短編2
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【ちいさなしあわせ】
クローバーの塔の領地は冬。
しんしんと積もる雪が、辺りを真っ白に覆い尽くしていた。
そんな冬景色を暖かな部屋から見ていたら、ものすごく寂しくなった。
冬は好きな人に会いたくなる。
なんでだろう?
キラキラ光るイルミネーションの中を一緒に歩きたいからかもしれない。
寒いからそばにいたいのかもしれない。
なんだか寂しくなるからかもしれない。
いつだって好きな人には会いたいけれど、やっぱり冬はいつにも増して気持ちが大きくなる。
私の恋人は迷子になることが日常なので、会おうと思ってもなかなか会えない。
会いたいなぁ。
最近全然会ってない。今頃どこを歩いているんだろう?
行き倒れたりはしないと思うけど、やっぱり心配だし、会いたい。
そんなことを思っていたら、部屋の戸がノックされた。
出てみると、エースが立っていたのでびっくりした。
「やぁ、名無しさん。こんにちは」
「エース!?」
驚く私をよそに、エースはにこにことしている。
「近くまできたからさ、寄ってみたんだ」
「寄ってみたって……よくたどり着けたね」
「うん。塔の人がいたから案内してもらった」
「珍しいね、案内してもらうなんて」
彼は変なこだわりがあるようで、よく迷子になるくせにあまり案内を好まないのだ。
「うん、どうしても今すぐ君に会いたかったから、さ」
そう微笑まれて、私もふっと顔が緩んでしまった。
エースはそんな私の頭をぽんと撫でながら部屋に入る。
あまりのタイミングの良さに不思議な感覚を覚えつつも、嬉しさがじわじわと広がっていくのがわかった。
「いやー、寒いね。こんなに雪が降ってるなんて思わなかったぜ」
勝手知ったる様子でずかずかと部屋に入り込むエース。
「今日はすごい雪だからね。エースびしょびしょじゃない。風邪引いちゃうよ。とりあえず脱いだ方がいいんじゃない?」
「え、脱ぐ?」
「いや、もうそういう反応はいいから」
楽しそうにこちらを見たエースに、しゅぱっとツッコミを入れる。
エースはくすくすと笑いながら手袋を外した。
「暖炉の前ならすぐ乾くと思うよ。コートもその辺にかけておきなよ」
そう言いながらタオルを引っ張り出してきた私に、コートを着たままのエースは小さな白い袋を差し出した。
手のひらサイズでピンク色のリボンが掛かっている。
「はい、これ」
「え?なに?」
「お土産」
赤い服を着て、白い布袋を差し出す彼に思わず笑う。
「なんかサンタクロースみたい」
「え? 俺が?」
「うん。赤いし、プレゼントの袋を持ってるし」
「そう言われてみればそうかもしれないけど、俺、あんなに貫禄のある体型してないぜ?」
ちゃんと鍛錬してるし、とエースは自分の服装を見下ろしながら言う。
「まぁいいや。とりあえずこれあげるよ。プレゼントってほどいいものじゃないけど」
「ありがとう」
エースから袋を受け取り、私はかわりに彼にタオルを渡す。
リボンをほどいて中身を覗くと、お菓子がばらばらと入っていた。
「街を歩いてたらなんかイベントをやってて、子どもたちに配ってたんだ」
「子どもに混じってもらってきたの?」
びっくりして聞く私に、エースはタオルで頭をごしごし拭きながら言う。
「うん。お菓子好きな子にあげたいって言ったらくれたよ」
「……たぶん子どもにあげると思ったんでしょうね」
まぁ、無理やり強奪してきた訳でもなさそうだからいいや。
「どうもありがとう」
「どういたしまして」
そう言いながらエースが脱いだコートを、なんとなく受け取るとハンガーにかける。
このやりとりが自然にできるほどの時間を彼と一緒に過ごしてきた。なんだか嬉しい。
「ちょっと暖炉で暖まってて。今お茶入れるから」
キッチンへ向かおうとエースに背を向けた時だった。
「あー、ちょっと待って」
言葉と同時に、後ろからふわりと抱きしめられる。
「久しぶりだからちょっと触っておきたいな」
静かな声でそう言う彼の腕に、そっと触れた。
すぐそばで聞く彼の声と、まわされた腕の感触に胸がいっぱいになる。
私も会いたかった。
恥ずかしくて言えないけど。
しばらく黙ってそのままでいたけれど、不意にエースが言った。
「やっぱり今日名無しさんに会いに来てよかった」
エースは私の頬にキスをした。
冷たい唇にびくりとする。
「あ、ごめん。冷たかった?」
くすくす笑うエース。
「じゃあ続きはまた後で。ちゃんと暖まってからね」
そう言いながら私の首筋に冷たいキスを落とす彼。
冷たさにびくりとして非難の目を向けたけれど、楽しそうに笑っている彼と目が合って、お互いに笑ってしまった。
クローバーの塔の領地は冬。
しんしんと積もる雪が、辺りを真っ白に覆い尽くしていた。
そんな冬景色を暖かな部屋から見ていたら、ものすごく寂しくなった。
冬は好きな人に会いたくなる。
なんでだろう?
