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【22.彼の好きなところ】
ドキドキしたまま休憩室を出た私。
グレイは再び仕事に戻って行った。
さっきのやり取りを思い出すと、赤面というか、もう『きゃっ!』とかそんなことを言いたくなる。
乙女だなぁ、私。
そんなことを考えながら歩いていたら、ばったりと双子に出会った。
「あ、名無しさんだ」
「あれ? ディー。ダム」
会合が終わってみんな帰った、っていう話じゃなかったっけ?
首を傾げる私をよそに、2人はにこにこと駆け寄ってきた。
「元気になったんだね。お姉さんから、名無しさんが風邪をひいたって聞いたから心配してたんだよ」
「うん。もう元気になったよ」
「そっか。良かった。でも、病み上がりなら今日は一緒に遊べないかな」
「そうだね。僕らもう帰るから、その前に名無しさんと遊びたかったけど仕方ない。また来るよ」
「うん、ごめんね」
「いいんだよ。僕ら聞き分けのいい子どもだからさ」
「病み上がりの名無しさんに無理をさせるわけにはいかないよ」
「ありがとう」
この子たちなりに気を使ってくれているらしい。
なんだか嬉しい。
「ねぇ、名無しさん。僕らまた遊びに来るからさ、名無しさんも帽子屋屋敷に遊びに来てね」
「名無しさんのこと好きだから、たくさん会いたいんだ」
彼らはほんの少し首を傾げながら、うるうるとした目でじっと私を見つめてくる。
……可愛い。
あざといけど、可愛い。
「うん。ありがとう。遊びに行くね」
私の言葉に彼らは安心したようににこっと笑った。
つられて私も笑っていると、彼らは笑顔のままこう言った。
「そういえば名無しさん、僕らお姉さんからもう一つ気になることを聞いたんだけど」
「なに?」
アリスから何を聞いたんだろう?
「蓑虫の部下と名無しさんが付き合ってるって本当?」
「嘘だよね?」
「え……」
私は笑顔のまま固まった。
その話になるなんて思いもしなかったのだ。
「いくらお姉さんからの情報だとはいえ、ちょっと信じられなくてさ」
「うん。お姉さんの勘違いなんじゃないかと思って確かめようと思ったんだ」
彼らは相変わらず笑顔でそう言った。
心のなしかその笑顔はなんだかちょっと怖いなぁと思いつつ私は普通に答えた。
「本当だよ。つい最近だけど」
すると、彼らはぴきっと固まった。
え、あれ?
私なにかいけないことを言った感じになってるよこれ。
「え、嘘。本当なんだ?」
「あいつって仕事ばっかりでつまんなそうな奴じゃない。どこがいいの?」
「ど、どこがいいと言われても……」
戸惑う私に、2人はじぃっと視線を送ってくる。
言うまでは許してくれそうもない。
「えぇと、優しい所かなぁ」
「僕達だって名無しさんには優しくするよ」
とりあえず答えた私に、ディーがすぐに反論した。
「真面目だし」
「真面目すぎてもつまらないでしょ。僕らといる方が楽しいよ」
さらに答えた私に、ダムが切りかえす。
なんだかグレイを否定されている気がして、私はむっとしてしまった。
「グレイといても楽しいの。意外とノリがいいし、一緒にいたずらしてくれるし、かと思えば落ち着いてて頼りになるし、大人だし……」
カッコいいし、なんだか気が合うような気がするし……など次から次へと上げていく。
あー、私ってグレイのこと大好きだな、と自分で呆れるくらい、上げだしたらきりがなかった。
しかし、それと同時にディーとダムが無言になっていることにも気づいた。
うわ、私ってば今かなり恥ずかしい人になってたよ。グレイにベタ惚れなことを自らバラしてしまったのだ。
ドン引きされてしまったと思い慌てて口を閉じたけれど、彼らは違うことを考えていたらしい。
「大人……?」
「名無しさん、大人がいいの?」
そうつぶやくように言う彼ら。
「え、大人がいいっていうか、グレイの大人っぽい感じが好きっていうか、頼れるなぁってことなんだけど……」
そう答えたら、ディーとダムはこそこそと相談を始めた。
「どうする兄弟。名無しさんは大人が好きらしいよ」
「うん、困ったね兄弟。まさか名無しさんが年上好きだったなんて。大人なんて大変なだけでちっともいいことなさそうなのに」
「一般論として大人は責任を負わなきゃいけないってボスが言ってた気がするよ」
私は別に大人が好きだというわけではないけれど、彼らはそういう解釈をしたらしい。
(私が好きなのはあくまで『グレイ』であって、大人が好きなわけじゃない)
「でもさ、ボスが責任を負っているようにはとても見えないよね?」
「確かにそうだね。この間なんてあれだけ念入りに打ち合わせした作戦も、ボスが面白がってぶち壊してたし」
