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【4.初めてのおでかけ】
「意外と普通だねぇ~」
初めての塔の外に私はワクワクしていた。
隣を歩いているのがグレイだということも嬉しい。
「意外と普通か……名無しさんはどういうものを想像していたんだ?」
「もっとあちこちで銃撃戦してたり、斧を振り回していたり、『落とし前つけてもらおうか』とかっていうやりとりがあるのかと思ってた」
「落とし前……」
私の言葉にグレイが苦笑した。
でも思っていた以上に普通だった。
確かに猫耳の人とかはいるけど(すっごいびっくり)、みんなわいわいと楽しそうに歩いている。買い物している人もいるし、カフェも人でにぎわっている。
室内に飽きて窓の外ばかり見ていた私を、見かねたグレイが外へ連れ出してくれた。
名目上は「グレイの仕事の手伝い」なのだけれど、実際はただの散歩だ。
あちこち見て歩きながら、私はグレイの横を歩く。
背の高い彼は大きな歩幅でゆっくりと歩いていた。
私の歩く速さに合わせてくれているらしいと気づいて、私ははっとした。
「あ、ごめん。グレイは用事があるんだよね。さっさか歩きましょう」
「いや、そんなに急がなくても大丈夫だ。名無しさんにとっては初めての外だし、ゆっくり見るといい。付き合うよ」
よそ見ばかりして転ばないようにな、とグレイは笑う。
くっ! いちいちカッコいいというか、ときめいてしまう!(やだもう、困る!)
私はそっとグレイを見てみた。
端正な横顔。まっすぐな背筋。綺麗な手。ぴかぴかに磨かれている大きな靴。
この人に何か欠点はないのだろうか?
うーむ……と考えてみるけれど今の所見つからない。『少女漫画によくいる素敵な先輩』よりも完璧だ。
その時、ほんの少し……ほんの一瞬だけ私の手とグレイの手がぶつかった。
「!」
その一瞬に全神経が私の手に集中したけれど、まぁこういうこともあるよね、と思っていたら
「失礼」
とグレイが小さく一言。とっさに出た言葉のようだった。
「こちらこそ」
と言ってみたけれど、グレイの礼儀正しさを感じて嬉しい反面、余計に意識してしまって彼の顔は見られなかった。
私だけがこんなに意識しているんだろうけど。
初めての外出とグレイが隣にいるということで、変に舞い上がっている私はふわふわとした気持ちで街を歩く。
「名無しさん、俺はここに用があるんだが、どうする? 一緒にはいるか?」
白い建物の前でグレイが私を見た。
彼は仕事でここに来ている。私は入っちゃいけない気がするな。
「ううん、ここで待ってる。すぐそこのお店を見てるよ」
向かいの店を指さすと、彼はしばらく考え込む。
そしてこう言った。
「……大丈夫だとは思うが、見知らぬ奴に声をかけられてもついて行ってはいけないぞ」
「私、子どもじゃないんですけど」
どういう心配の仕方ですか(お父さんみたい)
「似たようなものだ。この世界にまだ馴染みもないし、第一名無しさんは余所者だ。余所者は好かれやすい。特に君のような年頃の女性は気を付けないといけない。変な男が寄ってくることもある」
「残念ながらそういう経験はほとんどないから大丈夫だと思うよ」
「とにかく気を付けるんだ。俺もすぐに戻るから」
「うん、わかった。行ってらっしゃい」
心配性だなぁと思いつつ彼を見送り、私がお店へ行こうとした時だった。
すぐ近くで目にも眩しいピンク色が映る。
「うわ、すごい。派手」
思わず2度見した。
ピンクの頭に、ピンクのふわふわ(触りたい)。 よく見たら耳が猫だった。
すごいなー、ああいう派手系の猫耳もいるんだなぁ。たくさんピアスしてる。
なんかいろんなものがじゃらじゃらとくっついているなぁ。
可愛らしい顔だけど、体格的に男の子だろうなぁ。
は! いかんいかん。かなり失礼だわ私。
見ないふり見ないふり。
そう思って視線を逸らした。
しかし、それはもう遅かったらしい。
「そんなに見られたら気になるんだけど」
その言葉は明らかに私に投げかけられたものだった。
見るとそのピンクの人は私を見ていた。
うわ、怖い。なんか絡まれたり、怒られたりするよこれ。
おどおどする私に、彼は近寄ってくる。
「なにをそんなに見てたの? 俺、あんたと会ったことあったっけ??」
彼はそう言って私を覗き込んでくる。
「ご、ごめんなさい! 会ったことないからつい見ちゃいました。すごいふわふわそうだったから(そして派手だったから)」
「ふわふわ?」
わぁ、余計なこと言ってしまった!
