短編2
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【昼間の街】
昼の街をブラッドと2人で歩くのはかなり貴重な体験だと思う。
珍しく機嫌が良いらしく、「散歩にでも行こう」と彼から誘って来たのだ。
どうせ門を出た途端に機嫌が悪くなるんでしょうと思いつつも、誘われたことが嬉しくてわくわくしてしまった。
本当にお散歩、という感じで私たちはぶらぶらと街までやってきた。
ブラッドは私の隣りをゆっくりと歩きながら、あたりを眺めている。
「そこの公園でアリスとピクニックしたんだよ」
「それは楽しそうだね。羨ましいよ」
「この間このお店でビバルディに会ってびっくりしちゃった」
「それは最悪だったな」
「そういえばディーとダムがよくこの通りで暴れてるけど、あれは放置でいいの?」
「まぁいいんじゃないか?」
隣を歩くブラッドに、私は思いついたことをぺらぺらとしゃべる。
機嫌はそこまで悪くなさそうだが、いつも通りだるだるな彼。
一緒に歩いていてもちょっと目を離すと、いつの間にか一人で紅茶を飲みに行ってしまいそうな気がした。
気づいたら私1人でした、というのが嫌なのでぺらぺらとブラッドにしゃべりかけていたというのもあるけれど、やっぱり今の状況に浮かれていたというのもある。
次から次へと話したいことが出てくるのだ。大した話ではないけれど。
ブラッドといるのは嬉しいし、楽しい。
というわけで、私は適当にしゃべっているが、彼もかなり適当に相槌を返してくる。
唯一しっかりした反応だったのは「あそこのお店はエリオットがよくにんじんクッキーを買ってるお店だよ」と指さした時に「……潰しておくか」とぼそりとつぶやいたことくらいだったと思う。
そんなこんなで、今の所だるだるながらも私の隣りにいるブラッド。
さすがに、いきなりいなくなるということはないだろう。
それでもなんだか心配だったので、ほんの少し立ち寄りたい場所があった時には彼の服の裾をぴっと引っ張って「こっちだよ」と合図するようにした。
意外と素直にそれに従う彼が可愛いとか思っちゃってる私。
思わず笑いそうになりながら歩いていると、不意にブラッドが言った。
「昼の街は退屈だな」
「え?そう??」
なんだか私といることを退屈だと言われたような気がしてちょっとショックを受けてしまう。
「あぁ。健全でなんの面白味もない」
「夜はちがうの?」
「夜は色々な人間の色々な欲望が渦巻いているからね。そういうエネルギーを感じることができて楽しいよ」
「ふぅん」
「名無しさんと一緒じゃなければ、昼間にこうやって歩くのも無理だな」
彼は前を向いたままいつものだるだるな口調でそう言ったけれど、私はなんだか嬉しかった。
しかし、うまく言葉を返せない気まずさがあったので話題を変える。
「あ、ねぇ。ちょっと待って。あのお店見てもいい?」
そう言って私はちょいちょいとブラッドの袖を引っ張った。
しかし、彼は動かなかった。
さっきまでは素直についてきていたので、不思議に思って振り返る。
「名無しさん。さっきから私の服を引っ張っているが、やめてくれないか?」
「え、あ、ごめん。嫌だった?」
「嫌というか、服が伸びる」
うわー、ばっさりだなぁ。
確かに私も犬コロみたいに(可愛くはないけど)ブラッドを引っ張っちゃったけどさぁ。
申し訳なさと気まずさに打ちひしがれていると、ブラッドがすっと私の手を取った。
「どうせならこっちの方がいい」
ばちりと目が合って、心臓がどきんと跳ねた。
一気にドキドキしてくる。
何も言えずに固まっていると、彼はふっと笑った。
「さて。行こうか、名無しさん」
さっきとは逆で、ブラッドに引かれて歩く私。
