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【3.初めての日常茶飯事】
慣れないおかしな世界で過ごす私。
みんな優しくしてくれるけれど、私も気持ちを張りつめているし、疲れが出るのは当然だと思う。
疲れから風邪をひいて寝込む、というのはよくある話だけれど・・・・・・。
「……40.2度ね」
「やはりな」
「さっきからおかしかったものね。いつにもまして」
「そうだな」
とても冷静で事務的な会話を繰り広げる目の前の2人。
アリスは体温計をしまい、グレイは引き出しから薬箱を取り出した。
「ナイトメア様、寝てください」
「今、氷枕をもってきてあげるわね」
熱を出したのは、この世界の元からの住人ナイトメアの方だった。私ではない。
私はというとすごく元気。頑丈……いや、丈夫なのだ。(女子だしね、頑丈って嫌だよね)
彼らは私の隣に座るナイトメアを見た。
顔は青白く、目は潤み、フラフラとしているように見える。
そりゃそうだ。
40.2度とかってちょっと普通じゃない高熱だよね?(私はそんな体温になったことがない)
そんな高熱に動揺することもなく、グレイとアリスはテキパキとした対応。慣れって恐ろしいわ。
しかし、一番恐ろしいのは発熱中の本人だ。
「……寝るのはいいが、私は薬なんて飲まんぞ」
きっぱりとそう言ったナイトメアに私は思わず「は!?」と聞き返してしまった。
「40度ある人が何言ってるの」
熱でおかしくなったのかと思ったけれど、そうではないらしい。
グレイが落ち着き払ってこう言った。
「じゃあ薬はいいです。今すぐ病院へ行きましょう」
「嫌だ!!! 絶対に病院なんていかないぞ!!!」
「じゃあせめて薬を飲んでください」
グレイの言葉に素晴らしい反応の速さを見せたナイトメアだったけれど、さらに素晴らしい速さを見せるグレイ。
さすがのナイトメアも撃沈した。
「……嫌だ」
「本当なら病院に行って注射をし、さらに薬を飲んでいただきたい所なんですよ。薬だけでいいと言ってるんです。飲んでください」
「……うぅ」
言葉を返せなかったらしいナイトメアはトボトボとベッドへ入っていく。
その後姿を見ながら「なんか大変そうだなぁ」と思っていたら、グレイが私に言った。
「名無しさん、俺とアリスで氷枕や必要なものを用意してくる。その間ナイトメア様を頼む」
「う、うん」
「40度あるし大人しくしているとは思うが、無茶なことをしないように見張っておいてくれ」
「……無茶なこと?」
何をするというんだろうと思った私の心を読んだかのように、アリスが笑いながら言った。
「こないだは38.5度で脱走を図ったの。薬が嫌だからっていう理由で」
「そ、それはすごいね」
びっくりする私にグレイがため息交じりに笑う。
「そうなんだ。とにかく病院と薬の嫌いな方だが、さすがに40度はまずい。できればこの薬も飲ませておいてくれ」
「わかった」
グレイから薬を受け取ったけれど、これってかなりの大役を任されたんじゃ……。
私はちらりとナイトメアを見て不安になる。
「じゃあ名無しさん、少しの間だけナイトメア様を頼んだぞ」
グレイはそう言ってアリスと一緒に部屋を出て行った。
私はベッドで横になったナイトメアに布団をかけなおす。
「大丈夫?」
「……大丈夫じゃない。あたまがいたい……」
「そうだよね、40度だもんね」
私はそう言いながら彼のおでこに触れてみた。
「うわ、あっつい!」
彼が病弱だというのはなんとなく感じていたけれど、これは半端じゃない虚弱体質だなぁ。
すぐに吐血するという話も信じられなかったけど……これはあり得る。
グレイから受け取った飲み薬の分量を量りながら、私はため息をついた。
この塔に来て10時間帯が経った。
何がなんだかわからないまま今こうして私はここにいる。
この世界の大体の所はアリスから聞いたけれど、どうやらとんでもない世界に来てしまったことだけは確かだった。
