短編2
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【プレゼント】
昼間の街でものすごーく珍しい人物に出会った。
向こうから歩いてくる人物があまりに珍しいので、思わず立ち止まってじぃぃっと目を凝らしてしまったくらいだ。
「やぁ、名無しさん」
「こんにちは、ブラッド」
そう、私はブラッドに遭遇したのだった。
街で会うのも初めてだし、昼間の彼に屋敷外で会うのも初めてだった。
あまりにびっくりした私は思わずつぶやいた。
「……本物?」
思わぬ場所でありえない時間帯に会うありえない人物。
私の気持ちをわかってもらえるだろうか? まるで宇宙人にでも遭遇した気分。
ブラッドは私の言動に気分を悪くすることなく、楽しそうに私を見る。
そして、こう言った。
「さぁ、どうだろう? 偽物かもしれないよ、お嬢さん」
「うん……本物だね」
独特の言い回しといい、雰囲気といい、それはどう見てもブラッド=デュプレ本人だった。
よくよく考えてみれば、彼を真似するなんてできそうもない。
「ブラッドが昼間の街にいるなんてすっごく珍しいね。どうしたの?」
「夜の街を歩いていたら昼になった。それだけだ」
「あぁ、前の夜は短かったもんね」
出先で昼になっても不機嫌にならないだなんて、すごく珍しいことだと思う。
昼になると近寄りたくないくらいの不機嫌なオーラを出しまくるのだ。
何かものすごくいいことでもあったのかもしれない。
「名無しさん、今からお茶会をしないか?」
「え?」
「いい茶葉が手に入ったんだ。帰ってさっそく飲もう」
昼間でもご機嫌なのはいい茶葉のおかげか。(ありがとう、いい茶葉!!)
「お茶会はいいんだけど、私ちょっと買い物があって……」
「それなら私も付き合おう。そういう気分だ」
「え」
予想外の申し出に私は文字通り固まった。
こんなに機嫌がいいなんて、どれだけいい茶葉を手に入れたんだろう?
「何か欲しい物があるなら私がプレゼントしよう。何を買うんだ? 服か? 靴か?」
「いいよいいよ! プレゼントしてもらわなくても! 私ほら、お給料をあなたからもらってるし大丈夫!!」
「給料は労働しているのだから支払って当然だろう。それとは別に私が名無しさんにプレゼントしたいんだ」
「でも……」
困惑する私。
するとブラッドはあたりを見回してこう言った。
「面倒だからその辺りの店をいくつか買い取るか」
「……面倒だからという理由で買い取るのって失礼じゃないかな」
ツッコみどころはたくさんある気がしたけれど、とりあえず店にも私にも失礼な発言をツッコんでおいた。
本当は早く帰って紅茶を飲みたいんじゃないのこの人。そう考えて私はため息をつく。
「もういいや。買い物はまた今度にする。帰ってお茶会しよう、ブラッド」
私はブラッドの袖を掴み、元来た道を戻ろうと歩き出した。
「遠慮などする必要ないのに」
そう言うブラッドを見て、わりと本気で買い物に付き合ってくれるつもりだったらしいことに気づいた私。
でもねぇ……。
「店をいくつか買い取られても困るだけだもん」
「それならば今度、名無しさんにあうものをプレゼントさせてもらうよ」
「嬉しいけど遠慮しておきます」
どう考えたってブラッドのプレゼントは高級なものに決まっている。
そんなものを受け取れるわけがない。
「名無しさんは遠慮してばかりだな。私が君にプレゼントしたいだけなんだ。何も考えずに受け取ればいいだろう?」
「でも、私はブラッドのお茶会に招待してもらえれば十分だから」
そう言うと、私に袖を引かれて歩いていたブラッドがぴたりと止まった。
不思議に思って振り返ると、彼はじっと私を見ていた。
「な、なに?」
「名無しさんにはいつも意表を突かれるな」
「はい?」
ブラッドの意表を突くなんてできるわけないと思うけど。
「服や靴よりもお茶会がいい、という女性はなかなかいない」
「悪かったわね。なかなかいない女で」
花より団子、色気より食い気……そんな言葉が思い浮かぶ。
しかしブラッドはからかっているふうでもない。
「悪いわけないだろう。素晴らしい女性だよ」
まっすぐにそう言われて、私は困惑するやら照れるやら。
「君のために、毎日最高のお茶会をしよう」
そう言って彼は私の肩を押して歩き出した。
「名無しさんに喜んでもらえると私も嬉しいよ」
いつもの調子だったけれど、ブラッドはなんだか楽しそうだった。
服も靴も別にいらない。
ただ、その気持ちが嬉しい。
