マッドハッターズ!
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【21.マフィアのボスとその彼女】
ビバルディに会いにハートの城へと歩いている私。
でも、なんだかすごく気になることがある。
街の人が私を見て、なにかこそこそ言っている。ような気がする。
目が合うと慌てて目を逸らされるし、かと思えば、全く知らない人から会釈されたりするのだ。
……気のせい、にしてはちょっとおかしい。
居心地の悪さを感じていたら、ばったりアリスに遭遇した。
「名無しさん~!」
「アリス!!」
ぱたぱたと私に駆け寄ってきたアリスはもうご機嫌というか、ニヤニヤ笑いが止まらないというか……とにかく楽しそうだった。
「名無しさん、ブラッドと上手くいったみたいね!!」
「え、え? なんでそれを」
私から話そうと思っていたことを、アリスから切り出してきたことにびっくりする。
「あ、やっぱり本当なんだ! そっか~。良かったじゃない! あの時2人きりにした甲斐があったわ~」
うんうんうなずくアリス。
確かにアリスのおかげではあるんですけどね。
「事細かに知りたいなぁ、名無しさん。あの後どうなったのかを……」
「ちょっと待って。どうしてブラッドとのことを知っているの?」
「え、みんな知ってるわよ。噂になってるから」
「うわさ?」
首を傾げる私に、こくりとうなずくアリス。
「帽子屋ファミリーのボスが女を連れて歩いてたってもっぱらの噂よ。なんでもすごく仲よさそうだったらしいじゃない?」
その言葉に目がまんまるになったのが自分でもわかった。
女を連れて歩いてたって……
「思い当たる節があるみたいね」
「この前、紅茶を飲みに行っただけだよ」
夕方に街へ出かけて紅茶を飲んだ。それだけだ。
「そうなの? でも、なんだか街中が結構大変だったらしいけど」
「え?」
街中が大変?
全く話の見えない私に、アリスは情報を思い出そうと宙を見つめながら説明してくれた。
「えぇとね、めったに街に出てこないあのブラッド=デュプレが、夕方に護衛もつけずに歩いていたって大騒ぎしてたわよ」
「あー……なるほど」
まぁ、かなりのレア感はあるよね。
ブラッドがもう少し活動的になればこんなに驚かれないんじゃ……
「でね、何か意図があるのかもしれないとか、何か良からぬことが起こるのかもしれないって噂だけど」
「ないと思うよ。だって、ほんとにただの気まぐれで紅茶を飲みに行っただけだもん」
「ふぅん、そうだったの。名無しさんが言うならそうなのかもね」
アリスはそう言って笑った。
私はと言うと、ある一つの考えが頭をよぎる。
「アリス……もしかして私、街の皆様から恐れられてるのかな? ブラッドと近い人間だから」
だから会釈されたり、見ないふりされたりするってこと?
「うーん……どうだろうね。まぁ、街の皆様が怖いのは名無しさんじゃなくてブラッドの方だから、名無しさんは気にしなくていいんじゃないの?それにね、みんながみんなブラッドを怖がってるわけじゃなさそうだし」
「そうなの?」
「結構憧れの目で見てる女の人もいるみたいだから。ほら、危険な人に惹かれるっていう女子特有のあれよね」
それでなくても見た目がいいものねとアリスは笑うが、どう反応していいものか困る。(そうなの、かっこいいの、なんてお惚気もいいところだし)
「なんにしてもブラッドは有名人だから仕方ないわよ、ある程度注目をされるのは」
「そうか。そうだよね」
「だからブラッドに近い名無しさんが有名人になっちゃうのも仕方ないんじゃない?」
「……そうか。そうだよね」
たった一度ブラッドと街を歩いただけで、こんなにも注目を浴びるようになってしまうだなんて。
……マフィアのボスとは恐ろしいものだわ。
アリスと別れてしばらくすると、今度はエリオットにばったり会った。
「おー、名無しさん」
「エリオット! なんか久しぶりだね」
「だな。仕事が立て込んでて屋敷にあまりいなかったからさ」
にこにこ笑うエリオットと会うのは本当に久しぶりで、私もつられて頬が緩む。
「そっか。無理してない? 元気?」
「あぁ、元気元気。あんたは? 出かけるのか?」