そして今、ナイトメアのとんでもない虚弱体質っぷりを目の当たりにしている。
「はい、ナイトメア。これ飲んで寝てれば少しは楽になるよ」
そう言って薬を差し出したが、彼はぷいっと横を向いた。
「のまない。薬なんてのまないぞ……!」
「でも飲んだ方がいいよ」
ぷいぷいっとさらに顔をそむけるナイトメア。
……子どもか、この人。
「ねていれば治る。だから名無しさん、その薬はいらないぞ」
「でも、グレイが飲ませろって言ってたし、もう用意しちゃったし」
「飲んだことにしてそれをこっそり流してくればいい」
「え~?」
本気で言ってるのかしら。
「頼む名無しさん。 君しか頼れる人はいないんだ!」
「でも、絶対にばれるよ? 怒られちゃうよ」
「大丈夫! あの2人はまだ当分帰って来ない。今のうちにささっとその液体をどこかに捨ててくれ!!」
「ダメだよ、だってこれ飲まないともっと苦しむことになるんだよ?」
「私は我慢強いんだ。大丈夫! 一度くらい薬を飲まなくても耐えられる! お願いだからそれをいますぐ捨ててくれ!!!」
ベッドの上でそう懇願するこのクローバーの塔の領主ナイトメア様。(確か1番偉いんだよね?)
第一印象はミステリアスな人だったけれど、今となってはそれもきれいさっぱりなくなった。ただの子どもみたいだ。
「名無しさん、ひどいぞ。私は子どもじゃない」
「具合悪いのに人の心を読まないでよ。そんなヒマがあるなら、とにかく薬を飲んで」
「むりだ。薬をのむ元気なんてない。はやくそれを処分してくれ……!」
高熱のはずなのに結構な大声で叫びながら私の手を掴むが、その手はやはり熱い。
こんなに熱い手をし、顔を青白くし、フラフラしているというのに、彼は飲み薬を全力で拒んでいる。
「だめ。私だってナイトメアには治ってほしいもん。薬はのんでください!!」
「……どうしてもだめなのか、名無しさん?」
「ダメだよ。 ……そんな目で見てもダメ!」
すがるように私を見る彼に耐えられず、私は視線を外す。
「しかたない。それなら諦めよう」
そう言って彼は私の手から飲み薬を持っていく。
「少量だしすぐ飲めるよ。お水も用意してあるし」
そう勇気付けてあげた私だったけれど、その飲み薬を見つめるナイトメアを見て嫌な予感がした。……まさかね?
「……ナイトメア。それ、こぼさないでね?」
「ぎくっ!!」
わざとらしいくらいにびくりとするナイトメア。
「今わざとこぼそうとか考えてたんでしょ!?」
「そ、そんなことなど考えていない!!」
「じゃあ早く飲みなよ! っていうか心配だから私が飲ませてあげる」
私が薬に手を伸ばすとナイトメアはさっと薬を持った手を上へあげる。
病人のくせにこういう時は機敏だわ、この人。
「一人で飲める! 飲んでおくから、もう名無しさんは向こうへ行ってなさい」
「ダメだよ。私はグレイに見張りを頼まれたんだから。 私がその薬を飲ませてあげる!」
「こ、こら名無しさん! やめなさい!」
ぎゃーぎゃーと薬を取り合う私達。
するとその時だった。
「……何を騒いでいるんですか、二人とも」
その声に私たちはぴたりと止まってドアの方を振り返る。
呆れたような表情のグレイと苦笑するアリスが立っていた。
「病人を襲うなんて結構大胆ね。名無しさん」
ナイトメアに覆いかぶさるように乗っかっていた私と、抵抗しまくっていたナイトメアを見てアリスが結構すごいことを言った気もするけど、私たちはそれどころじゃなかった。
「げ! グレイ!」
「ねぇグレイ、ナイトメアってば薬を飲むのが嫌だからってわざとこぼそうって考えてるんだよ!?」
私はベッドから降りると、その脇に立ってナイトメアを指さした。
「わざとこぼそうなんて考えてないぞ! こぼれることもありうるなぁとは考えていたが……」
「うそばっかり」
口を尖らせる私の元へグレイがやってくる。
彼は私に「押しつけてすまなかったな」と言い、ナイトメアのベッドの横にぴたりと立った。
