マイペース
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【5.不器用組と時計屋さん】
「わー! ユリウス久しぶりね~!!」
あきれ果てた顔で立っている時計屋さんにアリスが駆け寄っていく。
私はグレイと一緒にナイトメアを捕獲したまま、そんな彼女を見た。
「アリスか。お前、まだこの国にいたのか」
「え、それ酷くない? 私がいたらいけないの?」
「元の世界に帰りたいと言っていただろう、お前」
「ユリウスってば相変わらずよね」
アリスはそう言いながら笑った。
彼の言葉を冷たいと感じるのはどうやらこの場で私だけのようだ。
「ところで一体なんなんだ。私は緊急事態だから来いと言われたんだぞ。緊急どころかくだらないやり取りをしているようにしか見えないが」
アリスに引っ張られる形で私達の元へやってきた時計屋さん。
怪訝な顔でちらりと私とグレイ、そして私達に捕獲されているナイトメアを見た。
「緊急事態に決まっているだろう。こんな雪の塊をあちこちに作られたらかなわないからな」
ナイトメアはそう言って私とグレイの腕を振りほどくと、私達の作った雪だるまをちらりと見やった。っていうかその視線のやり方はかなり傷つくよ?
「というわけで時計屋。お前も何か雪で作ってくれ」
「はぁ?」
「雪まつりをするんだ。この2人に任せると雪だるますら満足に出来上がらないんだぞ?」
ナイトメアは私達の努力の塊である雪だるまをびしぃっと指さした。
「雪だるま?……あれが?」
時計屋さんは顔をしかめながらじぃっと雪だるまを見つめた。
そして、その後私とグレイをちらりと見る。
「どうしたらこんなものが作れるんだ?」とその目が言っている。
いたたまれなくなった私がそっとグレイを見ると、彼はただ一言「耐えろ、名無しさん」とつぶやいた。
「どうだ?なかなかの出来栄えだろう? だから時計屋。お前がここはひとつなにか雪像を……」
「断る」
ナイトメアの言葉を遮って時計屋さんはきっぱりと言った。
「私は忙しいんだ。そんなくだらないことをしている暇はない」
「そう固いことを言うな。いい仕事をするには息抜きも必要だぞ? なぁ、グレイ」
「そうですね、その通りだと思いますが……そのセリフをあなたから聞くと複雑な気分になりますよ、俺は」
ナイトメアの余裕ぶった言い方に、グレイが深いため息をついた。
私はうんうんと頷いてグレイの肩をポンとたたく。
するとアリスが口を開いた。
「別にいいじゃないの。1つくらい作ってみれば。ユリウスって器用だし、そんな大きなものを作らなくたっていいんだから」
その言葉に時計屋さんはアリスをちらりと見る。
すると間髪入れずグレイも続けた。
「時計屋。小さなものを一つでいいんだ。それでナイトメア様の気は済むはずだ。気が済めばナイトメア様も仕事をいくらかしてくれるだろう。俺からも頼む」
「トカゲ。お前、これ以上こいつを甘やかすのはやめた方がいいぞ」
そう言いつつも、アリスとグレイに頼まれた時計屋さんは、さすがに考え込んでいるようだった。
するとアリスが私の服の裾を引っ張り、耳元でこそっとささやいた。
「あともうひと押しよ!名無しさんも何か言って!」
「え!? 私?」
いや、無理だよ。だって私は彼とはほぼ初対面だし……
そう思ったけれど、グレイもじっと私を見つめてきた。
「何か言ってくれ」。彼の目はそう言っている。
……。
「え、えぇと。私も手伝うんで……お願いします」
ものすごくドキドキしながらそう言った。(だって時計屋さんは怖いし)
すると時計屋さんはちらりと私見る。
「お前とトカゲに手伝われたら、余計な仕事が増えそうだな」
「!」
ガーン。
いきなりそう言いやがりましたよ、この人。
そりゃあ私は不器用ですが、ほぼ初対面の人にそんな言い方って……。
ショックでふらりとする私の肩をグレイが支える。
「……時計屋」
