マイペース
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【4.雪遊び】
冬の生活にもだいぶ慣れてきた。
今私は、グレイと一緒に雪だるまを作っている。
「……どうだろうか?」
「……どうだろうもなにも、失敗じゃない?」
私とグレイは今出来上がった雪だるまの前に立ち尽くす。
雪だるまを作ろうと思ったのに、まるでよくわからないものが出来上がってしまった。
「……目の位置が悪いのか?」
「いや、目とかそういう問題じゃなくて、形がすでにおかしいんだよね」
丸を2つ作って乗せるだけだと思っていたのに、こんなにも苦労するとは思わなかった。
私も不器用だが、グレイも相当だ。
「グレイは器用だと信じてたのに……」
「それはお互い様だろう」
「ですね」
私とグレイは力なく笑う。
ナイトメアが『雪まつりをするぞー!』と思いつきで声高らかに宣言したのはついさっき。
「とりあえずグレイ。なんか作れ」と言われた部下に拒否権はなかった。
おもしろそう!と付き合った私だったけれど、不運なことに私もグレイも不器用だった。
雪だるますら満足に作れない私達……。
「こんなんじゃ雪まつりなんて絶対無理だよ」
「……ナイトメア様の発案を全力で阻止した方が良さそうだな」
私たちが無言でうなずき合った時だった。
「名無しさん! グレイ!」
その声に振り返ると、ポンチョを着たアリスがにこにことやってくるのが見えた。
「わ!アリスだー!」
一気にテンションの上がった私はぶんぶんと彼女に手を振る。
季節が変わってから彼女に会うのは初めてだ。
「寒いわねー! さすが冬!」
アリスはそう言いながらも、雪が嬉しいのかにこにこしている。
「もしかして雪かきしてたの? これだけ雪が降っていたら大変よね」
「え?」
「でも、こんな道の真ん中に雪を寄せるよりも、ちゃんと脇に寄せた方がいいんじゃない?」
アリスは私とグレイが作った雪だるま(一応)を見ながらくすくす笑った。
「あら、ボタンがまぎれこんでるわね」とか言いながら。
ごめん、それ目なんです。
私とグレイは、いたたまれない気持ちでちらりとお互いを見る。
一瞬のアイコンタクト。
『これは雪だるまですと言うのはやめよう』
お互いにはっきりと意思疎通できたのがすごいと思う。
私達は小さくうなずき合った。
すぐにグレイが口を開いた。
「アリス、君の滞在地は春だったな」
「えぇ。ぽかぽかですごく気持ちいい季節だから、この冬の寒さが身に染みるわ」
グレイの話題にアリスはすんなりと乗ってくる。
「風邪ひいたら大変だし、とりあえず塔に入らない?」
雪だるま(一応)から彼女を遠ざけようとそう提案すると、アリスはこう言った。
「うん。実はね、ユリウスに会いに来たのよ」
「ユリウス? ってあの時計屋さん?」
「そう。ここのドアとつながったって聞いたから、久しぶりに会おうと思って」
「そっか。アリスは時計屋さんと前から知り合いだったんだ?」
「えぇ。初めてこの国に来た時は時計塔に落とされたからね。ほんと、あの時のユリウスは最高に怖くて感じ悪い人だったわ~」
懐かしむような言い方をする彼女。
私は今現在「怖くて感じ悪い人」という印象しかないけど。
「どう? 相変わらずユリウスは引き籠っているの?」
「あぁ。俺はまだ会っていない」
「え、そうなの? じゃあせっかくだし一緒に会いに行く?名無しさんも一緒に3人で」
「いや、遠慮しておこう。俺が行ったところであいつが喜ぶとは思えないからな」
「私も知り合いっていう訳じゃないから……」
アリスの提案にグレイと私が丁重にお断りした時だった。
「おー、アリスじゃないか! 来てたのか!」
呑気なナイトメアの声が聞こえた。
隣りのグレイがはっと息を飲む。
「!? ナイトメア様!」
どうしてあんな薄着で外へ出てくるんだあの人は、とグレイがつぶやいた。
完全防備の私達に対して、ナイトメアは塔の中と変わらない姿だったのだ。
グレイの心配をよそに、ナイトメアはご機嫌で雪の上をトコトコ歩いてくる。
「久しぶりだな、アリス!」
「えぇ。久しぶり。あなたは相変わらず不健康そうね。っていうか厚着しなさいよ」
「別に外で遊ぶわけじゃない。ただ君たち3人の姿が見えたから楽しそうだなぁと思って」
ナイトメアはそう言いながら、私とグレイを見た。
「どうだ、お前達。何か傑作はできたか?」
「え、いえ、その……」
