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【12.5 全てはこれから】
いつのまにか名無しさんは俺の知らない所で、周囲から興味を持たれる対象となっていたらしい。
厄介な役持ち達も彼女にとっては気のいい連中に映るようだ。
あの帽子屋を捕まえて「いいマフィアだ」と言い張った名無しさん。
マフィアという時点で、良いも悪いもないということに気づいているのだろうか?
先日もお土産の茶葉を大量に持たされ機嫌よく帰ってきたが、正直言って食べ物につられているんじゃないかと思う。
おそらく人を疑うということを知らないのだろう。
そして、役持ち達も名無しさんに悪い面を見せまいとしているに違いない。
事実、俺も彼女に悪い面を見せないように努力はしている。
よくよく思い返してみれば、名無しさんは誰に対しても分け隔てない態度で接している。
顔なしである俺の部下にも珈琲を淹れていたり、休憩時間には彼らのプライベートについて色々と質問をしている。
この間なんて俺の部下の恋愛について色々と話をしていた。(部下の恋愛事情になぜ興味を持つのだろう?)
名無しさんの周りは人が集まっているということに気づいたのは、いつだろう?
彼女はうるさいわけではないが、いつも楽しそうにしている。
俺に対しても他の奴らと同様でにこにこしている。
自分で言うのもなんだが、俺は人に笑顔で接してもらうようなタイプではない。
どちらかというと怖がられるような冷たいタイプに映るらしいし、それもある程度自分で理解している。
それなのに名無しさんは俺を誘ってナイトメア様へのいたずらを提案したりする。(あれはかなり面白かった)
彼女といる時は比較的おしゃべりになる自分、というのにもうすうす気づいている。
俺ですらこんな状態なのだ。
名無しさんに周囲の奴らが惹かれるのは当然かもしれない。
余所者は好かれやすいと聞いていたが、彼女の場合余所者だから好かれているのか、本人の持つ雰囲気に惹かれるのかどちらなのだろう。
机に広がった書類を見つめたまま、そんなことを考えていた時だった。
「逃がした魚は大きかったかもな、グレイ」
突然耳に入ってきた言葉。
書類を書くペンがいつのまにか止まっていることに自分で気づいたのは、ナイトメア様にそう言われたからだ。
「……なんですか?」
ナイトメア様の言葉の意味を理解しようとしたが、すぐには頭が働かなかった。
そんな俺を見て、ナイトメア様が人の悪い笑みを浮かべる。
「いや、なんでもない。今さら後悔しても遅いからな」
彼がそう言って珍しく書類に向かってペンを走らせるのを見た瞬間、やっと彼の言わんとしていることの意味を理解した。
なぜ知っているのかとも思ったが、この人には隠し事などできるはずもないことにすぐ気づく。
思わずため息をつきかけた時「上司として好きだ」と俺に言った名無しさんの慌てた表情が思い出される。
彼女の言葉をそのまま信じるならば、俺は「上司として好き」だという告白しかされていない。
それはつまり「逃がす、逃がさない」というレベルの話ですらないのだ。
だが、もし名無しさんが「上司」ではなく「俺」の元にきたのであれば逃がすわけがない。
「……後悔なんてしていませんよ」
小さくそうつぶやくと、ナイトメア様がちらりと俺を見る。
彼は言葉の続きを待っていたけれど、俺はそれに気づかないふりをして再び書類にペンを走らせた。
『これから捕まえる所なんですから』
言葉にはせず心の中でそう付け足しておいた。
いつのまにか名無しさんは俺の知らない所で、周囲から興味を持たれる対象となっていたらしい。
厄介な役持ち達も彼女にとっては気のいい連中に映るようだ。
あの帽子屋を捕まえて「いいマフィアだ」と言い張った名無しさん。
マフィアという時点で、良いも悪いもないということに気づいているのだろうか?
先日もお土産の茶葉を大量に持たされ機嫌よく帰ってきたが、正直言って食べ物につられているんじゃないかと思う。
おそらく人を疑うということを知らないのだろう。
そして、役持ち達も名無しさんに悪い面を見せまいとしているに違いない。
事実、俺も彼女に悪い面を見せないように努力はしている。
よくよく思い返してみれば、名無しさんは誰に対しても分け隔てない態度で接している。
顔なしである俺の部下にも珈琲を淹れていたり、休憩時間には彼らのプライベートについて色々と質問をしている。
この間なんて俺の部下の恋愛について色々と話をしていた。(部下の恋愛事情になぜ興味を持つのだろう?)
名無しさんの周りは人が集まっているということに気づいたのは、いつだろう?
彼女はうるさいわけではないが、いつも楽しそうにしている。
俺に対しても他の奴らと同様でにこにこしている。
自分で言うのもなんだが、俺は人に笑顔で接してもらうようなタイプではない。
どちらかというと怖がられるような冷たいタイプに映るらしいし、それもある程度自分で理解している。
それなのに名無しさんは俺を誘ってナイトメア様へのいたずらを提案したりする。(あれはかなり面白かった)
彼女といる時は比較的おしゃべりになる自分、というのにもうすうす気づいている。
俺ですらこんな状態なのだ。
名無しさんに周囲の奴らが惹かれるのは当然かもしれない。
余所者は好かれやすいと聞いていたが、彼女の場合余所者だから好かれているのか、本人の持つ雰囲気に惹かれるのかどちらなのだろう。
机に広がった書類を見つめたまま、そんなことを考えていた時だった。
「逃がした魚は大きかったかもな、グレイ」
突然耳に入ってきた言葉。
書類を書くペンがいつのまにか止まっていることに自分で気づいたのは、ナイトメア様にそう言われたからだ。
「……なんですか?」
ナイトメア様の言葉の意味を理解しようとしたが、すぐには頭が働かなかった。
そんな俺を見て、ナイトメア様が人の悪い笑みを浮かべる。
「いや、なんでもない。今さら後悔しても遅いからな」
彼がそう言って珍しく書類に向かってペンを走らせるのを見た瞬間、やっと彼の言わんとしていることの意味を理解した。
なぜ知っているのかとも思ったが、この人には隠し事などできるはずもないことにすぐ気づく。
思わずため息をつきかけた時「上司として好きだ」と俺に言った名無しさんの慌てた表情が思い出される。
彼女の言葉をそのまま信じるならば、俺は「上司として好き」だという告白しかされていない。
それはつまり「逃がす、逃がさない」というレベルの話ですらないのだ。
だが、もし名無しさんが「上司」ではなく「俺」の元にきたのであれば逃がすわけがない。
「……後悔なんてしていませんよ」
小さくそうつぶやくと、ナイトメア様がちらりと俺を見る。
彼は言葉の続きを待っていたけれど、俺はそれに気づかないふりをして再び書類にペンを走らせた。
『これから捕まえる所なんですから』
言葉にはせず心の中でそう付け足しておいた。