短編2
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【賑やかな重鎮達】
いつも通りのいい天気。
今は昼。
散歩にやってきた私の目の前には、綺麗な青い空と白い雲。
そして、綺麗な湖と緑の山々。
こんな場所があったんだ、と感動していると湖の上を優雅にボートが進んでいくのが見えた。
わー、なんか楽しそう。いいなー。
男の人2人と、女の人2人が乗っている。
あらあら、仲良くダブルデート的な感じ?
いいないいなぁ~。
なんて思いながら見ていると、彼らはなんだか見覚えのある人のような気がする。
「……ま、まさかね」
私はごくりと息をのんだ。
私の見間違い?
うん、見間違いだよね。
……見間違いだと思うのだけれど、優雅なボート上は何かもめている気配。ちょっとぐらぐらしている。
あんなシチュエーションでもめるような人々と言えば、彼らしかいない。
赤いドレスにパラソルをさしている女性、青い服を着た少女、長いうさぎ耳とめがね、大きな剣を持っている人……。
あぁ、間違いない。
これは急いで隠れてこっそりと観察しなければ!!
アリスのイベント発生中だと喜んだ瞬間に、彼らは私に気づいたらしい。
「あ、名無しさん? 名無しさん~!!」
青い服の少女アリスが私ににこにこと手を振ってきた。
か、可愛い!
やっぱりアリスは可愛い!
見つかっちゃったのは残念だけど、嬉しくなって手を振り返そうとした時だった。
彼女の乗ったボートが先ほどにもましてぐらぐらと揺れだした。
うわ~、あれだけ揺れてたら誰か落ちるんじゃないかなぁ。
他人事ながらも心配する私の耳に、やんややんやと騒ぐ声が聞こえてくる。
そして、ビバルディがすっと立ち上がって私に手を振った。(危ないです陛下!)
「おぉ久しぶりだな、名無しさん。 お前たち、さっさと名無しさんの元へと船を漕がんか」
「いきなり立ち上がらないでくださいよ!アリスが落ちたらどうするんですか。
それに僕は漕いでますよ、さっきから。陛下が今ここで降りてくだされば、もっと早く漕げます」
「あはは! やだな、ペーターさんてば。いくら陛下が重いからって正直すぎるよ」
「じゃあ君が降りてもいいんですよ、エース君」
「えぇ? 俺は嫌だぜ。今は泳ぎたい気分じゃない。それに今服を濡らしたら、陸に上がってから名無しさんを抱きしめられないだろ」
「……お前ら2人とも今すぐ降りろ。いや、わらわが突き落としてやる」
女王と宰相、そして騎士が一見平和そうに(?)、でも確実に火花を散らしていた。
アリスに振ろうとした手が止まり、思わず苦笑いしてしまう私。
ボートを岸部に何とかつけて、陸に上がった彼らは相変わらず大騒ぎだった。
「まったく、こいつらときたらちっとも役に立たん。ボートも満足に漕げんとはな」
「ですから、陛下がいなければもっと早く漕げたんです。というよりも、僕はアリスのためだけに漕ぎたいんです。今度は2人だけでボートに乗りましょうね、アリス」
「……遠慮しておくわ」
「あはは。振られちゃったね、ペーターさん」
明るく笑うエース。
爽やかな笑顔なのに、悪気があります・からかいます、っていうのがすぐにわかるのはどうしてだろう?
アリスには思いっきり甘い声で囁いていたペーターも、人が変わったかのように冷たく光る赤い瞳でエースを睨みつけていた。
「大体こういう力仕事は体力しかとりえのない、エース君のような人にやらせるべきなんです」
「ははっ、ペーターさんは体力ないからなぁ。すぐにへばっちゃうなんて、女の子にも失礼なんじゃないかな。な?アリス」
「……そんなの知らないわよ」
「え? でも、やっぱりすぐにへばっちゃう男よりもさぁ……」
「……お前、なんの話をしておるのだ」
「やだなぁ、陛下ってば言わせる気ですか?」
「名無しさんの前で下品なことを言ったら首を刎ねてやろう」
「え、それは嫌ですよ」
……うわ~……お城の人たちってこの手の話ばっかりしてるのかな~(アリスが毒されちゃう)
呆れている私に気づいたアリスが、私の肩に手を置く。
「ごめんね、名無しさん。全部聞き流してちょうだい」
「……アリス、すごい人達に囲まれて生活しているんだね」
「私も遊園地に行けばよかったかしら」
「う~ん……まぁ、ここよりはまともかもしれない、かも?」
これはこれで楽しそうだけど。(でも、ちょっとなぁ)
うーむ、と考える私にビバルディが艶やかな微笑みを向ける。
