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【2.勉強中】
私がこの世界にやってきてから5時間帯くらいが過ぎた。
まだ時間帯という概念も、夜の次に夕方になるのも慣れない。
それでもこの塔の人達にはだいぶ慣れてきた。みんな優しい。
アリスの話によるとここは私の世界とは全く違う上、ファンタジックに見えるのにとてもデンジャラスな場所だという。
彼女も私と同じ境遇らしいが、ハートの国だった頃(意味が分からない)からこの世界にいたらしい。
時計塔に住んでいたけれど、引っ越しでクローバーの塔になったという。(やっぱりよくわからない)
私はアリスに教わったことを、ひとり休憩室でノートに書きだしてみた。
・ここはクローバーの国のクローバーの塔。引っ越ししたばかり。
・クローバーの塔の他にも領地がある。
・これまでの常識は通じないから気をつけること。
・危ないから一人で外にはでないこと。
・私は余所者(アリスも)
・ナイトメアは一応偉い人。心を読まれる上、勝手に夢に出てくることもある。吐血に注意!
・役持ちという人たちがいる。(特別な人たち)
・赤い服と剣を持っている人がいたらダッシュで逃げること。(笑顔にだまされない)
・変な帽子をかぶっている人がいたら目を合わせないこと。(ボスだから)
アリスが「ここ重要」と言っていた所には線も引いておいた。(私ってまじめ!)
「……変な帽子ってどんな帽子なんだろう?」
ノートを見直しながら首を傾げる。
まぁいいや。アリスもナイトメアも変な帽子、という表現しかしなかった。見れば「変なの」ってきっとわかるはず。
マフィアのボスだっていうし、きっとダンディで見るからに怖そうなおじさまなんだろう。(葉巻とか吸っちゃてるんだろうな)
赤い服と剣を持っている人っていうのもすごいなぁ。すごく目立ちそう。
でも剣を持っている人がうろうろする世界だもんね。やっぱり怖い所なんだろうな。
「まぁ私一人で外には出ないから、この人たちに会う訳ないよね」
うんうん、とうなずきながら書き出した項目を眺めているとグレイがやってきた。
「名無しさん、何をしているんだ?」
「あぁ、グレイ。今ね、アリスに教わったことを書いてたの。この世界のこと」
グレイにもずいぶん慣れた。
第一印象は「怖そうな人」だったけど今は違う。とにかく面倒見のいいひとだ。
ひたすら仕事をし、ひたすらナイトメアのお世話をしているようだった。
クールでかっこいいのに、そのお世話っぷりはもはやお母さんの域だと思う。何もわからない私のことも気にかけてくれるし。
私の肩越しにノートを覗き込んだグレイは、なるほど、とつぶやいた。
そしてそのまま私の隣の席に座る。
「君はこの国に来てまだ日も浅い。注意した方がいいからな」
その言葉にしっかりと頷くと、隣で彼が微かに笑うのがわかった。
笑った顔を見てみたいなー、と思った時だった。
「名無しさん、ここに付け足してほしいことがあるんだが……」
横から彼の手が伸びてくる。
「ナイトメア様の所に、『甘やかさない』と書いておいてくれ」
すらりと長い指が私のノートの空白を指し示す。
それを見てなんだかドキリとした。この人、指までカッコいいよ。
ドキドキしつつ「あまやかさない」と書き加える。
グレイが言うってことはたぶん重要だ。だから下に線も引いておいた。
「ふふふ。『一応偉い人』か……」
その言葉に隣を見てみると、彼は表情をゆるめていた。
「どうしたの?」
