マイペース
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【2.最悪な印象】
「あ、グレイのコート持ってきちゃった……」
クローバーの塔に戻ってきた私は、自分の手に先ほど借りた黒いコートがあることに気づいた。
だいぶ階段を登って来たので、今から引き返すのもめんどくさい。
「ま、いいか。暑いって言ってたし」
あとで返そう。
私はコートを手にしたまま、ナイトメアの薬を取りに行く。
廊下をずんずん歩いていると、突如出現した新しい階段の近くまでやってきた。
「やっぱり夢じゃなかったんだ」
どこまで続いているのかわからない階段と、その階段を登っていた無愛想かつ怖そうな人。
グレイは「無愛想だが悪いやつでもない」と言っていたけれど、あの人からなんかすごい睨まれたような気もする。
「時計屋って言ってたけど、まさかこの階段の上に時計屋さんがオープンしたとかそういうこと?」
あの人が時計を売るのかな?
っていうか、あの人が客商売なんてできるのだろうか? (「いらっしゃいませ」すら言わなそうだよ?)
そんなことを思いながら、階段を通り過ぎようとした時だった。
ちかりと光るものが目に映る。
思わず立ち止まってよく見てみると、階段の3段目に小さなカギが落ちていた。
「なにこれ。どこのカギだろう?」
そっと拾い上げて辺りを見回すが、思い当たる場所はない。
……まさかあの時計屋さんが落としたとか?
「ありうる話かも。どうしよう」
とりあえずグレイに聞いてみようかな。
もし時計屋さんのだとしたら、グレイから渡してもらった方がいい気がする。知り合いみたいだし。
「うーん……でも今まさに時計屋さんが困っているかもしれない……」
もしも部屋の鍵だったら今頃部屋の前で困っているかも。(あの無愛想な顔で!)
いや、でも部屋の鍵だったらとっくの昔に探しに来てるはず。
落としたことに気づいていないかもしれない。
私は階段を見上げた。
……届けに行く?
「いや、ムリムリ。届けに行くなんて怖くてできない!」
知らない人だし、なんか怖そうだったし、第一あの人のカギかどうかわからないのだ。
「やっぱりグレイに聞いてみよう」
そう思って来た道を戻ることにした時だった。
「おい」
上から声がした。
びっくりして顔をあげると、階段の上からさっきの人が現れた。
「!!」
彼は眉間にしわを寄せ、険しい顔で私を見ている。
私は思わず固まった。
「お前が今拾ったそのカギを見せてくれ」
「え」
「カギを見せろと言っているんだ」
階段を下りてきた彼は、私の前に立つ。
なんだか威圧感。怖すぎるこの人……!
私は何も言えずに、言われるがままカギを差し出した。つもりだった。
「……こっちじゃない」
眉間にしわを寄せて彼がそう言った。
「!?」
彼の言葉に自分の差し出したものを見てはっとした。
私はなぜかカギを持った手ではなくて、グレイのコートを持っていた手を差し出していたのだった。
「ご、ごめんなさい!」
慌ててカギの方を差し出す。
アワアワする私を呆れたように見ていた時計屋さん。
「お前、トカゲの女か?」
「はい?」
……トカゲの女?
トカゲって……確かグレイのことだよねぇ?
「意外だな」
時計屋さんはじっと私を見つめてそう言った。
『意外』……つまり私はグレイの好みのタイプには到底見えないと、そう言いたいわけですね?
どうせ私はグレイには相手にしてもらえませんけどね、結構失礼なことをいいますね、あなた。
むっとしつつも冷静に答える。
「別にグレイとは恋人でもなんでもないですけど」
否定すると、時計屋さんは「まぁ、どうでもいいことだ」と言って私の手からカギをつまみ上げた。
うわ~、ほんとこの人失礼だわ。
自分から話題を振っておいて、ばっさり切り捨てるなんて。
むむっと口を尖らせる私をよそに、彼はカギをじっと見つめて「やはりな」とつぶやいた。
「これは私のものだ。返してもらおう」
そう言われて、私はこくんとうなずいた。
別に取ろうと思っていたわけでもないのに、この人の威圧感はなんだろう。
怖い上にやっぱり失礼な人だと思ってみていると、彼は私をちらりと見てこう言った。
「探していたんだ。礼を言う」
お礼を言われるとは思いもしなかったので、びっくりして彼を見つめ返すと、彼は気まずそうに(というよりも照れたように?)顔をそらす。そしてさっさと階段を登り始めた。
意外と怖くない人かもと思えた私は、彼の背中を見た瞬間に声をかけていた。
「あのっ……」
すると時計屋さんは足を止めてゆっくりと振り返る。
「……なんだ?」
眉間にしわを寄せているけれど、先ほどよりは柔らかい表情に見えた。
「ほんとにグレイとは何の関係もないんで、誤解しないでくださいね? ただの友達なんで!」
グレイに迷惑をかけたくない。
そう思って再度否定しておいた。
すると、時計屋さんはふっと笑った。
「お前がトカゲとどういう関係だろうが、私にとってはどうでもいいことだ」
「……そうかもしれないけど、誤解されても困るから」
「くだらないな」
彼はそう言って再び階段を登って行ってしまった。
「……やっぱりやな感じ」
思わずそうつぶやいてしまった私だった。
「あ、グレイのコート持ってきちゃった……」
クローバーの塔に戻ってきた私は、自分の手に先ほど借りた黒いコートがあることに気づいた。
だいぶ階段を登って来たので、今から引き返すのもめんどくさい。
「ま、いいか。暑いって言ってたし」
あとで返そう。
私はコートを手にしたまま、ナイトメアの薬を取りに行く。
廊下をずんずん歩いていると、突如出現した新しい階段の近くまでやってきた。
「やっぱり夢じゃなかったんだ」
どこまで続いているのかわからない階段と、その階段を登っていた無愛想かつ怖そうな人。
グレイは「無愛想だが悪いやつでもない」と言っていたけれど、あの人からなんかすごい睨まれたような気もする。
「時計屋って言ってたけど、まさかこの階段の上に時計屋さんがオープンしたとかそういうこと?」
あの人が時計を売るのかな?