と思ったけれど、彼は楽しそうに笑う。
「あぁ、これね。これ俺の自慢のファーだよ。触りたい?」
「え、いや、別にそういうわけじゃ……」
「なんだ、つまんないの」
彼はそう言って口を尖らせた。
「あんたにならちょっと触らせてあげようと思ったのに」
「え?」
にやりと笑う彼に私は固まる。
「なんかいいな。あんたって面白そう。ねぇ、ほんとにどこかで会ったことない?」
「え、ないです。今が初めてです!」
私はここに来たばかりだし、こんな派手な人見たら絶対に忘れない。
「そっかー。なんか雰囲気的に誰かに似てる気がするんだよな~……」
うーむ、と考え込む彼。どうやら派手なだけでそんなに怖い人ではなさそうだけど、この馴れ馴れしさはある意味怖い。
私はグレイの言葉を思い出す。
ないとは思うけど、目の前のこの人(猫?)には誘われる前に逃げよう。
「えぇと、すみません。じゃあ私はこれで」
そう言って逃げようとしたが、肩を掴まれた。
「ちょっと待ってよ。絶対誰かに似てると思うんだ。思い出すから待って」
「いや、無理です無理無理!」
ナンパかこれは。(いや、まさかね?)
引き留める彼から、必死に逃げようとする私。
あぁ、もうどうしてこんなことに!?
グレイ早く帰ってきて!
そう思った時だった。
信じられないけれど、さらに私の目に眩しい色が飛び込んできた。
赤い服。そして大きな剣をぶら下げた人物。
「!!」
嘘だ。よりによって今!?
私は目を疑った。
あれってもしかしてアリスから教わった危険人物じゃない? 見かけたらダッシュで逃げるべき人ってやつじゃない!?
ど、どうしよう。
ピンクの彼に肩を掴まれている私はどうにも動けなかった。
仕方ない。もう視線を合わせないように縮こまっていよう。
そう決意した時だった。
「あれ、騎士さんだ」
ピンクの彼がそうつぶやいた。
その言葉に赤い服の人がこちらを見て爽やかに笑う。
……まさかの知り合いなわけですか。
「意外と普通だねぇ~」
初めての塔の外に私はワクワクしていた。
隣を歩いているのがグレイだということも嬉しい。
「意外と普通か……名無しさんはどういうものを想像していたんだ?」
「もっとあちこちで銃撃戦してたり、斧を振り回していたり、『落とし前つけてもらおうか』とかっていうやりとりがあるのかと思ってた」
「落とし前……」
私の言葉にグレイが苦笑した。
でも思っていた以上に普通だった。
確かに猫耳の人とかはいるけど(すっごいびっくり)、みんなわいわいと楽しそうに歩いている。買い物している人もいるし、カフェも人でにぎわっている。
室内に飽きて窓の外ばかり見ていた私を、見かねたグレイが外へ連れ出してくれた。
名目上は「グレイの仕事の手伝い」なのだけれど、実際はただの散歩だ。
あちこち見て歩きながら、私はグレイの横を歩く。
背の高い彼は大きな歩幅でゆっくりと歩いていた。
私の歩く速さに合わせてくれているらしいと気づいて、私ははっとした。
「あ、ごめん。グレイは用事があるんだよね。さっさか歩きましょう」
「いや、そんなに急がなくても大丈夫だ。名無しさんにとっては初めての外だし、ゆっくり見るといい。付き合うよ」
よそ見ばかりして転ばないようにな、とグレイは笑う。
くっ! いちいちカッコいいというか、ときめいてしまう!(やだもう、困る!)
私はそっとグレイを見てみた。
端正な横顔。まっすぐな背筋。綺麗な手。ぴかぴかに磨かれている大きな靴。
この人に何か欠点はないのだろうか?
