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【5.赤とピンクとグレイと私】
赤とピンクに挟まれて、私は困り果てていた。
「女の子なんて連れちゃって、さすがだね。羨ましいぜ!」
はははっと笑う赤い人はものすごく爽やかで穏やかに見えた。いい人そう。
アリスは警戒しろと言っていたけれど、私には今一つピンとこない。
「さすがだねって……ひどくない? 俺そんなに女の子と遊びまわってないんだけど」
「あれ?そうだっけ? じゃあ気のせいかな。ごめんごめん。見た目で判断しちゃったぜ」
ピンクの人に笑いながら、結構すごいことをいう赤い人。あぁそうだ。爽やかに毒を吐くって言ってたな。
「で? その子は君の彼女なの?」
「違うよ。今会ったばっかり」
赤とピンクの人はそう言いながら、私を見る。とても居心地が悪い。
「えー、会ったばっかり? やっぱりさすがだねー」
「だから、さすがだねはやめろって」
ピンクの人の反論なんて聞いていないようで、赤い人は私をじぃっと見つめてきた。
内面まで覗かれているような落ち着かない気持ちになり、思わず一歩下がる。
そんな私に気づいた彼は一瞬にやりと笑った。そしてすぐにさっきまでの爽やかさを身にまとう。
「あ、ごめんな。初対面の女の子をあんまり見つめるのはよくないことだな」
ははは、と爽やかに笑うけれど、本気でごめんとは思っていないような気がする。
なんかちょっと怖い人かも。
そんな彼は爽やかなままこう言った。
「ねぇ、君どこかで会ったことない?」
「え」
「なんだかすごく知っているような気がするんだけど」
彼の言葉にピンクの人もうなずく。
「あー、やっぱり騎士さんもそう思うんだ? 俺もなんだよね。なんか知ってる雰囲気……」
彼らはそう言ってじいぃっと見つめてくる。
居心地が悪すぎて私は彼らから視線を逸らした。顔がものすごく熱い。
「はははっ!赤くなった」
「いい反応だね。可愛い」
そう言いながらにやにやと笑う2人。
突然出会った見知らぬ男の人に囲まれるという体験なんてめったにないと思う。
いくら彼らの見た目がちょっと良いとはいっても怖い。恥ずかしさよりも恐怖の方が強かった。
逃げたいけど足が動かない。叫びたいけど声がでない。
どうして良いのかわからず泣きそうになった時だった。
「なにをしている」
その声を聞いて反射的に体が動いた。
振り返るとグレイがいた。
「グレイ!」
私は彼の元へ駆け寄ると、そのまま思いっきり抱きついた。
それこそ力の限り飛び込んだと思うのだが、彼はよろけることもなくそのまま私を抱きとめた。
彼の服は煙草の匂いがして、はっと我に返る。
怖かったとはいえ、なんでいきなり抱き着いてるの私。(抱き着くというか突進?)
どうしよう、これ。迷惑きわまりないぞ?
そんなことを一瞬のうちにだーっと考え離れようと思った時だった。
「名無しさん、待たせたな」
彼はいつもの口調でそう言って私の背中をポンとたたくと、すっと私を離す。
そして私を隠すように一歩前に出た。
ピンクと赤の2人は驚いたように私達を見ている。
「うわ~、何マジで? トカゲさんの知り合いだったの?」
「へぇ。仕事漬けかと思ってたら、ちゃっかり彼女がいたんだ~。トカゲさんも隅に置けないよな。ははは!」
ピンクの人が苦笑しながら言い、赤い人は相変わらず爽やか。
私はグレイの背中越しに彼らを見る。
「彼女は大切な客だ。手を出さないでもらおう」
「客? トカゲさんの所のお客さん? ってことはもしかして、その子がもう一人の余所者?」
「なになに、もう一人の余所者って? アリスの他に余所者が来てたんだ」
ずっと旅をしてたから全然知らなかったぜ、という赤い人。
「なるほどね。誰かに似てるなと思ったらアリスに似てるんだな。余所者独特の雰囲気っていうか」
ピンクの彼は私を見ながらそう言っていたが、すすすとグレイに視線を移す。
「ねぇ、ずるくない? なんであんたの所に余所者が2人もいるわけ?」
「たまたまだ」
グレイはそう答えると、私の手を掴んだ。
「行くぞ、名無しさん」
「え、うん」
すぱっと会話を終了させたグレイは私の手を引いて歩き出す。
半ば連行される形で歩き出した私は、そっと後ろを振り返ってみた。
ピンクと赤の2人は私の視線に気づくと、2人ともにこやかにひらひらと手を振ってきた。
手を振りかえすことはせず、私はぱっと前を向く。
そのまましばらくずんずんと歩いていく私達。
私の手首を掴む大きな手は、力を緩めることなく私を引っ張っていく。
痛くはないけど振りほどけない。
「ごめんね、グレイ。ありがとう」
迷惑をかけてしまった。私はグレイに謝る。
怒ってるのかな? あれだけ注意したのにって呆れてるのかもしれない。
そわそわして彼の後ろ姿を見ていると、やっと彼は立ち止まって私の手を離した。
そして振り返ると私を見て、ふぅっとため息をつく。
「ほんの少し一人にしただけでああも絡まれるとはな。さすがに予想外だった。余所者とは本当に特別なんだな」
