マイペース
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【1.冬の訪れ】
朝起きたらものすごく寒かった。
何事かと思うくらい寒くて、布団をかぶったまま窓の外を見てみたら雪がちらついていた。
……え?
「雪?」
びっくりしすぎて、一気に目が覚めた。
雪ってこんな前触れもなく急に降るものだったっけ?
しかも結構な感じで積もっているようだった。
窓にへばりついて外を覗き込んでいると、このクローバーの塔からわらわらと黒スーツ集団が出てきた。
ざっと7,8人くらいはいる。
その中に見知った人物を見つけた私。
「あ、グレイだ」
黒スーツ集団の中央にいるのはグレイだった。
よくよく見ると手には雪かき道具を持っている。
「そうだよね。雪が降ったら雪かきだよね」
雪かきも仕事のうちなのかしら?
本来の仕事もナイトメアのせいで遅れ気味なのに大変だなぁ。
「ちょっと手伝おう。雪なんて久しぶりで楽しそうだし」
そう思って私はできる限りの厚着をすると、部屋を飛び出した。
「あれ???」
部屋を飛び出したのは良かったが、廊下に見覚えのない階段が突如できていることに気づいた私。
「なにこの階段。こんなのあったっけ?」
いや、なかった。
いつも通る廊下だから見落とす訳なんてない。
3時間帯前に通った時はなかったはずだ。
不思議に思って階段の上の方を覗いてみるが、その階段はずっと上まで続いているらしく、先が真っ暗で見えなかった。
気になるけどいきなり登ってみようという勇気はない。
「あとでグレイに聞いてみよう」
そう思ってその階段を後にしようとしたその時、前から人が歩いてくることに気づいた。
なんだかかっちりした黒っぽい服に時計がどかんとついている。
背が高いらしいその人は、かつかつと靴音を響かせて近づいてきた。
見たことない人だなぁ。
そんな風に思ってみていると、彼は私の視線に気づいたらしい。
無表情で歩いていたけれど、すぐにきゅっと口元を閉め、ほんのり険しい表情になった。
うわ、警戒されてる。っていうか視線が気にくわなったのかしら?
怖そうな人だと思って慌てて目を逸らす。
どんどん近づいてくる彼になんだか落ち着かない気分になる。
そして、そのまますれ違った。
やっぱり背の高い人だった。
彼は私とすれ違うと、その後先ほどの見覚えのない階段をかつかつと登って行った。
なんだか気になったので、振り向いて階段を覗き込むと、一つに束ねた長い髪の毛をさらりと揺らしながら、彼が階段の闇の中へと消えていくのが見えた。
「……だれだろう?」
グレイに聞いてみよう。
何かあったらグレイに聞く、ということが今の生活の信条となっている私は小走りで塔の外へと急ぐことにした。
外へでると一層寒い。
でも、空気がぴりっと冷たくて気持ちよかった。
雪は見慣れた街並みをがらりと変える。
まっしろに降り積もった景色はとても新鮮で綺麗だった。
「グレイ!」
ワクワクした気持ちで、グレイに駆け寄っていくと、彼はすっと振り向いた。
「あぁ、名無しさん」
「すごい雪だね!」
「そうだな。そろそろ来るころだとは思っていたが、今回は冬になったようだ」
彼は雪かきをぐさりと地面に差しながらそう言った。
『今回は』ってどういう意味?
不思議に思っていると、彼は私をまじまじと見て言った。
「ところで名無しさん、そんな格好じゃ風邪をひくぞ」
「うん、でも私冬服を持ってなくてね。これが今私にできる最高の防寒スタイルなんです」
私は長袖のシャツ2枚にカーディガン。それにタイツとスカートに靴という出で立ちだった。
確かに寒い。
でも、クローバーの国には季節らしきものはなかった。
いつも晴れていたし、気にかけるべきものは天気ではなくて時間帯だけだったのだ。
そんな国に放り込まれた私が、コートなど持っているはずもない。
やっとこの生活に慣れてきたというのに、なんだかまた不思議なことが起こったような気がするぞ?