「うん、ビバルディに呼ばれてるの」
「あの女王様んところか」
そう言って何かを考えるような表情を見せるエリオットに、私は内心慌てる。
ハートの城とは敵対関係にあるから、エリオットだっていい顔をするはずがない。
と思ったのだが……。
「ま、たまにはいいよな。どうせならゆっくりしてこいよ」
そう言ってにぱっと笑ったエリオット。
ゆっくりしてこいと言われてもねぇ。
首を傾げる私に、エリオットが話を続ける。
「実はさ、このあと俺たち総出で仕事なんだよ。だから、その間城にいた方があんたも寂しくないだろ」
「総出って……みんなってこと?」
「そうそう。ブラッドとガキ共と俺。それからあと何人かつれてくんだけどさ。2時間帯くらい屋敷に帰れないんだ」
「結構危ない感じなの?」
ブラッドに双子にエリオットが揃って出て行くなんて、大きな仕事に決まっている。
「そんなんじゃないけどさ。ただちょっと厄介なことがあるんで、ブラッドも今回は出て行くんだ」
それってかなり厄介な気がする。
「そんな顔すんなよ。ブラッドは絶対に俺が守るからさ」
「え」
思わぬ彼の発言にきょとんとする私。
「ブラッドになんかあったら、あんたが悲しむもんな」
エリオットは優しい目で私を見る。
「まぁ、俺だってブラッドになんかあったら絶対に嫌だけどよ。名無しさんが悲しんでる所だって見たくないんだ」
「エリオット……」
「変に心配させたくねぇし、城にいてもらった方が俺たちにも都合がいいんだよ。あんな女の所でも安全だからな」
「そう言われると、余計に心配になるんですけど」
「あれ、そっか。まぁ大丈夫だって」
あっけらかんというエリオット。
本当によくある事態なんだろうけど、なんだか心配。
「とにかくこれから2時間帯は城にいさせてもらえよ」
「でも……」
「名無しさん、俺だってあんたのこと好きなんだ。何かあったら嫌だ。だから大人しくいうことを聞いてくれよ」
渋る私を、エリオットがまっすぐに見つめてそう言った。懇願、に近い。
こんなことを言いだすなんて、もしかしたらこれまで以上に大変な仕事なのかもしれない。
「わかった」
「よしよし」
そう言って彼はにっと笑うとぐしゃぐしゃと私の頭をなでまわした。
「じゃあ俺行くわ。一足先に現場に行かなくちゃならないんだ」
「うん、気を付けてね!」
「おぉ。名無しさんも変な男についていくなよ」
「いかないよ!」
そう答えると、エリオットは楽しそうに笑いながら行ってしまった。
……大丈夫なのかな。
ビバルディに会いにハートの城へと歩いている私。
でも、なんだかすごく気になることがある。
街の人が私を見て、なにかこそこそ言っている。ような気がする。
目が合うと慌てて目を逸らされるし、かと思えば、全く知らない人から会釈されたりするのだ。
……気のせい、にしてはちょっとおかしい。
居心地の悪さを感じていたら、ばったりアリスに遭遇した。
「名無しさん~!」
「アリス!!」
ぱたぱたと私に駆け寄ってきたアリスはもうご機嫌というか、ニヤニヤ笑いが止まらないというか……とにかく楽しそうだった。
「名無しさん、ブラッドと上手くいったみたいね!!」
「え、え? なんでそれを」
私から話そうと思っていたことを、アリスから切り出してきたことにびっくりする。
「あ、やっぱり本当なんだ! そっか~。良かったじゃない! あの時2人きりにした甲斐があったわ~」
うんうんうなずくアリス。
確かにアリスのおかげではあるんですけどね。
「事細かに知りたいなぁ、名無しさん。あの後どうなったのかを……」
「ちょっと待って。どうしてブラッドとのことを知っているの?」
「え、みんな知ってるわよ。噂になってるから」
「うわさ?」
首を傾げる私に、こくりとうなずくアリス。
「帽子屋ファミリーのボスが女を連れて歩いてたってもっぱらの噂よ。なんでもすごく仲よさそうだったらしいじゃない?」
その言葉に目がまんまるになったのが自分でもわかった。
女を連れて歩いてたって……
「思い当たる節があるみたいね」
「この前、紅茶を飲みに行っただけだよ」
夕方に街へ出かけて紅茶を飲んだ。それだけだ。
「そうなの? でも、なんだか街中が結構大変だったらしいけど」
「え?」
街中が大変?
