短編
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【ストーカーズ】
「うわぁ、ナイスタイミング!」
廊下を曲がろうとしたところである2人の人物を目撃し、私は慌てて身を隠した。
「そろそろ2人の距離が縮まってほしいんだけどなぁ」
私は今ストーキングしている。
アリスの、ではない。
ペーターさんだ。
ハートの城へやってきた私。
本当はアリスの元へ行こうとしていた。
わくわく廊下を歩いていたらアリスを発見!
そして一緒にペーターさんがいることに気づいた。
なんかおもしろそうだから、という理由で「アリスのストーキングをするペーターさん」をストーキングしはじめて、もうすっかりハマってしまった私。
これで2人を見るのは3回目くらいだが、なかなか進展しない。
見ていて、というか前々から思っていたけれどペーターさんってやっぱりちょっと異常だよなぁ。
今だって、アリスとニコニコ話していたかと思えば、邪魔だといって突然近くのメイドさんに銃を向けるし。
アリスに叱られてシュンとしていたかと思えば、慰められて抱き着くほどに喜んでるし。(そして殴られてるし)
はたから見るとなんて忙しい男だろうか、というのが正直な感想だ。
感情の振れ幅がちょっと普通じゃないと思う。
私は壁の影から、そんな彼らのやりとりをこっそりと観察している。
会話の全てが聞こえるわけではないが、声高に愛を叫ぶペーターさんの声と全力で拒否するアリスの声がところどころ聞こえてくる。
まぁ、動きを見ているだけでも何を話しているのか、想像がつくのがおもしろい。
「あぁ、あれは痛そう……たぶん思いっきり入ったよね」
アリスに殴られて頭を押さえるペーターさんを見て、私は思わずつぶやいた。
「でもさ、顔がちょっと嬉しそうじゃないか。ペーターさんてMなのかなぁ。すっごく意外だけど」
「わっ!!?」
突然頭上から降ってくる言葉に、私はびくりとする。
おそるおそる見上げると、いつの間にかエースがいた。
難しい顔をして顎に手を当てている。
「エース! いつの間に……」
「名無しさんも趣味が悪いよなぁ。覗き見なんてさ」
「あなたこそ気配を消して人の後ろに立つなんて、趣味悪いわよ」
結局一緒に覗き見してるし、私よりも相当趣味が悪い。
「それにしてもペーターさんて、本当に人が変わるよね。アリスの前だとさ」
じっと2人を見つめるエースにつられて、私も視線を向ける。
「うん。面白いくらいだよね。あんな笑顔見たことないもん」
「あれ、名無しさんってば嫉妬?」
「あはは、ないですないです。私はアリスのことを好きなペーターさんを見るのが好きなの」
「ふぅん」
笑って否定する私に、不思議そうな表情をするエース。
「あ、なんか雰囲気が……」
エースの言葉に私ははっとして、ストーキング(覗き見)に意識を戻す。
ペーターはアリスとの距離を詰め、腕をつかんだ。
「おぉ~!?(ついに進展が!?)」
「名無しさん、口あいてるよ」
「しっ! いいところだから黙って!」
腕を掴まれたアリスは、一応抵抗のようなものをしているが、
それに構わずペーターさんは真剣な眼差しで、何かを言っている。
動けなくなるアリス。
そりゃあの至近距離で、何か言われたら動けなくなるだろうなぁ。
ペーターさんの顔だけは好み、って言ってたし。
「なにを話してるんだろ? アリス、流されちゃいそう~」
「そうだね。このままやっちゃうのかなー、ペーターさん」
「……下品なことは言わないでね」
「名無しさんも似たようなこと言ってたよ……って!?」
反論の代わりに、後ろのエースにひじ鉄を入れておく。
軽いものだったけど、予想外だったようでエースを驚かせるには十分だった。
「君って手が出るタイプだったんだ」
「たまたま手が当たっちゃっただけだよ。ほら、静かにしないと見つかっちゃう」
「名無しさんのが声大きいよ。ほら、黙って」
そう言ったかと思うと、エースは手で私の口元を押さえた。
「ん!? んむむっ!?」
「あぁ、ごめん。苦しい? でも、ほら見つかったら2人から怒られちゃうし、ちょっと我慢ね」
「んーん!!」
ごめん、なんて言いつつ完璧に抑え込みに入っているのは気のせいでしょうか?