「名無しさん、お前も今度は一緒にボートに乗ろう」
「え? いいの!?」
「もちろん。お前とアリスとわらわの3人で楽しくおしゃべりをしながらボートに乗るのだ」
「うわ~、いいねいいね!」
「楽しそう!」
女子3人が盛り上がる。
「だったら、私がボートを漕いであげるね!1度やってみたかったんだぁ」
ウキウキしながら言った私の提案に、ビバルディは綺麗な顔をしかめた。
「名無しさん、そういう疲れることは、体力しか取り柄のない男どもにさせれば良いのだぞ。可愛いお前がそんなことをする必要などない」
「でも、1度も漕いだことないからちょっとやってみたいの」
「名無しさんが漕ぐなら、俺が手伝いますよ陛下」
「いいえ、僕が手伝います。エースくんに漕がせたって同じところをぐるぐる回るだけですからね」
「えー、でも知能派のペーターさんに漕がせるなんて心苦しいぜ。
こういう力仕事は、体力だけが取り柄の俺がやるよ」
お? これはペーターが一本取られたんじゃないかな。
「あなたをアリスや名無しさんと同じボートに乗せるだなんて絶対に許しません。女王陛下が一緒というだけで危ないのに、エースくんも加わるなんて2人が危険すぎます」
「何を言ってるんだよペーターさん。俺は危険じゃないぜ。危険から名無しさんとアリスを守る騎士だ。あ、余裕があれば陛下のことも助けますね」
「アリスと名無しさんを守るのは僕です! エースくんは陛下を命がけで守ってください。それが仕事でしょう」
あーだこーだ言っているエースとペーターに、ビバルディのイライラがどんどん高まってきたようだった。
私とアリスは顔を見合わせて、3人から少し距離を取る。
ビバルディは差していた日傘を閉じたかと思うと、びしぃっ!と男2人に向けた。
「えぇい騒がしいっ!誰がお前らを乗せると言った? 口うるさくて役に立たんお前らなど乗せないに決まっておるだろう」
「えぇ~? なんでですか? ボートの漕ぎ手が必要なんですよね? 僕が漕ぎますよ」
「そんなもの顔なしにやらせればよい。お前らは城で留守番じゃ。仕事をたっぷり押し付けてやる」
「ははは。横暴だなぁ。そんな怖い顔してると、しわが増えますよ」
「……本当に首を刎ねられたいようだな、お前は」
すっと目を細めたビバルディと、相変わらず爽やかなエース。
ペーターはペーターで、文句をぐだぐだ言っている。
本当に本当ににぎやかな人たちだ。
お城の偉い人だとは思えない。
思わずアリスを見ると、彼女も私を見て苦笑いをした。
「名無しさん、いつものことだから気にしないでね」
「うん……でも私ボートに乗るのやめておこうかな」
「それが一番平和かもしれないわね」
賑やかなお城の重鎮達を見ながら、私とアリスは乾いた笑みを浮かべた。
天気のいい昼の出来事。
いつも通りのいい天気。
今は昼。
散歩にやってきた私の目の前には、綺麗な青い空と白い雲。
そして、綺麗な湖と緑の山々。
こんな場所があったんだ、と感動していると湖の上を優雅にボートが進んでいくのが見えた。
わー、なんか楽しそう。いいなー。
男の人2人と、女の人2人が乗っている。
あらあら、仲良くダブルデート的な感じ?
いいないいなぁ~。
なんて思いながら見ていると、彼らはなんだか見覚えのある人のような気がする。
「……ま、まさかね」
私はごくりと息をのんだ。
私の見間違い?
うん、見間違いだよね。
……見間違いだと思うのだけれど、優雅なボート上は何かもめている気配。ちょっとぐらぐらしている。
あんなシチュエーションでもめるような人々と言えば、彼らしかいない。
赤いドレスにパラソルをさしている女性、青い服を着た少女、長いうさぎ耳とめがね、大きな剣を持っている人……。
あぁ、間違いない。
これは急いで隠れてこっそりと観察しなければ!!
アリスのイベント発生中だと喜んだ瞬間に、彼らは私に気づいたらしい。
「あ、名無しさん? 名無しさん~!!」
青い服の少女アリスが私ににこにこと手を振ってきた。
か、可愛い!
やっぱりアリスは可愛い!
見つかっちゃったのは残念だけど、嬉しくなって手を振り返そうとした時だった。
彼女の乗ったボートが先ほどにもましてぐらぐらと揺れだした。
うわ~、あれだけ揺れてたら誰か落ちるんじゃないかなぁ。
他人事ながらも心配する私の耳に、やんややんやと騒ぐ声が聞こえてくる。
そして、ビバルディがすっと立ち上がって私に手を振った。(危ないです陛下!)
