短編
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【白く透明】
クローバーの塔に遊びに行ったら、ナイトメアがまた体調を崩していると聞いた。
39度の熱を出している上司に対して、グレイは「いつもの症状だしすぐに治るだろう」と普通に言っていた。
慣れって怖いなぁと思いつつ、ちらりと様子を見に行こうとナイトメアの部屋へ向かった私。
彼の部屋のドアはほんの少しだけ開いていた。
ナイトメアは白くて大きなベッドで上半身を起こし、大人しく本を読んでいた。
日の光が差し込む清潔な空間で、ページを繰る音だけが響く。
その姿があまりにも似合っていて、私はしばらくドアの隙間からこっそりと彼を見つめていた。
いつもぎゃーぎゃーとうるさいナイトメアだけれど、こうしてみるとかなり「病弱な美青年」という感じがする。
誰もが想像する病弱な美青年としては、かなり正しい姿。
「こんにちは、ナイトメア」
「あぁ、名無しさん。いらっしゃい」
私に気づいた彼は読んでいた本をぱたんと閉じると、ふわりと笑った。
見た所そんなに辛そうではない。
「熱があるんだって? 寝てなくて大丈夫なの?」
「あぁ、薬を飲んだからな。今は大丈夫だ」
穏やかにそう言った彼にものすごくびっくりした。
「薬? 薬を飲んだの?」
「あぁ、飲んだ。というかグレイに無理やり飲まされた」
ナイトメアはそう言って心底辛そうな顔をした。
「本当にあんな苦い薬をオブラートなしで飲ませるなんてひどい男だと思わないか?」
「大の大人がオブラートで薬を飲もうなんていうのがどうかと思うよ」
あきれ果ててそう言うと、ナイトメアは口を尖らせた。
「食後の薬らしいんだ。私はしばらく食事をとらないことにした。そうすれば薬を飲まなくて済むからな」
「……死んじゃうよ、それ」
色々と間違っている発言に思わずそう言ってしまった。
治るものも治らなくなってしまう。
「だいたい食事をとらなくたって、薬は飲ませると思うよ。グレイのことだから」
「ばかな! 食後の薬だぞ!?」
「うん、そうなんだけどね……ってナイトメアほんとに39度あるの?」
さっきまでは確実に「病弱な美青年」という感じがしていたけれど、なんだか一気にいつものナイトメアだなぁ。
この方が安心するといえばそうなんだけど。
そんなことを考えていると、ナイトメアはふらりとベッドに倒れる。
「え、どうしたの? 大丈夫??」
「あぁ、ちょっと大声を出したら眩暈が……」
おでこに手を当てて目を閉じるナイトメアに、思わずため息をついてしまった。
「もうそのまま寝ていた方がいいんじゃない? 薬を飲んだとはいっても、眠らないと治らないよ」
「しかしせっかく名無しさんが来てくれたのに眠るなんてもったいないじゃないか」
「!」
その言葉に私はナイトメアをじっと見つめた。
彼はそっと目を開けると天井を見つめたまま言う。
「君はなかなか私の所へ来てくれないからな」
「え?」
驚く私に、ナイトメアがすっと視線を移した。
その視線の動かし方は、病気の人特有の疲れ方というか、けだるげな感じと相まってやたらと色っぽく見えた。
なんだかドキドキしてしまった私は、上ずった声で言い返す。
「そ、そんなことないと思うけど……」
「そうなのか?」
そう聞かれて、私は困ってしまった。
特別他の人の所へ行っているつもりもないし、ナイトメアの所にあまり来なかったという記憶もない。
「……普通にみんな同じだと思うけど」
彼の視線に戸惑いながら小さな声でそう答えると、じっと私を見つめていたナイトメアはふっと笑った。
「それはそれで残念だな」
その言い方が柔らかくて、なんだか彼に悪いことをしてしまった気持ちになる。
何も言えずに黙っていると、彼は穏やかに笑った。
「気にしなくてもいいよ、名無しさん。私は別に君を困らせたい訳じゃない。みんなと同じでいいんだ」
ナイトメアはそう言うと、私に手を伸ばす。
「でも、今だけはもう少し一緒にいてくれないか?」
静かにそう言った彼。
伸ばされた彼の白い手に触れると、熱のせいかとても熱かった。