全く話の見えない私に、アリスは情報を思い出そうと宙を見つめながら説明してくれた。
「えぇとね、めったに街に出てこないあのブラッド=デュプレが、夕方に護衛もつけずに歩いていたって大騒ぎしてたわよ」
「あー……なるほど」
まぁ、かなりのレア感はあるよね。
ブラッドがもう少し活動的になればこんなに驚かれないんじゃ……
「でね、何か意図があるのかもしれないとか、何か良からぬことが起こるのかもしれないって噂だけど」
「ないと思うよ。だって、ほんとにただの気まぐれで紅茶を飲みに行っただけだもん」
「ふぅん、そうだったの。名無しさんが言うならそうなのかもね」
アリスはそう言って笑った。
私はと言うと、ある一つの考えが頭をよぎる。
「アリス……もしかして私、街の皆様から恐れられてるのかな? ブラッドと近い人間だから」
だから会釈されたり、見ないふりされたりするってこと?
「うーん……どうだろうね。まぁ、街の皆様が怖いのは名無しさんじゃなくてブラッドの方だから、名無しさんは気にしなくていいんじゃないの?それにね、みんながみんなブラッドを怖がってるわけじゃなさそうだし」
「そうなの?」
「結構憧れの目で見てる女の人もいるみたいだから。ほら、危険な人に惹かれるっていう女子特有のあれよね」
それでなくても見た目がいいものねとアリスは笑うが、どう反応していいものか困る。(そうなの、かっこいいの、なんてお惚気もいいところだし)
「なんにしてもブラッドは有名人だから仕方ないわよ、ある程度注目をされるのは」
「そうか。そうだよね」
「だからブラッドに近い名無しさんが有名人になっちゃうのも仕方ないんじゃない?」
「……そうか。そうだよね」
たった一度ブラッドと街を歩いただけで、こんなにも注目を浴びるようになってしまうだなんて。
……マフィアのボスとは恐ろしいものだわ。
アリスと別れてしばらくすると、今度はエリオットにばったり会った。
「おー、名無しさん」
「エリオット! なんか久しぶりだね」
「だな。仕事が立て込んでて屋敷にあまりいなかったからさ」
にこにこ笑うエリオットと会うのは本当に久しぶりで、私もつられて頬が緩む。
「そっか。無理してない? 元気?」
「あぁ、元気元気。あんたは? 出かけるのか?」
「うん、ビバルディに呼ばれてるの」
「あの女王様んところか」
そう言って何かを考えるような表情を見せるエリオットに、私は内心慌てる。
ハートの城とは敵対関係にあるから、エリオットだっていい顔をするはずがない。
と思ったのだが……。
「ま、たまにはいいよな。どうせならゆっくりしてこいよ」
そう言ってにぱっと笑ったエリオット。
ゆっくりしてこいと言われてもねぇ。
首を傾げる私に、エリオットが話を続ける。
「実はさ、このあと俺たち総出で仕事なんだよ。だから、その間城にいた方があんたも寂しくないだろ」
「総出って……みんなってこと?」
「そうそう。ブラッドとガキ共と俺。それからあと何人かつれてくんだけどさ。2時間帯くらい屋敷に帰れないんだ」
「結構危ない感じなの?」
ブラッドに双子にエリオットが揃って出て行くなんて、大きな仕事に決まっている。
「そんなんじゃないけどさ。ただちょっと厄介なことがあるんで、ブラッドも今回は出て行くんだ」
それってかなり厄介な気がする。
「そんな顔すんなよ。ブラッドは絶対に俺が守るからさ」
「え」
思わぬ彼の発言にきょとんとする私。
「ブラッドになんかあったら、あんたが悲しむもんな」
エリオットは優しい目で私を見る。
「まぁ、俺だってブラッドになんかあったら絶対に嫌だけどよ。名無しさんが悲しんでる所だって見たくないんだ」
「エリオット……」
「変に心配させたくねぇし、城にいてもらった方が俺たちにも都合がいいんだよ。あんな女の所でも安全だからな」
「そう言われると、余計に心配になるんですけど」
「あれ、そっか。まぁ大丈夫だって」
あっけらかんというエリオット。
本当によくある事態なんだろうけど、なんだか心配。
「とにかくこれから2時間帯は城にいさせてもらえよ」
「でも……」
「名無しさん、俺だってあんたのこと好きなんだ。何かあったら嫌だ。だから大人しくいうことを聞いてくれよ」
渋る私を、エリオットがまっすぐに見つめてそう言った。懇願、に近い。
こんなことを言いだすなんて、もしかしたらこれまで以上に大変な仕事なのかもしれない。
「わかった」
「よしよし」
そう言って彼はにっと笑うとぐしゃぐしゃと私の頭をなでまわした。
「じゃあ俺行くわ。一足先に現場に行かなくちゃならないんだ」
「うん、気を付けてね!」
「おぉ。名無しさんも変な男についていくなよ」
「いかないよ!」
そう答えると、エリオットは楽しそうに笑いながら行ってしまった。
……大丈夫なのかな。