱に片手をついた彼との距離がものすごく近い。
エースは私に目線を合わせると、そっと言った。
「ねぇ名無しさん。そろそろ人の恋路よりも、自分のことを考えてみたほうがいいんじゃない?」
思わず息を詰めていたらしい。
私は息苦しくなった。
エースがふっと笑う。
その瞬間に、はっと意識を取り戻した。
金縛りが解けたみたいに、体が動き、息を吐き出す。
そんな私を見て、エースは意地悪な顔で笑った。
「ほらね。俺のこと、意識しちゃったんじゃない?」
「~~~~っ!!」
その通りだったので何も言い返せなくなる。
「言葉の力ってすごいよな~、はははっ!」
ふっと私から離れて明るく笑うエースに、思いっきり腹が立つ。
悔しい!
「名無しさん」
「なによ、もう何言ったって無駄だからね」
「名無しさんには無駄かもしれないけど、俺はますます好きになったよ。君のこと」
「え……」
「自己暗示、だね」
そう言って爽やかに笑うエース。
彼は私の頭をポンとなでると、小さな声で言った。
「君が俺のことを好きになるような暗示をかけられたらいいのに」
誰に言う訳でもない、独り言のような言い方に私は胸が詰まった。
言うべき言葉が思い浮かばずに、ただエースを見つめていると彼はふっと小さく笑った。
「それじゃあまたね、名無しさん」
歩き出す彼の後ろ姿を、私はぼんやりと見送る。
遠ざかっていく彼の背中から目が逸らせない。
頭を撫でる彼の手の感触が離れない。
「それじゃあまたね」という彼の声が頭に鳴り響く。
まるで暗示にでもかかってしまったみたいだ。