うーむ……と考えてみるけれど今の所見つからない。『少女漫画によくいる素敵な先輩』よりも完璧だ。
その時、ほんの少し……ほんの一瞬だけ私の手とグレイの手がぶつかった。
「!」
その一瞬に全神経が私の手に集中したけれど、まぁこういうこともあるよね、と思っていたら
「失礼」
とグレイが小さく一言。とっさに出た言葉のようだった。
「こちらこそ」
と言ってみたけれど、グレイの礼儀正しさを感じて嬉しい反面、余計に意識してしまって彼の顔は見られなかった。
私だけがこんなに意識しているんだろうけど。
初めての外出とグレイが隣にいるということで、変に舞い上がっている私はふわふわとした気持ちで街を歩く。
「名無しさん、俺はここに用があるんだが、どうする? 一緒にはいるか?」
白い建物の前でグレイが私を見た。
彼は仕事でここに来ている。私は入っちゃいけない気がするな。
「ううん、ここで待ってる。すぐそこのお店を見てるよ」
向かいの店を指さすと、彼はしばらく考え込む。
そしてこう言った。
「……大丈夫だとは思うが、見知らぬ奴に声をかけられてもついて行ってはいけないぞ」
「私、子どもじゃないんですけど」
どういう心配の仕方ですか(お父さんみたい)
「似たようなものだ。この世界にまだ馴染みもないし、第一名無しさんは余所者だ。余所者は好かれやすい。特に君のような年頃の女性は気を付けないといけない。変な男が寄ってくることもある」
「残念ながらそういう経験はほとんどないから大丈夫だと思うよ」
「とにかく気を付けるんだ。俺もすぐに戻るから」
「うん、わかった。行ってらっしゃい」
心配性だなぁと思いつつ彼を見送り、私がお店へ行こうとした時だった。
すぐ近くで目にも眩しいピンク色が映る。
「うわ、すごい。派手」
思わず2度見した。
ピンクの頭に、ピンクのふわふわ(触りたい)。 よく見たら耳が猫だった。
すごいなー、ああいう派手系の猫耳もいるんだなぁ。たくさんピアスしてる。
なんかいろんなものがじゃらじゃらとくっついているなぁ。
可愛らしい顔だけど、体格的に男の子だろうなぁ。
は! いかんいかん。かなり失礼だわ私。
見ないふり見ないふり。
そう思って視線を逸らした。
しかし、それはもう遅かったらしい。
「そんなに見られたら気になるんだけど」
その言葉は明らかに私に投げかけられたものだった。
見るとそのピンクの人は私を見ていた。
うわ、怖い。なんか絡まれたり、怒られたりするよこれ。
おどおどする私に、彼は近寄ってくる。
「なにをそんなに見てたの? 俺、あんたと会ったことあったっけ??」
彼はそう言って私を覗き込んでくる。
「ご、ごめんなさい! 会ったことないからつい見ちゃいました。すごいふわふわそうだったから(そして派手だったから)」
「ふわふわ?」
わぁ、余計なこと言ってしまった!
と思ったけれど、彼は楽しそうに笑う。
「あぁ、これね。これ俺の自慢のファーだよ。触りたい?」
「え、いや、別にそういうわけじゃ……」
「なんだ、つまんないの」
彼はそう言って口を尖らせた。
「あんたにならちょっと触らせてあげようと思ったのに」
「え?」
にやりと笑う彼に私は固まる。
「なんかいいな。あんたって面白そう。ねぇ、ほんとにどこかで会ったことない?」
「え、ないです。今が初めてです!」
私はここに来たばかりだし、こんな派手な人見たら絶対に忘れない。
「そっかー。なんか雰囲気的に誰かに似てる気がするんだよな~……」
うーむ、と考え込む彼。どうやら派手なだけでそんなに怖い人ではなさそうだけど、この馴れ馴れしさはある意味怖い。
私はグレイの言葉を思い出す。
ないとは思うけど、目の前のこの人(猫?)には誘われる前に逃げよう。
「えぇと、すみません。じゃあ私はこれで」
そう言って逃げようとしたが、肩を掴まれた。
「ちょっと待ってよ。絶対誰かに似てると思うんだ。思い出すから待って」
「いや、無理です無理無理!」
ナンパかこれは。(いや、まさかね?)
引き留める彼から、必死に逃げようとする私。
あぁ、もうどうしてこんなことに!?
グレイ早く帰ってきて!
そう思った時だった。
信じられないけれど、さらに私の目に眩しい色が飛び込んできた。
赤い服。そして大きな剣をぶら下げた人物。
「!!」
嘘だ。よりによって今!?
私は目を疑った。
あれってもしかしてアリスから教わった危険人物じゃない? 見かけたらダッシュで逃げるべき人ってやつじゃない!?
ど、どうしよう。
ピンクの彼に肩を掴まれている私はどうにも動けなかった。
仕方ない。もう視線を合わせないように縮こまっていよう。
そう決意した時だった。
「あれ、騎士さんだ」
ピンクの彼がそうつぶやいた。
その言葉に赤い服の人がこちらを見て爽やかに笑う。
……まさかの知り合いなわけですか。