短編2
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【留守番】
「ユリウスこんにちはー」
長い階段をなんとか登りきって、ユリウスの部屋を訪ねた。
しかし……。
「やぁ、名無しさん。こんにちは」
「あれ、エース?」
私を出迎えてくれたのは、ユリウスではなくてエースだった。
「エースも来てたんだ? 仕事の手伝い?」
「うん。3時間帯前からここにいるんだ。名無しさんはどうしたの?」
「私はヒマだったから、ここの階段で運動がてらちょっと遊びに来てみたの。ユリウスは?」
辺りを見回したけれど、ユリウスの姿がない。
すると、エースがにこやかに言った。
「あいつなら、仕事で外に出て行ったよ」
「え!外!?」
「うん、どれくらいぶりに外へ行ったのか知らないけど、かなり憂鬱そうな顔して出て行ったよ」
「そうなんだ」
「そうそう。しかもさ、行き先はなんと遊園地だぜ?ユリウスが遊園地なんて笑っちゃうよなぁ。はははっ!」
本当に笑い出すエース。私も遊園地にいるユリウスを想像して笑ってしまった。
「俺もついて行こうとしたんだけど、ここで大人しくしてろって言われちゃったんだ」
エースがくっついていくと、ロクなことがないからだろうな、とひそかに思う私。
「まぁ、でもおかげで名無しさんとこうして会えたしラッキーだったかな」
エースはそう言って笑うと「あ、お茶でも飲む?」とキッチンへ行こうとした。
「あぁ、いいよ。私が淹れるから……って私のうちじゃないけど」
「うん、俺も自分の家じゃないけど」
結局二人であーだこーだと勝手に戸棚を開けながら珈琲を淹れている私達。
人の部屋で勝手にお茶を入れる自分たちになんだかおかしくなる。
珈琲豆を探して戸棚を開けまくり、コーヒーミルを取り出そうとしてお皿を落としそうになったり、お湯が沸かないと思ったら火がついてなかったり、もうかなり滅茶苦茶だった。
でも、めちゃくちゃなりにものすごく楽しんでいた私達。
変なテンションになってきている。
新品の珈琲豆の袋を、エースが変な開け方をしてばらまいたことで、私達のテンションは最高潮にまで達した。
「ちょっとなにしてんのー!?」
「はははっ!ごめん、なんかぱーんって開いちゃった」
大笑いしながら豆を拾う私達。
飛び散った珈琲豆を2人で拾っていたら、エースが不意に言った。
「ユリウスが今の状態を見たら、俺たち絶対怒られそうだよな」
「うん。何もするな、触るなって言われそう。それで、結局全部やってくれそう。いい人だよねぇ。私、ユリウスのそういう所が好きだなー」
「はははっ!俺も好きだなー」
「怒られてもなんか喜びだよね」
「うわー、それはないな、俺。名無しさんって結構Mなんだ。引くなー」
そう言ってニヤニヤ笑うエース。
「嘘だ~! エースだってユリウスのお説教をいっつもにこにこ嬉しそうに聞いてるじゃない」
私の反論に彼はくすくすと笑う。
それからしばらく私たちは珈琲豆拾いに専念していたが、またもや不意にエースが口を開いた。
「ユリウスのお説教も嫌いじゃないけど、名無しさんが怒ってる所を見るのも結構好きなんだ、俺」
「なにそれ。怒ってる所が好きって……エースこそドМじゃないの?意外すぎるわー」
怒られたい願望でもあるのかしら?
「違うよ、なんか可愛いんだよね。ぎゃーぎゃー喚いてるのを見るのが楽しくて、怒らせたくなるっていうか、さ」
「……あぁ、なるほどね」
やっぱりSだこの人。
そう納得した時だった。
エースが私の手に触れる。
私は思わず固まった。
手袋をしていない彼の手はすらりとしていて、剣を持つ者とは思えないほどきれいに見えた。
余計にドキドキしてしまう。
「いつもの名無しさんも好きなんだけどね?」
そう言ってじっと私を見つめるエース。
その目の奥に、なにかいつもと違う色を感じてしまった私。
鼓動がものすごい勢いでバクバクし始めた。
顔がかーっと熱くなる。
そんな私を見て、エースが小さく笑う。
頭が真っ白になりかけた時だった。
遠くでドアが開く音がした。
「!」
私とエースは一瞬かちりと固まった。
しかし次の瞬間、私はぱっと立ち上がった。
「な、なんだ!? 名無しさん、来てたのか?」
突然顔を出した私に、遊園地から帰ってきたらしいユリウスが驚いたように声を上げた。
「う、うん、お帰りなさい、ユリウス」
私がそう言うと、エースも立ち上がる。
「やぁ、ユリウス。おかえり」
いつもの爽やかな笑顔でそういう彼に、ユリウスは顔をしかめた。
「……お前達、そんなところで何をしているんだ?」
彼の言葉に、私はなんだか慌ててしまった。
「え!?べ、別になにもっ……!」
「?」
「ごめんごめん、ユリウス。珈琲豆ばらまいちゃったんだ。ユリウスも拾うの手伝ってくれよ」
そう言って笑うエースに、ユリウスは思い切り呆れた顔をした。
「……お前達だけにするとロクなことにならないな。何もするな、触るな」
「はははっ!予想通りの言葉だったなー!な、名無しさん?」
「え、う、うん」
楽しそうに笑うエースに私はうなずいたけれど
先ほど彼に触れられた手の感触と、こちらを見つめる瞳を思い出してしまって、うまく答えることができなかった。
