短編
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【優しいひと】
遊園地から猛ダッシュして自室へと向かっていたら、ボリスに呼び止められた。
「あれ、名無しさん!?」
その声と彼の姿を認識した瞬間、私はぴたりと止まる。
「そんなに慌ててどうしたの?」
ボリスがびっくりした顔で私の元へと歩いてくる。
どうしよう。
今の私はボリスに会える顔をしていない。
ものすごく嫌なことがあった。
ちょっとしたことなんだけれど、それがいくつも積み重なってしまって、ものすごく気分が落ち込んでいる私。
部屋に戻って引きこもりたい、そう思って走っていたのだった。
「名無しさん?」
私のそばにやってきたボリスは、そっと顔を覗きこんでくる。
私の表情を見て彼がはっと息を飲むのがわかった。
「……名無しさん、なんかあった?」
彼は固い声色でそう言って、私の肩を掴む。
その瞬間、どうしようもない気持ちが抑えきれず私はボリスに抱きついた。
「!?」
ボリスはびっくりしつつも私を受け止めてくれた。
私はぎゅっと目を瞑って彼の胸におさまる。
瞼の裏は暗くて、たまにキラキラと光が見えた。
その光を追いながら必死に涙をこらえていると、私の頭をボリスの手のひらが優しく撫でてくれていることに気づいた。
ボリスが静かに言う。
「誰かに何かされた?」
「……ううん」
首を振って何とか答える。
「じゃあどうしたの?」
「……なんでもない。ちょっと嫌なことが重なっただけ」
少しずつ気持ちが落ち着いてきた私は、彼の胸の中でそう答えた。
「本当に?」
「本当に。全然大したことないし、誰が悪いわけでもないの」
そう言ってから、私はそっと彼から離れる。
「ごめんね、心配かけて」
彼を見ると、その目はまだ心配そうに私を見ていた。
「なんかあったらすぐに言ってよ、名無しさん」
「うん、ありがとう」
ボリスはふわふわのファーで私の顔をもしゃもしゃと拭く。
くすぐったさに思わず笑ってしまった私。
「はい。これでよし」
「別に泣いてないよ」
笑いながら言う私に、ボリスがふわりと笑った。
「笑った顔が見たかっただけ」
「……!」
その言葉に涙が出そうになった。
もう一度ボリスに抱きつくと、彼は優しく笑いながら頭をなでてくれた。
嫌なことなんてどこへやら。
遊園地から猛ダッシュして自室へと向かっていたら、ボリスに呼び止められた。
「あれ、名無しさん!?」
その声と彼の姿を認識した瞬間、私はぴたりと止まる。
「そんなに慌ててどうしたの?」
ボリスがびっくりした顔で私の元へと歩いてくる。
どうしよう。
今の私はボリスに会える顔をしていない。
ものすごく嫌なことがあった。
ちょっとしたことなんだけれど、それがいくつも積み重なってしまって、ものすごく気分が落ち込んでいる私。
部屋に戻って引きこもりたい、そう思って走っていたのだった。
「名無しさん?」
私のそばにやってきたボリスは、そっと顔を覗きこんでくる。
私の表情を見て彼がはっと息を飲むのがわかった。
「……名無しさん、なんかあった?」
彼は固い声色でそう言って、私の肩を掴む。
その瞬間、どうしようもない気持ちが抑えきれず私はボリスに抱きついた。
「!?」
ボリスはびっくりしつつも私を受け止めてくれた。
私はぎゅっと目を瞑って彼の胸におさまる。
瞼の裏は暗くて、たまにキラキラと光が見えた。
その光を追いながら必死に涙をこらえていると、私の頭をボリスの手のひらが優しく撫でてくれていることに気づいた。
ボリスが静かに言う。
「誰かに何かされた?」
「……ううん」
首を振って何とか答える。
「じゃあどうしたの?」
「……なんでもない。ちょっと嫌なことが重なっただけ」
少しずつ気持ちが落ち着いてきた私は、彼の胸の中でそう答えた。
「本当に?」
「本当に。全然大したことないし、誰が悪いわけでもないの」
そう言ってから、私はそっと彼から離れる。
「ごめんね、心配かけて」
彼を見ると、その目はまだ心配そうに私を見ていた。
「なんかあったらすぐに言ってよ、名無しさん」
「うん、ありがとう」
ボリスはふわふわのファーで私の顔をもしゃもしゃと拭く。
くすぐったさに思わず笑ってしまった私。
「はい。これでよし」
「別に泣いてないよ」
笑いながら言う私に、ボリスがふわりと笑った。
「笑った顔が見たかっただけ」
「……!」
その言葉に涙が出そうになった。
もう一度ボリスに抱きつくと、彼は優しく笑いながら頭をなでてくれた。
嫌なことなんてどこへやら。