「いや、ナイトメア様は『一応偉い人』という項目がおかしくてね」
「アリスが言ってたの」
「そうか。一応というか、『本当に偉い人』なんだ。そうは見えないかもしれないが」
そうは見えない、と何気にばっさりと上司を切っているけど、彼の言う通りなのでそこはスルーした。
「うん。私も初めはミステリアスだなぁと思ったけど、だいぶ違うんだっていうことがわかってきた。グレイがお母さんみたいだもんね」
「お母さん……」
「なんだかんだ言いながらお世話してるんだもん」
ナイトメアとグレイのやりとりを思い出しながら、つい笑ってしまった。
「グレイこそ、ナイトメアを甘やかさない方がいいんじゃない?」
「痛い所をズバリと突かれたな」
そう言って彼は苦笑した。
「しかし名無しさんもわかるだろう? あの方には俺がなんとかしてやらなくては、と思ってしまうんだ」
「うん、わかる。私もまだここにきて少ししかたってないけど、ナイトメアはなんだか放っておけない感じだもの」
「名無しさんならそう言ってくれると思ったよ」
私を見て優しく笑うグレイ。
うわ、この人こういう風に笑うんだ。
真面目でクールな感じの彼しか見たことなかったけど、今の笑顔はちょっといい。
うっかりときめいてしまった。
落ち着かない鼓動を押さえようとする私をよそに、グレイはいつものクールな表情に戻る。
「さて。そろそろナイトメア様の様子を見てくるか」
「ちゃんと仕事をしてるの?」
「どうだろうな。しっかりと言い聞かせたつもりだが、あまり期待はできないな」
彼はそう言って私を見た。
「すまないな、俺の話につき合わせてしまって」
「え? そんなことないよ。むしろ私の方こそ付き合ってもらっちゃったみたいで……もしかして休憩時間だった?」
「あぁ。おかげで気分転換できたよ」
グレイは小さく口元に笑みを浮かべると、「それじゃあ」と部屋から出て行った。
彼が出て行ってから私は体中の力がどっと抜けた気がした。
私の周りにはいなかったタイプだからかもしれない。こんなにドキドキしているなんて。
「……大人だわ~」
少女漫画で言う憧れの先輩。
きっとそんな感じなんだろう。
私はノートの一番下に
・グレイは少女漫画の先輩(でもお母さん)
という項目を付け足した。
私がこの世界にやってきてから5時間帯くらいが過ぎた。
まだ時間帯という概念も、夜の次に夕方になるのも慣れない。
それでもこの塔の人達にはだいぶ慣れてきた。みんな優しい。
アリスの話によるとここは私の世界とは全く違う上、ファンタジックに見えるのにとてもデンジャラスな場所だという。
彼女も私と同じ境遇らしいが、ハートの国だった頃(意味が分からない)からこの世界にいたらしい。
時計塔に住んでいたけれど、引っ越しでクローバーの塔になったという。(やっぱりよくわからない)
私はアリスに教わったことを、ひとり休憩室でノートに書きだしてみた。
・ここはクローバーの国のクローバーの塔。引っ越ししたばかり。
・クローバーの塔の他にも領地がある。
・これまでの常識は通じないから気をつけること。
・危ないから一人で外にはでないこと。
・私は余所者(アリスも)
・ナイトメアは一応偉い人。心を読まれる上、勝手に夢に出てくることもある。吐血に注意!
・役持ちという人たちがいる。(特別な人たち)
・赤い服と剣を持っている人がいたらダッシュで逃げること。(笑顔にだまされない)
・変な帽子をかぶっている人がいたら目を合わせないこと。(ボスだから)
アリスが「ここ重要」と言っていた所には線も引いておいた。(私ってまじめ!)
