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【10.会合がはじまります】
いよいよ会合が始まるらしい。
昼になった途端に塔内が慌ただしくなった。
私は会合に参加しなくてもいいのだが、主催地の者として正装しなくてはいけないらしい。
黒いワンピースを着せられ、ぼんやりと会合に集まった人々を少し遠くから見ていた。
「なんかすごいなぁ。みんなちゃんと黒っぽい服を着てるし、ものすごいことが始まるって感じ」
こんなにまったりしてるのは私くらいだろう。
アリスも参加しなくていいという話だったけれど、ナイトメアの補佐という仕事をしているのでなんだかんだ気になるらしい。
「ちょっと色々と確認してくるわ」と行ってしまった。
グレイは自分の仕事に加えて、ナイトメアの面倒を見たり部下にあれこれと指示を出したりしている。
その上で、私を見かけると「大丈夫か? 変な奴に付きまとわれたらすぐに言うんだぞ」とお父さん的心配までしてくれるのだ。
この人本気で面倒見がいいんだわ、と感心を通り越してあきれてしまう。
でも、本人はそういうことをするというのが普通らしい。
忙しそうではあるが、常に冷静だし、落ち着いている。
本当のリーダーが頼りない人物だと、特にグレイのような人は重要だ。
私は、すぐそばで背中を丸めて口元を抑える『本当のリーダー』をちらりと見た。
「うぅ……緊張しすぎて気持ち悪い…」
「……」
無言でため息をついてしまった。
この病弱なリーダーに体調管理も仕事のうちですよ、と教えてあげたい。
するとナイトメアが私を見る。
「なにか言いたげだな、名無しさん」
「……大丈夫ですかー?」
言いたいことはたくさんあったけれど、とりあえず心配をしておいてあげる私は優しいと思う。自分でいうのもなんだけど。
「大丈夫だとはいいがたいな」
「それは困るよね、きっと」
呆れる私。
するとグレイも傍へやってきた。
「そうですナイトメア様。困ります。困るんです。多少気持ち悪かろうが、吐血をしようが連れて行きますからね」
きっぱりとそう言い切ったグレイに、ナイトメアはわざとらしく震えてみせる。
「……鬼だ……鬼がここにいる……! 名無しさん、気をつけろ!」
「鬼でもなんでもいいですから、もう行きますよナイトメア様。時間です」
グレイはそう言うと、ナイトメアの背中を押した。
「もう諦めてください。ここまで来たらやるしかないんです。俺がフォローしますから、あなたも頑張ってください」
登校拒否の子どもを送るお母さん、そんな感じだわ。
「この会合が終われば、とりあえずは休みです。この1時間帯をなんとか乗り切ればいいんですよ」
「!!」
グレイの言葉にナイトメアの顔つきが変わった。
「……本当に休みなんだろうな?」
「えぇ、本当です。俺だって休みたいんです。休ませてください。だから頑張りましょう」
「……よし。わかった。さっさと終わらせて休みにしよう」
急にやる気になったらしいナイトメア。
グレイは安心したようにほっと胸をなでおろす。
私も一応もうひと押ししておこうと、ナイトメアに声をかける。
「がんばってね、ナイトメア。終わったら珈琲を飲めるようにしておくからね」
「あぁ、頼む。ただ、砂糖は入れるな! 私が自分でいれる」
「はーい」
思わず笑ってしまう私に、グレイも一緒に小さく笑うと私を見た。
「すまないな、名無しさん。あとは頼む」
「うん、大丈夫。グレイこそ頑張ってね。たぶんあなたが一番苦労しそうだから」
「……あぁ、とりあえずやれるだけのことはしてこよう」
始まる前からげんなりしてるけど、大丈夫なのかな?
会議室に消えていく彼らに手を振ると、私はふぅっと深呼吸をした。
なんだか漫才を見たような気分になったけど、それを言ったらグレイに悪いから黙っておこう。
会合は一時間帯くらいで終わるらしい。
私は休憩室を軽く片付けると、キッチンでさっそく珈琲の準備を始める。
「えぇと、珈琲豆は……」
棚に手を伸ばそうとした時、ふと足元に踏み台があることに気づいた。
キッチンの隅にちょこんと置いていある小さな踏み台。
もしかしてグレイが用意してくれたのかな?
特に何も言ってなかったけど、用意するとしたら彼しかいない。
気が利くというか、ここまで来るともう本当に尊敬だわ。
私はその踏み台を戸棚の前に持っていくと、そっと乗ってみた。
なんなく届いた珈琲豆。
これに乗ったくらいがちょうどグレイと同じ目線の高さなのかもしれない。
そんなことが思い浮かんで、珈琲豆を持ったままつい辺りを見回してしまった。
「うわ、私ってば乙女思考……」
自分の行動に苦笑いしか出てこない。
でも……。
グレイのこの目線から私ってどう見えてるんだろう?
