ビギナー。
お名前変換はこちらから
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
【19.まさかの展開その2】
ナイトメアに急かされるようにして、私とグレイは街へ買い出しに出発した。
始めのうちグレイは自分一人で行く、と言い張ったけれど、私が無理やりついてきた。
気まずいけれど、私のせいでグレイが巻き添えを食っているのだ。
私が行かなくていいわけがない。
「あの人のわがままにつき合わせてすまないな、名無しさん」
「ううん、あの時ナイトメアの冗談に付き合った私が悪いんだよ。ごめんね」
お互いに謝って歩く私達。
一緒に歩いているけれど、微妙な距離がある。
変な空気感だ。
一言で言えば、気まずい。それに尽きる。
キスの一件はあれから全く触れられていない。
どういうつもりでグレイがあんなことをしたのかもわからないままだし、私はこの先どうグレイと向き合っていけばいいのかも悩み中。
そんなことを考えているからだろうか?
通りに並ぶお店は明るく賑わっていて、道行く人々もみんな楽しそうなのに、私とグレイの周りだけ空気が重い気がする。
でも、そんなことに周りの人々はちっとも関心がないようだった。
当然のことかもしれないけれど、なんだか世間までよそよそしく感じてしまう。
隣を歩くグレイは私よりも大きな歩幅でゆっくりと歩いてくれている。
こんな気まずい雰囲気なのに、彼は私を気遣う。
それが彼のクセで、女の子なら誰に対しても同じようにゆっくり歩いてくれるのだとしても、彼の優しさにドキドキしてしまうのだ。
うつむいて足元を見ていたら、グレイが不意にこう言った。
「名無しさん、このギモーヴというのはなんだ?」
顔をあげると、グレイは小さなメモ用紙を見つめて顔をしかめている。
そのメモ用紙はナイトメアから渡された「買い出しリスト」なるものだった。
いつのまにかナイトメアは「買い出しリスト」作成していたようで、それをしっかりとグレイに握らせていたらしい。
意外と抜け目ないな。
「ギモーヴって確かマシュマロみたいなお菓子だよ。この間アリスが買ってきたんだけど、ナイトメアはやたらと感動して食べた気がする」
前にアリスが買ってきたギモーヴを食べたナイトメア。
「なんか違う!これはマシュマロみたいだがなんだか違うぞ!?フルーティだ!!」と大騒ぎしていて、アリスに「大袈裟だ」と失笑されていた。
そんなことを思い出す私に、グレイは困った顔を見せる。
「……マシュマロではいけないのか?」
「わかんない。でも、アリスが買ってきたお店は知ってるから、そこで買おうか。あとで『これじゃない!』ってわめかれても嫌だしね」
「確かにそうだな」
グレイはそう言って苦笑した。
「あとは何を買うんだって?」
「それが……ほぼ食べ物なんだ」
グレイはそう言って買い出しリストを私に差し出した。
それを覗き込むと、確かに食べ物がずらりと書かれている。
「……なんで食欲旺盛な感じなのにあんなに病弱なんだろうね?」
「食欲はあっても小食だからな」
「小食の男の人はちょっと嫌だなぁ私」
「名無しさんはよく食べるからな」
「うわ、グレイってそういうこと言う人だったっけ?」
ちらりと彼を見ると「冗談だ」と笑う。
メモを見ているうちに距離が縮まっていたらしい。
思いのほか近いグレイの顔に私はどきりとしてしまった。
たぶん、私があからさまな顔をしてしまったのかもしれない。
グレイはすっとメモをひっこめると、ほんの少しだけ距離を取った。
それがなんだか申し訳ないような、悲しいような気持ちになる。
「「…………」」
また急に沈黙が降りてきた。
うーん、どうしよう。
今まで通りなんてもうできそうもない。
いっそのこと聞いてみた方がいいのかなぁ?
「あれはどういうつもりだったの?」って……。
あぁ、でも「気の迷いだ」とか言われたらもう立ち直れない。
うだうだと考えていた時だった。
「名無しさん、君は俺に文句を言う権利がある。悩んでないで言ってくれ」
「え?」
「さっきから困った顔ばかりしている。俺のせいだろう。非難は甘んじて受けよう」
彼はそう言って道の真ん中で立ち止まると、私に向き直る。
目の前のグレイはいつものまっすぐな目で私を見ていた。
非難を受け入れる、というわりには堂々と立っているように見える。彼は姿勢が良いのだ。
「……じゃあ聞くけど」
私はそう言って一呼吸置くと、まっすぐに彼を見つめた。
「グレイは私のこと好きなの?」
ずばっとストレートすぎる私の言葉は予想外だったらしい。
グレイは一瞬驚いた顔をした。
ものすごくドキドキしていたけれど、私は彼から目を逸らさないようにと拳をぐっと握る。
すると、グレイは肩を震わせてくつくつと小さく笑い始めた。
うわ……そんなに笑う?
