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【7.まさかの展開】
「グレイが好き」
言った瞬間に私とグレイの間の時間がぴたりと止まった。
たぶん空気も凍りついたと思う。
私は今、グレイと向かい合っている。
ナイトメアから預かった書類を彼の元へ届けに来たのだった。
それで帰ればよかった。
しかし、色々と話しているうちに段々と話が逸れて、私はついうっかりと口を滑らせてしまった。
「好き」だなんて、まだまだ彼に言うつもりなんてなかったのに。
というか、好きだとはっきり認識したのもつい最近なのに。
だからたぶん一番驚いているのは私自身だと思う。
「え……」
「…………え?」
思わずぽろりと出た告白にまずグレイが固まり、その直後に私も硬直した。
どういう意味かと考えているのか、ただ驚いているのか、グレイは私をじっと見つめたまま動かない。
私はというと、頭の中はひたすら「まずい、どうしよう、まずい、どうしよう……」がぐるぐる回っている。
ナイトメアがいたら私の心の声に苦笑していただろう。
「名無しさん」
グレイが私の名を呼んだことで、はっと我に返る。そしてそこからはもうひたすら言い訳とごまかしの言葉のみだった。
「い、いや!あのね、違うの! 好きっていうのは、いい人だなっていうか、上司として素敵だな、好きだなっていうことで……えぇと、つまりはアリスともいつも言っているんだけど『ファン』っていうか……!!!」
こんな状況で素直に気持ちを認めるなんてどうしてもできなかった。
なんの準備もないまま、ぽろっと出た言葉なのだ。
グレイが私をただの「お客様」としか見ていないのは分かりきっていたことだし、彼を困らせたくもない。
それにどうせ伝えるなら、もっとグレイとの距離が近くなってからのがいいということくらい私にもわかっていたし。
あぁ、今のはナシです。取り消しです!!
思いっきり手を振りながら必死に弁明する私を見て、グレイがふふっと笑った。
「……そんなに慌てなくてもわかっているよ」
彼はとてもあっさりとそう言った。
「君たちは俺をだいぶ評価してくれているみたいだからな。それを勘違いするほどうぬぼれてはいないつもりだ」
「……あ、うん。そっか」
『君たち』とひとくくりにされたことや、全く動揺していない様子の彼にほっとする反面、なんだかちょっとがっかりした。
私のびっくり発言(?)に慌てる素振りすらしてもらえない。
「名無しさん、君はとても素直だが、少し気を付けた方がいい」
「え?」
「君の何気ない一言で、その気になってしまう男だっているはずだ」
「え、いや、そんなことあるわけないよ」
だって、グレイはその気にならないじゃない。
「名無しさん、もっと危機感を持ちなさい。会合も次の昼から始まる。そろそろこの塔に権力者たちが集まってくるはずだ」
そこからはいつのまにかグレイの説教が始まった。(あれ?)
「前にも話したが、言い寄られても無視しなさい。あまりにしつこい男がいたら俺にすぐに言いに来るように。わかったな?」
「はい」
気付けば素直にそう答えていた私。
おかしいな、私のうっかり告白っぽい感じはどこに行ったんだろう?(ナイトメアはいつもこんな感じなのかしら?)
思わず首を傾げた私を見て、グレイはふっと優しい顔をした。
「俺のファンだなんて君も物好きだな」
彼はそう言って笑うと、やりかけの仕事に戻る。
……ごまかせた、のかな???
初めはそう思ったけれど、書類に何かを書きこんでいる彼を見て、私は不審に思ったことがある。
彼はこれまで私といる時は必ず手を止めて話をしてくれていた。
それなのに今はひたすら書類を書いている。明らかに不自然だった。
そこまで考えてやっと気づいた。
今ひたすら仕事をしていることも、色々と話が変わっていったのも彼なりの気遣いだったことに。
私の「好きというのは上司として、ファンとして」という言い訳に、彼はあえてごまかされてくれたのだ。
彼本人の気持ちというよりも、うっかり発言をかまして動揺しまくる私を見てかわいそうに思ったのかもしれない。
でも、それは今の私にはいいことじゃない。
なぜなら私を傷つけないように、という気遣いだから。
つまり、私はきちんとした告白もしないままフラれてしまったということになる。
……これは最悪の状況じゃない?