「ちょっとユリウス!名無しさんはあなたの毒舌に免疫がまだないんだから、そんな言い方しちゃだめよ」
グレイとアリスが時計屋さんをたしなめる。
すると時計屋さんはため息をついた。
「はぁ……仕方ないな」
彼がそう言った。
「手伝うくらいならしてやる。お前達の壊滅的な作品を普通くらいにはできるだろう」
「なにかと一言多いわよね、ユリウスって」
顔をしかめるアリスと、苦笑するグレイ。
私はというと、無意識のうちにアリスの言葉に大きくうなずいていた。
ほんとにこの人、一言多い。しかも怖いし。
そう思いながらふと彼を見ると、向こうも私を見ていた。
バチリと合ってしまった視線。
はっとしてうなずいていた首を止める。
「……一言多くて悪かったな」
彼は気まずそうに言いながらふいっと横を向いてしまった。
予想外の反応に驚いてしまう。
「あ、珍しく反省してるみたい」
アリスが楽しそうにそう言った。
「そりゃああれだけ名無しさんにうなずかれたら反省もするだろうな」
ナイトメアも笑っている。
時計屋さんはというと顔をそむけたまま「うるさい」と一言。
なんだか不思議な状況にぼんやりしていると、グレイが私の肩をぽんとたたいた。
「それほど悪い奴じゃないだろう? 名無しさん、仲良くしてやってくれ」
「う、うん」
グレイにそう言われて思わずうなずいた私。
「余計なお世話だ、トカゲ」
彼はそう言ってグレイをじろりと見ると、さっさとクローバーの塔に向かって歩き出してしまった。
そんな彼の背中を見送りながら、アリスとナイトメアがくすくすと笑いだす。
「ほんと、素直じゃないわよね」
「全くだ。ひねくれ者にもほどがっ……は、はくしょん!! うぅ、寒い! 寒すぎるぞ!!」
「当り前です。そんな薄着で外に出てくるからですよ。さ、俺たちも中に戻りましょう」
グレイの言葉に、アリスたちもユリウスの後を追って塔へ歩き出す。
「うぅ……なんだか急に具合が……うっ……!!」
「ここで吐血はしないでくださいよ? 赤く染まる雪なんて名無しさんやアリスには刺激が強いですから」
「そうよ、そんなもの見たくないわ」
「うぅ……ひどい。お前達、もっと私をいたわってくれ」
そんな賑やかなやり取りをしていたナイトメアたち。
その少し前を歩いていた時計屋さんがふっと振り返った。
「日頃の行いじゃないか?」
「時計屋、お前そんなずばりと言わなくても……」
「今回ばかりは俺も時計屋に賛同です」
「私もよ」
「うぅ……ほんとにひどい。お前達全員冷たすぎる!!」
なんだかめちゃくちゃな感じで時計屋さんも含めてみんなでクローバーの塔に戻っていく。
「……濃いなぁ」
彼らを見送りながら、思わずつぶやいた私にアリスが振り向いて声をかける。
「名無しさん~!どうしたの?」
「ううん、なんでもない」
そう答えて、私は4人の元へ駆けて行った。
「わー! ユリウス久しぶりね~!!」
あきれ果てた顔で立っている時計屋さんにアリスが駆け寄っていく。
私はグレイと一緒にナイトメアを捕獲したまま、そんな彼女を見た。
「アリスか。お前、まだこの国にいたのか」
「え、それ酷くない? 私がいたらいけないの?」
「元の世界に帰りたいと言っていただろう、お前」
「ユリウスってば相変わらずよね」
アリスはそう言いながら笑った。
彼の言葉を冷たいと感じるのはどうやらこの場で私だけのようだ。
「ところで一体なんなんだ。私は緊急事態だから来いと言われたんだぞ。緊急どころかくだらないやり取りをしているようにしか見えないが」
アリスに引っ張られる形で私達の元へやってきた時計屋さん。
怪訝な顔でちらりと私とグレイ、そして私達に捕獲されているナイトメアを見た。
「緊急事態に決まっているだろう。こんな雪の塊をあちこちに作られたらかなわないからな」
ナイトメアはそう言って私とグレイの腕を振りほどくと、私達の作った雪だるまをちらりと見やった。っていうかその視線のやり方はかなり傷つくよ?