ただそれだけなのに心臓がうるさかった。
昼間の街のちょっとした出来事。
昼の街をブラッドと2人で歩くのはかなり貴重な体験だと思う。
珍しく機嫌が良いらしく、「散歩にでも行こう」と彼から誘って来たのだ。
どうせ門を出た途端に機嫌が悪くなるんでしょうと思いつつも、誘われたことが嬉しくてわくわくしてしまった。
本当にお散歩、という感じで私たちはぶらぶらと街までやってきた。
ブラッドは私の隣りをゆっくりと歩きながら、あたりを眺めている。
「そこの公園でアリスとピクニックしたんだよ」
「それは楽しそうだね。羨ましいよ」
「この間このお店でビバルディに会ってびっくりしちゃった」
「それは最悪だったな」
「そういえばディーとダムがよくこの通りで暴れてるけど、あれは放置でいいの?」
「まぁいいんじゃないか?」
隣を歩くブラッドに、私は思いついたことをぺらぺらとしゃべる。
機嫌はそこまで悪くなさそうだが、いつも通りだるだるな彼。
一緒に歩いていてもちょっと目を離すと、いつの間にか一人で紅茶を飲みに行ってしまいそうな気がした。
気づいたら私1人でした、というのが嫌なのでぺらぺらとブラッドにしゃべりかけていたというのもあるけれど、やっぱり今の状況に浮かれていたというのもある。
次から次へと話したいことが出てくるのだ。大した話ではないけれど。
ブラッドといるのは嬉しいし、楽しい。
というわけで、私は適当にしゃべっているが、彼もかなり適当に相槌を返してくる。
唯一しっかりした反応だったのは「あそこのお店はエリオットがよくにんじんクッキーを買ってるお店だよ」と指さした時に「……潰しておくか」とぼそりとつぶやいたことくらいだったと思う。
そんなこんなで、今の所だるだるながらも私の隣りにいるブラッド。
さすがに、いきなりいなくなるということはないだろう。
それでもなんだか心配だったので、ほんの少し立ち寄りたい場所があった時には彼の服の裾をぴっと引っ張って「こっちだよ」と合図するようにした。
意外と素直にそれに従う彼が可愛いとか思っちゃってる私。
思わず笑いそうになりながら歩いていると、不意にブラッドが言った。
「昼の街は退屈だな」
「え?そう??」
なんだか私といることを退屈だと言われたような気がしてちょっとショックを受けてしまう。
「あぁ。健全でなんの面白味もない」
「夜はちがうの?」
「夜は色々な人間の色々な欲望が渦巻いているからね。そういうエネルギーを感じることができて楽しいよ」
「ふぅん」
「名無しさんと一緒じゃなければ、昼間にこうやって歩くのも無理だな」
彼は前を向いたままいつものだるだるな口調でそう言ったけれど、私はなんだか嬉しかった。
しかし、うまく言葉を返せない気まずさがあったので話題を変える。
「あ、ねぇ。ちょっと待って。あのお店見てもいい?」
そう言って私はちょいちょいとブラッドの袖を引っ張った。
しかし、彼は動かなかった。
さっきまでは素直についてきていたので、不思議に思って振り返る。
「名無しさん。さっきから私の服を引っ張っているが、やめてくれないか?」
「え、あ、ごめん。嫌だった?」
「嫌というか、服が伸びる」
うわー、ばっさりだなぁ。
確かに私も犬コロみたいに(可愛くはないけど)ブラッドを引っ張っちゃったけどさぁ。
申し訳なさと気まずさに打ちひしがれていると、ブラッドがすっと私の手を取った。
「どうせならこっちの方がいい」
ばちりと目が合って、心臓がどきんと跳ねた。
一気にドキドキしてくる。
何も言えずに固まっていると、彼はふっと笑った。
「さて。行こうか、名無しさん」
さっきとは逆で、ブラッドに引かれて歩く私。
ただそれだけなのに心臓がうるさかった。
昼間の街のちょっとした出来事。