今後気まずい感じになるとかちょっと耐えられそうもない。
グレイは大人だしこれまでのように接してくれるだろうけれど、私は今まで通りになんてできない。恥ずかしいやら気まずいやらでどうしていいのかわからない。
でも、グレイがごまかされてくれた以上、私は今まで通り彼に接していく必要がある。
かなりの苦行になりそうだ。
でも、やるしかない。
私は覚悟を決めた。
「それじゃあ私行くね。お邪魔しました」
「あぁ、ありがとう。名無しさん」
そのグレイの言葉がなんだか意味深に聞こえてしまった。
私はぺこりと頭を下げると、その部屋を出て行く。
そのまま廊下をずんずん歩く。
もう耐えきれなかった。
立ち止まったら大泣きしそうな気がしたので、ひたすら歩く。
こんなに早く決定的な失恋をするとは思ってもみなかった。
「グレイが好き」
言った瞬間に私とグレイの間の時間がぴたりと止まった。
たぶん空気も凍りついたと思う。
私は今、グレイと向かい合っている。
ナイトメアから預かった書類を彼の元へ届けに来たのだった。
それで帰ればよかった。
しかし、色々と話しているうちに段々と話が逸れて、私はついうっかりと口を滑らせてしまった。
「好き」だなんて、まだまだ彼に言うつもりなんてなかったのに。
というか、好きだとはっきり認識したのもつい最近なのに。
だからたぶん一番驚いているのは私自身だと思う。
「え……」
「…………え?」
思わずぽろりと出た告白にまずグレイが固まり、その直後に私も硬直した。
どういう意味かと考えているのか、ただ驚いているのか、グレイは私をじっと見つめたまま動かない。
私はというと、頭の中はひたすら「まずい、どうしよう、まずい、どうしよう……」がぐるぐる回っている。
ナイトメアがいたら私の心の声に苦笑していただろう。
「名無しさん」
グレイが私の名を呼んだことで、はっと我に返る。そしてそこからはもうひたすら言い訳とごまかしの言葉のみだった。
「い、いや!あのね、違うの! 好きっていうのは、いい人だなっていうか、上司として素敵だな、好きだなっていうことで……えぇと、つまりはアリスともいつも言っているんだけど『ファン』っていうか……!!!」
こんな状況で素直に気持ちを認めるなんてどうしてもできなかった。
なんの準備もないまま、ぽろっと出た言葉なのだ。
グレイが私をただの「お客様」としか見ていないのは分かりきっていたことだし、彼を困らせたくもない。
それにどうせ伝えるなら、もっとグレイとの距離が近くなってからのがいいということくらい私にもわかっていたし。
あぁ、今のはナシです。取り消しです!!
思いっきり手を振りながら必死に弁明する私を見て、グレイがふふっと笑った。
「……そんなに慌てなくてもわかっているよ」
彼はとてもあっさりとそう言った。
「君たちは俺をだいぶ評価してくれているみたいだからな。それを勘違いするほどうぬぼれてはいないつもりだ」
「……あ、うん。そっか」
『君たち』とひとくくりにされたことや、全く動揺していない様子の彼にほっとする反面、なんだかちょっとがっかりした。
私のびっくり発言(?)に慌てる素振りすらしてもらえない。
「名無しさん、君はとても素直だが、少し気を付けた方がいい」
「え?」
「君の何気ない一言で、その気になってしまう男だっているはずだ」
「え、いや、そんなことあるわけないよ」
だって、グレイはその気にならないじゃない。
「名無しさん、もっと危機感を持ちなさい。会合も次の昼から始まる。そろそろこの塔に権力者たちが集まってくるはずだ」
そこからはいつのまにかグレイの説教が始まった。(あれ?)
「前にも話したが、言い寄られても無視しなさい。あまりにしつこい男がいたら俺にすぐに言いに来るように。わかったな?」
「はい」
気付けば素直にそう答えていた私。
おかしいな、私のうっかり告白っぽい感じはどこに行ったんだろう?(ナイトメアはいつもこんな感じなのかしら?)
思わず首を傾げた私を見て、グレイはふっと優しい顔をした。
「俺のファンだなんて君も物好きだな」
彼はそう言って笑うと、やりかけの仕事に戻る。
……ごまかせた、のかな???
初めはそう思ったけれど、書類に何かを書きこんでいる彼を見て、私は不審に思ったことがある。
彼はこれまで私といる時は必ず手を止めて話をしてくれていた。
それなのに今はひたすら書類を書いている。明らかに不自然だった。
そこまで考えてやっと気づいた。
今ひたすら仕事をしていることも、色々と話が変わっていったのも彼なりの気遣いだったことに。
私の「好きというのは上司として、ファンとして」という言い訳に、彼はあえてごまかされてくれたのだ。
彼本人の気持ちというよりも、うっかり発言をかまして動揺しまくる私を見てかわいそうに思ったのかもしれない。
でも、それは今の私にはいいことじゃない。
なぜなら私を傷つけないように、という気遣いだから。
つまり、私はきちんとした告白もしないままフラれてしまったということになる。
……これは最悪の状況じゃない?
今後気まずい感じになるとかちょっと耐えられそうもない。
グレイは大人だしこれまでのように接してくれるだろうけれど、私は今まで通りになんてできない。恥ずかしいやら気まずいやらでどうしていいのかわからない。
でも、グレイがごまかされてくれた以上、私は今まで通り彼に接していく必要がある。
かなりの苦行になりそうだ。
でも、やるしかない。
私は覚悟を決めた。
「それじゃあ私行くね。お邪魔しました」
「あぁ、ありがとう。名無しさん」
そのグレイの言葉がなんだか意味深に聞こえてしまった。
私はぺこりと頭を下げると、その部屋を出て行く。
そのまま廊下をずんずん歩く。
もう耐えきれなかった。
立ち止まったら大泣きしそうな気がしたので、ひたすら歩く。
こんなに早く決定的な失恋をするとは思ってもみなかった。