マイペース
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【3.賑やかな病室】
「あーもうさっさと観念して飲みなさいよ!薬くらいなんてことないでしょう?」
「……名無しさん、なんだかすごく怖いのだが」
私の勢いに、ナイトメアがベッドの上で怯えている。
「もういい大人なんだから、薬くらいささっと飲んで39度の熱くらいささっと下げてもらいたいんです!」
そう言って無理やり薬を飲ませにかかると、ナイトメアはぎゃーぎゃーと悲鳴を上げる。
「ちょ、ちょっと待て名無しさん!落ち着け!! ほら、女の子がそんな男のベッドに上がってくるなんてはしたないっ!」
「病人を襲うような真似を私がするわけないでしょう? っていうかナイトメアを襲うことも絶対にないから安心して」
「うぅ、そこまできっぱり言うことないだろう!? とにかく、今私は君に襲われているぞ! 薬を持って近づかないでくれ!!」
「……ほんとに病人なの? ナイトメア……」
「……ほんとに病人だ。だから薬を飲ませたんだろう? 病人をいたわる、ということを名無しさんは覚えておいた方がいいぞ……」
ぐったりする私と、げっそりするナイトメア。
薬を飲む飲まないの攻防を繰り広げた私達だったが、それもたったいま決着がついた。
なんとか薬を飲ませた私はぐったりと疲れ、薬を飲んだナイトメアはますます顔色が悪くなっていた。(薬を飲んだのに!)
こういう無駄な体力を使うのはやめてほしい。私だってかなり体力を消耗したよ?
「はぁ、もういいや。薬をちゃんと飲んでくれさえすれば」
私はそう言って、ナイトメアのベッドの脇にある椅子に座った。
「どうして名無しさんはそこまでご機嫌斜めなんだ?」
「え?」
「何かあったんだろう? 私でストレスを発散しているのかと思ったんだが……」
ナイトメアはそう言ってぼんやりと私を見る。
「あぁ、ばれてたんだね。ごめん」
「……本当に名無しさんは私の扱いが酷いな。まさか本当に私でストレスを発散していたとは」
苦笑するナイトメアを見て申し訳ない気持ちになる。
するとそんな気持ちを読み取ったらしい。
彼はふわりと笑った。
「まぁ、いい。君の気持ちが少しでも晴れるならね。それで? 何があったんだ?」
「うん。さっきね、時計屋さんに会ったんだけど……」
「時計屋? 時計屋ってあのユリウス=モンレーか?」
「え、名前は知らないけど、髪の毛が長くて、なんかちょっと怖い人」
私の説明にナイトメアは「あぁ、それは時計屋だな」と頷いた。
そしてさらに独り言のようにつぶやく。
「……そうか、時計屋が来たのか。この塔のドアとつながったんだな」
「うん。グレイはそう言ってた。どういう意味か全然わからないけど、それってつまりどういうことなの?」
「エイプリルシーズンが来たからこの世界にも季節が来たんだ。それでここは冬になって、この塔のドアと時計屋のドアがつながったんだよ」
「????」
ナイトメアの言葉は説明と言えるのかも分からないものだった。
首を傾げる私に、彼はこう言った。
「これ以上説明のしようがないよ」
「……そういうものだと思うしかないってことね?」
「そうそう」
私の言葉にナイトメアはうなずいた。
まぁ、確かに元からこの世界は意味が分からないものだった。今さら原因や理由など気にするなんてやめておこう。
そう切り替えることにした私は、先ほどの時計屋さんとの出来事を話した。
ナイトメアはふむふむと話を聞いていたが、私の話が終わるとふふふと笑った。
「な、何がおかしいの?」
「いや、時計屋らしいなと思ってね」
「……かなり感じ悪い人だなぁって思っちゃったんだけど」
「まぁ、初めはそうかもしれないな。でも根は悪いやつじゃないんだ。ちょっと卑屈で、ちょっと毒舌で、ちょっと感じ悪いだけだから」
「それ、けっこうだよね?」
ナイトメアの言葉に思わずツッコむ。
すると彼は楽しそうに笑った。
「付き合いが長くなれば彼のことがわかるよ。そんなに悪いやつじゃないってね。時計屋の場合、このまま付き合いもなく終わるということも十分にあるがね」
「どういう意味?」
「彼は必要以上に外へ出てこないからね」
「え、そうなの?」
「あぁ。私もだいぶ彼には会っていないよ」
「へぇ。そうなんだ。じゃあ私今日だけで2回も遭遇したんだけど、それってけっこう貴重だったのかな?」
「それはすごい。かなり貴重だぞ、名無しさん!」
「えー!そうだったんだぁ! なんかちょっと嬉しい」
レアな生き物を見た!っていう感じ。(私っておめでたいなぁ)
「なんにしても、彼の言葉に傷つく必要なんてないよ。そういう言い方しかできない奴だとでも思っておけば間違いない」
「……なんか信じられないなぁ」
時計屋さんとのやり取りを思い出す。
すごい険しい顔で、上から目線な物言いで、話題を吹っかけてきたくせにばっさりと切り捨てる。
……全然あの人のいいところが見つからない。
そう思った時、
『礼を言う』
という彼の言葉が頭に響いた。
そして、その時の目と照れたように視線を外されたことを思い出す。
ちょっと感じの悪い人だけど、一応の礼儀はわきまえているのかもしれない。
心の中でそう思った時、
「根はいい奴だよ。たぶん」
ナイトメアが楽しそうに言った。
「あーもうさっさと観念して飲みなさいよ!薬くらいなんてことないでしょう?」
「……名無しさん、なんだかすごく怖いのだが」
私の勢いに、ナイトメアがベッドの上で怯えている。
「もういい大人なんだから、薬くらいささっと飲んで39度の熱くらいささっと下げてもらいたいんです!」
そう言って無理やり薬を飲ませにかかると、ナイトメアはぎゃーぎゃーと悲鳴を上げる。
「ちょ、ちょっと待て名無しさん!落ち着け!! ほら、女の子がそんな男のベッドに上がってくるなんてはしたないっ!」
「病人を襲うような真似を私がするわけないでしょう? っていうかナイトメアを襲うことも絶対にないから安心して」
「うぅ、そこまできっぱり言うことないだろう!? とにかく、今私は君に襲われているぞ! 薬を持って近づかないでくれ!!」
「……ほんとに病人なの? ナイトメア……」
「……ほんとに病人だ。だから薬を飲ませたんだろう? 病人をいたわる、ということを名無しさんは覚えておいた方がいいぞ……」
ぐったりする私と、げっそりするナイトメア。
薬を飲む飲まないの攻防を繰り広げた私達だったが、それもたったいま決着がついた。
なんとか薬を飲ませた私はぐったりと疲れ、薬を飲んだナイトメアはますます顔色が悪くなっていた。(薬を飲んだのに!)