「そうか、雪だるまをまず作ってみると言っていたな。で? どうだ?できたのか?」
「まだこれからだよ、うん。これから」
私はそう言いながらさりげなく雪だるま(一応)を背中に隠す様に立ち位置を変える。
するとそういう時ばかり鋭いナイトメアが、私の後ろを覗き込むように見た。
「ん~? もしかして、このぐちゃっとした山が雪だるまだとでもいうんじゃないだろうな?」
「え?」
ナイトメアの言葉にアリスが声を上げる。
「このボタンが目だろう? グレイが不器用なのは知っていたが、名無しさん、君もなかなかだな!どうしたらこんなことになるんだ?」
「ゆ、雪だるま……だったの?」
楽しそうに笑うナイトメアと唖然とするアリス。
私とグレイはため息をついた。
そして、また瞬時に目配せをする。
「あ、ナイトメア。なんだか顔色がものすごく悪いよ? 大丈夫? 熱でもあるんじゃない?」
「え、いや、今日はすこぶる体調がいいぞ」
「ダメだよ。きっと熱があるから冷やさないと。とりあえずこの雪で冷やそう!」
私はさっと雪を掬い取ると彼のおでこにぎゅっと押し当てる。
「わ!? ちょっ……名無しさん!! やめろっ! 冷たいっ!死ぬっ!」
ぎゃーぎゃー騒ぐナイトメアの隣りにさっとついたグレイが冷静にこう言った。
「死ぬ? それは大変ですナイトメア様。気をしっかりと持ってください。どう見ても体調が悪そうです。唇の色もおかしいです。さ、薬でも飲んで寝ましょう」
「え!? さっき無理やりお前が飲ませたじゃないか! あれは1日1回でいい薬だって……」
「あれはあれ。これはこれです」
「そうそう。アレはアレ。コレはコレだよ」
「嘘だ!なんだかお前達おかしいぞ!? 私をはめようとしていないか?!」
暴れるナイトメアを私とグレイで両側からがしりと掴んだ。
「してませんよ。なぁ、名無しさん」
「うんうん。してません」
「ちょ、ちょっと待て! 雪像づくりはお前たちだけじゃ心配だったから、私が強力な助っ人を呼んできてやったんだぞ!?」
「強力な助っ人?」
その言葉にぴたりと止まる私達。
すると、アリスが声を上げた。
「ユリウス!」
見ると塔の入り口で心底呆れた顔をした時計屋さんが立っていた。
「……一体なんなんだ」
彼は眉間にしわを寄せてそう言った。
冬の生活にもだいぶ慣れてきた。
今私は、グレイと一緒に雪だるまを作っている。
「……どうだろうか?」
「……どうだろうもなにも、失敗じゃない?」
私とグレイは今出来上がった雪だるまの前に立ち尽くす。
雪だるまを作ろうと思ったのに、まるでよくわからないものが出来上がってしまった。
「……目の位置が悪いのか?」
「いや、目とかそういう問題じゃなくて、形がすでにおかしいんだよね」
丸を2つ作って乗せるだけだと思っていたのに、こんなにも苦労するとは思わなかった。
私も不器用だが、グレイも相当だ。
「グレイは器用だと信じてたのに……」
「それはお互い様だろう」
「ですね」
私とグレイは力なく笑う。
ナイトメアが『雪まつりをするぞー!』と思いつきで声高らかに宣言したのはついさっき。
「とりあえずグレイ。なんか作れ」と言われた部下に拒否権はなかった。
おもしろそう!と付き合った私だったけれど、不運なことに私もグレイも不器用だった。
雪だるますら満足に作れない私達……。
「こんなんじゃ雪まつりなんて絶対無理だよ」
「……ナイトメア様の発案を全力で阻止した方が良さそうだな」
私たちが無言でうなずき合った時だった。
「名無しさん! グレイ!」
その声に振り返ると、ポンチョを着たアリスがにこにことやってくるのが見えた。
「わ!アリスだー!」
一気にテンションの上がった私はぶんぶんと彼女に手を振る。
季節が変わってから彼女に会うのは初めてだ。
「寒いわねー! さすが冬!」
アリスはそう言いながらも、雪が嬉しいのかにこにこしている。
「もしかして雪かきしてたの? これだけ雪が降っていたら大変よね」
「え?」
「でも、こんな道の真ん中に雪を寄せるよりも、ちゃんと脇に寄せた方がいいんじゃない?」
アリスは私とグレイが作った雪だるま(一応)を見ながらくすくす笑った。
「あら、ボタンがまぎれこんでるわね」とか言いながら。
ごめん、それ目なんです。
私とグレイは、いたたまれない気持ちでちらりとお互いを見る。
一瞬のアイコンタクト。
『これは雪だるまですと言うのはやめよう』