彼からみれば小さい私は、落ち着きがなくて子どもっぽいと思われてるかもしれない。
いや、むしろ視界に入ってないかもしれない。
なんにしても彼からは私の頭のてっぺんしか見えてないんだろう
そうなると、顔なしも役持ちも余所者もみんな同じだよね。
寂しいけど、そういうことだ。
顔に自信があるというわけじゃないけど、頭ばっかり見られるよりは顔を見て話をしてほしい。
グレイに『私』という存在を認識してほしい。そんなことを思うようになってしまった。
「……仕方ないから、髪の毛の手入れをしっかりやろう。ツヤッツヤの髪の毛を見せつけてやる! 髪は女の命!!」
そんなことを考えながら、珈琲の準備をする私だった。
いよいよ会合が始まるらしい。
昼になった途端に塔内が慌ただしくなった。
私は会合に参加しなくてもいいのだが、主催地の者として正装しなくてはいけないらしい。
黒いワンピースを着せられ、ぼんやりと会合に集まった人々を少し遠くから見ていた。
「なんかすごいなぁ。みんなちゃんと黒っぽい服を着てるし、ものすごいことが始まるって感じ」
こんなにまったりしてるのは私くらいだろう。
アリスも参加しなくていいという話だったけれど、ナイトメアの補佐という仕事をしているのでなんだかんだ気になるらしい。
「ちょっと色々と確認してくるわ」と行ってしまった。
グレイは自分の仕事に加えて、ナイトメアの面倒を見たり部下にあれこれと指示を出したりしている。
その上で、私を見かけると「大丈夫か? 変な奴に付きまとわれたらすぐに言うんだぞ」とお父さん的心配までしてくれるのだ。
この人本気で面倒見がいいんだわ、と感心を通り越してあきれてしまう。
でも、本人はそういうことをするというのが普通らしい。
忙しそうではあるが、常に冷静だし、落ち着いている。
本当のリーダーが頼りない人物だと、特にグレイのような人は重要だ。
私は、すぐそばで背中を丸めて口元を抑える『本当のリーダー』をちらりと見た。
「うぅ……緊張しすぎて気持ち悪い…」
「……」
無言でため息をついてしまった。
この病弱なリーダーに体調管理も仕事のうちですよ、と教えてあげたい。
するとナイトメアが私を見る。
「なにか言いたげだな、名無しさん」
「……大丈夫ですかー?」
言いたいことはたくさんあったけれど、とりあえず心配をしておいてあげる私は優しいと思う。自分でいうのもなんだけど。
「大丈夫だとはいいがたいな」
「それは困るよね、きっと」
呆れる私。
するとグレイも傍へやってきた。
「そうですナイトメア様。困ります。困るんです。多少気持ち悪かろうが、吐血をしようが連れて行きますからね」
きっぱりとそう言い切ったグレイに、ナイトメアはわざとらしく震えてみせる。
「……鬼だ……鬼がここにいる……! 名無しさん、気をつけろ!」
「鬼でもなんでもいいですから、もう行きますよナイトメア様。時間です」
グレイはそう言うと、ナイトメアの背中を押した。
「もう諦めてください。ここまで来たらやるしかないんです。俺がフォローしますから、あなたも頑張ってください」
登校拒否の子どもを送るお母さん、そんな感じだわ。
「この会合が終われば、とりあえずは休みです。この1時間帯をなんとか乗り切ればいいんですよ」
「!!」
グレイの言葉にナイトメアの顔つきが変わった。
「……本当に休みなんだろうな?」
「えぇ、本当です。俺だって休みたいんです。休ませてください。だから頑張りましょう」
「……よし。わかった。さっさと終わらせて休みにしよう」
急にやる気になったらしいナイトメア。
グレイは安心したようにほっと胸をなでおろす。
私も一応もうひと押ししておこうと、ナイトメアに声をかける。
「がんばってね、ナイトメア。終わったら珈琲を飲めるようにしておくからね」
「あぁ、頼む。ただ、砂糖は入れるな! 私が自分でいれる」
「はーい」
思わず笑ってしまう私に、グレイも一緒に小さく笑うと私を見た。
「すまないな、名無しさん。あとは頼む」
「うん、大丈夫。グレイこそ頑張ってね。たぶんあなたが一番苦労しそうだから」
「……あぁ、とりあえずやれるだけのことはしてこよう」
始まる前からげんなりしてるけど、大丈夫なのかな?
会議室に消えていく彼らに手を振ると、私はふぅっと深呼吸をした。
なんだか漫才を見たような気分になったけど、それを言ったらグレイに悪いから黙っておこう。
会合は一時間帯くらいで終わるらしい。
私は休憩室を軽く片付けると、キッチンでさっそく珈琲の準備を始める。
「えぇと、珈琲豆は……」
棚に手を伸ばそうとした時、ふと足元に踏み台があることに気づいた。
キッチンの隅にちょこんと置いていある小さな踏み台。
もしかしてグレイが用意してくれたのかな?
特に何も言ってなかったけど、用意するとしたら彼しかいない。
気が利くというか、ここまで来るともう本当に尊敬だわ。
私はその踏み台を戸棚の前に持っていくと、そっと乗ってみた。
なんなく届いた珈琲豆。
これに乗ったくらいがちょうどグレイと同じ目線の高さなのかもしれない。
そんなことが思い浮かんで、珈琲豆を持ったままつい辺りを見回してしまった。
「うわ、私ってば乙女思考……」
自分の行動に苦笑いしか出てこない。
でも……。
グレイのこの目線から私ってどう見えてるんだろう?
彼からみれば小さい私は、落ち着きがなくて子どもっぽいと思われてるかもしれない。
いや、むしろ視界に入ってないかもしれない。
なんにしても彼からは私の頭のてっぺんしか見えてないんだろう
そうなると、顔なしも役持ちも余所者もみんな同じだよね。
寂しいけど、そういうことだ。
顔に自信があるというわけじゃないけど、頭ばっかり見られるよりは顔を見て話をしてほしい。
グレイに『私』という存在を認識してほしい。そんなことを思うようになってしまった。
「……仕方ないから、髪の毛の手入れをしっかりやろう。ツヤッツヤの髪の毛を見せつけてやる! 髪は女の命!!」
そんなことを考えながら、珈琲の準備をする私だった。