「ナイトメア様、名無しさんを困らせないでください。大人しく薬を飲んでください」
そう言ったかと思うと、グレイはすっとアリスに視線を送る。
彼女はうなずいて、ささっとナイトメアの前にやってくると鮮やかな手つきで薬を奪い取った。
「あ、アリス! 何をする!?」
「いい子にしてればすぐに終わるわよ」
うふふっ、とでもいうような感じでアリスはにこやかに笑った。
あれよあれよという間にグレイがナイトメアを押さえ、アリスが薬を彼の口元へ持っていく。
「うわ~……」
呆然と見守る私。
なんというかもうチームプレイ? グレイとアリスの息の合ったコンビネーションに見とれることしかできなかった。
「うっ……ま、まずっ……!」
「吐いたら、もう一度飲まなきゃいけないんですからね」
「そうよ。我慢してほら、水飲んで!」
「うぅ。鬼か……鬼なんだなお前たち」
「あなたのためです」
この世界もすごそうだけれど、このクローバーの塔もすごそうだなぁ。
3人のやり取りをただただ驚いて見ていた。
するとグレイが振り返る。
「いつものことなんだ。すまないな、驚かせて」
「あぁ、うん。すごいね。大変だね」
いつものこと……これをいつもしてるんだ。
グレイってクールっぽく見えるけど、このドタバタ騒ぎをいつも……(大変だなぁ)
「そのうちに慣れるわよ。これは日常茶飯事」
「……そうなんだ」
「まぁ、名無しさんもかなり逞しいっていうことが分かったから心配はしてないけどね」
「逞しい?」
「まさか馬乗りになってるとは思わなかったわ」
「!!」
くすくすっと笑うアリスと、笑いをこらえているようなグレイ。
私は自分のしでかしたことを思い出して、ひたすら赤面するのみだった。
慣れないおかしな世界で過ごす私。
みんな優しくしてくれるけれど、私も気持ちを張りつめているし、疲れが出るのは当然だと思う。
疲れから風邪をひいて寝込む、というのはよくある話だけれど・・・・・・。
「……40.2度ね」
「やはりな」
「さっきからおかしかったものね。いつにもまして」
「そうだな」
とても冷静で事務的な会話を繰り広げる目の前の2人。
アリスは体温計をしまい、グレイは引き出しから薬箱を取り出した。
「ナイトメア様、寝てください」
「今、氷枕をもってきてあげるわね」
熱を出したのは、この世界の元からの住人ナイトメアの方だった。私ではない。
私はというとすごく元気。頑丈……いや、丈夫なのだ。(女子だしね、頑丈って嫌だよね)
彼らは私の隣に座るナイトメアを見た。
顔は青白く、目は潤み、フラフラとしているように見える。
そりゃそうだ。
40.2度とかってちょっと普通じゃない高熱だよね?(私はそんな体温になったことがない)
そんな高熱に動揺することもなく、グレイとアリスはテキパキとした対応。慣れって恐ろしいわ。
しかし、一番恐ろしいのは発熱中の本人だ。
「……寝るのはいいが、私は薬なんて飲まんぞ」
きっぱりとそう言ったナイトメアに私は思わず「は!?」と聞き返してしまった。
「40度ある人が何言ってるの」
熱でおかしくなったのかと思ったけれど、そうではないらしい。
グレイが落ち着き払ってこう言った。
「じゃあ薬はいいです。今すぐ病院へ行きましょう」
「嫌だ!!! 絶対に病院なんていかないぞ!!!」
「じゃあせめて薬を飲んでください」
グレイの言葉に素晴らしい反応の速さを見せたナイトメアだったけれど、さらに素晴らしい速さを見せるグレイ。
さすがのナイトメアも撃沈した。
「……嫌だ」
「本当なら病院に行って注射をし、さらに薬を飲んでいただきたい所なんですよ。薬だけでいいと言ってるんです。飲んでください」
「……うぅ」
言葉を返せなかったらしいナイトメアはトボトボとベッドへ入っていく。
その後姿を見ながら「なんか大変そうだなぁ」と思っていたら、グレイが私に言った。
