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【1.見知らぬ場所】
見知らぬ場所で迷子になってしまった。
あちこちうろうろと歩き回ったけれど、どうしていいのか全然わからない。
その空間はうねうねと奇妙な曲がり方をしている階段と、色々な形のドアが不自然なほどたくさん並んでいるけれど、不思議と開けてみようなんて思わなかった。
できれば触りたくない。
「……どうしよう? ここどこ?」
だだっ広くて、階段とドアばかりの奇妙な場所に一人きり。
さすがに泣きそうになった時だった。
「なにをしている?」
その声にはっと顔を上げる。
すらりとした長身の男の人がじっと私を見つめて立っていた。
黒いコートとスーツに、黒い髪の毛。黒い切れ長の目。
ちょっと冷たそうな感じがする。
ちらりと見える首の入れ墨らしきものも怖い。
「えぇと、すみません。迷子になってしまったみたいで、出口を探しているのですが……」
「迷子?」
彼はそう言って目を細めた。
私を頭のてっぺんから足のつま先まで眺めるその視線は、ものすごく警戒しているというか、「こいつは危険かどうか?」というのをチェックしているようだった。
全身の血がぞわぁっと走って、体が冷え切る感じがした。
「君はどこから入ってきたんだ?」
「わかりません」
私の答えに顔をしかめる彼。
「……余所者? いや、まさかな。あれが来るのは珍しい。同時に2人もやってくるなど……」
「?」
今度は私が首を傾げる番だった。
すると、今度は別の声が聞こえてくる。
「ふふふ。グレイ。珍しく悩んでいるな」
見ると、いつの間にか彼の後ろにもう一人別の男の人がいた。
サラサラな銀髪と黒い眼帯。華奢で色白なその人に、グレイと呼ばれた入れ墨の彼はさっと身を引いて小さく頭を下げた。
「女の子にそう怖い顔をしてはいけないよ」
楽しそうに言う銀髪の人に、入れ墨の彼は「はぁ、しかし……」と言う。
銀髪の人の方が偉いのかもしれない。
彼らを見ていると、銀髪の人がすっと視線を向けた。眼帯のせいかやたら色っぽくミステリアスに見える。
「君は余所者だね。名無しさん」
銀髪の人に突然名前を言われて驚く私と、「余所者」という言葉に驚いた様子の入れ墨の彼。
「ふふふ、楽しいじゃないか。このクローバーの塔にアリスと名無しさん、2人の余所者が一緒にいるなんて。他の奴らは羨ましがるだろうなぁ」
「ナイトメア様、浮かれていませんか?」
「う、浮かれてなどいないぞ? 私は迷い込んだ余所者を突き放すことができないだけだ」
「……」
「グレイ、なんだその目は」
「いえ、部屋はたくさんありますしいいんですけどね。ただ、彼女の意志を尊重するべきでは?」
入れ墨の人はそう言いながら、ちらりと私を見る。
「なにを言う! この塔以外の場所へ行かせてみろ。危険な目に遭うに決まっているだろう」
「まぁ、そうかもしれませんね」
彼らの会話の内容はまったくわからない。でも私のことを話しているようだった。そしてどうやら心配してくれているらしい。
「それにここにはアリスがいる。同じ余所者同士、仲良く過ごせるんじゃないか。いや、きっと仲良くなる!」
ナイトメア様と呼ばれた銀髪の人は、そう言って私を見る。
それにつられるように入れ墨の彼も私を見る。
なにこの迫力。顔がいい人たちに見つめられると、こうも迫力があるものなのね。(耐えられない!)
「……えぇと。できれば家に帰りたいのですが」
そっと自己主張してみた。
すると銀髪のナイトメア様はふふふと笑った。
「帰る? 帰りたいならばいつだって道は用意されているよ。いつでも自由に帰れる」
意味深な言い方に私はちょっと怖くなる。
顔をしかめる私を見て、入れ墨の彼が言う。
「ナイトメア様、女性を混乱させるのはよくないですよ。怖がらせてどうするんですか。とにかく上へ戻りましょう」
彼はそう言ってナイトメア様の背中を押す。
そして、私を見て言った。
「名無しさん、君も一緒に来るといい」
「……はぁ」
とりあえず彼のいう通りにした方が良さそうだ。
私は2人の後ろをついていくことにした。
「余所者!?」
大きな部屋に通された私。
私を見ながらナイトメアの話を聞いていた美少女(コスプレかというくらい可愛らしいふりふりの青い服を着ている)は声を上げた。
「そう。余所者。君と一緒だな。アリス」
ナイトメアはそう言って笑った。
アリスと呼ばれた美少女は、大きな目をぱちぱちさせて私を見る。そしてふわぁっと花が開くように笑った。
「すごい! 余所者って私の他にもいるのね!」
ズッギュンときました。ハイ。元から可愛いくせに、さらにすっごい可愛くわらうんですけど!!
