マッドハッターズ!

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余所者で普通の女の子が夢主です
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 【22.5 バラ風呂の後】


ビバルディのバラ風呂に入った私。
バラの香りに包まれて、ほんわかした気分で城内を歩いていたら、ばったりとエースに会った。

「あ、エース」
「やぁ、名無しさん

彼は爽やかに手をあげて挨拶をする。

「遊びに来てたんだね」
「うん、ビバルディのバラ風呂に入らせてもらったの」

ゴージャスなバラ風呂に満足の私がにこにことそう答えると、彼もにこにこと笑いながらうなずいた。

「あぁ、そうなんだ。なんだか陛下と似たような匂いがすると思ったよ」
「え、ほんと!?」
「うん」

ビバルディみたいないい香りがするって結構嬉しいかもしれない、なんて思っていたら、エースはにこっと笑ってこう言った。

「俺の苦手な匂いだ」
「……わー、そういう言い方をしますか」

悪意を感じるわ、とむっとする。
そんな私を見てエースは楽しそうに笑った。

「あぁ、でも勘違いしないでくれよ。この匂いイコール陛下ってインプットされちゃってるんだよ。匂いの記憶ってすごいぜ」

まぁ確かに匂いって色々な記憶を呼び覚ますものだけど……。
そう考えていた私。
しかし、エースは私がまだ意味を理解していないと思ったらしい。

「陛下の匂いだから苦手っていうだけ。わかりやすく言えば、その匂いというよりも陛下が苦手ってことで……」
「はいはい、黙ってくださいねー!」

堂々と上司の悪口を言わないで欲しい。(私はビバルディが好きだし)
ぷんとする私に「怒らないでくれよ」とエースが笑いかける。

「この匂いそのものは悪くないと思うよ」
「……本当に?」

フォローするつもりなのかしらと思っていると、彼はすすっと私に近寄った。

「だって名無しさんからこの匂いがすると、なんだかいい匂いな気がするからさ」

っていうかすごく良い匂いな気もしてきたなぁ、と言いながら彼は私の髪の毛に顔を寄せる。(なにしてるんですかこの人!)

「ちょっとエース!!」

慌ててエースから距離を取ると、彼は「ん~?」と首を傾げて私を見る。

「人の匂いを嗅ぐとか失礼にもほどがあるんですけど」
「えー? だっていい匂いなんだからいいじゃないか」

悪びれずに言うエースに愕然とする。

「さっきは苦手な匂いって言ってたでしょ」
「え? そうだっけ」

とぼけたように言うエース。
呆れる私に彼はにこっと笑った。

名無しさんの匂い、俺は好きだな」

面と向かってそう言われた私。
どうしていいのかわからないので、とりあえず「あぁ、うん、ありがと」と答えた。
でも恥ずかしくて、エースの顔を見ることができない。
動揺していることをツッコまれたくないので「じゃあ私はこれで」とその場を去ろうとすると、エースは「うん、じゃあね」と普通に返してきた。

あれ? 珍しい。
エースという人は、私が嫌がることをわざとして楽しむ所がある。(意地悪な奴だわ)
目ざとい彼が動揺している私に気づかないなんて。

でもまぁ変にツッコまれなかったんだしいいや、と思いながらエースの横を通り過ぎた私。
しかし、すれ違いざまにエースがぷぷぷと笑った。
思わず振り返ると、彼は私を見ていた。

名無しさんの顔、真っ赤だよ」
「!」

いつもの爽やか笑顔が、ものすごく意地悪に見えた。
うわ、やっぱり気づいてたのね、と思いつつも負けず嫌いな私は

「お風呂上りだからのぼせたの」

と答える。すると

「あぁ、そうだよね」

という言葉と共にくくくっと笑う声が聞こえた。
それ以上はあえて何も言ってこない所が、やっぱり意地悪。

「ほんと、性格に難ありだわ」

そんな友達が一人くらいいてもいいかもしれないけどね。
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