「名無しさん、俺とアリスで氷枕や必要なものを用意してくる。その間ナイトメア様を頼む」
「う、うん」
「40度あるし大人しくしているとは思うが、無茶なことをしないように見張っておいてくれ」
「……無茶なこと?」
何をするというんだろうと思った私の心を読んだかのように、アリスが笑いながら言った。
「こないだは38.5度で脱走を図ったの。薬が嫌だからっていう理由で」
「そ、それはすごいね」
びっくりする私にグレイがため息交じりに笑う。
「そうなんだ。とにかく病院と薬の嫌いな方だが、さすがに40度はまずい。できればこの薬も飲ませておいてくれ」
「わかった」
グレイから薬を受け取ったけれど、これってかなりの大役を任されたんじゃ……。
私はちらりとナイトメアを見て不安になる。
「じゃあ名無しさん、少しの間だけナイトメア様を頼んだぞ」
グレイはそう言ってアリスと一緒に部屋を出て行った。
私はベッドで横になったナイトメアに布団をかけなおす。
「大丈夫?」
「……大丈夫じゃない。あたまがいたい……」
「そうだよね、40度だもんね」
私はそう言いながら彼のおでこに触れてみた。
「うわ、あっつい!」
彼が病弱だというのはなんとなく感じていたけれど、これは半端じゃない虚弱体質だなぁ。
すぐに吐血するという話も信じられなかったけど……これはあり得る。
グレイから受け取った飲み薬の分量を量りながら、私はため息をついた。
この塔に来て10時間帯が経った。
何がなんだかわからないまま今こうして私はここにいる。
この世界の大体の所はアリスから聞いたけれど、どうやらとんでもない世界に来てしまったことだけは確かだった。
そして今、ナイトメアのとんでもない虚弱体質っぷりを目の当たりにしている。
「はい、ナイトメア。これ飲んで寝てれば少しは楽になるよ」
そう言って薬を差し出したが、彼はぷいっと横を向いた。
「のまない。薬なんてのまないぞ……!」
「でも飲んだ方がいいよ」
ぷいぷいっとさらに顔をそむけるナイトメア。
……子どもか、この人。
「ねていれば治る。だから名無しさん、その薬はいらないぞ」
「でも、グレイが飲ませろって言ってたし、もう用意しちゃったし」
「飲んだことにしてそれをこっそり流してくればいい」
「え~?」
本気で言ってるのかしら。
「頼む名無しさん。 君しか頼れる人はいないんだ!」
「でも、絶対にばれるよ? 怒られちゃうよ」
「大丈夫! あの2人はまだ当分帰って来ない。今のうちにささっとその液体をどこかに捨ててくれ!!」
「ダメだよ、だってこれ飲まないともっと苦しむことになるんだよ?」
「私は我慢強いんだ。大丈夫! 一度くらい薬を飲まなくても耐えられる! お願いだからそれをいますぐ捨ててくれ!!!」
ベッドの上でそう懇願するこのクローバーの塔の領主ナイトメア様。(確か1番偉いんだよね?)
第一印象はミステリアスな人だったけれど、今となってはそれもきれいさっぱりなくなった。ただの子どもみたいだ。
「名無しさん、ひどいぞ。私は子どもじゃない」
「具合悪いのに人の心を読まないでよ。そんなヒマがあるなら、とにかく薬を飲んで」
「むりだ。薬をのむ元気なんてない。はやくそれを処分してくれ……!」
高熱のはずなのに結構な大声で叫びながら私の手を掴むが、その手はやはり熱い。
こんなに熱い手をし、顔を青白くし、フラフラしているというのに、彼は飲み薬を全力で拒んでいる。
「だめ。私だってナイトメアには治ってほしいもん。薬はのんでください!!」
「……どうしてもだめなのか、名無しさん?」
「ダメだよ。 ……そんな目で見てもダメ!」
すがるように私を見る彼に耐えられず、私は視線を外す。
「しかたない。それなら諦めよう」
そう言って彼は私の手から飲み薬を持っていく。
「少量だしすぐ飲めるよ。お水も用意してあるし」
そう勇気付けてあげた私だったけれど、その飲み薬を見つめるナイトメアを見て嫌な予感がした。……まさかね?