「確かに君はこの国に来たばかりだったから仕方ないな。用意したほうがいい。この辺りはしばらくは冬だ。他の領地はどうなったか後で調べてみよう」
彼はそう言いながら自分のコートを脱ぐと、私の肩にかけた。
引きずるんじゃないかというくらい長い。
そして、ずっしりと重かった。
「それで良ければ羽織っておくといい」
「え、でもグレイが寒いでしょ?」
「いや、雪かきをしていて暑いくらいだ」
「そっか。じゃあありがたく……って私も雪かきを手伝いに来たんだよ」
雪かきをやる気満々の私はグレイのコートを脱いで手にかける。
するとグレイはこう言った。
「ありがとう、名無しさん。それなら雪かきではなくて他のことを頼もう。ナイトメア様に薬を飲ませてくれ」
「え……けっこうハードルの高いお仕事ですよね、それ」
グレイの言葉に苦笑すると、彼も「まぁ、否定はしない」と笑った。
「ついでに、今の状況についても聞いておくといい。熱があるわりには元気そうで、退屈しているようだからな。話し相手になってやってくれ」
「うん。わかった」
頷いた私は、はっと先ほどすれ違った人のことや階段について思い出した。
「あ、そうだ。グレイ。なんか知らない階段と知らない人を見たんだけど……」
「知らない階段と知らない人?」
「うん。髪の毛が長くてなんか気難しそうな男の人だったよ。知らない階段に登って行ったの」
なんか怖かったんだよね、と付け足すとグレイは心当たりがあったらしく「あぁ」とうなずいた。
「それはおそらく時計屋だな」
「時計屋?」
「そう。話せば長くなるが、簡単に言うと時計屋の部屋とこのクローバーの塔がつながったということだ」
「え?」
……全く意味がわからないのですが。
「無愛想だが悪いやつでもない。彼は仕事で忙しいから関わることも少ないだろうし、気にしなくていい。むしろ関わりを拒否するタイプだ」
「ふぅん」
グレイがそういうのなら正しいのだろう。
もうちょっと話を聞きたかったけれど、とにかく寒かった私はグレイの言葉にうなずいた。
「よくわからないけど、ナイトメアにその辺りも聞いてみる」
「あぁ、それがいい」
私の言葉にグレイは笑ってうなずいた。
「ありがとう。薬もしっかり飲ませておきます」
「あぁ、頼んだ」
グレイに見送られ、私は再びクローバーの塔に入った。
朝起きたらものすごく寒かった。
何事かと思うくらい寒くて、布団をかぶったまま窓の外を見てみたら雪がちらついていた。
……え?
「雪?」
びっくりしすぎて、一気に目が覚めた。
雪ってこんな前触れもなく急に降るものだったっけ?
しかも結構な感じで積もっているようだった。
窓にへばりついて外を覗き込んでいると、このクローバーの塔からわらわらと黒スーツ集団が出てきた。
ざっと7,8人くらいはいる。
その中に見知った人物を見つけた私。
「あ、グレイだ」
黒スーツ集団の中央にいるのはグレイだった。
よくよく見ると手には雪かき道具を持っている。
「そうだよね。雪が降ったら雪かきだよね」
雪かきも仕事のうちなのかしら?
本来の仕事もナイトメアのせいで遅れ気味なのに大変だなぁ。
「ちょっと手伝おう。雪なんて久しぶりで楽しそうだし」
そう思って私はできる限りの厚着をすると、部屋を飛び出した。
「あれ???」
部屋を飛び出したのは良かったが、廊下に見覚えのない階段が突如できていることに気づいた私。
「なにこの階段。こんなのあったっけ?」
いや、なかった。
いつも通る廊下だから見落とす訳なんてない。
3時間帯前に通った時はなかったはずだ。
不思議に思って階段の上の方を覗いてみるが、その階段はずっと上まで続いているらしく、先が真っ暗で見えなかった。
気になるけどいきなり登ってみようという勇気はない。
「あとでグレイに聞いてみよう」
そう思ってその階段を後にしようとしたその時、前から人が歩いてくることに気づいた。
なんだかかっちりした黒っぽい服に時計がどかんとついている。
背が高いらしいその人は、かつかつと靴音を響かせて近づいてきた。
見たことない人だなぁ。
そんな風に思ってみていると、彼は私の視線に気づいたらしい。
無表情で歩いていたけれど、すぐにきゅっと口元を閉め、ほんのり険しい表情になった。
うわ、警戒されてる。っていうか視線が気にくわなったのかしら?