そんな私に爽やか笑顔を向けつつも「続きはあとで、ね?」とこっそり耳打ちすると、エースはさっさと豆拾いを再開し始めるのだった。
「ユリウスこんにちはー」
長い階段をなんとか登りきって、ユリウスの部屋を訪ねた。
しかし……。
「やぁ、名無しさん。こんにちは」
「あれ、エース?」
私を出迎えてくれたのは、ユリウスではなくてエースだった。
「エースも来てたんだ? 仕事の手伝い?」
「うん。3時間帯前からここにいるんだ。名無しさんはどうしたの?」
「私はヒマだったから、ここの階段で運動がてらちょっと遊びに来てみたの。ユリウスは?」
辺りを見回したけれど、ユリウスの姿がない。
すると、エースがにこやかに言った。
「あいつなら、仕事で外に出て行ったよ」
「え!外!?」
「うん、どれくらいぶりに外へ行ったのか知らないけど、かなり憂鬱そうな顔して出て行ったよ」
「そうなんだ」
「そうそう。しかもさ、行き先はなんと遊園地だぜ?ユリウスが遊園地なんて笑っちゃうよなぁ。はははっ!」
本当に笑い出すエース。私も遊園地にいるユリウスを想像して笑ってしまった。
「俺もついて行こうとしたんだけど、ここで大人しくしてろって言われちゃったんだ」
エースがくっついていくと、ロクなことがないからだろうな、とひそかに思う私。
「まぁ、でもおかげで名無しさんとこうして会えたしラッキーだったかな」
エースはそう言って笑うと「あ、お茶でも飲む?」とキッチンへ行こうとした。
「あぁ、いいよ。私が淹れるから……って私のうちじゃないけど」
「うん、俺も自分の家じゃないけど」
結局二人であーだこーだと勝手に戸棚を開けながら珈琲を淹れている私達。
人の部屋で勝手にお茶を入れる自分たちになんだかおかしくなる。
珈琲豆を探して戸棚を開けまくり、コーヒーミルを取り出そうとしてお皿を落としそうになったり、お湯が沸かないと思ったら火がついてなかったり、もうかなり滅茶苦茶だった。
でも、めちゃくちゃなりにものすごく楽しんでいた私達。
変なテンションになってきている。
新品の珈琲豆の袋を、エースが変な開け方をしてばらまいたことで、私達のテンションは最高潮にまで達した。
「ちょっとなにしてんのー!?」
「はははっ!ごめん、なんかぱーんって開いちゃった」
大笑いしながら豆を拾う私達。
飛び散った珈琲豆を2人で拾っていたら、エースが不意に言った。
「ユリウスが今の状態を見たら、俺たち絶対怒られそうだよな」
「うん。何もするな、触るなって言われそう。それで、結局全部やってくれそう。いい人だよねぇ。私、ユリウスのそういう所が好きだなー」
「はははっ!俺も好きだなー」
「怒られてもなんか喜びだよね」
「うわー、それはないな、俺。名無しさんって結構Mなんだ。引くなー」
そう言ってニヤニヤ笑うエース。
「嘘だ~! エースだってユリウスのお説教をいっつもにこにこ嬉しそうに聞いてるじゃない」
私の反論に彼はくすくすと笑う。
それからしばらく私たちは珈琲豆拾いに専念していたが、またもや不意にエースが口を開いた。
「ユリウスのお説教も嫌いじゃないけど、名無しさんが怒ってる所を見るのも結構好きなんだ、俺」
「なにそれ。怒ってる所が好きって……エースこそドМじゃないの?意外すぎるわー」
怒られたい願望でもあるのかしら?
「違うよ、なんか可愛いんだよね。ぎゃーぎゃー喚いてるのを見るのが楽しくて、怒らせたくなるっていうか、さ」
「……あぁ、なるほどね」
やっぱりSだこの人。
そう納得した時だった。
エースが私の手に触れる。
私は思わず固まった。
手袋をしていない彼の手はすらりとしていて、剣を持つ者とは思えないほどきれいに見えた。
余計にドキドキしてしまう。
「いつもの名無しさんも好きなんだけどね?」
そう言ってじっと私を見つめるエース。
その目の奥に、なにかいつもと違う色を感じてしまった私。
鼓動がものすごい勢いでバクバクし始めた。
顔がかーっと熱くなる。
そんな私を見て、エースが小さく笑う。
頭が真っ白になりかけた時だった。
遠くでドアが開く音がした。
「!」
私とエースは一瞬かちりと固まった。
しかし次の瞬間、私はぱっと立ち上がった。
「な、なんだ!? 名無しさん、来てたのか?」
突然顔を出した私に、遊園地から帰ってきたらしいユリウスが驚いたように声を上げた。
「う、うん、お帰りなさい、ユリウス」
私がそう言うと、エースも立ち上がる。
「やぁ、ユリウス。おかえり」
いつもの爽やかな笑顔でそういう彼に、ユリウスは顔をしかめた。
「……お前達、そんなところで何をしているんだ?」
彼の言葉に、私はなんだか慌ててしまった。
「え!?べ、別になにもっ……!」
「?」
「ごめんごめん、ユリウス。珈琲豆ばらまいちゃったんだ。ユリウスも拾うの手伝ってくれよ」
そう言って笑うエースに、ユリウスは思い切り呆れた顔をした。
「……お前達だけにするとロクなことにならないな。何もするな、触るな」
「はははっ!予想通りの言葉だったなー!な、名無しさん?」
「え、う、うん」
楽しそうに笑うエースに私はうなずいたけれど
先ほど彼に触れられた手の感触と、こちらを見つめる瞳を思い出してしまって、うまく答えることができなかった。
そんな私に爽やか笑顔を向けつつも「続きはあとで、ね?」とこっそり耳打ちすると、エースはさっさと豆拾いを再開し始めるのだった。