あまりの可愛らしさにくらくらしている私をよそに、彼女は私に笑いかけてくる。
「私はアリスよ。よろしくね!」
「あぁ、はい。私は名無しさんです」
「うわぁ、すごいわー! 嬉しい!同じ余所者同士仲良くしましょう! この世界はすっごく変よ? 平気でバンバン銃は撃ち合うし、昼とか夜とかめちゃくちゃだし」
「え?え?」
言っていることが全く分からないのですが。(銃?)
「だいたいね、うさ耳と猫耳の本物がいるのよ!?」
「本物?」
「そうそう。うさ耳をはやした大きな男とか、猫耳に尻尾まである気まぐれな人とか」
「うそ」
うさ耳男なんてどうかと思うんですけど。
「ほんとほんと! 初めはびっくりしたけどね、すっごーく触り心地がいいのよー!! 特にあのうさ耳!!! 名無しさんにも触らせてあげたいわ!」
「触ってみたいかも。私うさぎ好きだから」
「じゃあぜひ今度いっしょにあのうさ耳をひっぱりに行きましょう!!」
「うん、行く行く!!」
手を取り合ってわいわい騒ぐ私達。
「意気投合しているな」
そう言いながらグレイが珈琲を運んできてくれた。
怖そうに見えたけどほんとはいい人なのかもしれない。
「ほら見ろ。私の言った通りだろう? アリスと名無しさんは仲良くなれるんだ」
受け取った珈琲に砂糖とミルクをたっぷり入れながらナイトメアが笑う。
「かなり危険な感じの気の合い方ですね。敵とはいえ、弱点を引っ張られるなど気の毒だな」
グレイが遠い目をしていたけれど、なんだか楽しくなってしまった私は特に気にならない。
そんなこんなで結局私は、このクローバーの塔に滞在することになったのだった。
見知らぬ場所で迷子になってしまった。
あちこちうろうろと歩き回ったけれど、どうしていいのか全然わからない。
その空間はうねうねと奇妙な曲がり方をしている階段と、色々な形のドアが不自然なほどたくさん並んでいるけれど、不思議と開けてみようなんて思わなかった。
できれば触りたくない。
「……どうしよう? ここどこ?」
だだっ広くて、階段とドアばかりの奇妙な場所に一人きり。
さすがに泣きそうになった時だった。
「なにをしている?」
その声にはっと顔を上げる。
すらりとした長身の男の人がじっと私を見つめて立っていた。
黒いコートとスーツに、黒い髪の毛。黒い切れ長の目。
ちょっと冷たそうな感じがする。
ちらりと見える首の入れ墨らしきものも怖い。
「えぇと、すみません。迷子になってしまったみたいで、出口を探しているのですが……」
「迷子?」
彼はそう言って目を細めた。
私を頭のてっぺんから足のつま先まで眺めるその視線は、ものすごく警戒しているというか、「こいつは危険かどうか?」というのをチェックしているようだった。
全身の血がぞわぁっと走って、体が冷え切る感じがした。
「君はどこから入ってきたんだ?」
「わかりません」
私の答えに顔をしかめる彼。
「……余所者? いや、まさかな。あれが来るのは珍しい。同時に2人もやってくるなど……」
「?」
今度は私が首を傾げる番だった。
すると、今度は別の声が聞こえてくる。
「ふふふ。グレイ。珍しく悩んでいるな」
見ると、いつの間にか彼の後ろにもう一人別の男の人がいた。
サラサラな銀髪と黒い眼帯。華奢で色白なその人に、グレイと呼ばれた入れ墨の彼はさっと身を引いて小さく頭を下げた。
「女の子にそう怖い顔をしてはいけないよ」
楽しそうに言う銀髪の人に、入れ墨の彼は「はぁ、しかし……」と言う。
銀髪の人の方が偉いのかもしれない。
彼らを見ていると、銀髪の人がすっと視線を向けた。眼帯のせいかやたら色っぽくミステリアスに見える。
「君は余所者だね。名無しさん」
銀髪の人に突然名前を言われて驚く私と、「余所者」という言葉に驚いた様子の入れ墨の彼。
「ふふふ、楽しいじゃないか。このクローバーの塔にアリスと名無しさん、2人の余所者が一緒にいるなんて。他の奴らは羨ましがるだろうなぁ」
「ナイトメア様、浮かれていませんか?」
「う、浮かれてなどいないぞ? 私は迷い込んだ余所者を突き放すことができないだけだ」
「……」
「グレイ、なんだその目は」
「いえ、部屋はたくさんありますしいいんですけどね。ただ、彼女の意志を尊重するべきでは?」
入れ墨の人はそう言いながら、ちらりと私を見る。
「なにを言う! この塔以外の場所へ行かせてみろ。危険な目に遭うに決まっているだろう」
「まぁ、そうかもしれませんね」
彼らの会話の内容はまったくわからない。でも私のことを話しているようだった。そしてどうやら心配してくれているらしい。
「それにここにはアリスがいる。同じ余所者同士、仲良く過ごせるんじゃないか。いや、きっと仲良くなる!」
ナイトメア様と呼ばれた銀髪の人は、そう言って私を見る。
それにつられるように入れ墨の彼も私を見る。
なにこの迫力。顔がいい人たちに見つめられると、こうも迫力があるものなのね。(耐えられない!)