そんなわけないだろって意味ですか。
どうせ私みたいな子どもなんてグレイは相手にしないだろうけど、そこまで笑うことないじゃないですか。
私は耐え切れず拳を握りしめたまま彼から視線を落とした。
その時だった。
「あぁ、好きだよ」
そんなストレートに聞かれると逆に吹っ切れるな、と楽しそうに言うグレイ。
私は顔を上げる。
「俺は君が好きだ。名無しさん」
あまりにはっきりと言われたので、一瞬よく意味が分からなくなった。
「え、え? えーと、それはなに? ファンとしてってこと?」
「それは君の俺に対する好意だろう?」
私の混乱っぷりにグレイはますます楽しそうな顔をした。
「そうじゃなくて、恋愛感情として俺は名無しさんが好きなんだ」
「……好き? 私のことが?」
「あぁ」
「……ほんとに?」
「あぁ」
「うそだぁ~」
「……どうしてそんなに疑われるんだろう?俺の日ごろの行いが悪いのか……」
苦笑するグレイを不思議な気持ちで見つめる。
「だって、私フラれたよね?」
「いや、そんな記憶はないな。君はファンとして俺のことが好きだと言ってくれただけだろう?」
グレイは優しい目でそう言った。
今もなお、私の下手なごまかしに乗ってくれている。
こういう対応は本当に大人だなぁと思う。
「大体、女性から告白させるなんて男として情けないだろう。俺を情けない男にしないでくれないか」
グレイはそう言って笑った。
「情けない男っていうのはナイトメアみたいな人を言うんだよ。グレイとは正反対だから大丈夫」
「そのセリフ、ナイトメア様が聞いたら拗ねるだろうな」
「そうだね。子どもみたいに拗ねるだろうね」
そう言って笑いあう私とグレイ。
さっきまでの気まずさが嘘のようだった。
やっぱりこうやって笑い合える方が楽しい。
実はなんとなく感覚が似ているのかもしれない。
そう思いながら私はグレイを見た。彼と視線がぶつかる。
「名無しさん、やはり君といると楽しい。……俺のそばにいてくれないか?」
その言葉に胸がいっぱいになった。
ほんの数秒見つめあってから、私は「うん」と言ってこくりと頷いた。
道の真ん中で恋人同士になるとは思いもしなかった。
まさかの展開だわ。
気まずい関係から一転、恋人になるだなんて、人生何がおこるかわかりません。
「予想外の展開だな……お互いに」
まさに同じことを考えていたらしいグレイの言葉に笑ってしまった。
私の人生でものすごいことが起こったというのに、周りの人々はちっとも気づいていないようだった。
でも、さっきよりも街のにぎやかさに親しみを感じるのは、きっと私の見方が変わったからだろう。
ナイトメアに急かされるようにして、私とグレイは街へ買い出しに出発した。
始めのうちグレイは自分一人で行く、と言い張ったけれど、私が無理やりついてきた。
気まずいけれど、私のせいでグレイが巻き添えを食っているのだ。
私が行かなくていいわけがない。
「あの人のわがままにつき合わせてすまないな、名無しさん」
「ううん、あの時ナイトメアの冗談に付き合った私が悪いんだよ。ごめんね」
お互いに謝って歩く私達。
一緒に歩いているけれど、微妙な距離がある。
変な空気感だ。
一言で言えば、気まずい。それに尽きる。
キスの一件はあれから全く触れられていない。
どういうつもりでグレイがあんなことをしたのかもわからないままだし、私はこの先どうグレイと向き合っていけばいいのかも悩み中。
そんなことを考えているからだろうか?
通りに並ぶお店は明るく賑わっていて、道行く人々もみんな楽しそうなのに、私とグレイの周りだけ空気が重い気がする。
でも、そんなことに周りの人々はちっとも関心がないようだった。
当然のことかもしれないけれど、なんだか世間までよそよそしく感じてしまう。
隣を歩くグレイは私よりも大きな歩幅でゆっくりと歩いてくれている。
こんな気まずい雰囲気なのに、彼は私を気遣う。
それが彼のクセで、女の子なら誰に対しても同じようにゆっくり歩いてくれるのだとしても、彼の優しさにドキドキしてしまうのだ。
うつむいて足元を見ていたら、グレイが不意にこう言った。
「名無しさん、このギモーヴというのはなんだ?」
顔をあげると、グレイは小さなメモ用紙を見つめて顔をしかめている。
そのメモ用紙はナイトメアから渡された「買い出しリスト」なるものだった。
いつのまにかナイトメアは「買い出しリスト」作成していたようで、それをしっかりとグレイに握らせていたらしい。
意外と抜け目ないな。
「ギモーヴって確かマシュマロみたいなお菓子だよ。この間アリスが買ってきたんだけど、ナイトメアはやたらと感動して食べた気がする」
前にアリスが買ってきたギモーヴを食べたナイトメア。
「なんか違う!これはマシュマロみたいだがなんだか違うぞ!?フルーティだ!!」と大騒ぎしていて、アリスに「大袈裟だ」と失笑されていた。
そんなことを思い出す私に、グレイは困った顔を見せる。
「……マシュマロではいけないのか?」
「わかんない。でも、アリスが買ってきたお店は知ってるから、そこで買おうか。あとで『これじゃない!』ってわめかれても嫌だしね」
「確かにそうだな」
グレイはそう言って苦笑した。
「あとは何を買うんだって?」
「それが……ほぼ食べ物なんだ」
グレイはそう言って買い出しリストを私に差し出した。
それを覗き込むと、確かに食べ物がずらりと書かれている。
「……なんで食欲旺盛な感じなのにあんなに病弱なんだろうね?」
「食欲はあっても小食だからな」
「小食の男の人はちょっと嫌だなぁ私」
「名無しさんはよく食べるからな」
「うわ、グレイってそういうこと言う人だったっけ?」
ちらりと彼を見ると「冗談だ」と笑う。
メモを見ているうちに距離が縮まっていたらしい。
思いのほか近いグレイの顔に私はどきりとしてしまった。
たぶん、私があからさまな顔をしてしまったのかもしれない。
グレイはすっとメモをひっこめると、ほんの少しだけ距離を取った。
それがなんだか申し訳ないような、悲しいような気持ちになる。
「「…………」」
また急に沈黙が降りてきた。
うーん、どうしよう。
今まで通りなんてもうできそうもない。
いっそのこと聞いてみた方がいいのかなぁ?
