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【17.触れる指先。触れる唇。】
なんだかんだで2回目の会合は終了した。
結局なんの話し合いだったんだろう?
私だけがわからないのか、それとも初めから意味のない物なのか、その辺りはわからない。
とにかく「疲れた」。それだけだ。
全員が退出してがらんとした会議室で、私は机にへたりとうつぶせる。
「あ~。終わった……!」
うつぶせたままそうつぶやくと、隣で書類を片付けていたグレイが「お疲れ様、名無しさん」と小さく笑った。
「いや、私は何もしてないよ。お疲れ様はグレイの方だよ」
私は顔をほんの少し上げてグレイを見る。
「グレイはすごいね」
「?」
グレイが不思議そうな顔をして私を見た。
「だって、面倒事もうまくまとめたし、ナイトメアのフォローはしてたし、質問にもすぐ答えられるし、挑発されても乗らないし……」
それに会合が終わってもまだしゃんとしている。
何もしていない私が机に突っ伏しているとかいけないよねぇ。
私が尊敬のまなざしでグレイを見つめていると、困惑したように視線を逸らされた。
「別にそんな大げさなことはしていない。仕事だからしているだけだ」
「じゃあ仕事じゃなかったら、こんなに大人な感じじゃないの?」
グレイは「大人な感じ……」とさらに顔をしかめた。
「名無しさんの言う大人な感じとはどんなものかわからないが、仕事でなければ面倒事に口出しはしないし、挑発されれば大人げなくも乗ってしまうだろうな」
「え~? そうかなぁ。挑発に乗るグレイとか想像つかないよ」
冷静な切り返しで収めそうだけどな。
そんなことを考える私をちらりと見て、グレイは椅子ごとすすっと私に近づいた。
おや?と思って見ていると、彼は私をじっと見つめてこう言った。
「名無しさん。……俺は君が思っているような人間じゃない」
真剣な声に、私は思わず顔を上げた。
「昔よりは幾分マシになってはいると思うが、それでも俺は名無しさんが思うような『大人』なんかじゃない」
そう言いながらグレイは私の頬に手を伸ばす。
どくんと鼓動が跳ね、そのままその存在をアピールし始めた。
長い指先が私の頬に触れ、私は息が止まりそうになる。
「今の会合だって名無しさんが困っているのをいいことに、俺は君を隣に座らせた。公私混同もいい所だ」
彼の指は私の頬から耳元へと滑っていく。
思いがけない展開に、心臓が飛び出しそうなくらいものすごい速さで胸を打っている。
そんな私をよそに、グレイは落ち着き払った様子で私を見ていた。
「これ以上近づくと、君に嫌われるかもしれないな」
グレイは私の髪の毛に指を絡ませながら自嘲気味に笑った。
どうしよう、どういう展開なんだろうこれは、と思っているとグレイが私からすっと手を引いた。
そして、「すまない」と小さくつぶやく。
何も言えずに黙っていると、彼は机の書類を手に取った。
「さて。出ようか。俺が名無しさんに嫌われる前に」
そう言って私を見ずにグレイは立ち上がる。
その時、口をついてこんな言葉が出た。
「嫌わないよ」
座ったままグレイを見上げると、彼は遠くを見つめるような目で私を見た。
「私は嫌わないよ。グレイのこと」
もう一度そう言うと、今度はしっかりと私を見つめるグレイ。
しばらくしてふっと視線を外し、ため息をついた。
「名無しさん……そういうことは言わない方がいい」
「どうして?」
疑問の言葉を投げかけると、彼は持っていた書類を机に置いた。
そしてゆっくりと私を見る。
「嫌われないのをいいことに、悪いことをする奴もいるんだ」
彼は静かにそう言いながら、再び私の頬に触れた。
悪いこと・・・・・・。
グレイもするの?と聞く勇気はないけれど、彼は私の気持ちを見透かしたように言った。
「俺を含めて、な」
そっと笑ったグレイがものすごく妖艶に見えた。
思わず彼に見とれていると、グレイは片手を机についた。
そして、頬に触れていた手は耳元から後頭部をなぞって私の髪の毛に埋もれる。
どうにも逃げようがない体勢だったけれど、逃げようなんて選択肢はまるでなかった。
ただドキドキするだけで、頭の中は真っ白。目の前のグレイの顔しか認識できない。
そんな私を見て小さく笑うと、グレイは私にそっと短いキスをした。
なんだかんだで2回目の会合は終了した。
結局なんの話し合いだったんだろう?