こういう無駄な体力を使うのはやめてほしい。私だってかなり体力を消耗したよ?
「はぁ、もういいや。薬をちゃんと飲んでくれさえすれば」
私はそう言って、ナイトメアのベッドの脇にある椅子に座った。
「どうして名無しさんはそこまでご機嫌斜めなんだ?」
「え?」
「何かあったんだろう? 私でストレスを発散しているのかと思ったんだが……」
ナイトメアはそう言ってぼんやりと私を見る。
「あぁ、ばれてたんだね。ごめん」
「……本当に名無しさんは私の扱いが酷いな。まさか本当に私でストレスを発散していたとは」
苦笑するナイトメアを見て申し訳ない気持ちになる。
するとそんな気持ちを読み取ったらしい。
彼はふわりと笑った。
「まぁ、いい。君の気持ちが少しでも晴れるならね。それで? 何があったんだ?」
「うん。さっきね、時計屋さんに会ったんだけど……」
「時計屋? 時計屋ってあのユリウス=モンレーか?」
「え、名前は知らないけど、髪の毛が長くて、なんかちょっと怖い人」
私の説明にナイトメアは「あぁ、それは時計屋だな」と頷いた。
そしてさらに独り言のようにつぶやく。
「……そうか、時計屋が来たのか。この塔のドアとつながったんだな」
「うん。グレイはそう言ってた。どういう意味か全然わからないけど、それってつまりどういうことなの?」
「エイプリルシーズンが来たからこの世界にも季節が来たんだ。それでここは冬になって、この塔のドアと時計屋のドアがつながったんだよ」
「????」
ナイトメアの言葉は説明と言えるのかも分からないものだった。
首を傾げる私に、彼はこう言った。
「これ以上説明のしようがないよ」
「……そういうものだと思うしかないってことね?」
「そうそう」
私の言葉にナイトメアはうなずいた。
まぁ、確かに元からこの世界は意味が分からないものだった。今さら原因や理由など気にするなんてやめておこう。
そう切り替えることにした私は、先ほどの時計屋さんとの出来事を話した。
ナイトメアはふむふむと話を聞いていたが、私の話が終わるとふふふと笑った。
「な、何がおかしいの?」
「いや、時計屋らしいなと思ってね」
「……かなり感じ悪い人だなぁって思っちゃったんだけど」
「まぁ、初めはそうかもしれないな。でも根は悪いやつじゃないんだ。ちょっと卑屈で、ちょっと毒舌で、ちょっと感じ悪いだけだから」
「それ、けっこうだよね?」
ナイトメアの言葉に思わずツッコむ。
すると彼は楽しそうに笑った。
「付き合いが長くなれば彼のことがわかるよ。そんなに悪いやつじゃないってね。時計屋の場合、このまま付き合いもなく終わるということも十分にあるがね」
「どういう意味?」
「彼は必要以上に外へ出てこないからね」
「え、そうなの?」
「あぁ。私もだいぶ彼には会っていないよ」
「へぇ。そうなんだ。じゃあ私今日だけで2回も遭遇したんだけど、それってけっこう貴重だったのかな?」
「それはすごい。かなり貴重だぞ、名無しさん!」
「えー!そうだったんだぁ! なんかちょっと嬉しい」
レアな生き物を見た!っていう感じ。(私っておめでたいなぁ)
「なんにしても、彼の言葉に傷つく必要なんてないよ。そういう言い方しかできない奴だとでも思っておけば間違いない」
「……なんか信じられないなぁ」
時計屋さんとのやり取りを思い出す。
すごい険しい顔で、上から目線な物言いで、話題を吹っかけてきたくせにばっさりと切り捨てる。
……全然あの人のいいところが見つからない。
そう思った時、
『礼を言う』
という彼の言葉が頭に響いた。
そして、その時の目と照れたように視線を外されたことを思い出す。
ちょっと感じの悪い人だけど、一応の礼儀はわきまえているのかもしれない。
心の中でそう思った時、
「根はいい奴だよ。たぶん」
ナイトメアが楽しそうに言った。