マッドハッターズ!
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【20.おでかけ】
昼から夕方に移り変わっていく時間帯。
それも全く気にならず、庭のベンチで本を読みふけっていたらブラッドがやってきた。
彼は私の隣りに座ったかと思うとこう言った。
「名無しさん、出かけないか?」
突然のブラッドの言葉に私は耳を疑った。
「……は? え? 出かけるって……ブラッドが?」
「あぁ。君と私が」
「私とあなたが……これから?」
「そう。君と私がこれから」
同じ言葉を繰り返して、ブラッドがうなずいた。
読みかけの本を閉じると、私はじっとブラッドを見つめる。
「なにか変なものでも食べたの? それとも熱でもあるの?」
手を伸ばしてブラッドのおでこに触ってみる。
すると彼は苦笑いして、おでこに触れた私の手を掴んだ。
「至って普通だよ、お嬢さん。ただ君と出かけたい気分なんだ」
「……珍しいね。今は夕方なのに」
私の知る限り、ブラッド=デュプレという人は主に夜活動をする。
そして、それ以外の時間帯は部屋に籠るか、お茶会をするかという感じなのだ。
そんな彼が出かけたい気分だなんて超レアだ。
「今回の夕方はなんだか気分がいい。前回の昼が短かったのも気分をさらに良くする一因だがね」
「確かにさっきの昼は、あっという間に終わっちゃったものね」
「昼間が短いのはいいことだよ。ただ、忌々しいのはなかなか夜にならないことだ」
「あー、そういえばそうだね」
ここ最近は昼と夕ばかり来ている気がする。
そんなことを考えていると彼が大袈裟なため息をついた。
「夜にならないと、名無しさんに私の印をつけることができない」
「!?」
「私としては別に今でもいいんだがね、名無しさん?」
声のトーンを落としてそう言いながら、ブラッドは私の肩に腕を回す。
「お断りします!」
私はきっぱり拒否をして、彼の腕を払いのける。
「名無しさんはつれないな」と笑うと、ブラッドはいつもの調子でこう言った。
「たまには店の紅茶を飲みに行こう、名無しさん」
「……やっぱり紅茶なんだね」
こういう所はエリオットと似ているなぁ。
彼もご飯を食べに行こう、というと必ずにんじんなのだ。
思わず笑ってしまう私を不思議そうに見つつ、ブラッドは私の膝から本を取ると、そのまま立ち上がった。
「夕方の読書もいいが、夕方の紅茶もいい」
そう言って彼が手を差し出したので、私はその手を取るとベンチから立ち上がった。
街をブラッドと2人きりで歩くのは初めてだ。
ものすごーーーく変な感じ。
なによりも、街行く人々が綺麗に道を開けてくれるのだ。
私は非常に居心地が悪く、思わずブラッドを見上げたが、彼は何とも思っていないらしい。きっとブラッドにとっては日常的なことなのだ。
すれ違う街の人々はみんなこちらを見ないように歩いている。
……街の皆様ごめんなさい。
でもブラッドってそんなに悪い人でもないんです。
ちょっと気分屋で、ちょっとマフィアのボスをしているだけなんです。
私は心の中で街の人々に謝りながら、ブラッドの隣りを歩く。
今の時間帯は夕方だけれど、どちらかといえば夜に近い夕方だ。
夕日が眩しいという感じではなくて、もうすぐ夜だなぁという感じ。
だからブラッドは気分がいいのだろう。
だるそうな様子もなくステッキを片手に歩く彼は、珍しく辺りを色々と見て歩いているらしい。
夕方の街がそんなに珍しいか、と突っ込みたくなったけれど
あちこち見ながらゆっくりと歩く彼は、もしかしたら私に歩調を合わせてくれているのかもしれない。
そう思い当って、私は何も言わずに隣を歩く。
「ブラッドがお店の紅茶を飲むなんて、すごく珍しいよね」
「たいていの茶葉は屋敷に揃っているからね。ただ、これから行く店のオリジナルブレンドはなかなかいい。名無しさんもきっと気に入るよ」
「ヘぇ。楽しみ」
そう答えると、ブラッドはふわりと笑った。思わずどきりとする。
意地悪な笑い方じゃないなんて珍しい。(紅茶が絡むとこういう笑い方をするのね)
なんとなく照れてしまう。それに気づかれないように、私は普通を装って話しかける。
「でもさ、こうやって夕方に出歩くのもいいよね」
「これくらい夜に近い夕方ならばね」
彼らしい返事に笑ってしまう。
でもまぁなんだっていいや。
ブラッドと街をこうやって歩くのが嬉しいから。
「ねぇブラッド。また一緒に紅茶を飲みに行こうね」
「まだ飲んでいないのに、次の約束か」
気が早いな、と楽しそうに笑うブラッド。
「うん。そうだけど……」
またこうやって一緒に街を歩きたいから。
「また来ようね」
ブラッドを見上げると、彼はふっと笑ってポンと私の頭をなでた。
「そうだな」