「あれはちょっとひどいよね。面白かったからいいけど、責任ある大人はあんなことをするべきじゃないと思うんだ」
「うんうん。確かにそうだ。そうなるとボスは大人だけど責任なんて関係ないってことになるね。つまりそういう大人もアリってことだよ」
「それなら、大人になってみるのも悪くないかもしれないね」
「大人といえば、ひよこウサギなんて僕らより大人っていうだけで偉そうな顔するよ。あれは頭にくるよね」
「そうだね。あんな頭がからっぽのやつに偉そうな顔されるなんて許せないよ。僕らも大人になればいいのかもしれない」
段々と話がずれていっているような気もするけれど、彼らなりに結論が出たらしい。
2人は私に向き直ると、爽やかに堂々とこう宣言した。
「名無しさん、僕ら大人になる予定なんて全然なかったんだけど、名無しさんのために大人になることにするよ」
「うん。僕ら大人になる」
……大人になる予定っていうか、誰もがそのうち大人になるんだよ。
心の中でそう思いつつも、とりあえず「うん、いいんじゃない。少しは大人しくした方が平和だしね」と答えた私。
しかし、ディーとダムは私の反応を特に気にする様子もない。
ディーがにこにこと話を続ける。
「大人になればひよこウサギに偉そうなこと言われずに済むし」
「大人だからって責任を必ずしも取る必要はないみたいだしね」
ダムも続けてそう言った。
「いや、ディーの言葉はまだしも、ダムの言葉は間違いだよ!?」
思わずツッコんでしまったけれど、やっぱり彼らの耳には届いていないらしい。
「というわけで名無しさん。僕らが大人になったら僕らと付き合ってくれる?」
「僕らのこと好きになってくれる?」
彼らはじっと私を見つめてそう言った。
『大人になったら』って、私とそんなに歳が離れてるとは思えないけど、彼らはやたらと真剣な表情。
「その時に私とあなた達、お互いに恋人がいなかったらね」
でも、それだとグレイと離れてしまったということになるから、そんなときは来ない方がいいなぁ。
そうこっそり思う私をよそに、ディーとダムは「恋人がいてもいなくても関係ないよ」「僕らは名無しさんが好きなんだからね」と笑った。
いつのまにこんなに好かれたんだろうなぁとか、『大人になったら』だなんて一体どれくらい先の話をしているんだろうなぁ
などとのんびり思う私。
この時私はまだわかっていなかった。
自分がこのめちゃくちゃな世界をどれだけ甘く見ていたか、ということを。
ドキドキしたまま休憩室を出た私。
グレイは再び仕事に戻って行った。
さっきのやり取りを思い出すと、赤面というか、もう『きゃっ!』とかそんなことを言いたくなる。
乙女だなぁ、私。
そんなことを考えながら歩いていたら、ばったりと双子に出会った。
「あ、名無しさんだ」
「あれ? ディー。ダム」
会合が終わってみんな帰った、っていう話じゃなかったっけ?
首を傾げる私をよそに、2人はにこにこと駆け寄ってきた。
「元気になったんだね。お姉さんから、名無しさんが風邪をひいたって聞いたから心配してたんだよ」
「うん。もう元気になったよ」
「そっか。良かった。でも、病み上がりなら今日は一緒に遊べないかな」
「そうだね。僕らもう帰るから、その前に名無しさんと遊びたかったけど仕方ない。また来るよ」
「うん、ごめんね」
「いいんだよ。僕ら聞き分けのいい子どもだからさ」
「病み上がりの名無しさんに無理をさせるわけにはいかないよ」
「ありがとう」
この子たちなりに気を使ってくれているらしい。
なんだか嬉しい。
「ねぇ、名無しさん。僕らまた遊びに来るからさ、名無しさんも帽子屋屋敷に遊びに来てね」
「名無しさんのこと好きだから、たくさん会いたいんだ」
彼らはほんの少し首を傾げながら、うるうるとした目でじっと私を見つめてくる。
……可愛い。
あざといけど、可愛い。
「うん。ありがとう。遊びに行くね」
私の言葉に彼らは安心したようににこっと笑った。
つられて私も笑っていると、彼らは笑顔のままこう言った。
「そういえば名無しさん、僕らお姉さんからもう一つ気になることを聞いたんだけど」
「なに?」
アリスから何を聞いたんだろう?
「蓑虫の部下と名無しさんが付き合ってるって本当?」
「嘘だよね?」
「え……」
私は笑顔のまま固まった。
その話になるなんて思いもしなかったのだ。
「いくらお姉さんからの情報だとはいえ、ちょっと信じられなくてさ」
「うん。お姉さんの勘違いなんじゃないかと思って確かめようと思ったんだ」
彼らは相変わらず笑顔でそう言った。
心のなしかその笑顔はなんだかちょっと怖いなぁと思いつつ私は普通に答えた。
「本当だよ。つい最近だけど」
すると、彼らはぴきっと固まった。
え、あれ?