贈るほうも受け取る方も、喜んでもらえることが何よりのプレゼント。
昼間の街でものすごーく珍しい人物に出会った。
向こうから歩いてくる人物があまりに珍しいので、思わず立ち止まってじぃぃっと目を凝らしてしまったくらいだ。
「やぁ、名無しさん」
「こんにちは、ブラッド」
そう、私はブラッドに遭遇したのだった。
街で会うのも初めてだし、昼間の彼に屋敷外で会うのも初めてだった。
あまりにびっくりした私は思わずつぶやいた。
「……本物?」
思わぬ場所でありえない時間帯に会うありえない人物。
私の気持ちをわかってもらえるだろうか? まるで宇宙人にでも遭遇した気分。
ブラッドは私の言動に気分を悪くすることなく、楽しそうに私を見る。
そして、こう言った。
「さぁ、どうだろう? 偽物かもしれないよ、お嬢さん」
「うん……本物だね」
独特の言い回しといい、雰囲気といい、それはどう見てもブラッド=デュプレ本人だった。
よくよく考えてみれば、彼を真似するなんてできそうもない。
「ブラッドが昼間の街にいるなんてすっごく珍しいね。どうしたの?」
「夜の街を歩いていたら昼になった。それだけだ」
「あぁ、前の夜は短かったもんね」
出先で昼になっても不機嫌にならないだなんて、すごく珍しいことだと思う。
昼になると近寄りたくないくらいの不機嫌なオーラを出しまくるのだ。
何かものすごくいいことでもあったのかもしれない。
「名無しさん、今からお茶会をしないか?」
「え?」
「いい茶葉が手に入ったんだ。帰ってさっそく飲もう」
昼間でもご機嫌なのはいい茶葉のおかげか。(ありがとう、いい茶葉!!)
「お茶会はいいんだけど、私ちょっと買い物があって……」
「それなら私も付き合おう。そういう気分だ」
「え」
予想外の申し出に私は文字通り固まった。
こんなに機嫌がいいなんて、どれだけいい茶葉を手に入れたんだろう?
「何か欲しい物があるなら私がプレゼントしよう。何を買うんだ? 服か? 靴か?」
「いいよいいよ! プレゼントしてもらわなくても! 私ほら、お給料をあなたからもらってるし大丈夫!!」
「給料は労働しているのだから支払って当然だろう。それとは別に私が名無しさんにプレゼントしたいんだ」
「でも……」
困惑する私。
するとブラッドはあたりを見回してこう言った。
「面倒だからその辺りの店をいくつか買い取るか」
「……面倒だからという理由で買い取るのって失礼じゃないかな」
ツッコみどころはたくさんある気がしたけれど、とりあえず店にも私にも失礼な発言をツッコんでおいた。
本当は早く帰って紅茶を飲みたいんじゃないのこの人。そう考えて私はため息をつく。
「もういいや。買い物はまた今度にする。帰ってお茶会しよう、ブラッド」
私はブラッドの袖を掴み、元来た道を戻ろうと歩き出した。
「遠慮などする必要ないのに」
そう言うブラッドを見て、わりと本気で買い物に付き合ってくれるつもりだったらしいことに気づいた私。
でもねぇ……。
「店をいくつか買い取られても困るだけだもん」
「それならば今度、名無しさんにあうものをプレゼントさせてもらうよ」
「嬉しいけど遠慮しておきます」
どう考えたってブラッドのプレゼントは高級なものに決まっている。
そんなものを受け取れるわけがない。
「名無しさんは遠慮してばかりだな。私が君にプレゼントしたいだけなんだ。何も考えずに受け取ればいいだろう?」
「でも、私はブラッドのお茶会に招待してもらえれば十分だから」
そう言うと、私に袖を引かれて歩いていたブラッドがぴたりと止まった。
不思議に思って振り返ると、彼はじっと私を見ていた。
「な、なに?」
「名無しさんにはいつも意表を突かれるな」
「はい?」
ブラッドの意表を突くなんてできるわけないと思うけど。
「服や靴よりもお茶会がいい、という女性はなかなかいない」
「悪かったわね。なかなかいない女で」
花より団子、色気より食い気……そんな言葉が思い浮かぶ。
しかしブラッドはからかっているふうでもない。
「悪いわけないだろう。素晴らしい女性だよ」
まっすぐにそう言われて、私は困惑するやら照れるやら。
「君のために、毎日最高のお茶会をしよう」
そう言って彼は私の肩を押して歩き出した。
「名無しさんに喜んでもらえると私も嬉しいよ」
いつもの調子だったけれど、ブラッドはなんだか楽しそうだった。
服も靴も別にいらない。
ただ、その気持ちが嬉しい。
贈るほうも受け取る方も、喜んでもらえることが何よりのプレゼント。