短編2
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【メイド生活】
なんだかよくわからないけど、気づいたらハトアリの世界にいた。
ついでだから帽子屋屋敷を見学しておこうと思った。
帽子屋屋敷を壁沿いに歩きながら「大きいなー、すごいなー」と見ていたら、なんとその日は屋敷のメイド(マフィアの構成員)の募集&面接日だったらしい。
あれよあれよという間に、私は就職希望の女の子達の列に加えられてしまった。
っていうか、マフィアの構成員ってこんな感じでなれちゃうものなのだろうか?
豪華絢爛な広間に通された女の子達は私を含めて10名くらいだった。
希望者が10人なんて少ないんじゃないかと思っていたけれど、どうやら今日は最終面接日らしい。
彼女たちはこれまで生死にかかわる難関を潜り抜けてこの場にいるのだ。(なんで私、ここにひょいっと入っているんだろう?)
私このままマフィアになってしまったらどうしよう。
でも、マフィアにならないと行くあてがない。
というよりも、ここで不合格になった場合、私は生きてここを出られるのだろうか?
不安すぎる……!
ドキドキしながら辺りをキョロキョロしていたら、不意にドアが開いた。
入ってきたのは、2人。
ゲームで見慣れた彼ら、ブラッドとエリオットだった。
「うわ、本物!!」
思わず声を上げてしまった私。慌てて口元を抑えたけれど、彼らは大して気にしていないようだった。
「おー、結構残ったんだな。顔なしのくせに思ったより優秀だぜ」
そう言いながら歩いてきたエリオット。
長い耳とふわふわの髪の毛。
紫色のストールを翻して、彼は私達の前にずんと立った。思っていたよりも2倍くらい大きい人だった。
そして、黒髪にバラのついた帽子をかぶったブラッドは、すぐそばのソファに座った。
気だるげに私達に視線を向ける。
おそらく私を含めた全員が緊張していただろう。
エリオットが口を開く。
「えーと、メイドは5人くらいでいいんだよな。あれ、3人だったかな?まぁいいや。この間の抗争で欠員が出ちまったんで、さっそく新しい奴をいれたいんだ。できれば即戦力になる奴」
……抗争で欠員?なんだか物騒ワードな気がする。
「得意ジャンルでいくらか優遇しようとは思ってる。俺としては刃物よりも銃のがいいんだが……ブラッドはどうだ?」
「お前に任せるよ、エリオット」
「そっか!」
え、な、何の話!?(得意ジャンル?刃物?)
動揺してしまう私だったけれど、隣に並ぶ女の子たちは真剣な表情で頷いている。
明らかに場違いです私。冷や汗がどばーっと出てくる私に、エリオットも気づいたらしい。
「……あんたみたいにとろそうな奴がここにいるなんて意外だな」
じっと私を見る目に怯んでしまう。
「あんたの得物は?」
「え、えもの?」
えものって獲物?別になにも追いかけていませんが?
動揺しまくる私に、エリオットはいらっとしたような口調で続ける。
「得意な武器は銃なのか刃物か、他のものなのかって聞いてんだよ」
えもの違い……!
私の思う獲物と彼の言う得物は違うらしい。恐ろしいことを聞かれていることはよくわかった。
「わ、私はあの、メイドになろうと思ったので、特に得意な武器はないです」
「は?あんた、うちのメイド志望なんだろ?武器がないってなんだよ」
「え、えぇと、その……掃除をさせてもらえればいいかなぁと思って」
「……掃除って、掃除?あんた、掃除屋志望なのか?今そっちは特に困ってねぇけど……」
エリオットは眉をしかめながら言った。
まずい、彼の言う掃除と私の言う掃除は絶対に意味が違う!
掃除屋・ピアスの同僚にはなりたくない!
「掃除屋っていうかそういう掃除じゃなくて、ただ単にハウスキーピングの掃除を……」
私の言葉にエリオットは変な顔をし、周りの女の子からはくすくすと笑い声が漏れた。
どうやらものすごく変なことを私は言っているようだった。
「なんか変なのが混じってきたな」
エリオットはそう言うと、他の子へと質問を始めた。
私はほっと胸をなでおろしつつも、自分がものすごくまずい立場にいることに焦り始めた。
おそらくここのメイドさんたちは、掃除洗濯お料理はもちろん、ドンパチやりあうのもプロ級の人々なのだ。
ここはそんなメイドを雇うための面接の場。
お手本のように普通の女子である私が、ここにいるなんて場違いすぎる。
どうしよう。辞退したら素直にこの屋敷からだしてもらえるのかな?
