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【15.いたずら心】
これから2回目の会合が始まるらしい。
会合にはなんら関係のない私は、アリスと2人並んで「なんだか大変そうだねぇ」と会議室に集まる人々を眺めていた。
しかし、しばらくするとアリスに気づいた参加者たちが次から次へと声をかけにやってきた。
自然とアリスの隣にいる私とも挨拶を交わす流れになる。
アリスといると、私もかなり好意的な目で見られるらしい。
彼らはにこにこと機嫌が良く「よろしく、名無しさん」と爽やかに去っていく。
ハートの城の女王・ビバルディと宰相・ペーター=ホワイトというかなり高貴な身分の方々が来たかと思えば、森に住んでいるというピンク猫耳のボリス=エレイ(この前会った人だ)に、ネズミのピアス=ヴィリエというなんともメルヘンチックな人々まで様々だった。
「アリス、すごいね。みんなと仲良しなんだね」
「前からこの世界にいたからね。余所者って好かれやすいらしいし、そのうち名無しさんも馴れ馴れしいくらいに仲良くさせられるわよ」
「ふぅん」
そんなことを話していると、わいわい賑やかな集団がやってきた。
賑やかなのになんだか威圧感という不思議な感じの彼ら、帽子屋ファミリー。
彼らとは私も顔見知りになっている。
こちらに気づくと、まず双子が駆け寄ってきた。
「お姉さん、名無しさん! こんにちは!」
にこやかに挨拶をしてきたと思ったら、さっそく双子のマシンガントークが始まった。
「ねぇねぇ、この会合が終わったらご飯食べに行かない?」
「僕らね、すっごく美味しいお店を見つけたんだ! 会合期間限定のお店だから今のうちに行かないとダメなんだよ」
「名無しさんはさ、魚と肉どっちが好き??」
「お姉さんとは一緒にご飯食べたことあるから、なんとなくわかるけど名無しさんとは初めてだもんね」
彼らの中で、もうご飯に行くことは決定しているらしい。
私とアリスが唖然としていると、エリオットが呆れ顔でこう言った。
「おいおい、この会合が終わったら今日は仕事だぞ。飯なんて食いに行く時間はねーよ」
「えー、ご飯くらい食べたっていいじゃないか!」
「そうだよ! 大体どうして会合なんて面倒な仕事の後に、また一仕事しなきゃならないんだよ」
「仕方ねーだろ。仕事なんだから」
「子どもを立て続けに労働させるなんておかしいよ」
「給料に見合ってないね」
「てめぇら雇い主を目の前にして、よくそんなことが言えるな」
来たかと思えばぎゃーぎゃー騒ぎ出す彼らに、アリスも私も苦笑した。
そして、当の雇い主はというと全くどうでもいいらしい。
彼らを無視して、私とアリスに「やぁ、お嬢さん方」と穏やかに声をかけてきた。
「こんにちは、ブラッド。あなた昼なのに珍しく機嫌がいいわね」
アリスはそう言って怪訝な顔をした。
「あぁ、そうだな。今はかなり気分がいい。名無しさんのおかげだな」
「え? 私?」
突然のご指名に私がびっくりした。
アリスも不思議そうな顔をしている。
すると、ブラッドは楽しそうに私を見て言った。
「先ほどは楽しかったよ。名無しさん」
そう言われてやっと気づいた。
前の時間帯に紅茶の淹れ方を教えてもらったのだ。
紅茶好きのブラッドはそれで機嫌がいいのだろう。
「うん、私も楽しかった。どうもありがとう。すごく勉強になりました」
おかげで今後はまともに紅茶を入れられるような気がする。
そう思っていると、ブラッドが笑った。
「それは良かった。またいつでも教えてあげるよ。手取り足取りね」
「あー、うん。それはどうも」
またわざとらしく変な言い方をするなぁこの人、と思って苦笑いするとアリスが顔をしかめた。
「手取り足取りって……名無しさんってばブラッドと一体何をしてたわけ? 大丈夫? 変なことされてない?」
されるわけないでしょうと言おうとすると、ブラッドは意味深に笑った。
「ふふふ。それはどうだろう?」
そう言ったブラッドの表情は楽しそうで、悪い顔をしていた。
それを見た瞬間私のいたずら心もむくむくと湧き起る。
「秘密だよねー」
思わず悪ノリしてしまった私。
ブラッドはそれこそ「おもしろい」という顔をして私を見たのだけれど、アリスは意外な言葉に相当驚いたらしい。
「え、名無しさん? まさかほんとになんかされたとか言わないわよね?」
「それは秘密だよ。なぁ、名無しさん」
「うん、秘密だよね」
固まるアリスに追い打ちをかける悪ふざけ二人組。
可笑しくてブラッドと目を合わせてくすくすと笑っている時だった。
「そろそろ会合を始めたい。中へ入ってくれないか、帽子屋」
振り向くとグレイとナイトメアがいつのまにか私達の後ろに立っていた。
「わ!? グレイ!?」
びっくりして声をあげてしまった。
まさか今の悪ふざけを聞かれてしまったとか言わないよね!?