っていうか、あの人が客商売なんてできるのだろうか? (「いらっしゃいませ」すら言わなそうだよ?)
そんなことを思いながら、階段を通り過ぎようとした時だった。
ちかりと光るものが目に映る。
思わず立ち止まってよく見てみると、階段の3段目に小さなカギが落ちていた。
「なにこれ。どこのカギだろう?」
そっと拾い上げて辺りを見回すが、思い当たる場所はない。
……まさかあの時計屋さんが落としたとか?
「ありうる話かも。どうしよう」
とりあえずグレイに聞いてみようかな。
もし時計屋さんのだとしたら、グレイから渡してもらった方がいい気がする。知り合いみたいだし。
「うーん……でも今まさに時計屋さんが困っているかもしれない……」
もしも部屋の鍵だったら今頃部屋の前で困っているかも。(あの無愛想な顔で!)
いや、でも部屋の鍵だったらとっくの昔に探しに来てるはず。
落としたことに気づいていないかもしれない。
私は階段を見上げた。
……届けに行く?
「いや、ムリムリ。届けに行くなんて怖くてできない!」
知らない人だし、なんか怖そうだったし、第一あの人のカギかどうかわからないのだ。
「やっぱりグレイに聞いてみよう」
そう思って来た道を戻ることにした時だった。
「おい」
上から声がした。
びっくりして顔をあげると、階段の上からさっきの人が現れた。
「!!」
彼は眉間にしわを寄せ、険しい顔で私を見ている。
私は思わず固まった。
「お前が今拾ったそのカギを見せてくれ」
「え」
「カギを見せろと言っているんだ」
階段を下りてきた彼は、私の前に立つ。
なんだか威圧感。怖すぎるこの人……!
私は何も言えずに、言われるがままカギを差し出した。つもりだった。
「……こっちじゃない」
眉間にしわを寄せて彼がそう言った。
「!?」
彼の言葉に自分の差し出したものを見てはっとした。
私はなぜかカギを持った手ではなくて、グレイのコートを持っていた手を差し出していたのだった。
「ご、ごめんなさい!」
慌ててカギの方を差し出す。
アワアワする私を呆れたように見ていた時計屋さん。
「お前、トカゲの女か?」
「はい?」
……トカゲの女?
トカゲって……確かグレイのことだよねぇ?
「意外だな」
時計屋さんはじっと私を見つめてそう言った。
『意外』……つまり私はグレイの好みのタイプには到底見えないと、そう言いたいわけですね?
どうせ私はグレイには相手にしてもらえませんけどね、結構失礼なことをいいますね、あなた。
むっとしつつも冷静に答える。
「別にグレイとは恋人でもなんでもないですけど」
否定すると、時計屋さんは「まぁ、どうでもいいことだ」と言って私の手からカギをつまみ上げた。
うわ~、ほんとこの人失礼だわ。
自分から話題を振っておいて、ばっさり切り捨てるなんて。
むむっと口を尖らせる私をよそに、彼はカギをじっと見つめて「やはりな」とつぶやいた。
「これは私のものだ。返してもらおう」
そう言われて、私はこくんとうなずいた。
別に取ろうと思っていたわけでもないのに、この人の威圧感はなんだろう。
怖い上にやっぱり失礼な人だと思ってみていると、彼は私をちらりと見てこう言った。
「探していたんだ。礼を言う」
お礼を言われるとは思いもしなかったので、びっくりして彼を見つめ返すと、彼は気まずそうに(というよりも照れたように?)顔をそらす。そしてさっさと階段を登り始めた。
意外と怖くない人かもと思えた私は、彼の背中を見た瞬間に声をかけていた。
「あのっ……」
すると時計屋さんは足を止めてゆっくりと振り返る。
「……なんだ?」
眉間にしわを寄せているけれど、先ほどよりは柔らかい表情に見えた。
「ほんとにグレイとは何の関係もないんで、誤解しないでくださいね? ただの友達なんで!」
グレイに迷惑をかけたくない。
そう思って再度否定しておいた。
すると、時計屋さんはふっと笑った。
「お前がトカゲとどういう関係だろうが、私にとってはどうでもいいことだ」
「……そうかもしれないけど、誤解されても困るから」
「くだらないな」
彼はそう言って再び階段を登って行ってしまった。
「……やっぱりやな感じ」
思わずそうつぶやいてしまった私だった。