そう思いつつ、ブラッドをちらりと見てみた。
雇い主であるにも関わらずまるで興味がなさそうに、彼は椅子に掛けてぼんやりと窓の外を見ていた。(……あれはお茶会がしたいと見た)
外を見ているブラッドの横顔につい見惚れる。
この面接に受かったら、この人の元で働くことになるのか……。
っていうかせっかくこの世界に来たのに、私のスタートは「余所者」うんぬんではなく「メイド面接」。
……もし受かったとしてもこき使われたり、下手したらあっさりと殺されてしまうかもしれない。
現実なんてそんなもんよね。
そんなことを考えながらブラッドを見つめていたら、ふと彼がこちらに視線を移した。
「!」
どきっとする私。
ブラッドはこちらをじっと見つめる。
慌てて目を逸らすが、心臓がドキドキする。
すると次の瞬間、がたりと音がしてブラッドが立ち上がった。
面接官役のエリオットは、ちらりとブラッドを見る。
「ん、どうした?ブラッド」
エリオットはのんびりとそう言ったけれど、私達メイド候補(?)は息を飲んだ。
彼が立ち上がった瞬間、あきらかに空気が変わったのだ。
私はじっと彼を見つめる。隣の女の子達も同様だった。
ブラッドはざーっと私達に目をやると、だるだるとこう言った。
「全員合格でいい」
「……え?」
その場にいた全員が気の抜けた声を出す。
「全員って全員?」
「あぁ。全員」
慌てるエリオットにブラッドはきっぱりと言った。
「いちいち話を聞くのもだるい」
でたー。だるい発言!
ほんとにだるそ~うに言うんだな、この人。
思わず笑いそうになるのを必死でこらえる。
しかし、ブラッドはだるそうだけれども真面目な口調でこう続けた。
「今ここにいる時点で、彼女たちはうちの使用人としての能力を備えている。あとは得意分野へ適当に配置すればいい」
「そ、そうだけどよ。こいつはどうするんだ?」
エリオットはそう言って私を指さした。
「得物どころかハウスキーピングだなんて言ってるんだぜ?こいつがここまでの課題をクリアしてきたとは思えねぇ。もしかしたら、この最終面接日にだけひょっこり現れやがったのかも……」
エリオットはじろりと私を睨む。
う。怖い。彼の言葉は真実だけれど、思わず否定してしまいそうになるくらいの迫力だ。
さらに、ブラッドも何を考えているのか全く読めない表情で上から下まで私を眺める。
この二人からこんな風に見られるとものすごく恐ろしい。
緊張しすぎて気持ち悪くなって来た頃、ブラッドがエリオットに言った。
「そうだとしても、最終日にここへ忍び込んだ時点ですごいことだと思わないか?エリオット」
「う……まぁ、否定はしねぇけど……」
「どうやって入って来たかは知らないが、生きてここいるということはうちのメイドとしての能力があるということだ。
それにこの屋敷の掃除をするためにメイドになろうというんだ。こんな面白いお嬢さんはなかなかいない」
ブラッドはそう言いながら意地悪そうに笑った。
そして初めて私に話しかける。
「うちの屋敷はそんなに汚れていたかな、お嬢さん」
「え、いや、そういう訳では……」
迷い込んだから見学がてら来ました。
そんなことは言えないので言葉を濁していると、彼は言った。
「ふむ、まぁいい。一緒に紅茶を飲む相手を探していたんだ。今からお茶会をしよう。私のお茶会に参加することが君の初仕事だ」
「はい?」
思わぬ発言に顔をしかめるが、ブラッドはすっと私の前にやってきた。背が高い。
見上げる私に、ブラッドは小さく笑みを浮かべる。
「庭にお茶会の用意をさせよう。お嬢さん、名前は?」
「……名無しさんです」
「名無しさんか。では行こう。エリオット、あとは頼んだぞ。適当にやってくれ」
「お、おぉ」
私はブラッドに背中を押され、その場を後にする。
突然の展開におたおたしつつ振り返ると、エリオットも面接を一緒に受けていた女の子達も唖然とした様子で私を見ているのだった。
なんだかよくわからないけど、気づいたらハトアリの世界にいた。
ついでだから帽子屋屋敷を見学しておこうと思った。
帽子屋屋敷を壁沿いに歩きながら「大きいなー、すごいなー」と見ていたら、なんとその日は屋敷のメイド(マフィアの構成員)の募集&面接日だったらしい。
あれよあれよという間に、私は就職希望の女の子達の列に加えられてしまった。
っていうか、マフィアの構成員ってこんな感じでなれちゃうものなのだろうか?