青ざめる私に、ブラッドが前にもまして意地悪な顔で笑う。
「これは失礼。主催者を困らせるのは良くないな」
ブラッドはグレイを見て小さく笑うと、「行くぞ、お前達」とまだ騒いでいるエリオット達に声をかけた。
「それじゃあお嬢さん方、またな」
アリスと私に向かってそう言ったブラッドは、さらに私を見て言葉を続けた。
「名無しさん、また秘密のことを一緒にしよう。楽しみにしているよ」
意味ありげな言い方と視線を私に送りながら笑うと、ブラッドはさっさと会議室へと入ってしまった。
私をからかう気満々だというのがはっきりとわかった。
悪ノリした私も悪いってわかるんだけど、グレイの前ではやめてほしい。
……ボス、今の言動は最悪ですぞ……!!
私はちらりとグレイを見てみる。
いつものクールな表情だったけれど、ブラッドの後ろ姿を見る目つきはいつもよりも鋭い気がした。
「……名無しさん、まさかブラッドが好みのタイプだったとは思いもしなかったわ」
完全に誤解したアリスはそう言った。
グレイもいる手前、私は思いっきり否定に入る。
「ちちち、違う違う!! そんなんじゃないよ!! 秘密のことなんて何もしてないもん!!」
大慌ての私にきょとんとするアリス。
グレイの方は怖くて見られない。
「ただ紅茶の淹れ方を教えてもらっただけだよ」
そう言ってからちらっとグレイを見ると、彼は相変わらずのクールな表情のままだった。
しかし、アリスは安心したように「そう」とうなずく。
「それならいいけど、でもいつのまにブラッドとそんな仲良くなったの?」
「え、いやそんなに仲良いわけじゃ……ってもうブラッドの話題はいいからさ、ほら、会合でしょ!」
もう無理やり会話を終了させてしまえ、とばかりに私は会合へと話題を振ってみた。
すると、ナイトメアが急に声を上げた。
「嫌だ!無理だ!あんなメンツをまとめるなんてできるわけがない!私はやらない!!」
「「な、なに言ってんの突然!?」」
思わずツッコミを入れた私とアリス。(ほぼ同時だった)
すると、それまで黙っていたグレイが静かに言った。
「ついさっき、無理やり薬を飲ませたらすっかりへそを曲げてしまったんだ……」
「「……」」
私とアリスは黙ったまま顔を見合わせた。
たぶん思いは同じだったんだろう。
「子どもか、お前は」という言葉が頭をよぎる。
「ナイトメア様、もういい加減に機嫌を直してください!行きますよ!!」
「嫌だ、無理だ!行かない!スピーチなんてしたくない!」
「練習したから大丈夫です!あなたならできます!!」
「練習はしたが、練習とは全く違う状況だろう!あの時、私の前には名無しさんとアリスがいた。でも本番に彼女たちはいないし、代わりにあんなメンツがいるんだぞ!無理だ!!」
この話を近くで聞いていて、嫌な予感がした。
まさかね、まさかね?と思っていたらその予感は的中した。
「名無しさんとアリスがいればできるということですね?」
「あぁもちろんだ!名無しさんの顔を見れば練習を思い出せる。安心してできるぞ!!」
きっぱりと言い切ったナイトメア。
即刻この場を離れようとした私とアリスだったけれど、それよりも先にグレイが私達を見てこう言った。
「……名無しさん、アリス。申し訳ないが参加してもらえないだろうか? この前と同じ場所に座っているだけでいいんだ」
「グレイ、それ本気で言ってるの?」
「本当に申し訳ないが、本気で頼んでいる」
「いや、そう言われても会合に私なんかが参加していいの?」
うーん……どうなんだろう? 悩む。
すると、ナイトメアが急にワクワクした表情で私にこう言った。