「ごめんなさい。どうしていいのかわからなくて」
「よりによってあの2人に……」
彼はそう言って困ったように笑った。
「……あの人たち、グレイの知り合い?」
「知り合いと言うか、彼らは役持ちだ。今度の会合に参加する」
「会合?ってもうすぐあるっていう集まりのことだよね?」
少し前に聞いた。
各地の権力者が集まって、ナイトメアが議長となって会議をするという。
それが近々あるとは聞いていたけど……あの2人も来るんだ。
「はぁ……」
グレイは再びため息をつく。
「え? なに?」
「いや、ただでさえナイトメア様が心配で会合が憂鬱なのに、名無しさんのことも心配になってきた」
「ど、どうして!?」
私は参加しなくていいって聞いたけど。
「集まった権力者たちは、会合の期間中クローバーの塔に滞在する」
「それってつまりホテルみたいになるってこと?」
「あぁ。その期間あいつらが名無しさんに手を出すかと思うと……」
「手を出すって……」
いや、それはさすがにないよと言おうと思ったら、グレイはかなり真剣な表情で私を見た。
「いいか、名無しさん。男なんてろくなことを考えていない。甘い言葉に騙されてはいけないぞ。遊ばれたくなかったら言い寄られても無視しなさい。あまりにしつこいようなら俺の所にくるように。俺から一言言っておく」
「なんかグレイ……お父さんみたい」
「今の現場を見たんだ。心配になるのは当然だろう」
思わずそう言った私にグレイは不満そうな顔をする。
心配してくれるのは嬉しい。でも……。
「心配してくれてありがとう。気を付けます。何かあったらグレイに言います」
「……よし」
私の言葉に彼はうなずいた。
そして優しい顔で笑う。
「帰るか」
「うん」
いい人だと思う。
外に出たがっていた私の気持ちを汲んで、こうして外に連れてきてくれた。
優しいし、心配して世話を焼いてくれている。
でもそれは彼の中で私はただの「余所者という特別なお客様」だからなのだ。
そんな特別なんて、なんだかつまらない。
一緒に外へ出たことではっきりとそう思ってしまった。
彼とは余所者とかお客様とかそういうのを抜きにして、もう少し仲良くなってみたい。
たった一度彼の隣を歩いただけなのに、それだけでは満足できなくなってきた、なんて誰に言えばいいんだろう?
赤とピンクに挟まれて、私は困り果てていた。
「女の子なんて連れちゃって、さすがだね。羨ましいぜ!」
はははっと笑う赤い人はものすごく爽やかで穏やかに見えた。いい人そう。
アリスは警戒しろと言っていたけれど、私には今一つピンとこない。
「さすがだねって……ひどくない? 俺そんなに女の子と遊びまわってないんだけど」
「あれ?そうだっけ? じゃあ気のせいかな。ごめんごめん。見た目で判断しちゃったぜ」
ピンクの人に笑いながら、結構すごいことをいう赤い人。あぁそうだ。爽やかに毒を吐くって言ってたな。
「で? その子は君の彼女なの?」
「違うよ。今会ったばっかり」
赤とピンクの人はそう言いながら、私を見る。とても居心地が悪い。
「えー、会ったばっかり? やっぱりさすがだねー」
「だから、さすがだねはやめろって」
ピンクの人の反論なんて聞いていないようで、赤い人は私をじぃっと見つめてきた。
内面まで覗かれているような落ち着かない気持ちになり、思わず一歩下がる。
そんな私に気づいた彼は一瞬にやりと笑った。そしてすぐにさっきまでの爽やかさを身にまとう。
「あ、ごめんな。初対面の女の子をあんまり見つめるのはよくないことだな」
ははは、と爽やかに笑うけれど、本気でごめんとは思っていないような気がする。
なんかちょっと怖い人かも。
そんな彼は爽やかなままこう言った。
「ねぇ、君どこかで会ったことない?」
「え」
「なんだかすごく知っているような気がするんだけど」
彼の言葉にピンクの人もうなずく。
「あー、やっぱり騎士さんもそう思うんだ? 俺もなんだよね。なんか知ってる雰囲気……」
彼らはそう言ってじいぃっと見つめてくる。
居心地が悪すぎて私は彼らから視線を逸らした。顔がものすごく熱い。
「はははっ!赤くなった」
「いい反応だね。可愛い」
そう言いながらにやにやと笑う2人。
突然出会った見知らぬ男の人に囲まれるという体験なんてめったにないと思う。
いくら彼らの見た目がちょっと良いとはいっても怖い。恥ずかしさよりも恐怖の方が強かった。
逃げたいけど足が動かない。叫びたいけど声がでない。
どうして良いのかわからず泣きそうになった時だった。
「なにをしている」
その声を聞いて反射的に体が動いた。
振り返るとグレイがいた。
「グレイ!」
私は彼の元へ駆け寄ると、そのまま思いっきり抱きついた。
それこそ力の限り飛び込んだと思うのだが、彼はよろけることもなくそのまま私を抱きとめた。
彼の服は煙草の匂いがして、はっと我に返る。
怖かったとはいえ、なんでいきなり抱き着いてるの私。(抱き着くというか突進?)