豪華絢爛な広間に通された女の子達は私を含めて10名くらいだった。
希望者が10人なんて少ないんじゃないかと思っていたけれど、どうやら今日は最終面接日らしい。
彼女たちはこれまで生死にかかわる難関を潜り抜けてこの場にいるのだ。(なんで私、ここにひょいっと入っているんだろう?)
私このままマフィアになってしまったらどうしよう。
でも、マフィアにならないと行くあてがない。
というよりも、ここで不合格になった場合、私は生きてここを出られるのだろうか?
不安すぎる……!
ドキドキしながら辺りをキョロキョロしていたら、不意にドアが開いた。
入ってきたのは、2人。
ゲームで見慣れた彼ら、ブラッドとエリオットだった。
「うわ、本物!!」
思わず声を上げてしまった私。慌てて口元を抑えたけれど、彼らは大して気にしていないようだった。
「おー、結構残ったんだな。顔なしのくせに思ったより優秀だぜ」
そう言いながら歩いてきたエリオット。
長い耳とふわふわの髪の毛。
紫色のストールを翻して、彼は私達の前にずんと立った。思っていたよりも2倍くらい大きい人だった。
そして、黒髪にバラのついた帽子をかぶったブラッドは、すぐそばのソファに座った。
気だるげに私達に視線を向ける。
おそらく私を含めた全員が緊張していただろう。
エリオットが口を開く。
「えーと、メイドは5人くらいでいいんだよな。あれ、3人だったかな?まぁいいや。この間の抗争で欠員が出ちまったんで、さっそく新しい奴をいれたいんだ。できれば即戦力になる奴」
……抗争で欠員?なんだか物騒ワードな気がする。
「得意ジャンルでいくらか優遇しようとは思ってる。俺としては刃物よりも銃のがいいんだが……ブラッドはどうだ?」
「お前に任せるよ、エリオット」
「そっか!」
え、な、何の話!?(得意ジャンル?刃物?)
動揺してしまう私だったけれど、隣に並ぶ女の子たちは真剣な表情で頷いている。
明らかに場違いです私。冷や汗がどばーっと出てくる私に、エリオットも気づいたらしい。
「……あんたみたいにとろそうな奴がここにいるなんて意外だな」
じっと私を見る目に怯んでしまう。
「あんたの得物は?」
「え、えもの?」
えものって獲物?別になにも追いかけていませんが?
動揺しまくる私に、エリオットはいらっとしたような口調で続ける。
「得意な武器は銃なのか刃物か、他のものなのかって聞いてんだよ」
えもの違い……!
私の思う獲物と彼の言う得物は違うらしい。恐ろしいことを聞かれていることはよくわかった。
「わ、私はあの、メイドになろうと思ったので、特に得意な武器はないです」
「は?あんた、うちのメイド志望なんだろ?武器がないってなんだよ」
「え、えぇと、その……掃除をさせてもらえればいいかなぁと思って」
「……掃除って、掃除?あんた、掃除屋志望なのか?今そっちは特に困ってねぇけど……」
エリオットは眉をしかめながら言った。
まずい、彼の言う掃除と私の言う掃除は絶対に意味が違う!
掃除屋・ピアスの同僚にはなりたくない!
「掃除屋っていうかそういう掃除じゃなくて、ただ単にハウスキーピングの掃除を……」
私の言葉にエリオットは変な顔をし、周りの女の子からはくすくすと笑い声が漏れた。
どうやらものすごく変なことを私は言っているようだった。
「なんか変なのが混じってきたな」
エリオットはそう言うと、他の子へと質問を始めた。
私はほっと胸をなでおろしつつも、自分がものすごくまずい立場にいることに焦り始めた。
おそらくここのメイドさんたちは、掃除洗濯お料理はもちろん、ドンパチやりあうのもプロ級の人々なのだ。
ここはそんなメイドを雇うための面接の場。
お手本のように普通の女子である私が、ここにいるなんて場違いすぎる。
どうしよう。辞退したら素直にこの屋敷からだしてもらえるのかな?