私だけがわからないのか、それとも初めから意味のない物なのか、その辺りはわからない。
とにかく「疲れた」。それだけだ。
全員が退出してがらんとした会議室で、私は机にへたりとうつぶせる。
「あ~。終わった……!」
うつぶせたままそうつぶやくと、隣で書類を片付けていたグレイが「お疲れ様、名無しさん」と小さく笑った。
「いや、私は何もしてないよ。お疲れ様はグレイの方だよ」
私は顔をほんの少し上げてグレイを見る。
「グレイはすごいね」
「?」
グレイが不思議そうな顔をして私を見た。
「だって、面倒事もうまくまとめたし、ナイトメアのフォローはしてたし、質問にもすぐ答えられるし、挑発されても乗らないし……」
それに会合が終わってもまだしゃんとしている。
何もしていない私が机に突っ伏しているとかいけないよねぇ。
私が尊敬のまなざしでグレイを見つめていると、困惑したように視線を逸らされた。
「別にそんな大げさなことはしていない。仕事だからしているだけだ」
「じゃあ仕事じゃなかったら、こんなに大人な感じじゃないの?」
グレイは「大人な感じ……」とさらに顔をしかめた。
「名無しさんの言う大人な感じとはどんなものかわからないが、仕事でなければ面倒事に口出しはしないし、挑発されれば大人げなくも乗ってしまうだろうな」
「え~? そうかなぁ。挑発に乗るグレイとか想像つかないよ」
冷静な切り返しで収めそうだけどな。
そんなことを考える私をちらりと見て、グレイは椅子ごとすすっと私に近づいた。
おや?と思って見ていると、彼は私をじっと見つめてこう言った。
「名無しさん。……俺は君が思っているような人間じゃない」
真剣な声に、私は思わず顔を上げた。
「昔よりは幾分マシになってはいると思うが、それでも俺は名無しさんが思うような『大人』なんかじゃない」
そう言いながらグレイは私の頬に手を伸ばす。
どくんと鼓動が跳ね、そのままその存在をアピールし始めた。
長い指先が私の頬に触れ、私は息が止まりそうになる。
「今の会合だって名無しさんが困っているのをいいことに、俺は君を隣に座らせた。公私混同もいい所だ」
彼の指は私の頬から耳元へと滑っていく。
思いがけない展開に、心臓が飛び出しそうなくらいものすごい速さで胸を打っている。
そんな私をよそに、グレイは落ち着き払った様子で私を見ていた。
「これ以上近づくと、君に嫌われるかもしれないな」
グレイは私の髪の毛に指を絡ませながら自嘲気味に笑った。
どうしよう、どういう展開なんだろうこれは、と思っているとグレイが私からすっと手を引いた。
そして、「すまない」と小さくつぶやく。
何も言えずに黙っていると、彼は机の書類を手に取った。
「さて。出ようか。俺が名無しさんに嫌われる前に」
そう言って私を見ずにグレイは立ち上がる。
その時、口をついてこんな言葉が出た。
「嫌わないよ」
座ったままグレイを見上げると、彼は遠くを見つめるような目で私を見た。
「私は嫌わないよ。グレイのこと」
もう一度そう言うと、今度はしっかりと私を見つめるグレイ。
しばらくしてふっと視線を外し、ため息をついた。
「名無しさん……そういうことは言わない方がいい」
「どうして?」
疑問の言葉を投げかけると、彼は持っていた書類を机に置いた。
そしてゆっくりと私を見る。
「嫌われないのをいいことに、悪いことをする奴もいるんだ」
彼は静かにそう言いながら、再び私の頬に触れた。
悪いこと・・・・・・。
グレイもするの?と聞く勇気はないけれど、彼は私の気持ちを見透かしたように言った。
「俺を含めて、な」
そっと笑ったグレイがものすごく妖艶に見えた。
思わず彼に見とれていると、グレイは片手を机についた。
そして、頬に触れていた手は耳元から後頭部をなぞって私の髪の毛に埋もれる。
どうにも逃げようがない体勢だったけれど、逃げようなんて選択肢はまるでなかった。
ただドキドキするだけで、頭の中は真っ白。目の前のグレイの顔しか認識できない。
そんな私を見て小さく笑うと、グレイは私にそっと短いキスをした。