それがものすごく嬉しくて、私はうつむいてこっそりとにやけてしまった。
昼から夕方に移り変わっていく時間帯。
それも全く気にならず、庭のベンチで本を読みふけっていたらブラッドがやってきた。
彼は私の隣りに座ったかと思うとこう言った。
「名無しさん、出かけないか?」
突然のブラッドの言葉に私は耳を疑った。
「……は? え? 出かけるって……ブラッドが?」
「あぁ。君と私が」
「私とあなたが……これから?」
「そう。君と私がこれから」
同じ言葉を繰り返して、ブラッドがうなずいた。
読みかけの本を閉じると、私はじっとブラッドを見つめる。
「なにか変なものでも食べたの? それとも熱でもあるの?」
手を伸ばしてブラッドのおでこに触ってみる。
すると彼は苦笑いして、おでこに触れた私の手を掴んだ。
「至って普通だよ、お嬢さん。ただ君と出かけたい気分なんだ」
「……珍しいね。今は夕方なのに」
私の知る限り、ブラッド=デュプレという人は主に夜活動をする。
そして、それ以外の時間帯は部屋に籠るか、お茶会をするかという感じなのだ。
そんな彼が出かけたい気分だなんて超レアだ。
「今回の夕方はなんだか気分がいい。前回の昼が短かったのも気分をさらに良くする一因だがね」
「確かにさっきの昼は、あっという間に終わっちゃったものね」
「昼間が短いのはいいことだよ。ただ、忌々しいのはなかなか夜にならないことだ」
「あー、そういえばそうだね」
ここ最近は昼と夕ばかり来ている気がする。
そんなことを考えていると彼が大袈裟なため息をついた。
「夜にならないと、名無しさんに私の印をつけることができない」
「!?」
「私としては別に今でもいいんだがね、名無しさん?」
声のトーンを落としてそう言いながら、ブラッドは私の肩に腕を回す。
「お断りします!」
私はきっぱり拒否をして、彼の腕を払いのける。
「名無しさんはつれないな」と笑うと、ブラッドはいつもの調子でこう言った。
「たまには店の紅茶を飲みに行こう、名無しさん」
「……やっぱり紅茶なんだね」
こういう所はエリオットと似ているなぁ。
彼もご飯を食べに行こう、というと必ずにんじんなのだ。
思わず笑ってしまう私を不思議そうに見つつ、ブラッドは私の膝から本を取ると、そのまま立ち上がった。
「夕方の読書もいいが、夕方の紅茶もいい」
そう言って彼が手を差し出したので、私はその手を取るとベンチから立ち上がった。
街をブラッドと2人きりで歩くのは初めてだ。
ものすごーーーく変な感じ。
なによりも、街行く人々が綺麗に道を開けてくれるのだ。
私は非常に居心地が悪く、思わずブラッドを見上げたが、彼は何とも思っていないらしい。きっとブラッドにとっては日常的なことなのだ。
すれ違う街の人々はみんなこちらを見ないように歩いている。
……街の皆様ごめんなさい。
でもブラッドってそんなに悪い人でもないんです。
ちょっと気分屋で、ちょっとマフィアのボスをしているだけなんです。
私は心の中で街の人々に謝りながら、ブラッドの隣りを歩く。
今の時間帯は夕方だけれど、どちらかといえば夜に近い夕方だ。
夕日が眩しいという感じではなくて、もうすぐ夜だなぁという感じ。
だからブラッドは気分がいいのだろう。
だるそうな様子もなくステッキを片手に歩く彼は、珍しく辺りを色々と見て歩いているらしい。
夕方の街がそんなに珍しいか、と突っ込みたくなったけれど
あちこち見ながらゆっくりと歩く彼は、もしかしたら私に歩調を合わせてくれているのかもしれない。
そう思い当って、私は何も言わずに隣を歩く。
「ブラッドがお店の紅茶を飲むなんて、すごく珍しいよね」
「たいていの茶葉は屋敷に揃っているからね。ただ、これから行く店のオリジナルブレンドはなかなかいい。名無しさんもきっと気に入るよ」
「ヘぇ。楽しみ」
そう答えると、ブラッドはふわりと笑った。思わずどきりとする。
意地悪な笑い方じゃないなんて珍しい。(紅茶が絡むとこういう笑い方をするのね)
なんとなく照れてしまう。それに気づかれないように、私は普通を装って話しかける。
「でもさ、こうやって夕方に出歩くのもいいよね」
「これくらい夜に近い夕方ならばね」
彼らしい返事に笑ってしまう。
でもまぁなんだっていいや。
ブラッドと街をこうやって歩くのが嬉しいから。
「ねぇブラッド。また一緒に紅茶を飲みに行こうね」
「まだ飲んでいないのに、次の約束か」
気が早いな、と楽しそうに笑うブラッド。
「うん。そうだけど……」
またこうやって一緒に街を歩きたいから。
「また来ようね」
ブラッドを見上げると、彼はふっと笑ってポンと私の頭をなでた。
「そうだな」
それがものすごく嬉しくて、私はうつむいてこっそりとにやけてしまった。