「というわけで時計屋。お前も何か雪で作ってくれ」
「はぁ?」
「雪まつりをするんだ。この2人に任せると雪だるますら満足に出来上がらないんだぞ?」
ナイトメアは私達の努力の塊である雪だるまをびしぃっと指さした。
「雪だるま?……あれが?」
時計屋さんは顔をしかめながらじぃっと雪だるまを見つめた。
そして、その後私とグレイをちらりと見る。
「どうしたらこんなものが作れるんだ?」とその目が言っている。
いたたまれなくなった私がそっとグレイを見ると、彼はただ一言「耐えろ、名無しさん」とつぶやいた。
「どうだ?なかなかの出来栄えだろう? だから時計屋。お前がここはひとつなにか雪像を……」
「断る」
ナイトメアの言葉を遮って時計屋さんはきっぱりと言った。
「私は忙しいんだ。そんなくだらないことをしている暇はない」
「そう固いことを言うな。いい仕事をするには息抜きも必要だぞ? なぁ、グレイ」
「そうですね、その通りだと思いますが……そのセリフをあなたから聞くと複雑な気分になりますよ、俺は」
ナイトメアの余裕ぶった言い方に、グレイが深いため息をついた。
私はうんうんと頷いてグレイの肩をポンとたたく。
するとアリスが口を開いた。
「別にいいじゃないの。1つくらい作ってみれば。ユリウスって器用だし、そんな大きなものを作らなくたっていいんだから」
その言葉に時計屋さんはアリスをちらりと見る。
すると間髪入れずグレイも続けた。
「時計屋。小さなものを一つでいいんだ。それでナイトメア様の気は済むはずだ。気が済めばナイトメア様も仕事をいくらかしてくれるだろう。俺からも頼む」
「トカゲ。お前、これ以上こいつを甘やかすのはやめた方がいいぞ」
そう言いつつも、アリスとグレイに頼まれた時計屋さんは、さすがに考え込んでいるようだった。
するとアリスが私の服の裾を引っ張り、耳元でこそっとささやいた。
「あともうひと押しよ!名無しさんも何か言って!」
「え!? 私?」
いや、無理だよ。だって私は彼とはほぼ初対面だし……
そう思ったけれど、グレイもじっと私を見つめてきた。
「何か言ってくれ」。彼の目はそう言っている。
……。
「え、えぇと。私も手伝うんで……お願いします」
ものすごくドキドキしながらそう言った。(だって時計屋さんは怖いし)
すると時計屋さんはちらりと私見る。
「お前とトカゲに手伝われたら、余計な仕事が増えそうだな」
「!」
ガーン。
いきなりそう言いやがりましたよ、この人。
そりゃあ私は不器用ですが、ほぼ初対面の人にそんな言い方って……。
ショックでふらりとする私の肩をグレイが支える。
「……時計屋」
「ちょっとユリウス!名無しさんはあなたの毒舌に免疫がまだないんだから、そんな言い方しちゃだめよ」
グレイとアリスが時計屋さんをたしなめる。
すると時計屋さんはため息をついた。
「はぁ……仕方ないな」
彼がそう言った。
「手伝うくらいならしてやる。お前達の壊滅的な作品を普通くらいにはできるだろう」
「なにかと一言多いわよね、ユリウスって」
顔をしかめるアリスと、苦笑するグレイ。
私はというと、無意識のうちにアリスの言葉に大きくうなずいていた。
ほんとにこの人、一言多い。しかも怖いし。
そう思いながらふと彼を見ると、向こうも私を見ていた。
バチリと合ってしまった視線。
はっとしてうなずいていた首を止める。
「……一言多くて悪かったな」
彼は気まずそうに言いながらふいっと横を向いてしまった。
予想外の反応に驚いてしまう。
「あ、珍しく反省してるみたい」
アリスが楽しそうにそう言った。
「そりゃああれだけ名無しさんにうなずかれたら反省もするだろうな」
ナイトメアも笑っている。
時計屋さんはというと顔をそむけたまま「うるさい」と一言。
なんだか不思議な状況にぼんやりしていると、グレイが私の肩をぽんとたたいた。
「それほど悪い奴じゃないだろう? 名無しさん、仲良くしてやってくれ」
「う、うん」
グレイにそう言われて思わずうなずいた私。
「余計なお世話だ、トカゲ」
彼はそう言ってグレイをじろりと見ると、さっさとクローバーの塔に向かって歩き出してしまった。
そんな彼の背中を見送りながら、アリスとナイトメアがくすくすと笑いだす。
「ほんと、素直じゃないわよね」
「全くだ。ひねくれ者にもほどがっ……は、はくしょん!! うぅ、寒い! 寒すぎるぞ!!」
「当り前です。そんな薄着で外に出てくるからですよ。さ、俺たちも中に戻りましょう」
グレイの言葉に、アリスたちもユリウスの後を追って塔へ歩き出す。
「うぅ……なんだか急に具合が……うっ……!!」
「ここで吐血はしないでくださいよ? 赤く染まる雪なんて名無しさんやアリスには刺激が強いですから」
「そうよ、そんなもの見たくないわ」
「うぅ……ひどい。お前達、もっと私をいたわってくれ」
そんな賑やかなやり取りをしていたナイトメアたち。
その少し前を歩いていた時計屋さんがふっと振り返った。
「日頃の行いじゃないか?」
「時計屋、お前そんなずばりと言わなくても……」
「今回ばかりは俺も時計屋に賛同です」
「私もよ」
「うぅ……ほんとにひどい。お前達全員冷たすぎる!!」
なんだかめちゃくちゃな感じで時計屋さんも含めてみんなでクローバーの塔に戻っていく。
「……濃いなぁ」
彼らを見送りながら、思わずつぶやいた私にアリスが振り向いて声をかける。
「名無しさん~!どうしたの?」
「ううん、なんでもない」
そう答えて、私は4人の元へ駆けて行った。
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