私なにかいけないことを言った感じになってるよこれ。
「え、嘘。本当なんだ?」
「あいつって仕事ばっかりでつまんなそうな奴じゃない。どこがいいの?」
「ど、どこがいいと言われても……」
戸惑う私に、2人はじぃっと視線を送ってくる。
言うまでは許してくれそうもない。
「えぇと、優しい所かなぁ」
「僕達だって名無しさんには優しくするよ」
とりあえず答えた私に、ディーがすぐに反論した。
「真面目だし」
「真面目すぎてもつまらないでしょ。僕らといる方が楽しいよ」
さらに答えた私に、ダムが切りかえす。
なんだかグレイを否定されている気がして、私はむっとしてしまった。
「グレイといても楽しいの。意外とノリがいいし、一緒にいたずらしてくれるし、かと思えば落ち着いてて頼りになるし、大人だし……」
カッコいいし、なんだか気が合うような気がするし……など次から次へと上げていく。
あー、私ってグレイのこと大好きだな、と自分で呆れるくらい、上げだしたらきりがなかった。
しかし、それと同時にディーとダムが無言になっていることにも気づいた。
うわ、私ってば今かなり恥ずかしい人になってたよ。グレイにベタ惚れなことを自らバラしてしまったのだ。
ドン引きされてしまったと思い慌てて口を閉じたけれど、彼らは違うことを考えていたらしい。
「大人……?」
「名無しさん、大人がいいの?」
そうつぶやくように言う彼ら。
「え、大人がいいっていうか、グレイの大人っぽい感じが好きっていうか、頼れるなぁってことなんだけど……」
そう答えたら、ディーとダムはこそこそと相談を始めた。
「どうする兄弟。名無しさんは大人が好きらしいよ」
「うん、困ったね兄弟。まさか名無しさんが年上好きだったなんて。大人なんて大変なだけでちっともいいことなさそうなのに」
「一般論として大人は責任を負わなきゃいけないってボスが言ってた気がするよ」
私は別に大人が好きだというわけではないけれど、彼らはそういう解釈をしたらしい。
(私が好きなのはあくまで『グレイ』であって、大人が好きなわけじゃない)
「でもさ、ボスが責任を負っているようにはとても見えないよね?」
「確かにそうだね。この間なんてあれだけ念入りに打ち合わせした作戦も、ボスが面白がってぶち壊してたし」
「あれはちょっとひどいよね。面白かったからいいけど、責任ある大人はあんなことをするべきじゃないと思うんだ」
「うんうん。確かにそうだ。そうなるとボスは大人だけど責任なんて関係ないってことになるね。つまりそういう大人もアリってことだよ」
「それなら、大人になってみるのも悪くないかもしれないね」
「大人といえば、ひよこウサギなんて僕らより大人っていうだけで偉そうな顔するよ。あれは頭にくるよね」
「そうだね。あんな頭がからっぽのやつに偉そうな顔されるなんて許せないよ。僕らも大人になればいいのかもしれない」
段々と話がずれていっているような気もするけれど、彼らなりに結論が出たらしい。
2人は私に向き直ると、爽やかに堂々とこう宣言した。
「名無しさん、僕ら大人になる予定なんて全然なかったんだけど、名無しさんのために大人になることにするよ」
「うん。僕ら大人になる」
……大人になる予定っていうか、誰もがそのうち大人になるんだよ。
心の中でそう思いつつも、とりあえず「うん、いいんじゃない。少しは大人しくした方が平和だしね」と答えた私。
しかし、ディーとダムは私の反応を特に気にする様子もない。
ディーがにこにこと話を続ける。
「大人になればひよこウサギに偉そうなこと言われずに済むし」
「大人だからって責任を必ずしも取る必要はないみたいだしね」
ダムも続けてそう言った。
「いや、ディーの言葉はまだしも、ダムの言葉は間違いだよ!?」
思わずツッコんでしまったけれど、やっぱり彼らの耳には届いていないらしい。
「というわけで名無しさん。僕らが大人になったら僕らと付き合ってくれる?」
「僕らのこと好きになってくれる?」
彼らはじっと私を見つめてそう言った。
『大人になったら』って、私とそんなに歳が離れてるとは思えないけど、彼らはやたらと真剣な表情。
「その時に私とあなた達、お互いに恋人がいなかったらね」
でも、それだとグレイと離れてしまったということになるから、そんなときは来ない方がいいなぁ。
そうこっそり思う私をよそに、ディーとダムは「恋人がいてもいなくても関係ないよ」「僕らは名無しさんが好きなんだからね」と笑った。
いつのまにこんなに好かれたんだろうなぁとか、『大人になったら』だなんて一体どれくらい先の話をしているんだろうなぁ
などとのんびり思う私。
この時私はまだわかっていなかった。
自分がこのめちゃくちゃな世界をどれだけ甘く見ていたか、ということを。