「おぉ久しぶりだな、名無しさん。 お前たち、さっさと名無しさんの元へと船を漕がんか」
「いきなり立ち上がらないでくださいよ!アリスが落ちたらどうするんですか。
それに僕は漕いでますよ、さっきから。陛下が今ここで降りてくだされば、もっと早く漕げます」
「あはは! やだな、ペーターさんてば。いくら陛下が重いからって正直すぎるよ」
「じゃあ君が降りてもいいんですよ、エース君」
「えぇ? 俺は嫌だぜ。今は泳ぎたい気分じゃない。それに今服を濡らしたら、陸に上がってから名無しさんを抱きしめられないだろ」
「……お前ら2人とも今すぐ降りろ。いや、わらわが突き落としてやる」
女王と宰相、そして騎士が一見平和そうに(?)、でも確実に火花を散らしていた。
アリスに振ろうとした手が止まり、思わず苦笑いしてしまう私。
ボートを岸部に何とかつけて、陸に上がった彼らは相変わらず大騒ぎだった。
「まったく、こいつらときたらちっとも役に立たん。ボートも満足に漕げんとはな」
「ですから、陛下がいなければもっと早く漕げたんです。というよりも、僕はアリスのためだけに漕ぎたいんです。今度は2人だけでボートに乗りましょうね、アリス」
「……遠慮しておくわ」
「あはは。振られちゃったね、ペーターさん」
明るく笑うエース。
爽やかな笑顔なのに、悪気があります・からかいます、っていうのがすぐにわかるのはどうしてだろう?
アリスには思いっきり甘い声で囁いていたペーターも、人が変わったかのように冷たく光る赤い瞳でエースを睨みつけていた。
「大体こういう力仕事は体力しかとりえのない、エース君のような人にやらせるべきなんです」
「ははっ、ペーターさんは体力ないからなぁ。すぐにへばっちゃうなんて、女の子にも失礼なんじゃないかな。な?アリス」
「……そんなの知らないわよ」
「え? でも、やっぱりすぐにへばっちゃう男よりもさぁ……」
「……お前、なんの話をしておるのだ」
「やだなぁ、陛下ってば言わせる気ですか?」
「名無しさんの前で下品なことを言ったら首を刎ねてやろう」
「え、それは嫌ですよ」
……うわ~……お城の人たちってこの手の話ばっかりしてるのかな~(アリスが毒されちゃう)
呆れている私に気づいたアリスが、私の肩に手を置く。
「ごめんね、名無しさん。全部聞き流してちょうだい」
「……アリス、すごい人達に囲まれて生活しているんだね」
「私も遊園地に行けばよかったかしら」
「う~ん……まぁ、ここよりはまともかもしれない、かも?」
これはこれで楽しそうだけど。(でも、ちょっとなぁ)
うーむ、と考える私にビバルディが艶やかな微笑みを向ける。
「名無しさん、お前も今度は一緒にボートに乗ろう」
「え? いいの!?」
「もちろん。お前とアリスとわらわの3人で楽しくおしゃべりをしながらボートに乗るのだ」
「うわ~、いいねいいね!」
「楽しそう!」
女子3人が盛り上がる。
「だったら、私がボートを漕いであげるね!1度やってみたかったんだぁ」
ウキウキしながら言った私の提案に、ビバルディは綺麗な顔をしかめた。
「名無しさん、そういう疲れることは、体力しか取り柄のない男どもにさせれば良いのだぞ。可愛いお前がそんなことをする必要などない」
「でも、1度も漕いだことないからちょっとやってみたいの」
「名無しさんが漕ぐなら、俺が手伝いますよ陛下」
「いいえ、僕が手伝います。エースくんに漕がせたって同じところをぐるぐる回るだけですからね」
「えー、でも知能派のペーターさんに漕がせるなんて心苦しいぜ。
こういう力仕事は、体力だけが取り柄の俺がやるよ」
お? これはペーターが一本取られたんじゃないかな。
「あなたをアリスや名無しさんと同じボートに乗せるだなんて絶対に許しません。女王陛下が一緒というだけで危ないのに、エースくんも加わるなんて2人が危険すぎます」
「何を言ってるんだよペーターさん。俺は危険じゃないぜ。危険から名無しさんとアリスを守る騎士だ。あ、余裕があれば陛下のことも助けますね」
「アリスと名無しさんを守るのは僕です! エースくんは陛下を命がけで守ってください。それが仕事でしょう」
あーだこーだ言っているエースとペーターに、ビバルディのイライラがどんどん高まってきたようだった。
私とアリスは顔を見合わせて、3人から少し距離を取る。
ビバルディは差していた日傘を閉じたかと思うと、びしぃっ!と男2人に向けた。
「えぇい騒がしいっ!誰がお前らを乗せると言った? 口うるさくて役に立たんお前らなど乗せないに決まっておるだろう」
「えぇ~? なんでですか? ボートの漕ぎ手が必要なんですよね? 僕が漕ぎますよ」
「そんなもの顔なしにやらせればよい。お前らは城で留守番じゃ。仕事をたっぷり押し付けてやる」
「ははは。横暴だなぁ。そんな怖い顔してると、しわが増えますよ」
「……本当に首を刎ねられたいようだな、お前は」
すっと目を細めたビバルディと、相変わらず爽やかなエース。
ペーターはペーターで、文句をぐだぐだ言っている。
本当に本当ににぎやかな人たちだ。
お城の偉い人だとは思えない。
思わずアリスを見ると、彼女も私を見て苦笑いをした。
「名無しさん、いつものことだから気にしないでね」
「うん……でも私ボートに乗るのやめておこうかな」
「それが一番平和かもしれないわね」
賑やかなお城の重鎮達を見ながら、私とアリスは乾いた笑みを浮かべた。
天気のいい昼の出来事。