「……ナイトメア。それ、こぼさないでね?」
「ぎくっ!!」
わざとらしいくらいにびくりとするナイトメア。
「今わざとこぼそうとか考えてたんでしょ!?」
「そ、そんなことなど考えていない!!」
「じゃあ早く飲みなよ! っていうか心配だから私が飲ませてあげる」
私が薬に手を伸ばすとナイトメアはさっと薬を持った手を上へあげる。
病人のくせにこういう時は機敏だわ、この人。
「一人で飲める! 飲んでおくから、もう名無しさんは向こうへ行ってなさい」
「ダメだよ。私はグレイに見張りを頼まれたんだから。 私がその薬を飲ませてあげる!」
「こ、こら名無しさん! やめなさい!」
ぎゃーぎゃーと薬を取り合う私達。
するとその時だった。
「……何を騒いでいるんですか、二人とも」
その声に私たちはぴたりと止まってドアの方を振り返る。
呆れたような表情のグレイと苦笑するアリスが立っていた。
「病人を襲うなんて結構大胆ね。名無しさん」
ナイトメアに覆いかぶさるように乗っかっていた私と、抵抗しまくっていたナイトメアを見てアリスが結構すごいことを言った気もするけど、私たちはそれどころじゃなかった。
「げ! グレイ!」
「ねぇグレイ、ナイトメアってば薬を飲むのが嫌だからってわざとこぼそうって考えてるんだよ!?」
私はベッドから降りると、その脇に立ってナイトメアを指さした。
「わざとこぼそうなんて考えてないぞ! こぼれることもありうるなぁとは考えていたが……」
「うそばっかり」
口を尖らせる私の元へグレイがやってくる。
彼は私に「押しつけてすまなかったな」と言い、ナイトメアのベッドの横にぴたりと立った。
「ナイトメア様、名無しさんを困らせないでください。大人しく薬を飲んでください」
そう言ったかと思うと、グレイはすっとアリスに視線を送る。
彼女はうなずいて、ささっとナイトメアの前にやってくると鮮やかな手つきで薬を奪い取った。
「あ、アリス! 何をする!?」
「いい子にしてればすぐに終わるわよ」
うふふっ、とでもいうような感じでアリスはにこやかに笑った。
あれよあれよという間にグレイがナイトメアを押さえ、アリスが薬を彼の口元へ持っていく。
「うわ~……」
呆然と見守る私。
なんというかもうチームプレイ? グレイとアリスの息の合ったコンビネーションに見とれることしかできなかった。
「うっ……ま、まずっ……!」
「吐いたら、もう一度飲まなきゃいけないんですからね」
「そうよ。我慢してほら、水飲んで!」
「うぅ。鬼か……鬼なんだなお前たち」
「あなたのためです」
この世界もすごそうだけれど、このクローバーの塔もすごそうだなぁ。
3人のやり取りをただただ驚いて見ていた。
するとグレイが振り返る。
「いつものことなんだ。すまないな、驚かせて」
「あぁ、うん。すごいね。大変だね」
いつものこと……これをいつもしてるんだ。
グレイってクールっぽく見えるけど、このドタバタ騒ぎをいつも……(大変だなぁ)
「そのうちに慣れるわよ。これは日常茶飯事」
「……そうなんだ」
「まぁ、名無しさんもかなり逞しいっていうことが分かったから心配はしてないけどね」
「逞しい?」
「まさか馬乗りになってるとは思わなかったわ」
「!!」
くすくすっと笑うアリスと、笑いをこらえているようなグレイ。
私は自分のしでかしたことを思い出して、ひたすら赤面するのみだった。