エースの手をはぎ取ろうとするが、びくともしない。
それどころか「暴れないでくれよ。な?」ととても楽しそ~うに言う。
冗談じゃない。酸欠!殺される!
必死にもがく私とエースの、無音のやり取りが始まりかけた時だった。
ペーターさんの声が聞こえた。
落ち着いた、でも少し硬い感じの声。
私とエースはぴたりと止まって、様子を伺う。
ペーターさんとアリスの声は聞こえないが、2人の間に流れている空気は甘いものではなかった。
「どうしたんだろう?」
エースから解放された私は心配になる。
「はは。ついに本気で振られちゃったかな」
「明るく言わないであげて」
なんだかんだ、彼らの話は終了したようでアリスは自室へと戻っていく。
その後ろ姿を見送るペーター。
そしてその後姿を見ている私(とエース)。
「……結構問題ある人だけど、なんかかわいそう。切ない」
「問題しかない人だよね」
「エースにだけは言われたくないと思うよ」
自分を棚に上げてよく言うな、この人。
呆れてため息をついた。
「とりあえず、今はそっとしておいてあげようよ」
「えー、せっかくだから元気づけてあげようぜ」
「ダメ! 絶対ダメ! エースなんて絶対顔見せちゃだめ! 見つからないうちに退散しましょ」
「見つからないうちに、ね。それっていつのことだろう」
「は? いつのことって、見つからないうちよ! 今のうちに……」
とんちんかんなことを言うエースに、思わず顔をしかめる。
その時だった。
「あなた達はさっきから一体何なんです?」
ペーターさんの声が響く。
あ、あれ……?
おそるおそるペーターさんの方を見ると、彼はゆっくりと振り返りながらこういった。
「今更逃げられると思っているんですか」
思わずエースを見ると、彼は変わらず笑顔だった。
「ね? 見つからないうちに逃げるためには、覗きをしないってことだよ」
「今更遅いわよ、そのアドバイス」
思わず文句をつける私だが、本当に今更だ。
ペーターがこちらに歩いてくるのをみて、ストーカーにストーキングしたことを責められるのか、とうなだれる私だった。
「うわぁ、ナイスタイミング!」
廊下を曲がろうとしたところである2人の人物を目撃し、私は慌てて身を隠した。
「そろそろ2人の距離が縮まってほしいんだけどなぁ」
私は今ストーキングしている。
アリスの、ではない。
ペーターさんだ。
ハートの城へやってきた私。
本当はアリスの元へ行こうとしていた。
わくわく廊下を歩いていたらアリスを発見!
そして一緒にペーターさんがいることに気づいた。
なんかおもしろそうだから、という理由で「アリスのストーキングをするペーターさん」をストーキングしはじめて、もうすっかりハマってしまった私。
これで2人を見るのは3回目くらいだが、なかなか進展しない。
見ていて、というか前々から思っていたけれどペーターさんってやっぱりちょっと異常だよなぁ。
今だって、アリスとニコニコ話していたかと思えば、邪魔だといって突然近くのメイドさんに銃を向けるし。
アリスに叱られてシュンとしていたかと思えば、慰められて抱き着くほどに喜んでるし。(そして殴られてるし)
はたから見るとなんて忙しい男だろうか、というのが正直な感想だ。
感情の振れ幅がちょっと普通じゃないと思う。
私は壁の影から、そんな彼らのやりとりをこっそりと観察している。
会話の全てが聞こえるわけではないが、声高に愛を叫ぶペーターさんの声と全力で拒否するアリスの声がところどころ聞こえてくる。
まぁ、動きを見ているだけでも何を話しているのか、想像がつくのがおもしろい。
「あぁ、あれは痛そう……たぶん思いっきり入ったよね」
アリスに殴られて頭を押さえるペーターさんを見て、私は思わずつぶやいた。
「でもさ、顔がちょっと嬉しそうじゃないか。ペーターさんてMなのかなぁ。すっごく意外だけど」
「わっ!!?」
突然頭上から降ってくる言葉に、私はびくりとする。
おそるおそる見上げると、いつの間にかエースがいた。
難しい顔をして顎に手を当てている。
「エース! いつの間に……」
「名無しさんも趣味が悪いよなぁ。覗き見なんてさ」