「名無しさん、一緒に会合に参加しよう。名無しさんが来てくれたら私だって議長くらい立派にこなせるはずだ」
「あのねぇナイトメア。自分で情けないとは思わないの?」
アリスがズバリとそう言うと、ナイトメアは「う」と傷ついた表情を浮かべた。しかし、すぐに口を尖らせてはっきりとこう言った。
「何と言われようと嫌なものは嫌だ!君たちも一緒に来てくれ!」
「……開き直らないでくれる?」
完全に呆れ顔のアリス。そして、隣でグレイもため息をついた。
しかし、ナイトメアは次の瞬間「名無しさん、ちょっと」と私においでおいでと手を振る。
不審に思いつつも近寄ると、彼は私に顔を寄せて小声でこういった。
「名無しさん、会合に参加してくれれば君に2時間帯グレイを貸してあげよう。どうだ?」
「……乗った!」
ニヤリと笑うナイトメアと私。(あぁ、ついまた悪ノリしてしまったわ)
するとすぐ隣でグレイがため息をついた。
「ナイトメア様、変な条件で交渉成立させないでくださいよ……」
「うるさい。成立は成立だ。グレイ、頼んだぞ」
「楽しみにしてるね、グレイ!」
なんて言ってみる。
するとグレイはふぅっとうなずいてから、私とナイトメアを見た。
「……はいはい。もう何でもいいです。とにかく始めましょう。行きますよ」
「よし、名無しさん。君がいれば何も問題はない。私の素晴らしいスピーチを見せてあげよう!」
「うん、期待してます!」
変なテンションになってしまったナイトメアと私を横目に、アリスがつぶやいた。
「名無しさんが行くなら私も一緒に行くけど、私にグレイは貸してもらえないのかしら?」
「……俺はモノじゃないのだが」
グレイのそんな言葉が聞こえてきたけれど、気にしないことにする。
これから2回目の会合が始まるらしい。
会合にはなんら関係のない私は、アリスと2人並んで「なんだか大変そうだねぇ」と会議室に集まる人々を眺めていた。
しかし、しばらくするとアリスに気づいた参加者たちが次から次へと声をかけにやってきた。
自然とアリスの隣にいる私とも挨拶を交わす流れになる。
アリスといると、私もかなり好意的な目で見られるらしい。
彼らはにこにこと機嫌が良く「よろしく、名無しさん」と爽やかに去っていく。
ハートの城の女王・ビバルディと宰相・ペーター=ホワイトというかなり高貴な身分の方々が来たかと思えば、森に住んでいるというピンク猫耳のボリス=エレイ(この前会った人だ)に、ネズミのピアス=ヴィリエというなんともメルヘンチックな人々まで様々だった。
「アリス、すごいね。みんなと仲良しなんだね」
「前からこの世界にいたからね。余所者って好かれやすいらしいし、そのうち名無しさんも馴れ馴れしいくらいに仲良くさせられるわよ」
「ふぅん」
そんなことを話していると、わいわい賑やかな集団がやってきた。
賑やかなのになんだか威圧感という不思議な感じの彼ら、帽子屋ファミリー。
彼らとは私も顔見知りになっている。
こちらに気づくと、まず双子が駆け寄ってきた。
「お姉さん、名無しさん! こんにちは!」
にこやかに挨拶をしてきたと思ったら、さっそく双子のマシンガントークが始まった。
「ねぇねぇ、この会合が終わったらご飯食べに行かない?」
「僕らね、すっごく美味しいお店を見つけたんだ! 会合期間限定のお店だから今のうちに行かないとダメなんだよ」
「名無しさんはさ、魚と肉どっちが好き??」
「お姉さんとは一緒にご飯食べたことあるから、なんとなくわかるけど名無しさんとは初めてだもんね」
彼らの中で、もうご飯に行くことは決定しているらしい。