怖そうな人だと思って慌てて目を逸らす。
どんどん近づいてくる彼になんだか落ち着かない気分になる。
そして、そのまますれ違った。
やっぱり背の高い人だった。
彼は私とすれ違うと、その後先ほどの見覚えのない階段をかつかつと登って行った。
なんだか気になったので、振り向いて階段を覗き込むと、一つに束ねた長い髪の毛をさらりと揺らしながら、彼が階段の闇の中へと消えていくのが見えた。
「……だれだろう?」
グレイに聞いてみよう。
何かあったらグレイに聞く、ということが今の生活の信条となっている私は小走りで塔の外へと急ぐことにした。
外へでると一層寒い。
でも、空気がぴりっと冷たくて気持ちよかった。
雪は見慣れた街並みをがらりと変える。
まっしろに降り積もった景色はとても新鮮で綺麗だった。
「グレイ!」
ワクワクした気持ちで、グレイに駆け寄っていくと、彼はすっと振り向いた。
「あぁ、名無しさん」
「すごい雪だね!」
「そうだな。そろそろ来るころだとは思っていたが、今回は冬になったようだ」
彼は雪かきをぐさりと地面に差しながらそう言った。
『今回は』ってどういう意味?
不思議に思っていると、彼は私をまじまじと見て言った。
「ところで名無しさん、そんな格好じゃ風邪をひくぞ」
「うん、でも私冬服を持ってなくてね。これが今私にできる最高の防寒スタイルなんです」
私は長袖のシャツ2枚にカーディガン。それにタイツとスカートに靴という出で立ちだった。
確かに寒い。
でも、クローバーの国には季節らしきものはなかった。
いつも晴れていたし、気にかけるべきものは天気ではなくて時間帯だけだったのだ。
そんな国に放り込まれた私が、コートなど持っているはずもない。
やっとこの生活に慣れてきたというのに、なんだかまた不思議なことが起こったような気がするぞ?
「確かに君はこの国に来たばかりだったから仕方ないな。用意したほうがいい。この辺りはしばらくは冬だ。他の領地はどうなったか後で調べてみよう」
彼はそう言いながら自分のコートを脱ぐと、私の肩にかけた。
引きずるんじゃないかというくらい長い。
そして、ずっしりと重かった。
「それで良ければ羽織っておくといい」
「え、でもグレイが寒いでしょ?」
「いや、雪かきをしていて暑いくらいだ」
「そっか。じゃあありがたく……って私も雪かきを手伝いに来たんだよ」
雪かきをやる気満々の私はグレイのコートを脱いで手にかける。
するとグレイはこう言った。
「ありがとう、名無しさん。それなら雪かきではなくて他のことを頼もう。ナイトメア様に薬を飲ませてくれ」
「え……けっこうハードルの高いお仕事ですよね、それ」
グレイの言葉に苦笑すると、彼も「まぁ、否定はしない」と笑った。
「ついでに、今の状況についても聞いておくといい。熱があるわりには元気そうで、退屈しているようだからな。話し相手になってやってくれ」
「うん。わかった」
頷いた私は、はっと先ほどすれ違った人のことや階段について思い出した。
「あ、そうだ。グレイ。なんか知らない階段と知らない人を見たんだけど……」
「知らない階段と知らない人?」
「うん。髪の毛が長くてなんか気難しそうな男の人だったよ。知らない階段に登って行ったの」
なんか怖かったんだよね、と付け足すとグレイは心当たりがあったらしく「あぁ」とうなずいた。
「それはおそらく時計屋だな」
「時計屋?」
「そう。話せば長くなるが、簡単に言うと時計屋の部屋とこのクローバーの塔がつながったということだ」
「え?」
……全く意味がわからないのですが。
「無愛想だが悪いやつでもない。彼は仕事で忙しいから関わることも少ないだろうし、気にしなくていい。むしろ関わりを拒否するタイプだ」
「ふぅん」
グレイがそういうのなら正しいのだろう。
もうちょっと話を聞きたかったけれど、とにかく寒かった私はグレイの言葉にうなずいた。
「よくわからないけど、ナイトメアにその辺りも聞いてみる」
「あぁ、それがいい」
私の言葉にグレイは笑ってうなずいた。
「ありがとう。薬もしっかり飲ませておきます」
「あぁ、頼んだ」
グレイに見送られ、私は再びクローバーの塔に入った。
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