そう思いつつ、ブラッドをちらりと見てみた。
雇い主であるにも関わらずまるで興味がなさそうに、彼は椅子に掛けてぼんやりと窓の外を見ていた。(……あれはお茶会がしたいと見た)
外を見ているブラッドの横顔につい見惚れる。
この面接に受かったら、この人の元で働くことになるのか……。
っていうかせっかくこの世界に来たのに、私のスタートは「余所者」うんぬんではなく「メイド面接」。
……もし受かったとしてもこき使われたり、下手したらあっさりと殺されてしまうかもしれない。
現実なんてそんなもんよね。
そんなことを考えながらブラッドを見つめていたら、ふと彼がこちらに視線を移した。
「!」
どきっとする私。
ブラッドはこちらをじっと見つめる。
慌てて目を逸らすが、心臓がドキドキする。
すると次の瞬間、がたりと音がしてブラッドが立ち上がった。
面接官役のエリオットは、ちらりとブラッドを見る。
「ん、どうした?ブラッド」
エリオットはのんびりとそう言ったけれど、私達メイド候補(?)は息を飲んだ。
彼が立ち上がった瞬間、あきらかに空気が変わったのだ。
私はじっと彼を見つめる。隣の女の子達も同様だった。
ブラッドはざーっと私達に目をやると、だるだるとこう言った。
「全員合格でいい」
「……え?」
その場にいた全員が気の抜けた声を出す。
「全員って全員?」
「あぁ。全員」
慌てるエリオットにブラッドはきっぱりと言った。
「いちいち話を聞くのもだるい」
でたー。だるい発言!
ほんとにだるそ~うに言うんだな、この人。
思わず笑いそうになるのを必死でこらえる。
しかし、ブラッドはだるそうだけれども真面目な口調でこう続けた。
「今ここにいる時点で、彼女たちはうちの使用人としての能力を備えている。あとは得意分野へ適当に配置すればいい」
「そ、そうだけどよ。こいつはどうするんだ?」
エリオットはそう言って私を指さした。
「得物どころかハウスキーピングだなんて言ってるんだぜ?こいつがここまでの課題をクリアしてきたとは思えねぇ。もしかしたら、この最終面接日にだけひょっこり現れやがったのかも……」
エリオットはじろりと私を睨む。
う。怖い。彼の言葉は真実だけれど、思わず否定してしまいそうになるくらいの迫力だ。
さらに、ブラッドも何を考えているのか全く読めない表情で上から下まで私を眺める。
この二人からこんな風に見られるとものすごく恐ろしい。
緊張しすぎて気持ち悪くなって来た頃、ブラッドがエリオットに言った。
「そうだとしても、最終日にここへ忍び込んだ時点ですごいことだと思わないか?エリオット」
「う……まぁ、否定はしねぇけど……」
「どうやって入って来たかは知らないが、生きてここいるということはうちのメイドとしての能力があるということだ。
それにこの屋敷の掃除をするためにメイドになろうというんだ。こんな面白いお嬢さんはなかなかいない」
ブラッドはそう言いながら意地悪そうに笑った。
そして初めて私に話しかける。
「うちの屋敷はそんなに汚れていたかな、お嬢さん」
「え、いや、そういう訳では……」
迷い込んだから見学がてら来ました。
そんなことは言えないので言葉を濁していると、彼は言った。
「ふむ、まぁいい。一緒に紅茶を飲む相手を探していたんだ。今からお茶会をしよう。私のお茶会に参加することが君の初仕事だ」
「はい?」
思わぬ発言に顔をしかめるが、ブラッドはすっと私の前にやってきた。背が高い。
見上げる私に、ブラッドは小さく笑みを浮かべる。
「庭にお茶会の用意をさせよう。お嬢さん、名前は?」
「……名無しさんです」
「名無しさんか。では行こう。エリオット、あとは頼んだぞ。適当にやってくれ」
「お、おぉ」
私はブラッドに背中を押され、その場を後にする。
突然の展開におたおたしつつ振り返ると、エリオットも面接を一緒に受けていた女の子達も唖然とした様子で私を見ているのだった。