私とアリスが唖然としていると、エリオットが呆れ顔でこう言った。
「おいおい、この会合が終わったら今日は仕事だぞ。飯なんて食いに行く時間はねーよ」
「えー、ご飯くらい食べたっていいじゃないか!」
「そうだよ! 大体どうして会合なんて面倒な仕事の後に、また一仕事しなきゃならないんだよ」
「仕方ねーだろ。仕事なんだから」
「子どもを立て続けに労働させるなんておかしいよ」
「給料に見合ってないね」
「てめぇら雇い主を目の前にして、よくそんなことが言えるな」
来たかと思えばぎゃーぎゃー騒ぎ出す彼らに、アリスも私も苦笑した。
そして、当の雇い主はというと全くどうでもいいらしい。
彼らを無視して、私とアリスに「やぁ、お嬢さん方」と穏やかに声をかけてきた。
「こんにちは、ブラッド。あなた昼なのに珍しく機嫌がいいわね」
アリスはそう言って怪訝な顔をした。
「あぁ、そうだな。今はかなり気分がいい。名無しさんのおかげだな」
「え? 私?」
突然のご指名に私がびっくりした。
アリスも不思議そうな顔をしている。
すると、ブラッドは楽しそうに私を見て言った。
「先ほどは楽しかったよ。名無しさん」
そう言われてやっと気づいた。
前の時間帯に紅茶の淹れ方を教えてもらったのだ。
紅茶好きのブラッドはそれで機嫌がいいのだろう。
「うん、私も楽しかった。どうもありがとう。すごく勉強になりました」
おかげで今後はまともに紅茶を入れられるような気がする。
そう思っていると、ブラッドが笑った。
「それは良かった。またいつでも教えてあげるよ。手取り足取りね」
「あー、うん。それはどうも」
またわざとらしく変な言い方をするなぁこの人、と思って苦笑いするとアリスが顔をしかめた。
「手取り足取りって……名無しさんってばブラッドと一体何をしてたわけ? 大丈夫? 変なことされてない?」
されるわけないでしょうと言おうとすると、ブラッドは意味深に笑った。
「ふふふ。それはどうだろう?」
そう言ったブラッドの表情は楽しそうで、悪い顔をしていた。
それを見た瞬間私のいたずら心もむくむくと湧き起る。
「秘密だよねー」
思わず悪ノリしてしまった私。
ブラッドはそれこそ「おもしろい」という顔をして私を見たのだけれど、アリスは意外な言葉に相当驚いたらしい。
「え、名無しさん? まさかほんとになんかされたとか言わないわよね?」
「それは秘密だよ。なぁ、名無しさん」
「うん、秘密だよね」
固まるアリスに追い打ちをかける悪ふざけ二人組。
可笑しくてブラッドと目を合わせてくすくすと笑っている時だった。
「そろそろ会合を始めたい。中へ入ってくれないか、帽子屋」
振り向くとグレイとナイトメアがいつのまにか私達の後ろに立っていた。
「わ!? グレイ!?」
びっくりして声をあげてしまった。
まさか今の悪ふざけを聞かれてしまったとか言わないよね!?
青ざめる私に、ブラッドが前にもまして意地悪な顔で笑う。
「これは失礼。主催者を困らせるのは良くないな」
ブラッドはグレイを見て小さく笑うと、「行くぞ、お前達」とまだ騒いでいるエリオット達に声をかけた。
「それじゃあお嬢さん方、またな」
アリスと私に向かってそう言ったブラッドは、さらに私を見て言葉を続けた。
「名無しさん、また秘密のことを一緒にしよう。楽しみにしているよ」
意味ありげな言い方と視線を私に送りながら笑うと、ブラッドはさっさと会議室へと入ってしまった。
私をからかう気満々だというのがはっきりとわかった。
悪ノリした私も悪いってわかるんだけど、グレイの前ではやめてほしい。
……ボス、今の言動は最悪ですぞ……!!