クローバーの塔に遊びに行ったら、ナイトメアがまた体調を崩していると聞いた。
39度の熱を出している上司に対して、グレイは「いつもの症状だしすぐに治るだろう」と普通に言っていた。
慣れって怖いなぁと思いつつ、ちらりと様子を見に行こうとナイトメアの部屋へ向かった私。
彼の部屋のドアはほんの少しだけ開いていた。
ナイトメアは白くて大きなベッドで上半身を起こし、大人しく本を読んでいた。
日の光が差し込む清潔な空間で、ページを繰る音だけが響く。
その姿があまりにも似合っていて、私はしばらくドアの隙間からこっそりと彼を見つめていた。
いつもぎゃーぎゃーとうるさいナイトメアだけれど、こうしてみるとかなり「病弱な美青年」という感じがする。
誰もが想像する病弱な美青年としては、かなり正しい姿。
「こんにちは、ナイトメア」
「あぁ、名無しさん。いらっしゃい」
私に気づいた彼は読んでいた本をぱたんと閉じると、ふわりと笑った。
見た所そんなに辛そうではない。
「熱があるんだって? 寝てなくて大丈夫なの?」
「あぁ、薬を飲んだからな。今は大丈夫だ」
穏やかにそう言った彼にものすごくびっくりした。
「薬? 薬を飲んだの?」
「あぁ、飲んだ。というかグレイに無理やり飲まされた」
ナイトメアはそう言って心底辛そうな顔をした。
「本当にあんな苦い薬をオブラートなしで飲ませるなんてひどい男だと思わないか?」
「大の大人がオブラートで薬を飲もうなんていうのがどうかと思うよ」
あきれ果ててそう言うと、ナイトメアは口を尖らせた。
「食後の薬らしいんだ。私はしばらく食事をとらないことにした。そうすれば薬を飲まなくて済むからな」
「……死んじゃうよ、それ」
色々と間違っている発言に思わずそう言ってしまった。
治るものも治らなくなってしまう。
「だいたい食事をとらなくたって、薬は飲ませると思うよ。グレイのことだから」
「ばかな! 食後の薬だぞ!?」
「うん、そうなんだけどね……ってナイトメアほんとに39度あるの?」
さっきまでは確実に「病弱な美青年」という感じがしていたけれど、なんだか一気にいつものナイトメアだなぁ。
この方が安心するといえばそうなんだけど。
そんなことを考えていると、ナイトメアはふらりとベッドに倒れる。
「え、どうしたの? 大丈夫??」
「あぁ、ちょっと大声を出したら眩暈が……」
おでこに手を当てて目を閉じるナイトメアに、思わずため息をついてしまった。
「もうそのまま寝ていた方がいいんじゃない? 薬を飲んだとはいっても、眠らないと治らないよ」
「しかしせっかく名無しさんが来てくれたのに眠るなんてもったいないじゃないか」
「!」
その言葉に私はナイトメアをじっと見つめた。
彼はそっと目を開けると天井を見つめたまま言う。
「君はなかなか私の所へ来てくれないからな」
「え?」
驚く私に、ナイトメアがすっと視線を移した。
その視線の動かし方は、病気の人特有の疲れ方というか、けだるげな感じと相まってやたらと色っぽく見えた。
なんだかドキドキしてしまった私は、上ずった声で言い返す。
「そ、そんなことないと思うけど……」
「そうなのか?」
そう聞かれて、私は困ってしまった。
特別他の人の所へ行っているつもりもないし、ナイトメアの所にあまり来なかったという記憶もない。
「……普通にみんな同じだと思うけど」
彼の視線に戸惑いながら小さな声でそう答えると、じっと私を見つめていたナイトメアはふっと笑った。
「それはそれで残念だな」
その言い方が柔らかくて、なんだか彼に悪いことをしてしまった気持ちになる。
何も言えずに黙っていると、彼は穏やかに笑った。
「気にしなくてもいいよ、名無しさん。私は別に君を困らせたい訳じゃない。みんなと同じでいいんだ」
ナイトメアはそう言うと、私に手を伸ばす。
「でも、今だけはもう少し一緒にいてくれないか?」
静かにそう言った彼。
伸ばされた彼の白い手に触れると、熱のせいかとても熱かった。
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