キラキラ光るイルミネーションの中を一緒に歩きたいからかもしれない。
寒いからそばにいたいのかもしれない。
なんだか寂しくなるからかもしれない。
いつだって好きな人には会いたいけれど、やっぱり冬はいつにも増して気持ちが大きくなる。
私の恋人は迷子になることが日常なので、会おうと思ってもなかなか会えない。
会いたいなぁ。
最近全然会ってない。今頃どこを歩いているんだろう?
行き倒れたりはしないと思うけど、やっぱり心配だし、会いたい。
そんなことを思っていたら、部屋の戸がノックされた。
出てみると、エースが立っていたのでびっくりした。
「やぁ、名無しさん。こんにちは」
「エース!?」
驚く私をよそに、エースはにこにことしている。
「近くまできたからさ、寄ってみたんだ」
「寄ってみたって……よくたどり着けたね」
「うん。塔の人がいたから案内してもらった」
「珍しいね、案内してもらうなんて」
彼は変なこだわりがあるようで、よく迷子になるくせにあまり案内を好まないのだ。
「うん、どうしても今すぐ君に会いたかったから、さ」
そう微笑まれて、私もふっと顔が緩んでしまった。
エースはそんな私の頭をぽんと撫でながら部屋に入る。
あまりのタイミングの良さに不思議な感覚を覚えつつも、嬉しさがじわじわと広がっていくのがわかった。
「いやー、寒いね。こんなに雪が降ってるなんて思わなかったぜ」
勝手知ったる様子でずかずかと部屋に入り込むエース。
「今日はすごい雪だからね。エースびしょびしょじゃない。風邪引いちゃうよ。とりあえず脱いだ方がいいんじゃない?」
「え、脱ぐ?」
「いや、もうそういう反応はいいから」
楽しそうにこちらを見たエースに、しゅぱっとツッコミを入れる。
エースはくすくすと笑いながら手袋を外した。
「暖炉の前ならすぐ乾くと思うよ。コートもその辺にかけておきなよ」
そう言いながらタオルを引っ張り出してきた私に、コートを着たままのエースは小さな白い袋を差し出した。
手のひらサイズでピンク色のリボンが掛かっている。
「はい、これ」
「え?なに?」
「お土産」
赤い服を着て、白い布袋を差し出す彼に思わず笑う。
「なんかサンタクロースみたい」
「え? 俺が?」
「うん。赤いし、プレゼントの袋を持ってるし」
「そう言われてみればそうかもしれないけど、俺、あんなに貫禄のある体型してないぜ?」
ちゃんと鍛錬してるし、とエースは自分の服装を見下ろしながら言う。
「まぁいいや。とりあえずこれあげるよ。プレゼントってほどいいものじゃないけど」
「ありがとう」
エースから袋を受け取り、私はかわりに彼にタオルを渡す。
リボンをほどいて中身を覗くと、お菓子がばらばらと入っていた。
「街を歩いてたらなんかイベントをやってて、子どもたちに配ってたんだ」
「子どもに混じってもらってきたの?」
びっくりして聞く私に、エースはタオルで頭をごしごし拭きながら言う。
「うん。お菓子好きな子にあげたいって言ったらくれたよ」
「……たぶん子どもにあげると思ったんでしょうね」
まぁ、無理やり強奪してきた訳でもなさそうだからいいや。
「どうもありがとう」
「どういたしまして」
そう言いながらエースが脱いだコートを、なんとなく受け取るとハンガーにかける。
このやりとりが自然にできるほどの時間を彼と一緒に過ごしてきた。なんだか嬉しい。
「ちょっと暖炉で暖まってて。今お茶入れるから」
キッチンへ向かおうとエースに背を向けた時だった。
「あー、ちょっと待って」
言葉と同時に、後ろからふわりと抱きしめられる。
「久しぶりだからちょっと触っておきたいな」
静かな声でそう言う彼の腕に、そっと触れた。
すぐそばで聞く彼の声と、まわされた腕の感触に胸がいっぱいになる。
私も会いたかった。
恥ずかしくて言えないけど。
しばらく黙ってそのままでいたけれど、不意にエースが言った。
「やっぱり今日名無しさんに会いに来てよかった」
エースは私の頬にキスをした。
冷たい唇にびくりとする。
「あ、ごめん。冷たかった?」
くすくす笑うエース。
「じゃあ続きはまた後で。ちゃんと暖まってからね」
そう言いながら私の首筋に冷たいキスを落とす彼。
冷たさにびくりとして非難の目を向けたけれど、楽しそうに笑っている彼と目が合って、お互いに笑ってしまった。