私はちらりとグレイを見てみる。
いつものクールな表情だったけれど、ブラッドの後ろ姿を見る目つきはいつもよりも鋭い気がした。
「……名無しさん、まさかブラッドが好みのタイプだったとは思いもしなかったわ」
完全に誤解したアリスはそう言った。
グレイもいる手前、私は思いっきり否定に入る。
「ちちち、違う違う!! そんなんじゃないよ!! 秘密のことなんて何もしてないもん!!」
大慌ての私にきょとんとするアリス。
グレイの方は怖くて見られない。
「ただ紅茶の淹れ方を教えてもらっただけだよ」
そう言ってからちらっとグレイを見ると、彼は相変わらずのクールな表情のままだった。
しかし、アリスは安心したように「そう」とうなずく。
「それならいいけど、でもいつのまにブラッドとそんな仲良くなったの?」
「え、いやそんなに仲良いわけじゃ……ってもうブラッドの話題はいいからさ、ほら、会合でしょ!」
もう無理やり会話を終了させてしまえ、とばかりに私は会合へと話題を振ってみた。
すると、ナイトメアが急に声を上げた。
「嫌だ!無理だ!あんなメンツをまとめるなんてできるわけがない!私はやらない!!」
「「な、なに言ってんの突然!?」」
思わずツッコミを入れた私とアリス。(ほぼ同時だった)
すると、それまで黙っていたグレイが静かに言った。
「ついさっき、無理やり薬を飲ませたらすっかりへそを曲げてしまったんだ……」
「「……」」
私とアリスは黙ったまま顔を見合わせた。
たぶん思いは同じだったんだろう。
「子どもか、お前は」という言葉が頭をよぎる。
「ナイトメア様、もういい加減に機嫌を直してください!行きますよ!!」
「嫌だ、無理だ!行かない!スピーチなんてしたくない!」
「練習したから大丈夫です!あなたならできます!!」
「練習はしたが、練習とは全く違う状況だろう!あの時、私の前には名無しさんとアリスがいた。でも本番に彼女たちはいないし、代わりにあんなメンツがいるんだぞ!無理だ!!」
この話を近くで聞いていて、嫌な予感がした。
まさかね、まさかね?と思っていたらその予感は的中した。
「名無しさんとアリスがいればできるということですね?」
「あぁもちろんだ!名無しさんの顔を見れば練習を思い出せる。安心してできるぞ!!」
きっぱりと言い切ったナイトメア。
即刻この場を離れようとした私とアリスだったけれど、それよりも先にグレイが私達を見てこう言った。
「……名無しさん、アリス。申し訳ないが参加してもらえないだろうか? この前と同じ場所に座っているだけでいいんだ」
「グレイ、それ本気で言ってるの?」
「本当に申し訳ないが、本気で頼んでいる」
「いや、そう言われても会合に私なんかが参加していいの?」
うーん……どうなんだろう? 悩む。
すると、ナイトメアが急にワクワクした表情で私にこう言った。
「名無しさん、一緒に会合に参加しよう。名無しさんが来てくれたら私だって議長くらい立派にこなせるはずだ」
「あのねぇナイトメア。自分で情けないとは思わないの?」
アリスがズバリとそう言うと、ナイトメアは「う」と傷ついた表情を浮かべた。しかし、すぐに口を尖らせてはっきりとこう言った。
「何と言われようと嫌なものは嫌だ!君たちも一緒に来てくれ!」
「……開き直らないでくれる?」
完全に呆れ顔のアリス。そして、隣でグレイもため息をついた。
しかし、ナイトメアは次の瞬間「名無しさん、ちょっと」と私においでおいでと手を振る。
不審に思いつつも近寄ると、彼は私に顔を寄せて小声でこういった。
「名無しさん、会合に参加してくれれば君に2時間帯グレイを貸してあげよう。どうだ?」
「……乗った!」
ニヤリと笑うナイトメアと私。(あぁ、ついまた悪ノリしてしまったわ)
するとすぐ隣でグレイがため息をついた。
「ナイトメア様、変な条件で交渉成立させないでくださいよ……」
「うるさい。成立は成立だ。グレイ、頼んだぞ」
「楽しみにしてるね、グレイ!」
なんて言ってみる。
するとグレイはふぅっとうなずいてから、私とナイトメアを見た。
「……はいはい。もう何でもいいです。とにかく始めましょう。行きますよ」
「よし、名無しさん。君がいれば何も問題はない。私の素晴らしいスピーチを見せてあげよう!」
「うん、期待してます!」
変なテンションになってしまったナイトメアと私を横目に、アリスがつぶやいた。
「名無しさんが行くなら私も一緒に行くけど、私にグレイは貸してもらえないのかしら?」
「……俺はモノじゃないのだが」
グレイのそんな言葉が聞こえてきたけれど、気にしないことにする。