「……変な帽子ってどんな帽子なんだろう?」
ノートを見直しながら首を傾げる。
まぁいいや。アリスもナイトメアも変な帽子、という表現しかしなかった。見れば「変なの」ってきっとわかるはず。
マフィアのボスだっていうし、きっとダンディで見るからに怖そうなおじさまなんだろう。(葉巻とか吸っちゃてるんだろうな)
赤い服と剣を持っている人っていうのもすごいなぁ。すごく目立ちそう。
でも剣を持っている人がうろうろする世界だもんね。やっぱり怖い所なんだろうな。
「まぁ私一人で外には出ないから、この人たちに会う訳ないよね」
うんうん、とうなずきながら書き出した項目を眺めているとグレイがやってきた。
「名無しさん、何をしているんだ?」
「あぁ、グレイ。今ね、アリスに教わったことを書いてたの。この世界のこと」
グレイにもずいぶん慣れた。
第一印象は「怖そうな人」だったけど今は違う。とにかく面倒見のいいひとだ。
ひたすら仕事をし、ひたすらナイトメアのお世話をしているようだった。
クールでかっこいいのに、そのお世話っぷりはもはやお母さんの域だと思う。何もわからない私のことも気にかけてくれるし。
私の肩越しにノートを覗き込んだグレイは、なるほど、とつぶやいた。
そしてそのまま私の隣の席に座る。
「君はこの国に来てまだ日も浅い。注意した方がいいからな」
その言葉にしっかりと頷くと、隣で彼が微かに笑うのがわかった。
笑った顔を見てみたいなー、と思った時だった。
「名無しさん、ここに付け足してほしいことがあるんだが……」
横から彼の手が伸びてくる。
「ナイトメア様の所に、『甘やかさない』と書いておいてくれ」
すらりと長い指が私のノートの空白を指し示す。
それを見てなんだかドキリとした。この人、指までカッコいいよ。
ドキドキしつつ「あまやかさない」と書き加える。
グレイが言うってことはたぶん重要だ。だから下に線も引いておいた。
「ふふふ。『一応偉い人』か……」
その言葉に隣を見てみると、彼は表情をゆるめていた。
「どうしたの?」
「いや、ナイトメア様は『一応偉い人』という項目がおかしくてね」
「アリスが言ってたの」
「そうか。一応というか、『本当に偉い人』なんだ。そうは見えないかもしれないが」
そうは見えない、と何気にばっさりと上司を切っているけど、彼の言う通りなのでそこはスルーした。
「うん。私も初めはミステリアスだなぁと思ったけど、だいぶ違うんだっていうことがわかってきた。グレイがお母さんみたいだもんね」
「お母さん……」
「なんだかんだ言いながらお世話してるんだもん」
ナイトメアとグレイのやりとりを思い出しながら、つい笑ってしまった。
「グレイこそ、ナイトメアを甘やかさない方がいいんじゃない?」
「痛い所をズバリと突かれたな」
そう言って彼は苦笑した。
「しかし名無しさんもわかるだろう? あの方には俺がなんとかしてやらなくては、と思ってしまうんだ」
「うん、わかる。私もまだここにきて少ししかたってないけど、ナイトメアはなんだか放っておけない感じだもの」
「名無しさんならそう言ってくれると思ったよ」
私を見て優しく笑うグレイ。
うわ、この人こういう風に笑うんだ。
真面目でクールな感じの彼しか見たことなかったけど、今の笑顔はちょっといい。
うっかりときめいてしまった。
落ち着かない鼓動を押さえようとする私をよそに、グレイはいつものクールな表情に戻る。
「さて。そろそろナイトメア様の様子を見てくるか」
「ちゃんと仕事をしてるの?」
「どうだろうな。しっかりと言い聞かせたつもりだが、あまり期待はできないな」
彼はそう言って私を見た。
「すまないな、俺の話につき合わせてしまって」
「え? そんなことないよ。むしろ私の方こそ付き合ってもらっちゃったみたいで……もしかして休憩時間だった?」
「あぁ。おかげで気分転換できたよ」
グレイは小さく口元に笑みを浮かべると、「それじゃあ」と部屋から出て行った。
彼が出て行ってから私は体中の力がどっと抜けた気がした。
私の周りにはいなかったタイプだからかもしれない。こんなにドキドキしているなんて。
「……大人だわ~」
少女漫画で言う憧れの先輩。
きっとそんな感じなんだろう。
私はノートの一番下に
・グレイは少女漫画の先輩(でもお母さん)
という項目を付け足した。