「……えぇと。できれば家に帰りたいのですが」
そっと自己主張してみた。
すると銀髪のナイトメア様はふふふと笑った。
「帰る? 帰りたいならばいつだって道は用意されているよ。いつでも自由に帰れる」
意味深な言い方に私はちょっと怖くなる。
顔をしかめる私を見て、入れ墨の彼が言う。
「ナイトメア様、女性を混乱させるのはよくないですよ。怖がらせてどうするんですか。とにかく上へ戻りましょう」
彼はそう言ってナイトメア様の背中を押す。
そして、私を見て言った。
「名無しさん、君も一緒に来るといい」
「……はぁ」
とりあえず彼のいう通りにした方が良さそうだ。
私は2人の後ろをついていくことにした。
「余所者!?」
大きな部屋に通された私。
私を見ながらナイトメアの話を聞いていた美少女(コスプレかというくらい可愛らしいふりふりの青い服を着ている)は声を上げた。
「そう。余所者。君と一緒だな。アリス」
ナイトメアはそう言って笑った。
アリスと呼ばれた美少女は、大きな目をぱちぱちさせて私を見る。そしてふわぁっと花が開くように笑った。
「すごい! 余所者って私の他にもいるのね!」
ズッギュンときました。ハイ。元から可愛いくせに、さらにすっごい可愛くわらうんですけど!!
あまりの可愛らしさにくらくらしている私をよそに、彼女は私に笑いかけてくる。
「私はアリスよ。よろしくね!」
「あぁ、はい。私は名無しさんです」
「うわぁ、すごいわー! 嬉しい!同じ余所者同士仲良くしましょう! この世界はすっごく変よ? 平気でバンバン銃は撃ち合うし、昼とか夜とかめちゃくちゃだし」
「え?え?」
言っていることが全く分からないのですが。(銃?)
「だいたいね、うさ耳と猫耳の本物がいるのよ!?」
「本物?」
「そうそう。うさ耳をはやした大きな男とか、猫耳に尻尾まである気まぐれな人とか」
「うそ」
うさ耳男なんてどうかと思うんですけど。
「ほんとほんと! 初めはびっくりしたけどね、すっごーく触り心地がいいのよー!! 特にあのうさ耳!!! 名無しさんにも触らせてあげたいわ!」
「触ってみたいかも。私うさぎ好きだから」
「じゃあぜひ今度いっしょにあのうさ耳をひっぱりに行きましょう!!」
「うん、行く行く!!」
手を取り合ってわいわい騒ぐ私達。
「意気投合しているな」
そう言いながらグレイが珈琲を運んできてくれた。
怖そうに見えたけどほんとはいい人なのかもしれない。
「ほら見ろ。私の言った通りだろう? アリスと名無しさんは仲良くなれるんだ」
受け取った珈琲に砂糖とミルクをたっぷり入れながらナイトメアが笑う。
「かなり危険な感じの気の合い方ですね。敵とはいえ、弱点を引っ張られるなど気の毒だな」
グレイが遠い目をしていたけれど、なんだか楽しくなってしまった私は特に気にならない。
そんなこんなで結局私は、このクローバーの塔に滞在することになったのだった。
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