お互いにはっきりと意思疎通できたのがすごいと思う。
私達は小さくうなずき合った。
すぐにグレイが口を開いた。
「アリス、君の滞在地は春だったな」
「えぇ。ぽかぽかですごく気持ちいい季節だから、この冬の寒さが身に染みるわ」
グレイの話題にアリスはすんなりと乗ってくる。
「風邪ひいたら大変だし、とりあえず塔に入らない?」
雪だるま(一応)から彼女を遠ざけようとそう提案すると、アリスはこう言った。
「うん。実はね、ユリウスに会いに来たのよ」
「ユリウス? ってあの時計屋さん?」
「そう。ここのドアとつながったって聞いたから、久しぶりに会おうと思って」
「そっか。アリスは時計屋さんと前から知り合いだったんだ?」
「えぇ。初めてこの国に来た時は時計塔に落とされたからね。ほんと、あの時のユリウスは最高に怖くて感じ悪い人だったわ~」
懐かしむような言い方をする彼女。
私は今現在「怖くて感じ悪い人」という印象しかないけど。
「どう? 相変わらずユリウスは引き籠っているの?」
「あぁ。俺はまだ会っていない」
「え、そうなの? じゃあせっかくだし一緒に会いに行く?名無しさんも一緒に3人で」
「いや、遠慮しておこう。俺が行ったところであいつが喜ぶとは思えないからな」
「私も知り合いっていう訳じゃないから……」
アリスの提案にグレイと私が丁重にお断りした時だった。
「おー、アリスじゃないか! 来てたのか!」
呑気なナイトメアの声が聞こえた。
隣りのグレイがはっと息を飲む。
「!? ナイトメア様!」
どうしてあんな薄着で外へ出てくるんだあの人は、とグレイがつぶやいた。
完全防備の私達に対して、ナイトメアは塔の中と変わらない姿だったのだ。
グレイの心配をよそに、ナイトメアはご機嫌で雪の上をトコトコ歩いてくる。
「久しぶりだな、アリス!」
「えぇ。久しぶり。あなたは相変わらず不健康そうね。っていうか厚着しなさいよ」
「別に外で遊ぶわけじゃない。ただ君たち3人の姿が見えたから楽しそうだなぁと思って」
ナイトメアはそう言いながら、私とグレイを見た。
「どうだ、お前達。何か傑作はできたか?」
「え、いえ、その……」
「そうか、雪だるまをまず作ってみると言っていたな。で? どうだ?できたのか?」
「まだこれからだよ、うん。これから」
私はそう言いながらさりげなく雪だるま(一応)を背中に隠す様に立ち位置を変える。
するとそういう時ばかり鋭いナイトメアが、私の後ろを覗き込むように見た。
「ん~? もしかして、このぐちゃっとした山が雪だるまだとでもいうんじゃないだろうな?」
「え?」
ナイトメアの言葉にアリスが声を上げる。
「このボタンが目だろう? グレイが不器用なのは知っていたが、名無しさん、君もなかなかだな!どうしたらこんなことになるんだ?」
「ゆ、雪だるま……だったの?」
楽しそうに笑うナイトメアと唖然とするアリス。
私とグレイはため息をついた。
そして、また瞬時に目配せをする。
「あ、ナイトメア。なんだか顔色がものすごく悪いよ? 大丈夫? 熱でもあるんじゃない?」
「え、いや、今日はすこぶる体調がいいぞ」
「ダメだよ。きっと熱があるから冷やさないと。とりあえずこの雪で冷やそう!」
私はさっと雪を掬い取ると彼のおでこにぎゅっと押し当てる。
「わ!? ちょっ……名無しさん!! やめろっ! 冷たいっ!死ぬっ!」
ぎゃーぎゃー騒ぐナイトメアの隣りにさっとついたグレイが冷静にこう言った。
「死ぬ? それは大変ですナイトメア様。気をしっかりと持ってください。どう見ても体調が悪そうです。唇の色もおかしいです。さ、薬でも飲んで寝ましょう」
「え!? さっき無理やりお前が飲ませたじゃないか! あれは1日1回でいい薬だって……」
「あれはあれ。これはこれです」
「そうそう。アレはアレ。コレはコレだよ」
「嘘だ!なんだかお前達おかしいぞ!? 私をはめようとしていないか?!」
暴れるナイトメアを私とグレイで両側からがしりと掴んだ。
「してませんよ。なぁ、名無しさん」
「うんうん。してません」
「ちょ、ちょっと待て! 雪像づくりはお前たちだけじゃ心配だったから、私が強力な助っ人を呼んできてやったんだぞ!?」
「強力な助っ人?」
その言葉にぴたりと止まる私達。
すると、アリスが声を上げた。
「ユリウス!」
見ると塔の入り口で心底呆れた顔をした時計屋さんが立っていた。
「……一体なんなんだ」
彼は眉間にしわを寄せてそう言った。