「あれはどういうつもりだったの?」って……。
あぁ、でも「気の迷いだ」とか言われたらもう立ち直れない。
うだうだと考えていた時だった。
「名無しさん、君は俺に文句を言う権利がある。悩んでないで言ってくれ」
「え?」
「さっきから困った顔ばかりしている。俺のせいだろう。非難は甘んじて受けよう」
彼はそう言って道の真ん中で立ち止まると、私に向き直る。
目の前のグレイはいつものまっすぐな目で私を見ていた。
非難を受け入れる、というわりには堂々と立っているように見える。彼は姿勢が良いのだ。
「……じゃあ聞くけど」
私はそう言って一呼吸置くと、まっすぐに彼を見つめた。
「グレイは私のこと好きなの?」
ずばっとストレートすぎる私の言葉は予想外だったらしい。
グレイは一瞬驚いた顔をした。
ものすごくドキドキしていたけれど、私は彼から目を逸らさないようにと拳をぐっと握る。
すると、グレイは肩を震わせてくつくつと小さく笑い始めた。
うわ……そんなに笑う?
そんなわけないだろって意味ですか。
どうせ私みたいな子どもなんてグレイは相手にしないだろうけど、そこまで笑うことないじゃないですか。
私は耐え切れず拳を握りしめたまま彼から視線を落とした。
その時だった。
「あぁ、好きだよ」
そんなストレートに聞かれると逆に吹っ切れるな、と楽しそうに言うグレイ。
私は顔を上げる。
「俺は君が好きだ。名無しさん」
あまりにはっきりと言われたので、一瞬よく意味が分からなくなった。
「え、え? えーと、それはなに? ファンとしてってこと?」
「それは君の俺に対する好意だろう?」
私の混乱っぷりにグレイはますます楽しそうな顔をした。
「そうじゃなくて、恋愛感情として俺は名無しさんが好きなんだ」
「……好き? 私のことが?」
「あぁ」
「……ほんとに?」
「あぁ」
「うそだぁ~」
「……どうしてそんなに疑われるんだろう?俺の日ごろの行いが悪いのか……」
苦笑するグレイを不思議な気持ちで見つめる。
「だって、私フラれたよね?」
「いや、そんな記憶はないな。君はファンとして俺のことが好きだと言ってくれただけだろう?」
グレイは優しい目でそう言った。
今もなお、私の下手なごまかしに乗ってくれている。
こういう対応は本当に大人だなぁと思う。
「大体、女性から告白させるなんて男として情けないだろう。俺を情けない男にしないでくれないか」
グレイはそう言って笑った。
「情けない男っていうのはナイトメアみたいな人を言うんだよ。グレイとは正反対だから大丈夫」
「そのセリフ、ナイトメア様が聞いたら拗ねるだろうな」
「そうだね。子どもみたいに拗ねるだろうね」
そう言って笑いあう私とグレイ。
さっきまでの気まずさが嘘のようだった。
やっぱりこうやって笑い合える方が楽しい。
実はなんとなく感覚が似ているのかもしれない。
そう思いながら私はグレイを見た。彼と視線がぶつかる。
「名無しさん、やはり君といると楽しい。……俺のそばにいてくれないか?」
その言葉に胸がいっぱいになった。
ほんの数秒見つめあってから、私は「うん」と言ってこくりと頷いた。
道の真ん中で恋人同士になるとは思いもしなかった。
まさかの展開だわ。
気まずい関係から一転、恋人になるだなんて、人生何がおこるかわかりません。
「予想外の展開だな……お互いに」
まさに同じことを考えていたらしいグレイの言葉に笑ってしまった。
私の人生でものすごいことが起こったというのに、周りの人々はちっとも気づいていないようだった。
でも、さっきよりも街のにぎやかさに親しみを感じるのは、きっと私の見方が変わったからだろう。