「あなたこそ気配を消して人の後ろに立つなんて、趣味悪いわよ」
結局一緒に覗き見してるし、私よりも相当趣味が悪い。
「それにしてもペーターさんて、本当に人が変わるよね。アリスの前だとさ」
じっと2人を見つめるエースにつられて、私も視線を向ける。
「うん。面白いくらいだよね。あんな笑顔見たことないもん」
「あれ、名無しさんってば嫉妬?」
「あはは、ないですないです。私はアリスのことを好きなペーターさんを見るのが好きなの」
「ふぅん」
笑って否定する私に、不思議そうな表情をするエース。
「あ、なんか雰囲気が……」
エースの言葉に私ははっとして、ストーキング(覗き見)に意識を戻す。
ペーターはアリスとの距離を詰め、腕をつかんだ。
「おぉ~!?(ついに進展が!?)」
「名無しさん、口あいてるよ」
「しっ! いいところだから黙って!」
腕を掴まれたアリスは、一応抵抗のようなものをしているが、
それに構わずペーターさんは真剣な眼差しで、何かを言っている。
動けなくなるアリス。
そりゃあの至近距離で、何か言われたら動けなくなるだろうなぁ。
ペーターさんの顔だけは好み、って言ってたし。
「なにを話してるんだろ? アリス、流されちゃいそう~」
「そうだね。このままやっちゃうのかなー、ペーターさん」
「……下品なことは言わないでね」
「名無しさんも似たようなこと言ってたよ……って!?」
反論の代わりに、後ろのエースにひじ鉄を入れておく。
軽いものだったけど、予想外だったようでエースを驚かせるには十分だった。
「君って手が出るタイプだったんだ」
「たまたま手が当たっちゃっただけだよ。ほら、静かにしないと見つかっちゃう」
「名無しさんのが声大きいよ。ほら、黙って」
そう言ったかと思うと、エースは手で私の口元を押さえた。
「ん!? んむむっ!?」
「あぁ、ごめん。苦しい? でも、ほら見つかったら2人から怒られちゃうし、ちょっと我慢ね」
「んーん!!」
ごめん、なんて言いつつ完璧に抑え込みに入っているのは気のせいでしょうか?
エースの手をはぎ取ろうとするが、びくともしない。
それどころか「暴れないでくれよ。な?」ととても楽しそ~うに言う。
冗談じゃない。酸欠!殺される!
必死にもがく私とエースの、無音のやり取りが始まりかけた時だった。
ペーターさんの声が聞こえた。
落ち着いた、でも少し硬い感じの声。
私とエースはぴたりと止まって、様子を伺う。
ペーターさんとアリスの声は聞こえないが、2人の間に流れている空気は甘いものではなかった。
「どうしたんだろう?」
エースから解放された私は心配になる。
「はは。ついに本気で振られちゃったかな」
「明るく言わないであげて」
なんだかんだ、彼らの話は終了したようでアリスは自室へと戻っていく。
その後ろ姿を見送るペーター。
そしてその後姿を見ている私(とエース)。
「……結構問題ある人だけど、なんかかわいそう。切ない」
「問題しかない人だよね」
「エースにだけは言われたくないと思うよ」
自分を棚に上げてよく言うな、この人。
呆れてため息をついた。
「とりあえず、今はそっとしておいてあげようよ」
「えー、せっかくだから元気づけてあげようぜ」
「ダメ! 絶対ダメ! エースなんて絶対顔見せちゃだめ! 見つからないうちに退散しましょ」
「見つからないうちに、ね。それっていつのことだろう」
「は? いつのことって、見つからないうちよ! 今のうちに……」
とんちんかんなことを言うエースに、思わず顔をしかめる。
その時だった。
「あなた達はさっきから一体何なんです?」
ペーターさんの声が響く。
あ、あれ……?
おそるおそるペーターさんの方を見ると、彼はゆっくりと振り返りながらこういった。
「今更逃げられると思っているんですか」
思わずエースを見ると、彼は変わらず笑顔だった。
「ね? 見つからないうちに逃げるためには、覗きをしないってことだよ」
「今更遅いわよ、そのアドバイス」
思わず文句をつける私だが、本当に今更だ。
ペーターがこちらに歩いてくるのをみて、ストーカーにストーキングしたことを責められるのか、とうなだれる私だった。