どうしよう、これ。迷惑きわまりないぞ?
そんなことを一瞬のうちにだーっと考え離れようと思った時だった。
「名無しさん、待たせたな」
彼はいつもの口調でそう言って私の背中をポンとたたくと、すっと私を離す。
そして私を隠すように一歩前に出た。
ピンクと赤の2人は驚いたように私達を見ている。
「うわ~、何マジで? トカゲさんの知り合いだったの?」
「へぇ。仕事漬けかと思ってたら、ちゃっかり彼女がいたんだ~。トカゲさんも隅に置けないよな。ははは!」
ピンクの人が苦笑しながら言い、赤い人は相変わらず爽やか。
私はグレイの背中越しに彼らを見る。
「彼女は大切な客だ。手を出さないでもらおう」
「客? トカゲさんの所のお客さん? ってことはもしかして、その子がもう一人の余所者?」
「なになに、もう一人の余所者って? アリスの他に余所者が来てたんだ」
ずっと旅をしてたから全然知らなかったぜ、という赤い人。
「なるほどね。誰かに似てるなと思ったらアリスに似てるんだな。余所者独特の雰囲気っていうか」
ピンクの彼は私を見ながらそう言っていたが、すすすとグレイに視線を移す。
「ねぇ、ずるくない? なんであんたの所に余所者が2人もいるわけ?」
「たまたまだ」
グレイはそう答えると、私の手を掴んだ。
「行くぞ、名無しさん」
「え、うん」
すぱっと会話を終了させたグレイは私の手を引いて歩き出す。
半ば連行される形で歩き出した私は、そっと後ろを振り返ってみた。
ピンクと赤の2人は私の視線に気づくと、2人ともにこやかにひらひらと手を振ってきた。
手を振りかえすことはせず、私はぱっと前を向く。
そのまましばらくずんずんと歩いていく私達。
私の手首を掴む大きな手は、力を緩めることなく私を引っ張っていく。
痛くはないけど振りほどけない。
「ごめんね、グレイ。ありがとう」
迷惑をかけてしまった。私はグレイに謝る。
怒ってるのかな? あれだけ注意したのにって呆れてるのかもしれない。
そわそわして彼の後ろ姿を見ていると、やっと彼は立ち止まって私の手を離した。
そして振り返ると私を見て、ふぅっとため息をつく。
「ほんの少し一人にしただけでああも絡まれるとはな。さすがに予想外だった。余所者とは本当に特別なんだな」
「ごめんなさい。どうしていいのかわからなくて」
「よりによってあの2人に……」
彼はそう言って困ったように笑った。
「……あの人たち、グレイの知り合い?」
「知り合いと言うか、彼らは役持ちだ。今度の会合に参加する」
「会合?ってもうすぐあるっていう集まりのことだよね?」
少し前に聞いた。
各地の権力者が集まって、ナイトメアが議長となって会議をするという。
それが近々あるとは聞いていたけど……あの2人も来るんだ。
「はぁ……」
グレイは再びため息をつく。
「え? なに?」
「いや、ただでさえナイトメア様が心配で会合が憂鬱なのに、名無しさんのことも心配になってきた」
「ど、どうして!?」
私は参加しなくていいって聞いたけど。
「集まった権力者たちは、会合の期間中クローバーの塔に滞在する」
「それってつまりホテルみたいになるってこと?」
「あぁ。その期間あいつらが名無しさんに手を出すかと思うと……」
「手を出すって……」
いや、それはさすがにないよと言おうと思ったら、グレイはかなり真剣な表情で私を見た。
「いいか、名無しさん。男なんてろくなことを考えていない。甘い言葉に騙されてはいけないぞ。遊ばれたくなかったら言い寄られても無視しなさい。あまりにしつこいようなら俺の所にくるように。俺から一言言っておく」
「なんかグレイ……お父さんみたい」
「今の現場を見たんだ。心配になるのは当然だろう」
思わずそう言った私にグレイは不満そうな顔をする。
心配してくれるのは嬉しい。でも……。
「心配してくれてありがとう。気を付けます。何かあったらグレイに言います」
「……よし」
私の言葉に彼はうなずいた。
そして優しい顔で笑う。
「帰るか」
「うん」
いい人だと思う。
外に出たがっていた私の気持ちを汲んで、こうして外に連れてきてくれた。
優しいし、心配して世話を焼いてくれている。
でもそれは彼の中で私はただの「余所者という特別なお客様」だからなのだ。
そんな特別なんて、なんだかつまらない。
一緒に外へ出たことではっきりとそう思ってしまった。
彼とは余所者とかお客様とかそういうのを抜きにして、もう少し仲良くなってみたい。
たった一度彼の隣を歩いただけなのに、それだけでは満足できなくなってきた、なんて誰に言えばいいんだろう?